今回は、マレーシアの水道業界に焦点を当て、ローカル11社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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マレーシアの主要水道会社11選〜ローカル編〜
Pengurusan Air Selangor Sdn Bhd(ペングルサン・アイル・セランゴール)
マレーシア最大の水道事業者で、セランゴール州とクアラルンプール、プトラジャヤの840万人に処理水を供給する。2008年にセランゴール州が5つの民間コンセッション事業者の再編を行い、2019年9月に一つの会社に統合された。同社は11地域で34の水処理施設を運営している。
2018年には、デジタルソリューションを通じた顧客サービス向上を目的としたモバイルアプリ「アイル・セランゴール」を開始している。また、2019年にデジタル水道事業の一環としてインテリジェント・コマンド・センターを開業し、さらに同年にはスマート水道メータープログラムを開始、7,928台のスマートメーターが設置されている。
こうしたデジタル対応の結果、2021年5月に同社は2021年マレーシア・テクノロジー・エクセレンス・アワードにおいて、「アイル・セランゴール・コンシューマー・モバイル・アプリケーション&オペレーション・モバイル・アプリケーション」がモバイル-ユーティリティ部門で賞を受賞した。2020年には、178万人がコンシューマー・モバイル・アプリケーションを利用している。
また、2019年には同社のラボラトリーがIKMラボラトリー・エクセレンス・アワードを受賞しており、同年にはスンガイ・シレ&セメニー2 水処理場がISO 9001、4つの事業所が事業継続マネジメントシステムのISO 22301認証を取得している。
2021年3月には、同社はインダ・ウォーター・コンソーシアムと持続可能な水リサイクル活動に関するコラボレーションを発表、両社の専門知識を統合し、産業用の非飲用処理水を生成するとしている。
出典:https://www.airselangor.com/
Ranhill Utilities Bhd(ランヒル・ユーティリティーズ)
水道(給水、水・排水処理と再生水処理、無収水管理)と電力を事業としており、マレーシア証券取引所のメインボードに上場。3,265人の従業員を抱えており、2020年度の収益は14億7,840万リンギット、水関連の環境セクターが全収益の84%を占めている。
給水に関しては、同社子会社であるランヒSAJが担っており、ジョホール州において独占ライセンスを取得、99.9%の給水範囲をカバーしている。同社サービスは、原水調達、水処理、水道の維持管理が含まれており、2019年末時点で44の処理場を管理し、2020年度は12億2,580万リンギットの収益を計上している。
また、同社子会社であるランヒル・ウォーター・サービシーズは、無収水管理及び削減プログラムに関与しており、「NRW戦略・行動計画」を推進している。結果として、ジョホール州における無収水は0.02MLD/kmと国内で最も低い数字となっている。
2020年度には、ジョホール州に水を供給するランヒルSAJのライセンスが更新され、2021年から2023年の期間が対象となっている。
出典:https://www.ranhill.com.my/
Indah Water Konsortium Sdn Bhd(インダ・ウォーター・コンソーシアム)
1994年に下水道サービスを提供する会社として設立。2006年6月に財務省が全株を取得し、クランタン州、サバ州、サラワク州、ジョホール・バル特別市、パシール・グダン市を除く国内全土で下水道システムの開発と管理を行う。
同社は国内の事業エリア内にある8,000以上の下水処理場及びネットワークポンプステーションを運営・管理している。また、2012年12月には、持続可能なソリューションの開発を通じて同社の研究活動をさらに強化するため、インダ・ウォーター・リサーチ・センターを設立している。同センターでは、廃水処理性能調査、 微生物製品開発、 バイオソリッド研究などが行われている。
2020年8月には、同社はダマンサラハイツの維持管理を行うヌサ・バイドゥリ社と脂肪、油及びグリース(FOG)を除去するスラッジ除去サービスを提供する契約を締結した。スラッジ除去サービスは2019年7月に開始されており、今回の契約で・ウォーター・コンソーシアムはダマンサラハイツ敷地内で3年間に渡って除去サービスを提供する。
出典:https://www.iwk.com.my/
Pengurusan Aset Air Bhd(プングルサン・アセット・アイル)
財務省が100%所有する企業で、2006年5月に水事業の持続可能性を確保することを目的とした政府取り組みの一環として設立された。
同社は民間金融市場の資金を使い、マレーシア半島とラブアン連邦管轄領の水道インフラストラクチャ開発を主な業務とする。そして、同社が所有する水関連資産は、国家水サービス委員会の認可を受けた水道事業者にリースされている。
2018年度におけるグループ収益は6億2,795万リンギット、税引後利益は2億9,563万リンギットを計上している。
2019年12月には、同社はランガット2浄水場(ストリームB)のテスト及び試運転を成功裏に完了しており、2020年1月に同浄水場をアイル・セランゴールに引き渡している。この浄水場の稼働により、最大565MLDの処理水を約90万人の住民に供給することができる。
出典:https://www.paab.my/
Puncak Niaga Holdings Bhd(プンチャック・ニアガ・ホールディングス)
1997年1月に設立され、同年7月にマレーシア証券取引所に上場する。 国内に9つの子会社を、そしてシンガポールとインド、ブルネイにオフィスを展開し、500名以上を雇用する。2020年度の収益は3億8,434万リンギットで、純利益は685万リンギットを計上している。
同社グループは、環境エンジニアリングや建設、コンセッションや施設管理サービス、プランテーション部門を含む総合的な水・下水・環境ソリューションを事業とする。
現在、同社グループはクアラルンプール政府の進める「ブナス・プロジェクト」 (73の下水処理場の合理化・廃棄)において54kmに及ぶ下水道管網建設を手掛けている。2020年度時点で配管網は約46kmの建設を完了し、9つのネットワークポンプステーションは97.3%の進捗となっている。
また、第11次マレーシア計画で進められている「クアンタン・プロジェクト」において下水処理施設の合理化・廃棄も担っており、2020年度時点で55.6%の進捗となっている。
出典:https://www.puncakniaga.com.my/
PBA Holdings Bhd(PBAホールディングス)
1999年、ペナンの給水・管理を事業とするペナン水道公社(プルバダナン・ベカラン・アイル・プラウ・ピナン)が設立される。2000年5月に持ち株会社のPBAホールディングスが設立され、2002年4月にマレーシア証券取引所に上場。傘下に、ペナン水道アカデミーを運営するPBAリソース、再生可能エネルギーを展開するPBAグリーンテクノロジーを擁する。
2020年度の収益は3億3,6030万リンギット、税引後利益は2,476万リンギットを計上している。2020年における水道管(100mm以上)の総延長は4,640kmに及び、1日当たり11億500リットルの処理水を供給し、無収水率は23.5%となっている。
また、同社は2019年にペナングリーンカウンシルからペナングリーンオフィス賞を、ペナン州政府よりインセンティブ賞を受賞するなどしている。
2020年11月には、同社は第3次海底パイプラインの試運転を完了し、1日あたり最大3億1,500万リットルをペナン島へ供給している。3つのパイプラインが稼働したことで、一日あたりの合計容量は7億80万リットルに拡大している。
出典:https://pbahb.com.my/
https://pba.com.my/
Gamuda Bhd(ガムダ)
1976年に設立され、エンジニアリングとインフラストラクチャ、不動産事業を展開する。8ヵ国で事業を行っており、4,100名の従業員を雇用する。2020年度の収益は68億500万リンギットで、5億2,000万リンギットの純利益を計上、水・高速道路事業が純利益の42%を占めている。
インフラストラクチャのコンセッション事業においては、スンガイ・セランゴールのダム、及びラサとブキット・バンドンの浄水場を運営している。
また、エンジニアリング・建設事業においては、様々な水処理プラントや発電所の建設を手掛けている。過去には、ベトナムでのイェンソー水処理プラントの設計・建設・試験・試運転(2009年~2012年)、ラサとブキット・バンドンの浄水場の建設(2000年~2005年)、スンガイ・セランゴールダム建設(2000年~2005年)を手掛けている。
出典:https://gamuda.com.my/
Taliworks Corporation Bhd(タリワークス・コーポレーション)
1987年に、マレーシアの水処理・給水・配水を行う民間会社として設立されたLGBグループ傘下の企業。2000年10月にマレーシア証券取引所のメインボードに上場。水処理・給水・配水、高速道路料金所運営・維持、廃棄物処理、エンジニアリング・建設を事業とする。
水処理・給水・配水事業では、スンガイ・セランゴール・フェーズ1水処理プラントがISO 9001:2005とISO / IEC 27001:2013、スンガイ・セランゴール・フェーズ1浄水場のラボラトリーがISO / IEC 17025:2017、そして同社傘下のスンガイ・ハルモニ社がCM-060-2:2014を取得している。
2020年度の収益は3億1,790万で、6,350万リンギットの利益を計上している。この内、水処理・給水事業の収益は71%を占める2億2,550万リンギットであった。
傘下のスンガイ・ハルモニ社は、2019年にペングルサン・アイル・セランゴールと一括給水契約を締結、2036年12月までスンガイ・セランゴール・フェーズ1水処理プラントの運用管理と保守点検を行う。
出典:https://taliworks.com.my/
Salcon Engineering Bhd(サルコン・エンジニアリング)
1974年にパームオイル工場・労働者向け水処理や生活用水の供給、エンジニアリング機器の販売を事業とする会社として設立。2003年にマレーシア証券取引所に上場し、現在は上下水道エンジニアリング、不動産開発、テクノロジーサービスなど多様な事業を展開する。
上下水道エンジニアリングでは、上下水道処理プラント及びその付帯設備の設計・エンジニアリング、調達、建設、据付、試運転、運転・保守などを提供する。マレーシア国内だけでなく、タイやベトナム、スリランカ、インド、ラオス、インドネシア、モルディブ、ブルネイ、中国で1,000件以上の上下水道処理プロジェクトを手掛けた実績を持ち、国内に3つオフィスと香港、インドネシア、スリランカ、タイ、ベトナムにオフィスを構える。
2020年度には326人を雇用し、1億9,145リンギットの収益を計上、税引後損失は806万リンギットであった。
2020年7月には、子会社のサルコン・エンジニアリングは香港のワン・スマート・シティ・デベロップメントと合弁契約を締結、マレーシア国内でエンドツーエンドの監視プラットフォームソリューションを備えたスマートウォーターシステムを販売するとしている。
出典: https://www.salcon.com.my/
Aliran Ihsan Resources Bhd(アリラン・イハサン・リソーシーズ)
エネルギー、港湾・輸送、インフラ・建設事業を手掛けるMMC傘下において、クアラルンプールの市内中心部であるバンサーに拠点を置き、マレーシアで最初の民間水道会社の1つとして1993年に設立された。
現在、同社は主にマレーシアの上下水道事業に携わっており、上下水道資産の建設・管理だけでなく、運営・維持管理を手掛けている。傘下のアリラン・ユーティリティは工業用の水処理、廃水処理、及び水再生ー行い、アリラン・ウタラは水処理施設の運営・維持管理、アリラン・ウオーター・サービシーズは無収水に焦点を当てている。
同社が手掛けたプロジェクトとしては、トップ・グローブ工場へ最大7.92MLDの処理水供給、サンウェイサウスキー浄水場のアップグレード・運用・保守、マラッカにあるベサール島での海水淡水化プロジェクトなどがある。
2020年7月には、同社はマレーシア工科大学と上下水道処理のための高度な膜技術ソリューションの事業機会を探求することを発表している。
出典: https://www.airb.com.my/
Industrial Water Engineers (M) Sdn Bhd(インダストリアル・ウオーター・エンジニアーズ)
セランゴール州シャーアラムを拠点として、信頼性の高い排水・水処理システムに必要な技術サポートを提供する会社として2001年に設立。製油所、食品・飲料、手袋、飲料水など様々な業界で世界標準の水処理プラントを導入している。
同社では、工業廃水処理、移動床式バイオフィルムリアクター技術、飲用水システムなどを提供している。実績として、パハン州で飲用水システム、セランゴール州で下水道システムを開発、またバングラデシュやウズベキスタン、東南アジア諸国において約140件の廃水処理プラント/排水処理プラントを完成させている。
主な顧客には、食品加工のラムリー・フード・インダストリーズやQLリソーシーズ、ネスレ、CP、医薬品大手のケミカル・カンパニー・オブ・マレーシア、パーム産業のフェルダなどがある。
出典: https://www.iwe.com.my/
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。