近年、同国の加工食品業界ではオーガニック加工食品について、製造者・消費者の双方から注目が集まっています。
今回は、そんなシンガポールの食品業界に焦点を当てて、最新の業界情報をお届けします。シンガポール進出を考えているなら必見!気になるシンガポールの食品業界事情とは?
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2020年 シンガポールの加工食品業界
シンガポールで加工食品業界大手のQAF、タイのGardenia Bakeryに出資
2019年8月29日の発表によると、シンガポールの食品事業大手で製パン業を主力事業とするQAFグループは、タイで新設した「Gardenia Bakery Trading Co., Ltd (ガーデニアベーカリートレーディング株式会社)」の発行済株式の24.5%を取得した。出資額は、1,225万タイバーツ(約56.2万SGD相当)になる。主な事業はタイでのベーカリーやその他の食品の販売と流通だ。
Gardenia BakeryはQAFが展開する主力製パンブランドでシンガポール国内の製パンブランドとしては国内売上トップ。1日に20万個以上のパンを製造している。
シンガポール国外では、タイを含めた東南アジアやオーストラリアを中心に販売網を確立しており、マレーシア、フィリピン、オーストラリアに子会社やJV会社を持っていたが、今回新たに設立したタイでの事業会社に出資するもの。
シンガポールで加工食品業界大手のFood Empire、価値あるブランド100に選出
2019年8月1日の発表によると、シンガポールに本社を置き、インスタントコーヒー、コーヒーカプセル、冷凍食品やフィンガーフード事業などを展開するFood Empireは戦略コンサルタント会社Brand Financeが選出する、「Most Valuable Singaporean Brands(最も価値のあるシンガポールブランド100選)」の1つに選ばれた。
ブランドランキング全体では58位にランクインし、これは同社が本ランキングに入っている2016年からの3年間で最も高い。 グループのブランド価値も向上し、2018年の7,300万USドルから2019年には7,600万USドルに上った。
受賞についてTan Wang Cheow会長は次のように述べた。「今年のブランドファイナンスアワードでのグループのパフォーマンスに満足している。双方的な顧客との関係性が評価された。今後は既存の事業市場での存在感をさらに高めるため、継続的なブランド開発とサービス/製品の強化を図る」。

ヨシムラフード、シンガポールの水産加工メーカーを買収〜加工食品業界事情〜
2019年4月19日の発表によると、ヨシムラ・フード・ホールディングスは、シンガポールの水産加工メーカー、PACIFIC SORBY PTE. LTD. を子会社化する。シンガポール内での買収は3社目となる。国内外での同社グループ会社の連携を強化し、アジア地域での展開を強化する。
同社は海外事業を統括するヨシムラ・フード・ホールディングス・アジアを通じ、PACIFIC SORBY PTE. LTD. の発行済み株式の70%を取得。取得総額は16億2,800万円で、5月13日に株式譲渡を終える予定。
PACIFIC SORBY PTE. LTD.は冷凍水産品や鮮魚を仕入れ、自社にて加工もしくは卸売にてシンガポールの主に4つ星、5つ星ホテルや病院等へ販売を行っている会社だ。主な取扱商品は、カニ、ロブスター、エビ、サーモン等の冷凍水産品及びシンガポール近海で漁獲される鮮魚だ。同社はホテルに対する販路、加工設備及びノウハウ、独自の仕入ルートを強みとしている。
出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/1693532/00.pdf
Wu Pao Chun、シンガポールのBread Talk Groupと業務提携〜加工食品業界事情〜
2019年6月14日の発表によると、台湾の高雄市発祥でパン作りの世界チャンピオン Wu Pao Chun(吳寶春)氏が手掛けるベーカリー「Wu Pao Chun」のシンガポール一号店が街の中心地、City Hall駅直結の高級ショッピングモールCapital Piazzaにオープンした。
販売する60種類のパンや菓子などのうち、10種類がシンガポール限定の現地グルメを取り入れたり商品になっている。海南チキンライスやコピなどをイメージしたパンも販売している。
これに先駆け、2018年3月にシンガポールの食品事業大手Bread Talk GroupはWu Pao Chunと業務提携し、完全子会社のWu Pao Chun Food Ltdを設立。同氏が既に展開している台湾以外の中国本土、香港、シンガポールなどの中華圏で事業を展開するJV会社を設立している。
出典: http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20190614_195211_CTN_BYE5UED1PTGLARK3.1.pdf
2019年 シンガポールの加工食品業界
シンガポールで加工食品業界大手のQAF、2018年度の利益は前年同期比1%減少
ベーカリー製品や菓子製品を手がけるQAF Limited(QAF)は2018年度における決算報告書を公開した。グループ全体の収益は2017年度と比較して、1%減少し814.9百万シンガポールドル(SGD)を計上した。
2018年度における全体的な業績は、Rivalea部門の低迷に大きく影響を受けている。同社は2001年以来、一次生産事業を展開しており、その影響を緩和することが困難な状況となっていると言える。また、当事業の停滞は外的要因が大きいと見られ、食肉の一般市場価格と気候変動によって家畜飼料の原材料費が大きく変動したこともそのうちの1つである。
オーストラリア東部で起きた史上最悪の干ばつにより、穀物価格は過去10年間で最高値まで上昇した。一次生産事業は3年から5年の周期で周期的な性質を持ち、2006年、2009年および2016年に最大の業績を上げている一方で、2016年のピーク以来、そのパフォーマンスは現在2017年に始まったダウンサイクルとなっている。同社は「一次生産部門が2018年度の売上高の約43%を占めていたため、Rivaleaの事業の循環的な性質がグループの業績に大きな変動をもたらしている」と分析している。
出典: http://www.qaf.com.sg/wp-content/uploads/2019/02/QAF-Limited_FY2018-Results-Announcement.pdf
シンガポールのTri Marine、マグロ漁業の貿易権を取得〜加工食品業界事情〜
Tri Marineは、ソロモン諸島のキハダマグロとカツオなどマグロ漁業のフェアトレード認証ライセンスを取得したと発表した。Tri Marineの関連会社であるナショナル・フィッシャリーズ・ディベロップメント (NFD)は現在、5つの中規模漁船などでマグロ漁獲物にフェアトレード認証ロゴを付けることを承認されている。同社は、米国の販売部門である小売Tuna Storeにおいて、認証済みマグロに対する需要が高まると予測してさらなる取得に踏み切った。
フェアトレードUSAは非営利団体であり、北米におけるフェアトレード製品の主要認証機関。信頼度の高い認証済み製品は、持続可能な暮らしと適切な労働条件、環境保護、強靭で透明性の高いサプライチェーンを促進する、厳正なフェアトレード基準に従って製造されたことを証明するものとして活用されている。
Tri Marineは、シンガポールに拠点を置くイタリア政府所有のマグロサプライヤーとして1972年に設立された。同社は現在、高品質のマグロ製品の漁業、加工、流通をグローバルに展開している。

シンガポールで加工食品業界大手のBreadTalk、新たなビジョンとミッションを発表
国内にてベーカリーショップなどを展開するBreadTalkはアニュアルレポートを発表した。
2018年は、厳しいマクロ環境が続く一方で、ジョイントベンチャーを通じたビジネスパイプラインの構築や人材育成およびサポートインフラストラクチャへの投資を中心に展開した1年となった。中国本土ではSong Fa Bak Kut Teh、シンガポールではNayukiとTaiGaiといった新ブランドを導入することで、既存市場での収益拡大を展開した。また、ロンドンのCovent Gardenに主力のDin Tai Fungレストランがオープンし、新たな市場の開拓にも精力的に取り組んだ。
同社が新たに掲げたビジョンは「Inspiring innovative F&B concepts; delighting the world everyday」(革新的な飲食業のコンセプトを掘り起こし、世界中の人たちの毎日を喜びで彩る)。また、新たなミッションとして「人材、製品および作業工程に対して継続的な改善を図ることで、卓越性を追求し、創造的で、透明性があり調和の取れた企業文化を育むこと」を掲げた。
出典: http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20190321_201851_CTN_TN8V4TWGJ8IPV0QK.1.pdf
F&N、シンガポールのNTUと共同研究〜加工食品業界事情〜
シンガポールに本拠地を置く大手飲料メーカーFraser and Neave (F&N)は、健康製品などの開発研究に向けた4年間の研究提携を南洋理工大学 (NTU)と開始し、新しい研究所を開設した。Thai Beverageが過半数を所有するF&Nは、「シーズンズ」ブランドのアイスティー、「スパークリング・ドリンク」のソーダフレーバー、「アイス・マウンテン」のボトル入り飲料水などを製造・販売している。
NTUの新しいF&N-NTU F&B イノベーション研究所における取り組みの一環として、新商品のレシピ開発が進行されている。NTUは「この共同研究では高品質な食料品や、環境に優しい包装などの製造開発に取り組んでおり、そして食品加工から生じる廃棄物の再利用技術に関する研究を行なう予定である」とコメントしている。
F&Nは直近の決算報告書において、消費者心理に対する公共政策の影響の可能性を指摘しており、甘味飲料に対するマレーシアの次期「砂糖税」を念頭に入れていることを示唆している。
出典: https://media.ntu.edu.sg/Pages/newsdetail.aspx?news=770b734a-3026-4cf9-9441-625d1b4a751a
2018年 シンガポールの加工食品業界
シンガポールの食品輸入規制最新版!〜加工食品業界事情〜
シンガポールの食品規制は、農産物・家畜庁のAVA (Agri-Food & Veterinary Authority of Singapore)の管理下にある。
2018年5月現在の輸入規制は以下の通り。

出典:https://www.ava.gov.sg/docs/default-source/tools-and-resources/resources-for-businesses/approved-countries
シンガポールのIPA、産学連携で業界にイノベーションを〜加工食品業界事情〜
IPA (Food Innovation Product Award)は、食品業界でのイノベーションを促進するため2016年に始まった。シンガポール経済開発庁(EDB)など政府機関も参加する大規模な取り組みである。
食品メーカーは、高等教育機関(Institute of Higher Learnings)のメンバーで構成されるチームとの協力下、新しく革新的な食品の開発を行ってきた。B2B / B2C、国内向け / 輸出向けの両面で、商品開発を実現している。
9ヶ月もの長い時間をかけて学生と企業(情報管理会社のNielsen)やオーストラリアの大学、シンガポール工科大大学などの研究機関が共同でプロジェクトにあたっている。
出典:https://www.sfma.org.sg/news/view/food-innovation-product-award-2018
シンガポールで加工食品業界大手のBreadTalk、厳しいビジネス環境の中でも堅実な成長
BreadTalkは、シンガポールおよびアジアでベーカリーショップチェーンなどを展開している星企業。業界を取り巻く厳しい環境の中、2017年6月期の決算報告ではEBITDAベースの年間成長率が16.1%の伸びを見せたと発表した。
これは、常にトレンドを押さえ、現状の人気を維持するだけにとどまらず、新商品の導入や新しい成長領域への挑戦を続けてきた結果である。
今後は、新店舗の展開を慎重に行っていく一方で、収益性の高い新市場への進出を推し進める予定。
今後は、新店舗の展開を慎重に行っていく一方で、収益性の高い新市場への進出を推し進める予定。
出典:http://breadtalk.listedcompany.com/newsroom/20170802_190658_5DA_YKMSNQR7PFBSS1A3.2.pdf

シンガポールの加工食品業界、テクノロジーの導入で人材不足を改善
食品業界での人材資源不足は特にSME(中小企業)で深刻であるが、それを高圧処理技術の開発によって補おうとする動きが見えている。
高圧処理技術を用いることで、冷蔵の段階で食品のバクテリアを消滅させ、添加物や熱処理を加えずに加工することが可能になる。食品媒介の病原体をなくすことで冷蔵食品として輸出もでき、人材資源に乏しいSMEの研究開発費や労働力の削減にも繋がる。
製品開発には、政府機関のWorkforce Singapore (WSG)やSPRING Singapore、教育機関からはSingapore Polytechnic、そしてSMEのThe Soup Spoonが協力。今後は50以上のSMEに導入の機会を提供していく。
製品開発には、政府機関のWorkforce Singapore (WSG)やSPRING Singapore、教育機関からはSingapore Polytechnic、そしてSMEのThe Soup Spoonが協力。今後は50以上のSMEに導入の機会を提供していく。
出典:http://www.ssg-wsg.gov.sg/content/dam/ssg-wsg/ssgwsg/news/media-release/31052017/High%20Pressure%20Processing%20technology%20uplifts%20manpower-lean%20capabilities%20and%20opens%20up%20export%20opportunities%20for%20local%20food%20companies_Media%20Release_310517.pdf
海外展開をシンガポール政府機関がサポート〜加工食品業界事情〜
シンガポール通商産業省傘下にあるEnterprise Singapore (ES)とSingapore Manufacturing Federation (SMF)は、2018年のFood & Hotel Asia開催に合わせてB2Bのオンラインプラットフォームを導入した。
SMF SMART Appと呼ばれるこの仕組みは、ローカルの食品メーカーが自社商品を海外のバイヤーへより簡単に、迅速に紹介できるようにすることが目的。展示会のパビリオンでバーコードをスキャンするだけで、商品の詳細や条件を確認する事ができる。
海外のバイヤーには商品情報を確認することができるツールを提供し、オンライン注文から支払までがその場で完了可能。書類のハードコピーによる手続きも削減される。
海外のバイヤーには商品情報を確認することができるツールを提供し、オンライン注文から支払までがその場で完了可能。書類のハードコピーによる手続きも削減される。
出典:https://www.gov.sg/~/sgpcmedia/media_releases/enterprise-sg/press_release/P-20180424-1/attachment/MR00518_Enterprise%20Singapore%20Media%20Factsheet_FHA%202018_2018%2004%2024.pdf
まとめ:シンガポールの加工食品業界
技術革新や行政のサポート、研究機関との連携などにより、さらなる発展を目指すシンガポールの食品業界。メーカーだけでなく、産学官を巻き込んだ大きなイノベーションが起きています。開発、製造、販売などあらゆる面で新しい取り組みが進められているシンガポールには、大きなビジネスチャンスが眠っているのではないでしょうか。