2025年のフィリピン証券市場は、割安なバリュエーションや外国人投資家の回帰、インフラ投資の加速を背景に大きな注目を集めています。本記事では、現地・日系・外資の主要証券会社の最新動向とともに、今後の市場成長予測や日本企業が直面する課題・ビジネスチャンスを徹底解説します。
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フィリピンの主要証券会社6選〜ローカル企業編〜
COL Financial Group
COL Financial Groupは1999年に設立されたフィリピン最大級のオンライン株式仲介企業であり、旧CitisecOnlineとして知られている。2008年にはフィリピン証券取引所(PSE)で株式取引量第1位のブローカーにランクされ、現在も業界をリードしている。2025年5月時点で、同社の発行済株式数は約59.5億株、市場資本総額は約94億ペソとなっている。直近の株価は1.57ペソで、過去52週間の高値は2.35ペソ、安値は1.49ペソで推移している。
同社の主力サービスはオンライン証券取引プラットフォームの提供であり、個人投資家向けに株式、投資信託、債券など多様な金融商品をワンストップで提供している。2023年には、投資信託販売プラットフォーム「COL Fund Source」の運用資産残高が前年比7.1%増の44.9億ペソに達し、顧客資産全体の約4.2%を占めた。また、マージン取引サービスや、資産運用会社COL Investment Management Inc.(CIMI)によるファンド運用も展開している。
直近の業績では、2025年3月末時点の年間売上高は約11.8億ペソ、純利益は5.01億ペソであり、純利益率は42.6%と高水準を維持している。ただし、過去5年間で収益成長率は年平均-0.2%、利益成長率は-1.7%とやや減速傾向にある。一方で、2024年度は前年同期比で純利益が30.4%増加するなど、直近では回復基調が見られる。自己資本利益率(ROE)は約20%と、同業他社と比較しても高い水準にある。
さらに、2024年にはManulife Investment Management Philippinesとの提携を発表し、顧客に対してグローバル市場やテーマ型ファンドなど多様な投資機会を提供するなど、商品ラインナップの拡充にも積極的である。このように、COL Financial Groupはフィリピンの個人投資家層の拡大と資産形成ニーズの高まりを背景に、オンライン証券業界のリーディングカンパニーとして市場で存在感を強めている。
出典: https://www.colfinancial.com/ape/final2/home/investor_relations.asp
First Metro Securities Brokerage Corporation
First Metro Securities Brokerage Corporation(FirstMetroSec)は、フィリピン大手銀行Metrobankグループの証券仲介部門であり、1994年の設立以来、個人および法人投資家向けに株式、債券、投資信託など多様な金融商品へのアクセスを提供している。親会社であるFirst Metro Investment CorporationとMetrobankの強固な財務基盤を背景に、フィリピン資本市場の発展に貢献してきた。特にオンライン取引プラットフォームの利便性と信頼性が高く評価されており、FirstMetroSec PROやFirstMetroSec GOといった先進的な取引ツールでは、チャート上から直接注文ができる「Trade from Charts」や、資産クラスごとのパフォーマンス推移を可視化する「Historical Portfolio View」など、投資家の利便性を高める機能が実装されている。
2023年末時点の総資産は約53億ペソで、現金及び現金同等物が約31億ペソ、短期投資が約2億ペソと、財務基盤も安定している。また、同社はフィリピン証券取引所に上場する全銘柄へのアクセスを提供するだけでなく、国内初のETFである「First Metro Philippine Equity Exchange Traded Fund(FMETF)」のマーケットメイカー兼認定参加者として、個人投資家に幅広い分散投資の機会を提供している。
投資信託やUITF(ユニット型投資信託)についても、「FundsMart」プラットフォームを通じて、ATRAM、BPI Wealth、FAMI、PEMI、SLAMCI、Manulifeなど国内大手運用会社の130本以上の商品をワンストップで提供している。これにより、低額からの分散投資や流動性の高い資産運用が可能となっている。
2020年には、オンライン取引手数料収入が前年比135%増、新規口座開設数も1万9,000件増加するなど、コロナ禍によるオンライン投資需要の高まりを追い風に大きく成長した。また、同年のFinanceAsia誌による「Best Broker in the Philippines」や、The Asset誌の「Top Sell-side Firm」など、国内外で多数のアワードを受賞し、業界内での評価も高い。
出典:https://www.firstmetrosec.com.ph/fmsec/
Abacus Securities Corporation
Abacus Securities Corporation(ASC)は1991年に設立され、1992年からフィリピン証券取引所(PSE)の会員として営業を開始した大手証券会社である。資本金は1998年末時点で4億ペソに増資され、国内証券会社の中でも有数の資本規模を誇る。ASCはプロフェッショナルな経営体制と強力なリサーチチームを持ち、リアルタイムの市場情報や投資アドバイザリーサービスを提供する点が強みである。ビノンド、セブ、ダバオに支店を展開し、国内の拡大する株式市場に対して全国ネットワークを活用したサービス体制を構築している。
同社は、ユーロマネーアワードフォーエクセレンスによる「フィリピンで最高の証券会社」や、フィリピン基金管理者協会の「ベストインリサーチ(中小企業の部)」など、国内外で高い評価を受けており、1998年・1999年には「Best Securities House in the Philippines」を受賞している。また、機関投資家向けの販売や決済、バックオフィス業務においても高い評価を獲得している。
近年はデジタル化にも注力しており、オンライン証券取引プラットフォーム「MyTrade PH」を運営し、個人投資家の利便性向上と投資層の拡大に貢献している。2023年12月期の財務報告によれば、Abacus Securities CorporationはFirst Abacus Financial Holdings Corporationの88%子会社であり、オルティガスのPSEセンターを本社とする。
出典: https://abacus-sec.com/
Regis Partners
Regis Partners(旧Deutsche Regis Partners)は、1999年にフィリピンの経営陣(51%)とドイツ銀行グループ(49%)の合弁企業として設立され、20年以上にわたりフィリピン証券取引所(PSE)を代表する大手証券仲介会社としての地位を確立してきた。2019年にドイツ銀行がグローバルで株式事業から撤退したことに伴い、経営陣が全株式を取得し、2020年8月には米国最大級の独立系投資銀行であるJefferies Financial Groupと独占的協力関係を締結した。この提携により、Regis PartnersはJefferiesのグローバルネットワークを通じて、フィリピン株式の調査レポートや仲介サービスを世界中の機関投資家に提供している。
Regis Partnersは、40社以上のPSE上場企業を対象に、コングロマリット、銀行、通信、電力・公益、不動産、消費財、小売、ゲーミング、産業など10を超える業種にわたるリサーチとアドバイザリーサービスを展開している。リサーチ部門は、フィリピン最大規模のアナリストチームを擁し、平均20年以上の業界経験を持つ専門家による高品質な調査を強みとする。また、Fund Managers Association of the Philippines(FMAP)から「Best in Equity Research」や「Best Equity House」など数々の賞を受賞し、Institutional InvestorやAsiamoneyなど国際的な金融誌からも高く評価されている。
さらに、Regis Partnersはフィリピン証券取引所の「Bell Award for Good Governance」も受賞しており、優れたコーポレートガバナンスとコンプライアンス体制を誇る。同社のサービスは主に機関投資家向けで、最低投資額は100万ペソと設定されている。本社はマカティのアヤラ・アベニューに所在し、グローバルなパートナーシップと現地密着型の専門性を融合させることで、国内外の投資家に最先端の証券サービスを提供し続けている。
出典: https://www.regis.ph/about-us
Philippine Equity Partners
Philippine Equity Partners, Inc.(PEP)は、2001年にバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(旧メリルリンチ)のフィリピン株式仲介事業を引き継ぐ形で設立された独立系証券会社である。設立以来、国内外の機関投資家を主要顧客とし、BofA Securitiesとの提携により、取引執行および共同ブランドによる株式リサーチを提供している。PEPはフィリピン証券取引所(PSE)の会員であり、売上高(取引額)で常に地元独立系証券会社の上位にランクされている。2022年には、フィリピン株式市場における取引額でトップブローカーの一つとして評価されている。従業員数は約31名、2024年の年間売上高は約500万ドルとなっている。
同社の本社はタギッグ市のPSEタワーに所在し、経験豊富な経営陣とリサーチチームが在籍している。PEPはカスタマーフォーカスと高い倫理基準を重視し、顧客ごとにカスタマイズされた証券仲介サービスを提供することを企業ビジョンとして掲げている。また、近年は投資銀行業務拡大のため、他の投資銀行グループとのジョイントベンチャー設立も検討されており、今後の事業領域拡大が注目されている。
さらに、PEPは2022年にフィンテック企業Seedboxへの600万ドルのプライベートエクイティ投資を実施するなど、資本市場の新たな分野にも積極的に参入している。このようにPhilippine Equity Partnersは、フィリピン資本市場において高い信頼と実績を持つ機関投資家向け証券会社として、今後も国内外の投資家に高品質なサービスを提供し続けるだろう。
出典:https://www.pep.com.ph/
https://www.pnb.com.ph/wp-content/uploads/docs/2020-AnnualReport.pdf
SB Equities
SB Equitiesは、フィリピンの大手メガバンクであるSecurity Bank Corporationが100%出資するSB Capital Investment Corporationの完全子会社であり、証券取引委員会(SEC)から証券ブローカー・ディーラーとして認可を受けている。マカティ市アヤラアベニューに本社を構え、フィリピン証券取引所(PSE)に上場する全銘柄の売買仲介を行っている。PSEの取引参加者の中でも一貫してトップ15にランクインしており、業界内外の表彰やアワードを多数受賞している点が特徴だ。
同社は、プロフェッショナルな株式仲介サービスを個人・法人双方の顧客に提供し、完全電子化されたバックオフィスシステムと経験豊富なスタッフによる高品質なサポート体制を構築している。親会社のSecurity Bankは、2024年に純利益112億ペソ(前年比23%増)、総収入549億ペソ(同28%増)と過去最高益を記録し、グループ全体の財務基盤も極めて安定している。また、Security Bankは日本の三菱UFJ銀行(MUFG)と2016年から戦略的パートナーシップを構築しており、MUFGの法人顧客に対してキャッシュマネジメントサービス「DigiBanker」などの先進的な金融ソリューションを共同で提供している。
さらに、SB Equitiesの親会社であるSB Capital Investment Corporationは、IPOやグリーンボンド、REITなどの資本市場取引、M&Aやファイナンシャルアドバイザリーなど幅広い投資銀行業務でも高い実績を持ち、2022年には複数の国際的な金融アワードを受賞している。このように、SB EquitiesはSecurity Bankグループの金融ノウハウとネットワークを活かし、フィリピン資本市場でトップクラスの証券仲介サービスを展開し続けている。
出典: https://www.securitybank.com/subsidiaries/sb-equities-inc/
フィリピンの主要証券会社2選〜日系企業編〜
野村證券グループ
野村證券グループは、フィリピン市場において現地最大手銀行BDOユニバンク(BDO Unibank)と合弁で「BDO Nomura Securities」を設立し、現地証券ビジネスを展開している。2015年に両社は提携を発表し、BDOが51%、野村が49%を出資する形でマカティ市に新会社を設立した。資本金は約2億5,400万ペソ(約7億円)で、主に個人投資家向けにオンライン株式取引サービスを提供している。
BDO Nomura Securitiesは、BDOの広範な顧客基盤と野村のグローバルな金融ノウハウを融合し、現地のBDOオンライン口座保有者が最短5分で証券取引口座を開設できる利便性を実現している。当初はフィリピン株式市場を対象としたオンライン取引に注力し、今後はクロスボーダー投資機会の提供や、個人・機関投資家向けのサービス拡充も計画されている。
この合弁事業は、フィリピン資本市場の成長に貢献することを目的としており、野村グループにとってはアジア地域におけるリテール・ホールセール両ビジネスのシナジー強化と、現地プレゼンスの拡大を目指す戦略的な取り組みである。また、BDO Nomuraの設立により、フィリピンの個人投資家層の拡大と証券取引のデジタル化が加速している。
出典: https://www.smfg.co.jp/gr2020/
https://www.nomuraholdings.com/news/nr/holdings/20150629/20150629.pdf
大和証券グループ
大和証券グループは、1995年にフィリピン政府系銀行であるフィリピン開発銀行(DBP)と合弁で「DBP-Daiwa Capital Markets Philippines, Inc.(DBP大和)」を設立し、長年にわたりフィリピン証券取引所(PSE)の有力会員として主に機関投資家向けの株式仲介業務を展開してきた。しかし、2024年にはフィリピン事業の再構築を進める一環として、DBP大和の解散および清算を決定し、今後はオンライン証券最大手のCOLフィナンシャルグループ(COL)との連携を強化する方針を明確にしている。
大和証券グループは2017年にCOLの株式を約14.6%取得し、2023年には追加出資によって持分法適用会社とした。これにより、フィリピン市場におけるエクイティ仲介やリサーチ分野での協業を一層強化し、急成長するフィリピン経済の成長機会を効果的に取り込む体制を整えている。COLはフィリピン個人投資家向けオンライン証券のリーディングカンパニーであり、今後は大和証券グループのグローバルな金融ノウハウや商品プラットフォームを活用したサービス拡充も期待されている。
なお、DBP大和の解散後も、フィリピン開発銀行やユーチェンコグループなど現地パートナーとのネットワークを活用し、フィリピン資本市場へのコミットメントを維持していく方針である。また、フィリピン政府が進めるインフラ銀行設立構想に対しても協力を表明しており、現地経済の発展を支援する姿勢を強調している。
出典: https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP443253_R20C17A4000000/
フィリピンの主要証券会社6選〜外資企業編〜
J.P. Morgan Securities Philippines
J.P. Morgan Securities Philippines, Inc.(JPMSPI)は、米国最大手金融グループであるJ.P.モルガン・チェースの現地法人であり、フィリピン証券取引委員会(SEC)に登録された証券ブローカーディーラー、並びにフィリピン証券取引所(PSE)の取引参加者である。JPMSPIは主にフィリピン企業の株式売買を手掛け、国内外の機関投資家に対してエクイティ取引執行および株式調査サービスを提供している。
2023年12月末時点の総資産は約16億2,500万ペソ、純資産は約13億2,500万ペソ、年間純利益は7,205万ペソを計上している。2023年の年間手数料収入は3億580万ペソで、営業利益率も高い水準を維持している。本社はタギッグ市ボニファシオ・グローバルシティのJPモルガン・チェース・タワーに所在し、現地従業員数は10名とコンパクトな体制で運営されている。
JPMSPIはグループ全体のグローバルネットワークとリサーチ力を活かし、フィリピン株式市場に関する高度なリサーチや業界分析を提供している。2024年には、AIを活用した請求書照合サービスをフィリピンで展開するなど、デジタル決済分野でも先進的なサービスを導入している。また、フィリピン開発銀行(DBP)によるグローバル債券発行や国債市場の案件でも主幹事を務め、資本市場取引における存在感を高めている。
さらに、JPモルガン・チェースは1961年の進出以来、現地で2万人以上の従業員を擁するシェアードサービスセンターを運営し、グローバル業務の中核拠点としてもフィリピンを位置付けている。2024年6月末時点でのグループ総資産は約4.1兆ドル、株主資本は3,410億ドルと、世界有数の金融グループの一角を占めている。
出典: https://www.jpmorgan.com/PH/en/about-us
UBS Securities Philippines, Inc.
UBS(ユービーエス)はスイス最大手の金融グループであり、フィリピン資本市場においても圧倒的な存在感を示している。1996年の現地参入以来、UBSはUBSセキュリティーズフィリピン(UBS Securities Philippines)およびUBSインベストメンツフィリピン(UBS Investments Philippines)の2つのライセンス法人を通じて、証券仲介・投資銀行業務を展開している。2024年末時点でフィリピン証券取引所(PSE)における株式取引シェアは10.55%と、3年連続で首位を維持しており、国内最大規模の証券会社の地位を確立している。
UBSは、証券仲介だけでなく、投資銀行業務でもフィリピン最大級の実績を誇り、過去20年で160件超、総額約400億米ドルに及ぶ大型案件を主導してきた。特にMonde NissinやConverge ICTといったフィリピン史上最大級のIPO案件では、グローバルコーディネーターを務め、国内外の機関投資家から高い信頼を得ている。また、2024年にはユーロマネー誌から「フィリピン・ベスト投資銀行」に選出されるなど、国際的な評価も非常に高い。
なお、2024年12月にはUBS AG本体のマニラ駐在員事務所を閉鎖したが、証券・投資銀行業務を担う2法人は引き続き現地で活動を継続している。この戦略的再編はグローバルな事業効率化の一環であり、フィリピン市場へのコミットメントは変わらないとUBSは強調している。
グローバルでは2024年、クレディ・スイスの統合を完了し、世界最大級のウェルスマネジメントバンクとしての地位をさらに強化。フィリピンでも資本市場、M&A、クロスボーダー取引、富裕層向けプライベートバンキングなど多岐にわたるサービスを展開し、東南アジア全体の成長セクターやデジタルインフラ投資にも積極的に関与している。
出典: https://www.ubs.com/ph/en.html
Credit Suisse Securities
Credit Suisse Securities(フィリピン)は、スイスの大手金融機関クレディ・スイスが展開してきた現地法人であり、主に機関投資家向けに株式仲介、リサーチ、投資銀行サービスを提供してきた。2023年時点でフィリピン証券取引所(PSE)における取引シェアは約2.1%、取扱高は約235億ペソで、PSEの証券会社ランキングでは18位に位置していた。近年ではMonde NissinやDel Monte Philippinesといった大型IPO案件で株式売却の主幹事や共同ブックランナーを務め、現地の資本市場において重要な役割を果たしてきた。
クレディ・スイスは2023年、UBSとのグローバル統合方針を受けて、フィリピンにおける証券仲介事業の段階的な終了を決定し、2024年1月末をもって現地法人Credit Suisse Securities (Philippines) Inc.の取引業務を停止した。これに伴い、証券取引委員会(SEC)やPSEなど関係当局に対し、ブローカーディーラー登録の取り下げと営業停止の申請を行った。ただし、現地経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)計画が進行中であり、承認が得られれば新ブランドでの証券仲介業務継続が見込まれている。
財務面では、2023年12月末時点の総資産は約11.7億ペソで、同年の収益は1.5億ペソと前年の約4.4億ペソから大幅減収となり、最終損益は約8,943万ペソの赤字に転落した。これは主にグローバル統合に伴う事業縮小と、証券取引収入の減少が影響している。
出典: https://www.credit-suisse.com/about-us/en/
Macquarie Capital Securities (Philippines), Inc.
Macquarie Capital Securitiesは、オーストラリア最大の投資銀行であるMacquarie Groupのフィリピン現地法人で、1990年に設立された。フィリピン証券取引所(PSE)の会員として証券仲介や取引業務を展開し、約5%の市場シェアを有している。Macquarie Group全体では、2021年3月期に営業純利益が69億オーストラリアドルに達し、前年から増益を記録している。
Macquarie Capitalは、フィリピンにおいても長年にわたりインフラ、エネルギー、デジタルインフラ分野への投資を積極的に行っている。2024年9月には、PhilTower Consortium Inc.とMiescor Infrastructure Development Corporationの合併によってフィリピン最大級の独立系通信タワー会社が誕生し、Macquarie Capitalは主要株主としてこの成長を支えている。新会社は3,300基以上の運用中タワーと2,100基超の建設予定タワーを保有し、Globe、Smart、Ditoといった主要モバイルネットワーク事業者にサービスを提供している。
また、Macquarieのアジア株式リサーチチームは、Refinitiv StarMine Analyst Awards 2020で12部門の賞を獲得するなど高い評価を受けており、フィリピン企業の国際的な投資家への紹介に注力している。2021年には大手食品メーカーMonde NissinのIPOに機関投資家として大きく関与し、フィリピン資本市場におけるプレゼンスを強化している。
Macquarie Groupはフィリピンで20年以上にわたり事業を展開し、M&A、パブリックプライベートパートナーシップ(PPP)アドバイザリー、資産運用、グローバルサポート機能を含む多岐にわたるサービスを提供している。2025年にはASEAN地域の株式市場においてフィリピンを有望視し、現地経済のデジタル化と成長機会を積極的に支援している。
出典:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/disclosure/pdf/data20d_all.pdf
Maybank ATR Kim Eng Securities, Inc.
Maybank ATR Kim Eng Securities, Inc.(現Maybank Securities, Inc.)は、マレーシア最大手金融グループMaybankの証券部門として1960年に設立され、フィリピン市場では約4%のシェアを有する大手証券会社である。Maybankは2024年12月期に純利益100.9億リンギット(約3,300億円)、総資産1兆800億リンギットと過去最高水準を記録し、グループ全体の財務基盤は極めて強固である。
Maybank ATR Kim Eng Securitiesは、株式仲介、投資銀行、資産運用、リサーチ、オンライン証券取引「Maybank Trade」など幅広いサービスを展開している。フィリピン証券取引所(PSE)で常にトップ10入りし、2022~2024年もAlpha Southeast Asia誌「Best Institutional Broker」や「Best Retail Broker」など数々の受賞歴を持つ。また、Converge ICTやMonde Nissinといった大型IPO案件で主幹事や参加引受会社を務め、国内外機関投資家の資金調達ニーズに応えている。
同社は、マニラ本社のほかセブ、ダバオにも拠点を持ち、リテール・機関投資家向けの営業体制を強化している。2024年にはオンライン取引サービスの拡充やデジタル化推進を加速し、国内リテール投資家層の拡大に貢献している。MaybankグループのASEANネットワークを活かし、クロスボーダー取引や国際的な資本市場案件にも積極的に関与している点が特筆される。
出典: https://www.maybank.com/en/investor-relations/reporting-events/reports/annual-reports.page
CLSA Philippines, Inc.
CLSA Philippines, Inc.は、アジア最大級の証券・投資銀行グループであるCLSA(CITIC CLSA)のフィリピン現地法人であり、1997年に設立された。親会社はオランダ法人CLSA B.V.で、最終親会社は中国最大手の投資銀行CITIC証券である。本社はマカティ市アヤラ・ガーデンズ・タワー2に所在し、2023年末時点で従業員数は30名となっている。
CLSA Philippinesは、フィリピン証券取引所(PSE)の会員として、国内外の機関投資家に対し株式仲介、リサーチ、企業金融、資本市場業務、資産運用サービスを展開している。特にエクイティリサーチとトレーディング分野で高い評価を受けており、アジア全域の証券取引所で取引資格を持つ唯一の証券会社として、グローバルなネットワークと中国本土へのアクセスを強みとする。
財務面では、2023年の売上高(コミッション収入)は約4億1,600万ペソ、純利益は約4,344万ペソであり、前年の赤字から黒字転換を果たした。総資産は約10億ペソ、自己資本は約5億1,000万ペソと、安定した財務基盤を維持している。
近年は、Monde NissinやConverge ICTなどフィリピンを代表する大型IPO案件や資本市場取引において主幹事や共同主幹事を務め、国内外の機関投資家の資金調達や投資機会拡大に大きく貢献している。また、2025年にはDigiPlus(PLUS)の株価目標を大幅に引き上げるなど、現地企業の成長性を積極的にリサーチ・発信し、投資家からの信頼も厚い。
CLSAグループ全体としては、アジア14都市を含む世界20都市で事業を展開し、過去10年間で4,380件・2,160億米ドル超の資本市場取引実績を持つ。今後もアジア市場に特化したリサーチ力とネットワークを活かし、フィリピン資本市場の発展とグローバルな資本流動の橋渡し役を担い続ける方針である。
出典: https://www.clsa.com/global-2/asia/

マニラ在住5年目の日本人。法政大学経済学部卒業後、2010年4月よりWeb業界を目指す社会人向けのスクールのインストラクターとして主にコーディングソフトや画像編集ソフトの授業を担当。2015年より海外での生活とキャリア形成を目的に、青年海外協力隊に参加。

