医療機関での治療費を中心とする医療関連費の支出が年ごとに着実に進行しているシンガポール。
今回は、そんなシンガポールの病院業界に焦点を当て、最新の業界情報をお届けしていきます!
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2020年 シンガポールの病院業界
シンガポールで病院業界大手のNUHS、テクノロジーで病院施設の管理を支援
2020年9月25日、ローカル病院大手のNational University Health System(NUHS)は、様々なテクノロジーを駆使して、病院施設を管理すると発表した。
ドローンやロボットなどの非接触型テクノロジーは、新たな生活様式に適用するものとなるという。テクノロジーの活用により、より少ない人手で、効率的かつ安全な病院管理を目指している。例えば、夜間の病院内パトロールをドローンで行うことにより、警備員の数を少なくすることができる。
他にも、コンシェルジュロボットを導入することにより、来院時の自動検温やマスクをしていない患者の把握などが可能になる。これらの非接触型テクノロジーは、これからのコロナ時代に活躍することが大いに見込まれる。
シンガポールで病院業界大手のRaffles Medical Group、検査病院の選択肢拡大へ
Raffles Medical Groupは、 2018年の4億8,910万SGDから、2019年には5億2,200万SGDへと成長率6.7%の強力な収益成長を記録した。ヘルスケアサービス部門とホスピタルサービス部門によって生み出された収益はそれぞれ9%、5%と前年よりも増加した。
法人顧客の増加とサービスの範囲の拡大、既存および新規の保険契約患者数の増加は、病院サービス部門の収益成長に貢献した。グループの利息、減価償却および償却前利益(EBITDA)は、2018年の1億250万SGDから2019年の1億540万SGDへ2.8%の増加となった。
ラッフルズメディカルは、患者の利便性を高めるための継続的な取り組みとして、5番目となるエグゼクティブヘルススクリーニングセンターのRaffles Health Screenersをオープンした。これにより、患者は検査病院の選択肢を広げることができる。

シンガポールのSGHとPhilips、計算病理学の研究拠点設立へ〜病院業界事情〜
シンガポール総合病院(SGH)と医療技術の世界的リーダーであるロイヤルフィリップス(Philips)は、SGHのデジタルおよび計算病理学の研究拠点を設立するために協力することを発表した。 SGH Centre of Excellenceは、デジタル化された組織病理学のワークフローを実装し、人工知能(AI)を導入して生産性を高め、患者のケアを強化することにより、病理学の実践を促進することを目的としている。
Center of Excellenceは、ASEAN最大の病理学研究所の1つであるSGHの病理学部門内にある。Philips IntelliSite Pathology Solutionを使用して、一次診断、トレーニング、およびR&Dのデジタル病理学機能を拡張することにより、ASEAN初のデジタル化された組織病理学研究所となることを目指している。
SGHとPhilipsが実施した最近の調査によると、 Philips IntelliSite Pathology Solutionを使用して、SGHの組織病理学研究所を完全にデジタル化すると、毎年12,000時間以上を節約できる可能性があるとのこと。
シンガポールでスマートチャットボット「DoctorCovid」開発〜病院業界事情〜
SingHealthとシンガポール科学技術研究庁(A * STAR)は、統合医療情報システム(IHiS)の支援を受けて、コミュニティケア施設でのCOVID-19患者のケアを改善するために「DoctorCovid」と呼ばれるチャットボットを共同開発した。
テレグラムモバイルアプリケーションによって提供されているDoctor Covidは、患者の母国語でさまざまな機能を備えている。効果的なコミュニケーション、積極的な関与と相互作用を促進し、医療チームと運用チームが健康と幸福を綿密に監視できるようサポートする。
Doctor Covidは、2020年5月からシンガポールEXPOおよびD‘ResortのSingHealthが管理する施設で意図的に開発および使用されている。これは、オンサイト医療チームが提供するケアを補完し、各居住者が必要なときにいつでも適切なケアにアクセスできるようにしている。現在までに、SingHealthが管理するコミュニティケア施設に滞在している3,000人以上の居住者がチャットボットに登録している。
出典:https://www.singhealth.com.sg/news/patient-care/doctor-covid-chatbot
胸部X線の異常を迅速に検出!シンガポールでAIツールの開発〜病院業界事情〜
Tav Tock Seng HospitalのNational Center for Infectious Diseases(NCID)において、Covid19スクリーニング中に異常な胸部X線を迅速に検出するための人工知能を利用したツールが開発された。肺炎の症例の迅速な報告により、医師は早期に患者に介入することができる。
NCIDスクリーニングセンターを訪れる人のうち、Covid19の疑いがある、または呼吸器症状がある人は、胸部X線検査を行う必要がある。以前は、各X線画像は1時間以内に放射線科医によってレビューされていた。放射線科医は各X線の結果を順番に分析する必要があり、これに多くの時間がかかっていた。
RadiLogicと呼ばれるAIツールは、3秒以内に各X線画像を分析し、コンピューター上で異常な胸部X線をすばやく強調表示できる。そのため、放射線科医は、レビューする画像に優先順位を付けることができ、約50分で症例報告をすることができる。
2019年 シンガポールの病院業界
7.8%増の大幅増収、拡大が見込まれるシンガポールのRaffles〜病院業界事情〜
アジアにて統合ヘルスケアサービスを提供するRafflesMedicalGroupは、2019年10月29日、第3四半期の収益について発表した。それによると、2018年の第3四半期の総収入は1億2,100万シンガポールドル(SGD)だったのに対し、2019年は1億3,050万SGDとなり7.8%の大幅な増収を記録したとのこと。
医療サービス部門と病院サービス部門の収益は、それぞれ9.5%と7.0%増加した。医療サービス部門からの収益は、より多くの保険契約と法人顧客を確保した結果が反映されている。また、病院サービス部門からの収益の増加は、患者の増加によりもたらされた。
RafflesMedicalGroupは、2019年5月に新たな病院が上海に建設されており、現在は設備搬入や新規雇用が進行している。一方で、デジタルプラットフォームRafflesConnectを用いたシームレスなサービスも提供しており、引き続き積極的なビジネス拡大が見込まれている。
シンガポールのCHASカードホルダーにさらなる援助〜病院業界事情〜
Community Health Assist Scheme(CHAS)カードホルダーは、CHASクリニックにおいてさらなる補助金を享受することとなる。CHASカードとは、以前までは低所得から中所得までの国民に付与されていたヘルスケアのスキームであったが、近年には中所得から高所得においても特定疾患を持つ国民に対して与えられている。
これらのカードホルダーに対する補助金は、2018年には152百万SGDであったが、2019年となり200百万SGDと増額された影響で、補助が拡大される。
条件によって支給される補助金は様々だが、高齢化を迎える国内事情やCOPDなどの慢性疾患が勃興している国内のヘルスケアシステムを改善させる目的と考えられている。

公的ヘルスケア機関初!業界変革に参加、シンガポールで病院業界牽引のNUHS
2019年8月29日、National University Health System(NUHS)が公的なヘルスケア機関として初めてCompany Training Committees(CTCs)に参加することが発表された。
CTCsとは、将来に向けた労働環境の変化に対応するための、労働者および企業に対するイニシアティブである。2019年2月に発案され、労働組合と経営者が協働し、企業戦略を相互理解し、今後必要となるスキルの明確化を行い、テクノロジー導入によって効率化を図ることを目的としている。これは業界変革である「Industry 4.0」に対して労働者の変革により「Worker 4.0」になることを目指している。
テクノロジーの導入などにより医療業界の15,000人がさらなるスキルアップが必要とされており、今後は業界全体で取り組みが行われると考えられている。
出典: https://www.nuhs.edu.sg/sites/nuhs/NUHS%20Assets/News%20Documents/NUHS%20Corp/Media%20Releases/
2019/290819%20Healthcare%20Academy%20CTCs_final.pdf
シンガポールで病院業界大手のSingHealth、ゲノム医療センターを新たに設立
2019年10月11日、シンガポールにおける公的医療機関であるSingHealthは、SingHealth Duke-NUS Genomic Medicine Centre(SDGMC)を新たに開設したと発表した。SDGMCは、高度に専門化された遺伝子治療の場を提供し、すべてのSingHealth機関で遺伝子の研究と教育を促進し、遺伝子変異による疾患に苦しむ患者と家族のケアを推進することを究極の目的としている。
SingHealthの病院および施設に専門遺伝学クリニックを設置し、遺伝病または遺伝子関連疾患の疑いのある患者とその家族が、遺伝学者および遺伝カウンセラーによるカウンセリングを受けることができる。
SingHealth Duke-NUS Global Health Institute(SDGHI)はSingHealthとDuke-NUS Medical Schoolのジョイント組織であり、DukeUniversityと共同で医療の発展に取り組んでいる。
2018年 シンガポールの病院業界
シンガポールチームが報告!ウェラブルセンサーによるリスク予測の研究成果〜病院業界事情〜
2018年3月20日、シンガポールの研究チームは、ウェアラブルセンサーが個人の健康状態の追跡に有用であるだけでなく、生物医学研究をより強化し、心血管疾患および代謝性疾患を予測することもできることを報告した。
ウェアラブルデバイスが急速に消費者に浸透する中、SingHealth Duke- シンガポール国立大学・精密医療研究所(PRISM)とナショナル・ハート・センター (NHCS)の研究チームは、複数のウェアラブル技術を複合活用し233人を対象に臨床試験を行った。
心筋を常時モニタリングすることで、競技ランナーやサイクリストに見られる心筋が拡張した状態(良性)と悪性の心疾患を鑑別診断することに有用であることを発見した。これは悪性・良性を判別するためにウェアラブルデバイスが用いられた最初の研究となった。今後、ウェアラブルセンサーを用いて活動データを収集することで、様々なリスクファクターを究明することが可能であると期待されている。
シンガポールのNHG、医療関連研究などで教育機関と提携〜病院業界事情〜
2018年10月25日の発表によると、ナショナル・ヘルスケア・グループ(NHG)と南洋理工大学(NTU)は、臨床研究 (Clinical studies; CS)の発展と研究活動の基金をさらに広げるため、臨床医科学研究開発共同プログラムに関する覚書(MoU) を締結した。
現在同国で課題とされているのは、高齢化や治癒困難な慢性疾患の蔓延など。医学的知識を研究および臨床の現場において活用し、国民の健康状態の改善と予防医療の普及を目指す。
MoUでは、NHGとNTUがパートナーシップを組み、糖尿病や感染症、皮膚疾患、精神疾患、老人学、公衆衛生など多様な分野において臨床研究に携わる人材を育成することが焦点となっている。

シンガポールで病院業界牽引のチャンギ総合病院、心不全研究の成果
チャンギ総合病院(CGH)とPhilipsが共同で進めていた心不全患者に対する遠隔診療の1年間にわたる研究において、心不全関連の入院期間を67%短縮し、再入院費などの費用を42%削減、さらに治療の質が向上したことなどが成果として挙げられた。
心不全に関連する再入院の減少により、患者と病院双方のコスト削減につながっている。遠隔監視グループの心不全患者に対する心不全関連入院の請求額は、遠隔監視されていない患者と比較して2,514シンガポールドルも少なかった。
この試験的な取り組みは、シンガポール政府によって全国で開始された生体情報モニター(VSM)研究プロジェクト(遠隔的に患者の健康状態を測定するプロジェクト)の設計と開発に貢献する。試験的な導入後、CGHの入院患者は各家庭や地域社会に戻り、CGHからのケアを受けることができるよう全国VSMプロジェクトに参加する予定である。
シンガポールで病院業界牽引のヘルスウェイメディカル、12.5%の売上増加
ヘルスウェイ・メディカルグループの2018年の第2四半期の売上高は、昨年同期と比較すると2,550万シンガポールドル(SGD)から31.5百万SGD(12.5%)増加して2,860万SGDとなった。
成長の要因としては主にプライマリ・ヘルスケア(PHC)部門の170万SGD、専門ウェルネス・ヘルスケア部門の140万ドルの収益増加などが挙げられる。PHC部門とウェルネス部門の双方で2百万シンガポールドルの収益が記録された背景には、グループが2011年度に取得した診療所において収益が拡大したことが挙げられる。
昨年同期の2.5百万SGD損失と比較してすると、今期税引前利益は2万SGDの利益向上を達成している。
まとめ:シンガポールの病院業界
高齢化が進むシンガポールでは、今後も医療関連費の支出は増加するだろうと考えられます。このような環境の中で、病院業界は今後も多くのビジネスチャンスを見つけられるのではないでしょうか?