今回は、マレーシアの電力・ガス業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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マレーシアの主要電力・ガス会社9選〜ローカル編〜
Tenaga Nasional Bhd(テナガ・ナショナル)
1990年に政府が所有する民間電力会社として発足し、1992年5月にマレーシア証券取引所に上場。2020年末時点で、カザナ・ナショナルとペルモダラン・ナショナル、従業員積立基金が70.7%の株式を所有しており、グループとして3万5,576名を雇用する。
商業用、工業用、住宅用電力を供給しており、マレー半島とサバ州、ラブアン連邦直轄領全域の920万口をカバーしている。また、同社の燃料構成比は石炭が48.9%、ガス31.0%、水力19.5%、太陽光0.6%となっている。
2020年度のグループ収益は439億7,600万リンギットで、38.6%が住宅向け、35.9%が工業向け、23.9%が商業向けとなっている。また、グループ収益の92.7%はテナガ・ナショナルが占めている。
同社は首都圏においてマートメーター導入を進めており、2020年10月16日時点で608,976台のスマートメーターがクランバレーとマラッカに設置されている。
2021年6月には、同社はDHLエクスプレス・マレーシアとMoUを締結し、より環境に配慮したサプライチェーン開発の枠組みを模索し、環境に配慮したビジネス・プラクティスを強化するとしている。本MoUでは、DHLの車両に電気自動車を導入することで、より環境に配慮した配送を実現すること、そしてビルのエネルギー管理システムや屋上のソーラーパネル導入などのゼロカーボン及びコスト削減に向けた取り組みで協力することも含まれている。
出典:https://www.tnb.com.my/
Malakoff Corporation Bhd(マラコフ・コーポレーション)
1975年10月にプランテーション事業会社として設立。1993年10月にプランテーション関連資産を処分し、電力事業に参入している。2020年度のグループ収益は62億7,631万リンギットで、2020年末時点で3,981名を雇用する。
現在、MMCグループ傘下で電力事業と淡水化事業を担っており、石油、石炭、ガスで稼働する6つの発電所と、太陽光発電所1つで5,836MWの有効容量を持つ。
2021年5月、同社は贈収賄防止管理システムとなるISO37001:2016認証を取得。また、生産性公社が開催する2020年イノベーション・ショーケースにおいて、2つの発電事業所が金賞を受賞している。
2019年12月には、廃棄物エネルギー開発のために廃棄物管理を事業とするアラムフローラの株式を取得し、事業拡大を目指している。さらに、2021年5月には同社子会社とイオンが太陽エネルギーシステムの開発と太陽光発電購入契約を締結した。
出典:https://www.malakoff.com.my/
Sarawak Energy Bhd(サラワク・エナジー)
サラワク州で唯一の発電・送電・配電事業者で、100年近くの歴史を有する。州内の豊富な水資源を使用した水力発電を事業とし、70万口以上の契約アカウントを持つ。2018年度の収益は54億2,328万リンギットで、2019年末時点で5,207名を雇用している。
同社は2016年よりグローバル・レポーティング・イニシアティブのゴールドメンバー、2017年より国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・マレーシア、そして国際水力発電協会のプラチナメンバーに名を連ねている。
2009年にサラワク州の地方電化率は56%であったが、「農村部電化加速マスタープラン」をサラワク州政府と推し進めることで、2020年には95%に増加し、2025年までにサラワク州内すべてに電力供給することを目指している。
また、同社はサラワク再生可能エネルギー回廊と呼ばれる戦略的イニシアチブの下で再生可能エネルギー資源への移行を進めており、2019年には2011年比で発電時の炭素強度が68%削減されている。
出典:https://www.sarawakenergy.com/
YTL Power International Bhd(YTLパワー・インターナショナル)
大手コングロマリット企業であるYTLの子会社で、1993年にマレーシア初の独立系電力会社としてライセンスを取得。マレーシア証券取引所に上場しており、マレーシアとイギリス、シンガポール、オーストラリア、インドネシアで事業を展開する。
発電・小売、送電、給水・配水サービス、通信を事業としており、2021年4月末時点での時価総額は58億リンギットとなっている。発電事業はマレーシアとシンガポール、インドネシアで行っている。同社子会社のYTLパワー・ジェネレーションがマレーシア初の独立系発電事業者であり、トレンガヌ州とジョホール州で2つの火力発電所(1,212MW)を所有する。
2020年度の収益は106億3,718万リンギットで、税引後利益は1億2,770万リンギット、発電事業の収益は6億3,340万リンギットとなっている。
出典:https://www.ytlpowerinternational.com/
Ranhill Holdings Bhd(ランヒル・ユーティリティーズ)
水道(給水、水・排水処理と再生水処理、無収水管理)と電力を事業としており、マレーシア証券取引所のメインボードに上場。3,265人の従業員を抱えており、2020年度の収益は14億7,840万リンギット、エネルギーセクターは全収益の16%を占める2億4,380万リンギットとなっている。
エネルギーセクターにおいては、同社はサバ州にてランヒル・パワーI(190MW)とランヒル・パワーII(190MW)の2つの発電所を所有・運営している。ランヒル・パワーIは、 オープンサイクルからコンバインドサイクルに変更することで発電効率を向上させ、 発電能力は120MWから190MWに向上している。
2019年2月には、同社はタイを拠点とするトレジャー・スペシャルティ社と契約を締結し、 ケダ州で1,150メガワットのガスタービン複合発電所を開発し、タイ南部に電力を輸出することで合意している。
また2019年7月には、グリーンエネルギーと再生可能エネルギーの開発に重点を置く同社子会社のランヒル・パワートロンが、サバ州においてのマイクロ水力-太陽光ハイブリッドシステムを建設し、150人以上の村民に電力を供給している。
出典:https://www.ranhill.com.my/
NUR Power Sdn Bhd(NURパワー)
電力の発電・送電・配電、及び小売を専門に行う民間会社で、クリムハイテク工業団地(KHTP)へ電力販売する独占権を付与された独立電力会社。2012年6月に、KHTPの電力供給事業の資産と事業を買収している。
同社は工業団地内に220MWのガスタービン複合プラントを所有・運営・維持しており、2006年より操業開始。115エーカの敷地内の工場や住宅などに電力を供給している。
また、2017年には2,500万リンギットを投じてアジア初となるターボフェーズシステムを導入、プラント効率を高めることで8MWの追加発電が可能となった。
さらに、グリーンエネルギーへの需要が世界的に高まっていることから、 同社は再生可能エネルギーを将来のポートフォリオの一部として検討しており、同時に 光ファイバネットワーク資産を戦略的に最適化することで、デジタル技術における機会を模索している。
出典:https://www.nur.com.my/
Gas Malaysia Bhd(ガス・マレーシア)
1992年5月、MMCコーポレーションと東京ガス、三井物産、ペトロナスの合弁会社として設立。マレーシア半島部の家庭、商業及び産業に天然ガス、液化石油ガスを供給する。国内に3つの地域オフィスと9つの支店を持ち、2020年度時点で545名の従業員を雇用している。
2020年度の収益は66億8,690万リンギットで、税引後利益は2億1,260万リンギットとなっている。また、産業向け顧客数は965、商業向け顧客数2,159、住宅向け顧客数25,508となっており、マレーシア半島に2,600kmのガスパイプラインを展開している。
2020年10月には、ISO 9001:2015、ISO 14001:2015、ISO 45001:2018、ISO / IEC 27001:2013の認証を維持し、ガス・マレーシア・エナジー・サービーシーズ、ガス・マレーシア・ディストリビューション、ガス・マレーシア・リテール・サービシーズへも拡大した。
また、同社は2020年10月にMLガス・カンボジアとMoUを締結、カンボジアにおける石油・ガス、電力、関連不動産開発分野での投資機会で協力することを発表している。
出典:https://www.gasmalaysia.com/
Petronas Gas Bhd(ペトロナス・ガス)
1983年にペトロナスの子会社として設立されたガスインフラストラクチャ及びユーティリティ企業で、1995年にマレーシア証券取引所に上場。現在、ペトロナスが60.66%の株式を所有している。クアラルンプールのペトロナスツインタワーに本社を置き、マレーシア半島に9つの支社、東マレーシアに2つの支社を展開、1,765名の従業員を雇用する。
ガス処理事業(GPU)、ガス輸送・再ガス化を中核事業としている。同社は2つのトータル・ガス処理コンプレックス、2つのトータル・ユーティリティ・コンプレックス、2,623kmのパイプライン、そして2つのLNG再ガス化ターミナルを所有し、 総ガス処理能力は2,060MMSCFD、総LNG再ガス化能力は990MMSCFDとなっている。
同社の2020年度の収益は56億リンギット、税引後利益は21億リンギットを計上しており、総資産は183億リンギットとなっている。事業別収益は、ガス処理が17億リンギット、ガス輸送12億リンギット、再ガス化14億リンギット、ユーティリティ13億リンギットの構成。
同社は2020年に国内外で多数の賞を受賞しており、その一つとしてイギリス王立災害防止協会から金賞を受賞している。また、イギリス安全衛生評議会のセーフティー・アワードでは3つの賞を、アルファ東南アジア企業・機関投資家アワードで2つの賞を受賞している。
出典:https://www.petronasgas.com/
Sabah Energy Corporation Sdn Bhd(サバ・エナジー・コーポレーション)
サバ州政府所有のエネルギー資源開発企業で、ガス小売り、不動産開発、海洋・オフショア物流サービス、エネルギー開発を行う。1996年11月よりパイプラインでの天然ガス流通を開始。他に圧縮天然ガスとLNGを扱う。
同社は傘下に、石油・ガスの探鉱・開発・生産活動の総合物流センターであるアジアン・サプライ・ベース、天然ガス液化プラントの建設・所有・運営・保守を行うSECガスがあり、サバ州内の顧客に液化ガスを供給・輸送している。
同社の天然ガスインフラストラクチャは、サバ州コタキナバルのコタキナバル・インダストリアルパーク(KKIP)、及びラブアンのランカ・ランカ・インダストリアルパークで利用できるよう設計されている。圧縮天然ガスはバーチャル・パイプライン・システム(VPS)経由で客先に供給され、KKIPにマザーステーションが設置されている。
また、再生可能エネルギーとして、太陽光発電と水力発電を推進している。太陽光発電システムは5MWの大規模太陽光発電を展開しており、ラブアンのタンジョン・クボンにプラントを持つ。水力発電は、 クアラ・トマニ近郊のパダス川に水力発電ダムを建設し、180MWの発電施設を所有している。
出典:https://www.sabahenergycorp.com/
マレーシアの主要電力・ガス会社〜日系編〜
Iwatani Malaysia Sdn Bhd(岩谷マレーシア)
2010年に設立された岩谷産業のマレーシア法人で、岩谷コーポレーション・シンガポールが株主となっている。クアラルンプールを拠点として、ペナンに支店、ジョホールのセナイに東南アジア初となるヘリウム補充工場を持つ。
マレーシアでは、産業ガス、ロボット、FA機械、半導体、材料、生産関連のソリューションサービス、カセットストーブを扱う。
産業ガスにおいては、酸素や窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの各種ガスを提供している。同社は2013年にマレーシア・ヘリウム・センターを設立しており、ガス設備やアプリケーションに対応している。
2012年1月には、岩谷-SIGインダストリアル・ガスがサラワク州のサマラジュ工業団地に設立され、窒素と酸素を供給している。
出典:http://www.iwatani.com.my/
マレーシアの主要電力・ガス会社2選〜外資系編〜
Edra Power Holdings Sdn Bhd(エドラ・パワー・ホールディングス)
2014年、マレーシアの主要独立電力会社であるパワーテック・エナジー・グループ、KLPPグループ、ジマ・エナジー・グループの3社が統合してエドラ・グループを設立。2016年3月には、中国広核集団に買収され傘下に入る。
同社はマレーシアとエジプト、バングラデシュで9つの発電所を所有・運営しており、パキスタンの電力資産、及びアラブ首長国連邦の電力及び淡水化資産にも投資している。
マレーシア第2位の独立系発電事業者であり、国内に2基のガスタービン複合発電所、1基の石炭焚き亜臨界圧火力発電所、そして大規模太陽光発電所を所有し、総発電容量2,845MW、有効容量は2,326MWとなっている。また、2017年4月よりマラッカにおいて、2,242MWのコンバインドサイクル発電プロジェクトを進めている。
ケダ州の太陽光発電所では、サステナビリティ・スクーク・フレームワークとして、傘下のエドラ・ソーラー社が発電所の周囲40エーカー土地を活用し、地域コミュニティとゼロコストで果物栽培を行っている。
出典: https://www.edra.energy/
NGC Energy Sdn Bhd(NGCエナジー)
オマーンのナショナル・ガス・カンパニーの子会社として設立。LPGソリューションプロバイダーとして、ポートディクソンとパシルグダン、イポーに施設を持ち、年間1,200万本以上のガスシリンダーを生産する。家庭用だけでなく、商業用、産業用ガスも提供しており、マレー半島に70のディーラー持つ。
同社は品質管理システムのISO 9001を取得、さらにNGCE贈収賄・汚職・不正行為防止ポリシーと贈収賄・汚職防止マニュアルを策定することで、ゼロ・トレランス・ポリシーを推進している。
家庭向けガスシリンダーでは、10kgと14kgの2種類を供給している。また、同社はデジタル化を推進しており、 ショッピングセンターや小売店などの商業ユーザー向けスマート・メーターを展開している。同システムには、テレメトリー機能、リモートロックコマンド(遠隔での安全弁開閉)、超音波センサーによる読み取り、プリペイド支払い機能が搭載されている。
出典: https://www.ngcenergy.com.my/
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。