今回は、タイの主要水道企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて11社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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タイの主要水道企業7選〜ローカル企業編〜
Metropolitan Waterworks Authority (メトロポリタン・ウォーターワークス・オーソリティ)
1914年に当時の国王ラマ6世により設立された、タイ内務省管轄の首都圏水道公社。バンコク都およびノンタブリー県、サムットプラカーン県の周辺2県における水道事業を運営する。同都県に18の事業所が存在し、5,000人以上の従業員が在籍している。
バンコク中央部のチャオプラヤ川および西部のメークロン川の水を調達、4か所の浄水場で処理し、各消費者に水道水を配給している。2019年の水道水生産量は2,075百万立方メートルであった。水道料金の支払いはカウンターや銀行振込だけでなく、モバイルアプリケーションや各銀行のインターネットバンキングで行うことも可能。
2019年の売上高は前年比4.2%増の20,013百万バーツで、純利益は前年比6.9%減の7,003百万バーツであった(2020年のデータなし)。売上高増加の要因は水道契約数が242万件と前年より4万件増えたことや、外国人観光客の増加や、ショッピングモールやホテルを訪れた消費者の増加により、1件当たりの水道使用量が増加したことがあるとしている。
出典:https://www.mwa.co.th/ewtadmin/ewt/mwa_internet_eng/main.php?filename=index
Provincial Waterworks Authority (プロビンシャル・ウォーターワークス・オーソリティ)
1,979年に公共事業局(DOPW)と保険証(DOH)の地方部局を引き継いで設立された、タイ内務省管轄の地方水道公社。
MWAの給水区域を除く74県で浄水場事業を行う。全国各地に10の地方部局と233か所の上水道施設が存在し、7,000人以上の従業員が在籍している。各地で原水の調達、水処理、水道水の配給を行っている。
2017年時点で、水利用者は 428 万人、水道水の生産能力は年間1,232百万立方メートルであった。WMAではPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)を行わないのに対し、PWAは財政面の負担を減らすためにPPPを積極的に推進している。
水道料金の設定はMWAと同じく従量課金制であるが、MWAの家庭向けが1立方メートル8.5バーツからに対し、PWAは1立方メートル10.2バーツからとMWAよりは高い値段設定になっている。
2020年の売上高は前年比4.0%減の26,650百万バーツで、純利益は前年比69%減の1,390百万バーツであった。
出典:https://en.pwa.co.th/
Wastewater Management Authority (ウェストウォーター・マネジメント・オーソリティ)
タイ内務省管轄の下水道公社。1999 年に地方分権法が制定され、中央政府から地方自治体に下水道事業実施に関する権限が移譲されて以降は地方自治体が事業主体となっている。
地方自治体の下水道事業を支援するとともに、自治体の依頼を受けてバンコクを除く全国26か所の下水処理場の運営管理を行っている。王室令により、下水管理戦略の計画・開発・確立や、下水処理能力向上といった目的が定められている。
また、天然資源環境省の基準により、2017年から2021年にかけて計3億2,950万立方メートルの下水を処理する計画となっている。現在、自治体管理の処理場が26、王室管理の処理場が8、小規模処理場が12存在している。職員数は2017年時点で128人であった。
2017年の売上高は前年比21%減の278百万バーツで、純利益は8百万バーツの赤字であった(2018年以降のデータなし)。
出典:https://wma.go.th/home-en
TTW Public Company Limited – (タイ・タップ・ウォーター)
2000年にThai Tap Water Supply Co., Ltd.として創業したローカル企業。バンコク西郊のナコンパトム周辺およびサムットサコーン周辺にて水道水を生産し、PWAに配給している。
1日当たりの水道水供給能力は最大54万立方メートルである。また、グループ会社PTW (Pathum Thani Water Co., Ltd.)にてバンコク北郊のパトゥムタニ県への水道水配給を行っている他、Thai Water Operations Co., Ltd.にてTTW、PTWとその他工業団地数か所の水処理施設の運用・保守を行っている。他事業への展開として、CK Power PCLへ出資することで発電事業へも進出している。
2002年より大手建設会社のCH. Karnchang PCL.の傘下となり、2006年よりタイ証券取引所SETに上場している。また、日系大手商社の三井物産グループMitsui Water Holdings (Thailand) Co., Ltd.の出資を受けている。
2020年の売上高は前年比0.4%増の6,193百万バーツで、純利益は前年比5.6%減の2,951百万バーツであった。
出典:https://www.ttwplc.com/en/home
Eastern Water Resources Development and Management PCL. (イースタン・ウォーター・リソーシズ・ディベロップメント)
1992年にPWAの100%子会社として設立。1997年よりタイ証券取引所SETに上場している。主に東部経済回廊(EEC)へ原水、水道水、精製水、純水、水のリユース・リサイクルシステムなど様々な種類の水を供給する。
そのため、オフィスや生産拠点はバンコクの本社以外では東部チョンブリ、チャチュンサオ、ラヨーンに存在する。East Water社は主に同地域の河川や湖からの原水の供給を行い、水道水の生産、配給やその他の事業はグループ会社のUU社(Universal Utilities PCL.)にて行っている。
UU社の1日当たりの水道水供給能力は最大40万立方メートルであり、21万人の国民の水道水供給を担っている。維持管理している水道管の長さは2,400キロメートルにも及ぶ。
2020年の売上高は前年比10%減の4,248百万バーツで、純利益は前年比27%減の764百万バーツであった。
出典:https://www.eastwater.com/en
WHA Utilities and Power PCL. (ダブリューエイチエー・ユーティリティズ・アンド・パワー)
2008年に、工業団地開発・運営企業のWHA Industrial Development PCL.の子会社として設立された。2017年よりタイ証券取引所SETに上場している。
工業団地において原水の調達・配給、純水など工業用水の製造・配給、下水処理を行っている。取り扱っている工業団地はタイ国内では10か所、ベトナムに1か所存在する。タイ国内の工業団地では主に同社が99.99%のシェアを持つWHA Water Co., Ltd.が実際のサービスを行っている。
1日当たりの水道水供給能力は最大で約35万立方メートル、下水処理能力は最大約12万立方メートルである。また、同じく99.99%のシェアを持つグループ会社のWHA Energy Co., Ltd.で従来型の化石燃料や再生エネルギーを用いた発電事業を国内外で行っている。
2020年の売上高は前年比11%減の1,778百万バーツで、純利益は前年比62%減の813百万バーツであった。
出典:https://www.wha-up.com/en/home
Wiik Water Co., Ltd. (ウィーク・ウォーター)
1988年に創業したローカル企業。公私、規模の大小問わず住宅、商業施設、工業団地などを対象に水の精製、排水処理といった水処理システム全般の導入・コンサルティングを行う。
建設プロジェクトにおいては、BOO(建設・運営・所有)、BOT(建設・運営・移転)、BOOT(建設・所有・運営・移転)など様々な形式に対応可能である。具体的なプロジェクトとしては、東部サラブリ県のCP明治の水処理システム運営、東部ウェルグロー工業団地のEPC(設計・調達・建設)、東部サイアムイースタン工業団地のBOOTなどの実績がある。
2020年の売上高は前年比46%増の231百万バーツで、純利益は前年比7.6倍の15百万バーツであった。1995年より、ポリエチレン水道管製造・導入を手掛けるWiik PCL.(タイ証券取引所SET上場企業)の傘下となっている。
出典:https://www.wiikwater.com/
タイの主要水道企業2選〜日系企業編〜
Mitsui Water Holdings (Thailand) Ltd. (ミツイ・ウォーター・ホールディングス・タイランド)
日本の大手総合商社、三井物産のグループ会社。持ち株会社として水道インフラ事業へ投資を行う。タイでは2006年よりTTW Public Company Limitedへ出資をしており、同社の26%のシェアを持つ筆頭株主となっている。
2007年にTTW社がPTW社(Pathum Thani Water Co., Ltd.)を買収した際にも関わった。2020年の売上高は前年とほぼ同等の621百万バーツで、純利益は前年比0.8%増の599百万バーツであった。
三井物産は1980年より水インフラへの投資を進めてきており、世界中の水問題の解決に取り組んできた。タイ以外でも2008年にメキシコで最大手のエンジニアリング会社アトラテック社を買収し、2010年にはシンガポールのハイフラックス社と共同で中国において上下水事業を展開することに合意した。
出典:https://www.mitsui.com/jp/en/company/outline/relations/unit/index.html
Sumitomo Electric (Thailand) Ltd. (スミトモ・エレクトリック・タイランド)
日本の大手素材・機械メーカー、住友電工のタイ拠点。タイ拠点は1989年に設立された。同社の日本や中国、アメリカなど世界中の拠点で製造した製品をタイおよびミャンマー、ラオスなどの周辺国の顧客に販売している。顧客は自動車、家電、通信業界が多い。
水処理分野では、膜分離活性汚泥法と呼ばれる下水・工場排水処理方法に適したポアフロン®という新材料を開発し、世界各国の工場で導入を進めている。タイでも高級デニム素材の大手メーカーであるカイハラ社のタイ工場の排水処理装置に採用され、すでに稼働している。
従来はモジュールの形態での販売であったが、今後は膜モジュールを組み込んだ装置システム形態での販売を強化していくとしている。
2020年の売上高は前年比29%減の1,193百万バーツで、純利益は前年比20%減の52百万バーツであった。
出典:https://setl.co.th/en/home
タイの主要水道企業2選〜外資系企業編〜
SUEZ Water Technologies & Solutions (Thailand) Co., Ltd. (スエズ・ウォーター・テクノロジーズ・アンド・ソリューションズ・タイランド)
1995年にアメリカのGE Water & Process Technologiesのタイ拠点として設立。2017年にフランスのSuezグループが同社を買収したことにより現在の社名となった。合併により同社の従業員は世界で7,500人となり、技術・ノウハウのさらなる向上が期待されている。
タイではバンコクと東部ラヨーンの2か所にオフィスが存在する。水に関する設備の導入・管理事業を行い、水使用量の最適化、産業用水処理、再生水利用などを進めている。
Suezグループは全世界で水道や電気などのインフラ事業を展開している。全世界で9万人以上の従業員を抱え、顧客数は45万人にのぼる。研究開発への投資は年120万ユーロに達し、環境への投資も積極的に行っている。
アジア地域のプラスチック汚染問題の解決に取り組むため、2020年にはタイでプラスチックリサイクル工場の稼働を開始した。
2020年の売上高は前年比0.7%減の802百万バーツで、純利益は前年比37%増の27百万バーツであった。
出典: https://www.suezwatertechnologies.com/
Korea Water Resources Corporation (コリア・ウォーター・リソーシズ・コーポレーション)
1967年に韓国にて韓国水資源公社として設立。タイではタイ政府と共同で開発費3,500億バーツのチャオプラヤ川流域の開発プロジェクトに参画した。
チャオプラヤ川は同社が韓国で手掛けた4つの河川と共通する点が多くあり、開発経験が活かせるとしている。雨期には反乱を防ぎ、乾季には水量を保つ河川の開発を進めている。
同社は韓国において、原水調達、都市圏および地方水道施設の建設・運用・保守、工業団地や産業特区の開発、再生可能エネルギー施設の建設・運用・保守を行う。
水道インフラやエネルギー施設の開発では海外への展開も積極的に行っており、2014年にはフィリピン、2015年にはジョージアにて水力発電施設の建設プロジェクトに合意した。
出典: https://www.kwater.or.kr/eng/main.do
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。