今回は、タイの主要鉄道・バス会社に焦点を当て、ローカル7社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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タイの主要鉄道・バス企業7選〜ローカル企業編〜
State Railway of Thailand(ステート・レイルウェイ・オブ・タイランド)
1890年の国王ラマ5世の時代に、バンコク~東部ナコンラチャシマ間の路線の建設から設立されたタイ国鉄。それ以前は河川や運河といった水上交通を除き、陸上の交通は牛や水牛、象などの動物を使った運送に頼っている状況であった。また当時、イギリスとフランスがインドシナ地域で植民地を拡大しており、首都と国境付近の連携を深め領土を維持するために鉄道の建設が重要であった。1896年にバンコク~中部アユタヤ間の71kmから開業し、1900年にバンコク~東部ナコンラチャシマ間の265kmが完成した。
現在ではタイ全国の47都県に5路線、4346kmの距離を運行し、300以上の駅が存在する。隣国のマレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマーとも国境で接続する。
現在、国鉄始発駅のフアランポーン駅から、バンコク北部のチャトゥチャック地区に完成したバンスー中央駅へ機能の移転が計画されている。また、同駅を通りバンコク北部のパトゥムタニ県からバンコク南部のサムットサコーン県までを繋ぐ「ダークレッドライン」および、バンコク西部のナコンパトム県からバンコク東部地域までの「ライトレッドライン」の建設が進行中である。ダークレッドラインは2021年中の無料試運転が開始される予定である。さらにはバンコク北部ドンムアン空港、スワンナプーム空港、東部ラヨーン県のウタパオ空港の3空港を繋ぐ高速鉄道の計画も存在する。
また、2010年に開業した、バンコク中心部とスワンナプーム国際空港を結ぶエアポートレイルリンク(ARL)の運営も行う。同路線は計28.6km、8駅が存在。最高速度時速160kmまで出せるスペックを持つ。バンコクの高架鉄道BTSと地下鉄のMRTとも接続し、利便性も高い。
出典:https://www.railway.co.th/Home/Index
Mass Rapid Transit Authority of Thailand (マス・ラピッド・トランジット・オーソリティ・オブ・タイランド)
1972年に、バンコクとその近郊における交通問題に対応するため、高速道路と大量輸送システム(MRT: Mass Rapid Transit)の開発を目的として前身の高速道路・高速度交通公社(Expressway and Rapid Transit Authority of Thailand)が設立された。2000年に、MRTの需要の高まりから、同システムの開発をより機能的かつ効率的に推進するためにタイ高速度交通公社(MRTA: Mass Rapid Transit Authority of Thailand)となった。現在、MRTAはMRTの路線の建設および施設の保有を担当する。同線の運営は民間会社のBEM(Bangkok Expressway and Metro PCL.)が行う。
2020年の売上高は前年比20%増の14,593百万バーツ、純利益は前年比22%増の1,426百万バーツであった。
MRTは2004年にブルーライン(チャルーム・ラチャモンコン線)、2016年にパープルライン(チャローン・ラチャタム線)が開業。2019年のブルーライン延伸を経て、現在はこの2路線で計68kmに54駅が存在する。また、開発・建設中の路線も3路線存在する。中部ノンタブリ県庁前からバンコク東部ミンブリまでの全長34.5km、30駅からなるピンクライン、およびバンコク北部ラップラオ中部からサムトプラカン県サムロン間の30.4km、25駅からなるイエローラインが2021年開通予定である。さらにタイ文化センターを通りバンコクを東西に横断する全長39.6km、30駅からなるオレンジラインが2023年開通予定である。
出典:https://www.mrta.co.th/en/
Bangkok Expressway and Metro PCL. (バンコク・エクスプレスウェイ・アンド・メトロ)
2015年にバンコク高速道路社(BECL)がバンコクメトロ社(BMCL)を吸収合併したことにより設立。タイの大手建設会社、CH. Karnchang PCL.が31%のシェアを所有する筆頭株主である。2016年よりタイ証券取引所SET上場。MRTAがMRTの路線の建設および施設の保有を担当するのに対し、BEMは現在2路線あるMRTの運営を行う。
MRTの運賃は初乗り17バーツからで、最長距離で70バーツとなる。乗客は片道分のトークンを購入するか、カードに運賃をチャージして乗車する。カードへのチャージは券売機の他、アプリケーションを通じてキャッシュレスで行うこともできる。また、回数券やパークアンドライド用の乗車カードも存在する。
2020年の売上高は前年比29%減の14,316百万バーツ、純利益は前年比62%減の2,051百万バーツであった。
BEMは首都圏の高速道路の運営も行っている。現在、バンコク中心部を縦横に横断する38.5kmのSi Rat高速道路、バンコク西部にて東西に走る16.7kmのSi Rat外環道、バンコク北部から北へ中部アユタヤ県バンパインまで続く32kmのUdon Ratthaya高速道路の3つを管理する。高速道路の安全性を守るための24時間のロードサービス、CCTV、非常電話などの導入・運営を行うほか、日本のETCに当たるEasy Passの管理も担当する。
他にも、子会社のバンコク・メトロ・ネットワークス社(BMN)を通じて駅での広告サービスや、ブルーラインの駅およびパークアンドライド施設での商業用スペースのリースといった事業も行う。
出典:https://www.bemplc.co.th/
BTS Group Holdings PCL. (ビーティーエス・グループ・ホールディングス)
1968年にTanayong Co., Ltd.として創業した。1991年よりタイ証券取引所SET上場。2010年に合併を経て現在の社名となった。バンコクの高架鉄道システムBTSの所有・運営を行う。
1999年にライトグリーンライン(スクムウィット線)の17kmとダークグリーンライン(シーロム線)の6.5km、計23.5km、24駅の路線で開業した。現在、2路線は数回の延伸を経て、スクムウィット線がバンコク北郊パトゥムタニ県からバンコク南郊サムットプラカーン県を結ぶ53km、シーロム線が15kmの計68km、60駅からなる路線となっている。また、2020年にはチャオプラヤ川沿いにゴールドラインの名称で1.8km、3駅からなる路線が開業した。さらに現在建設中のモノレール、ピンクラインとイエローラインのプロジェクトにもの子会社を通じて関わっている。
BTS運営以外にも駅での広告サービス、ラビット・ラインペイ(乗車カード「ラビットカード」とモバイルアプリケーションのLINEの連携)を用いたペイメントサービス、宅配Kerryへの出資を通じた物流サービスなどにも事業を展開する。その他にもMatchビジネスと称して新規事業や他分野の企業とのシナジー効果を狙った提携も進めている。具体的なプロジェクトとしてはインフラでの経験を活かした土地への投資や不動産開発、またレストラン事業などがある。
2020年の売上高は前年比20%減の38,681百万バーツ、純利益は前年比184%増の8,162百万バーツであった。
出典:https://www.btsgroup.co.th/en/home
Bangkok Mass Transit Authority (バンコク・マス・トランジット・オーソリティ)
1976年にバンコク大量輸送公社(BMTA: Bangkok Mass Transit Authority)として設立された。タイでのバスサービスの歴史は1907年にまで遡る。当初は馬車から始まり、後に3輪の自動車となった。1933年には交通の発展により、バスはバンコクにおいて身近な存在となった。その後も都市の発展と人口の増加に伴いバスサービスは拡大を続けた。しかし、参入するバス会社も増えてバス路線の数と距離が複雑化したことにより渋滞が悪化し、次第に望ましくない状況になっていった。さらに1973年から1975年にかけての高いインフレ率により事業に打撃を受けたバス業者が運賃の値上げ要求を始めたことをきっかけに、国がバス事業を引き継ぐこととなり同社の設立に至った。現在ではバンコクおよびノンタブリやサムットプラカーンなど近郊の県でバス、大型バス、マイクロバス、バンなど様々な種類の車両を用いたバスサービスを行う。
運営するバスはBMTA所有のバスおよび民間と共同所有のバスが存在する。2020年11月時点で、合計で8,914台のバスを所有している。BMTA所有はうち3,005台で、うち通常バスが1,520台、エアコンバスが1,368台など。民間との共同所有は5,909台で、うちバンが2,836台、ソイと呼ばれる小道を走るシャトルが1,936台などで構成される。
通常のバスは窓がなくエアコンもない旧式のバスで、老朽化や排気ガスによる環境への影響が指摘されている。このバスの運賃は乗車距離によらず8バーツと非常に安いことが特徴である。エアコン付きのバスは路線によって異なるが、初乗り12~15バーツで、距離により運賃が変動する。
出典:http://www.bmta.co.th/en/home
The Transport Co., Ltd. (ザ・トランスポート)
1930年にAerial Transport of Siam Co., Ltd.として創業。当初は民間の航空会社のパイオニアとして、またバンコク-中部ロッブリ間、バンコク-東部プラチンブリ間の陸上交通を提供する業者として事業を行っていた。1938年に現在の社名となり、1947年に政府により航空事業が分離した。1950年代の後半ごろ、より多くの乗客を得るためにバス業者の速度違反が横行し、多数の交通事故が発生する状況であった。これを重く見た政府は公共交通機関の規制と再編成を進める一環で、1959年にThe Transport社のみに対し25の県での事業を許可し、サービスの質を向上させるために民間バス会社を取りまとめる役割を与えた。現在でもタイ政府が99.69%のシェアを所有する国有企業となっている。
現在では主に大型バスを用いてバンコクから地方および地方都市間の長距離バスを運航している。また、ラオス線が12路線、カンボジア線が2路線と、近隣国との国際路線も取り扱っている。さらにはミャンマーやベトナムなどへも路線を拡大しようとしている。
同社が所有するバスは計12,933台存在する。うち683台は自社所有、12,250台は提携バスである。拠点は認可されたバスターミナル7か所と、事業所やサービスセンターなど96か所が存在する。
出典:http://home.transport.co.th/index.php/th/home1.html?view=featured
Nakhonchai Air Co., Ltd. (ナコンチャイ・エアー)
1986年に創業した民間のバス会社。当初はバンコク-東北部コンケン間、バンコク-東北部ウボンラチャタニ間の2路線と20台のバスから事業を開始した。現在はバンコク-地方都市間の29路線、地方都市同士が12路線存在している。所有するバスはグレードやサイズに応じて9種類が存在する。無事故ドライバーキャンペーンや、運航中の車両の不具合でサービスが中止された場合に乗客に運賃が返金される保険サービス、女性専用シートなど、乗客の安全や利便性に配慮したサービスが充実している。
バス料金の支払いはカウンターや電話などの他、Nakhonchai Air社のウェブサイトやモバイルアプリケーションにてクレジットカードを使用することが可能。さらにはLINEやFacebookといったソーシャルネットワークサービスを通じてのチケット購入にも対応している。
長距離バス以外の事業では荷物配達サービス、レンタカー、バスターミナルやサービスセンターの商業施設スペースのリース、バス内外装および車内のモニターでの広告サービス、ハンドバッグやジャケットなどの商品販売を行っている。
出典:https://www2.nakhonchaiair.com/view/
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。