タイの電力・ガス市場は急速に変化しており、再生可能エネルギーへのシフトが加速しています。本記事では、タイの主要電力・ガス会社12社の最新事業内容と戦略を詳細に解説。日本企業がタイでビジネス展開する際に不可欠な業界知識と市場動向を網羅的にお届けします。
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タイの主要電力・ガス会社10選〜ローカル編〜
Electricity Generating Authority of Thailand (エレクトリシティ・ジェネレーティング・オーソリティ・オブ・タイランド)
タイ発電公社(EGAT)は、1969年に設立されたタイ王国エネルギー省の管轄下にある国営企業であり、国内の発電、電力卸売、送電を担う主要な電力供給機関である。
EGATは、タイ国内で46か所の発電所を所有・運営しており、総発電容量は約16,920メガワット(MW)である。このうち、コンバインドサイクル発電所が9,086MW(53.7%)、火力発電所が3,687MW(21.8%)、水力発電所が3,038MW(18.0%)、再生可能エネルギー発電所(太陽光、風力など)が79MW(0.5%)、ディーゼル発電所が30MW(0.2%)、揚水発電所が1,000MW(5.9%)を占めている。
EGATはまた、独立系発電事業者(IPP)から16,749MW、小規模発電事業者(SPP)から9,195MW、隣国であるラオスおよびマレーシアから6,235MWの電力を購入しており、これらを含めた総供給能力は約49,099MWに達する。
EGATが発電した電力は、高圧送電網を通じて全国に供給され、首都圏配電公社(MEA)および地方配電公社(PEA)を通じて最終消費者に届けられる。また、一部の大口需要家には直接供給されている。さらに、ラオス、カンボジア、マレーシアへの電力輸出も行っている。
EGATの2020年の売上高は510,707百万バーツ、純利益は54,881百万バーツであった。従業員数は17,640人である。
タイ政府は、2037年までに再生可能エネルギーの発電比率を51%に引き上げる目標を掲げており、EGATもこの目標達成に向けて取り組んでいる。具体的には、既存のダムに浮体式太陽光発電設備を設置するハイブリッド水力・太陽光発電プロジェクトを進めており、2021年にはシリントンダムで45MWの設備が稼働を開始した。また、三菱重工業と協力し、ガスタービン発電設備への水素混焼技術の導入に向けた実現可能性調査(FS)を2025年3月までに実施する計画である。
EGATは、今後も再生可能エネルギーの導入拡大や既存設備の効率化を進め、タイのエネルギー供給の安定化と脱炭素化に貢献していく方針である。また、電力市場の自由化や再生可能エネルギーの比率向上に伴い、EGATの発電シェアは2037年末までに現在の35%から24%に減少する見込みである。
出典:https://www.egat.co.th/en
https://www.jepic.or.jp/data/asia03thai.html
Banpu PCL. (バンプー)
Banpu Public Company Limited(バンプー)は、1983年に「Ban Pu Coal Company Limited」として設立され、石炭採掘事業からスタートした。1989年にタイ証券取引所(SET)に上場し、1993年に現在の社名に変更した。現在は「エネルギー資源」「エネルギー発電」「エネルギー技術」の3つの主要事業を展開している。
インドネシア、中国、オーストラリアでの石炭採掘、米国での天然ガス生産を行っている。2024年には、インドネシアの石炭販売量が6.27百万トンとなり、平均販売価格は96.87米ドル/トンであった。米国の天然ガス生産量は1日あたり約8.92億立方フィート(MMcfed)である。
タイ、ラオス、中国、米国、日本、ベトナム、オーストラリアで火力および再生可能エネルギーによる発電を行っている。2024年第3四半期には、タイのBLCP発電所が稼働率100%、ラオスのHPC発電所が93%を達成した。
Banpu NEXTを中心に、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵、電動モビリティ、エネルギー管理システムを展開している。2024年には、タイ・チョンブリー県にあるバッテリー組立工場が稼働を開始し、年間生産能力は2.0GWhである。また、日本の岩手県遠野市で建設中のバッテリーファームは、2025年第2四半期に商業運転を開始予定である。
売上高は約5,148百万米ドル(前年比1.3%増)、純損失:約23.67百万米ドル(前年は純利益159.98百万米ドル)、従業員数は約5,300人である。純損失の主な要因は、為替差損や天然ガス価格の下落によるものである。
Banpuは「Energy Symphonics」戦略のもと、2030年までに再生可能エネルギーとエネルギー技術の比率を50%以上に引き上げることを目指している。2024年には、米国のBKV Corporationが一部のガス資産を売却し、カーボン・シークエスト・ガスの販売契約を締結した。また、電動トゥクトゥク「MuvMi」は、累計1,300万回以上の乗車実績を持ち、タイ国内での展開を拡大している。
出典:https://www.banpu.com/
B. Grimm Power PCL. (ビー・グリム・パワー)
B. Grimm Power Public Company Limitedは、1878年に創業されたタイの主要なエネルギー企業である。2017年にタイ証券取引所(SET)に上場し、国内外で天然ガス、太陽光、水力、風力など多様なエネルギー源を活用した発電事業を展開している。2025年3月現在、同社の総発電容量は約4,071MWに達しており、進行中のプロジェクトを含めると、さらに5,893MWの容量が開発中である。
同社は、2030年までに総発電容量を10,000MWに拡大するという目標を掲げており、その一環として海外市場への進出を積極的に進めている。2024年10月には、中国とギリシャでの再生可能エネルギープロジェクトへの投資を検討していることが報じられた。 さらに、韓国では740MWの洋上風力発電プロジェクトに約6,100万米ドルを投資している。
2024年の業績においては、売上高が57,115百万バーツ、EBITDAが14,325百万バーツ、純利益が3,685百万バーツを記録している。 また、同年には3つの小規模発電所(SPP)が商業運転を開始し、合計420MWの容量が追加された。
再生可能エネルギー分野では、南アジアや中東地域での太陽光発電プロジェクトや、フィリピンでの65MWの太陽光発電所プロジェクトなど、多数のプロジェクトを展開している。 さらに、同社はデータセンター向けのエネルギーソリューション提供にも注力しており、タイ国内のデータセンター事業者と協議を進めている。
主要な顧客には、AGC(旭硝子)、ダイキン工業、三菱自動車などの日系企業が含まれており、同社の発電容量の大部分はコージェネレーションシステムによるものである。再生可能エネルギーの割合も増加しており、太陽光、風力、水力発電などのプロジェクトが進行中である。
出典:https://www.bgrimmpower.com/en/home
BCPG PCL. (ビーシーピージー)
BCPG Public Company Limited(BCPG PCL.)は、2015年にタイの石油大手バンチャーク・コーポレーション(Bangchak Corporation PCL.)の再生可能エネルギー部門が独立する形で設立された。2016年にはタイ証券取引所(SET)に上場し、現在では国内外で再生可能エネルギーの開発・運営を行っている。
同社は、タイ国内だけでなく、ラオスでの水力および風力発電、フィリピンでの風力発電、インドネシアでの地熱発電、日本での太陽光発電など、海外でも積極的に事業を展開している。
2020年の業績は、売上高が前年比24%増の4,260百万バーツ、純利益が前年比6.1%増の1,912百万バーツであった。従業員数は108人である。
BCPGは、再生可能エネルギーの需要が高まる中、持続可能なエネルギー供給を目指し、国内外での事業拡大を続けている。
出典:https://www.bcpggroup.com/en/home
https://www.bangchak.co.th/en/home
Electricity Generating PCL. (エレクトリシティ・ジェネレーティング)
Electricity Generating Public Company Limited(EGCO)は、1992年にタイ発電公社(EGAT)の部分民営化により、タイ初の独立系発電事業者(IPP)として設立された。1995年にはタイ証券取引所(SET)に上場し、現在もEGATが25.41%の株式を保有する筆頭株主である。また、日系企業であるJERA、三菱商事、九州電力の合弁会社であるTEPDIA Generating B.V.が23.94%を保有している。
EGCOは、天然ガス、石炭、バイオマス、水力、太陽光、風力、燃料電池など多様な燃料を使用した発電所を運営しており、タイ、ラオス、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、韓国、台湾、米国の8カ国に展開している。
2025年3月現在、同社は29の発電所を稼働させており、総発電容量は5,695MWである。さらに、321MWの容量を持つ2件のプロジェクトが進行中である。
2024年の業績では、売上高が403.2億バーツ、純利益が54.1億バーツとなっている。
EGCOは、発電事業以外にも、発電所の運営・管理、エンジニアリングサービス、石炭採掘、石油パイプラインシステム事業などを展開している。
同社は、再生可能エネルギーの割合を増やすため、風力、太陽光、水力、地熱などのプロジェクトを積極的に推進している。また、エネルギー貯蔵システムやスマートグリッドなどの革新的な技術を活用し、再生可能エネルギー源からの安定かつ信頼性のあるエネルギー供給を実現している。
出典: https://www.egco.com/en
Gulf Energy Development PCL. (ガルフ・エナジー・ディベロップメント)
Gulf Energy Development Public Company Limited(GULF)は、1994年にタイ初の独立系発電事業者(IPP)として設立され、2017年にタイ証券取引所(SET)に上場した。2025年3月現在、同社はタイ国内外で多様なエネルギー事業を展開し、総発電容量は約6,400MWに達している。
GULFの主力事業は天然ガス火力発電であり、タイ国内において複数のガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電所を運営している。特に、チョンブリー県およびラヨーン県でのGTCCプロジェクトは、三井物産との合弁事業として進められ、各発電所はM701JAC形ガスタービン4台を含む出力265万kWの設備を備えている。これらの発電所は、COVID-19の影響下でも計画通りに建設が進められ、高い稼働率を維持している。
再生可能エネルギー分野では、GULFは国内外で太陽光、風力、水力発電プロジェクトを推進しており、総発電容量は約609MWに達している。特に、ベトナムでの太陽光および風力発電プロジェクト、ドイツの洋上風力発電プロジェクトへの出資、ベトナムでの水力発電調査など、国際的な展開を強化している。
GULFは発電事業に加え、液化天然ガス(LNG)の輸入・貯蔵・供給、地方の高速道路開発、バンコクにおける配電システムおよび地区冷却システムの運用など、多岐にわたるインフラ事業を子会社を通じて展開している。これらの事業は、同社の収益基盤の多様化と持続可能な成長を支えている。
2024年の業績において、GULFの売上高は1,208.9億バーツ、純利益は181.7億バーツを記録した。従業員数は832人である。GULFは、タイ国内外での発電能力の拡大と多角的なインフラ事業の展開を通じて、持続可能なエネルギー供給と経済成長への貢献を目指している。
出典:https://www.gulf.co.th/en/
Global Power Synergy PCL. (グローバル・パワー・シナジー)
Global Power Synergy Public Company Limited(GPSC)は、2013年にタイの国営石油会社PTTの子会社として設立され、2015年にタイ証券取引所(SET)に上場した。2025年3月現在、同社はタイ国内外で多様なエネルギー事業を展開している。GPSCの主要株主は、PTT社が31.72%、PTT Global Chemical社が22.73%、Thai Oil社が20.78%である。これらの企業は、いずれもPTTグループに属しており、GPSCはPTTグループの中核的な電力事業会社として位置づけられている。
GPSCは、コージェネレーション(熱電併給)、火力発電、再生可能エネルギー発電、水力発電など、多様な発電技術を活用している。特に、子会社であるGlow Energy Public Company Limited(Glowグループ)を通じて、コージェネレーションおよび再生可能エネルギー分野での事業を強化している。
2024年の業績において、GPSCの売上高は約70,983百万バーツ、純利益は約7,508百万バーツであった。これは、前年と比較して売上高が約5.2%増加し、純利益が約85%増加したことを示している。
GPSCは、今後も再生可能エネルギー分野への投資を拡大し、持続可能なエネルギー供給体制の構築を目指している。
出典:https://www.gpscgroup.com/en
https://www.glow.co.th/en/about-us/overview
RATCH Group PCL. (ラッチ・グループ)
RATCH Group Public Company Limited(RATCH)は、2000年にタイ発電公社(EGAT)の子会社として設立され、同年にタイ証券取引所(SET)に上場した。現在もEGATが45%の株式を保有しており、RATCHはEGATの戦略的子会社として、タイ国内外で発電事業を展開している。
2025年3月時点における同社の総発電容量(持分ベース)は約11,000MWに達し、そのうち約9,000MWが稼働中、残り約2,000MWが開発・建設中である。発電所の立地は多岐にわたり、タイ国内を中心に、オーストラリア、ラオス、インドネシア、中国、ベトナムに広がっている。特に2024年には、インドネシアのPaiton Energy(2,045MW)への出資を通じて約742MWの容量を追加取得し、同社の石炭火力発電の比率が11%から25%へと大きく拡大した。
RATCHは再生可能エネルギー分野にも注力しており、2023年末時点での再生可能エネルギー容量は1.5GWに達している。2030年までには2.8GWに拡大し、同社の総発電容量の40%を再生可能エネルギーで賄うことを目標にしている。オーストラリアの大規模太陽光・蓄電池併設プロジェクト(263MW)や、2026年商業運転予定のLincoln Gap 3風力発電所(252MW)、さらにフィリピンでの440MWの風力発電プロジェクト(2028~2029年運転開始予定)など、国際的な再エネ展開も積極的である。
2024年の業績は、売上高が30,965百万バーツと前年比25%減少した一方で、純利益は6,127百万バーツとなり、前年比で18.6%の増益を記録した。これはコスト管理の徹底や、持分法利益の増加などが奏功した結果である。さらに、2024年から2026年にかけては約42,000〜44,000百万バーツの大規模な投資を計画しており、インドネシア案件を含めた発電容量の拡充に加え、財務レバレッジの上昇にも対応できる安定した流動性を保持している。
また、RATCHは発電事業に加えて、都市鉄道(ピンクライン・イエローライン)や水供給、光ファイバーネットワーク、IoTインフラ、航空燃料供給、病院運営などのインフラ関連事業にも投資を拡大しており、収益基盤の多様化を図っている。
RATCHはこのように、化石燃料と再生可能エネルギーのバランスを取りつつ、地域および分野をまたぐ多角的な事業展開を進め、持続可能な成長とエネルギー供給の安定に貢献している。
出典: https://www.ratch.co.th/en
PTT Exploration and Production PCL. (ピーティーティー・エクスプロレーション・アンド・プロダクション)
PTT Exploration and Production Public Company Limited(PTTEP)は、1985年にタイの国営石油会社PTTの子会社として設立され、1993年にタイ証券取引所(SET)に上場した。同社は、石油および天然ガスの探鉱・開発・生産を主力事業とし、タイ国内外でエネルギー資源の確保に取り組んでいる。
2025年3月現在、PTTEPはタイ湾の主要鉱区(G1/61、G2/61、Arthit、S1など)でオペレーターを務めるほか、東南アジア、中東、アフリカ、オーストラリア、北米、南米など、世界各地で40以上のプロジェクトに参画している。特に、アルジェリアのHassi Bir Rekaiz鉱区、マレーシアのBlock HおよびSK410Bなど、海外での探鉱・開発活動を積極的に展開している。
近年、PTTEPは既存ガス田の生産量増強とともに、新規鉱区への投資を加速させている。モザンビーク沖の大型ガス田開発や、ミャンマーでの天然ガスパイプライン建設プロジェクトなど、エネルギー供給の多様化と安定化を図っている。
また、同社は持続可能なエネルギー開発にも注力しており、再生可能エネルギーや新エネルギーの研究開発、温室効果ガス排出削減技術の導入など、低炭素社会の実現に向けた取り組みを進めている。さらに、子会社のPTT Digitalを通じて、ITソリューションやデジタル技術の活用による業務効率化とイノベーションの推進にも力を入れている。
2024年の業績において、PTTEPの売上高は約76,410百万バーツ、純利益は約18,170百万バーツを記録した。これは、前年と比較して売上高が約15%減少し、純利益が約20%減少したことを示している。生産量は日量約422,000バレル、販売量は日量約354,000バレルであり、前年と比較してそれぞれ約15%増加、約1%増加した。
出典:https://www.pttep.com/en/Home.aspx
Siamgas and Petrochemicals PCL. (サイアムガス・アンド・ペトロケミカルズ)
Siamgas and Petrochemicals Public Company Limited(SGP)は、2001年に「VSPP Development Co., Ltd.」として設立され、液化石油ガス(LPG)の商社として事業を開始した。その後、親会社による事業売却と事業の多角化を経て現在の体制となり、2008年にタイ証券取引所(SET)に上場した。
SGPは、LPGの貯蔵、輸送、小売を手掛けるほか、グループ会社でタンカーを所有し効率的な輸送を実現している。また、LPG用のガスタンクやボンベを製造し、産業用および家庭用に供給している。タイ国内だけでなく、ベトナム、中国、シンガポール、マレーシアなどでもLPGディストリビューターとして事業を展開しており、東アジア地域での存在感を高めている。
2024年の業績では、売上高が約84,151百万バーツ、純利益が約1,319百万バーツとなった。これは、前年と比較して売上高が約7%減少し、純利益が約29%増加したことを示している。純利益の増加は、コスト管理の徹底や効率的な運営が奏功した結果と考えられる。
SGPの株主構成においては、日系エネルギー商社であるミツウロコが2019年より出資を開始し、現在では約16.8%のシェアを所有している。この出資により、SGPは日本市場との連携を強化し、国際的な事業展開を加速させている。
同社は、LPG事業に加えて、石油および石油化学製品の取引、陸上および海上輸送サービス、石油ターミナルおよび港湾サービスなど、多岐にわたる事業を展開している。これらの事業は、SGPの収益基盤の多様化と持続可能な成長を支えている。
出典: https://www.siamgas.com/
タイの主要電力・ガス会社2選〜日系編〜
J-power Generation (Thailand) Co., Ltd. (ジェイパワー・ジェネレーション・タイランド)
J-Power(電源開発株式会社)のタイ現地法人であるJ-Power Generation (Thailand) Co., Ltd.(以下、JPGT)は、2006年に設立され、同社の東南アジアにおける中核拠点として機能している。J-Powerは1967年にシーナカリン水力発電計画のコンサルティングを通じてタイとの関係を築き始め、以降50年以上にわたり同国の電力インフラ整備に貢献してきた。
JPGTは、タイの大手電力会社Gulf Energy Development Public Company Limited(GULF)との合弁事業として、Gulf JP社を通じて複数の発電プロジェクトに参画している。これらのプロジェクトには、ガス火力発電所やバイオマス発電所、ガスコージェネレーション発電所が含まれ、タイ国内の電力安定供給に寄与している。
J-Powerは、タイ国内での発電事業に加え、再生可能エネルギー分野への取り組みも強化している。例えば、ベトナムではバイオマス事業の開発に参画し、フィリピンでは水力発電プロジェクトを推進している。また、オーストラリアでは風力発電や揚水発電のプロジェクトに関与し、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めている。
J-Powerの2024年3月期第3四半期(2023年4月〜12月)の連結業績は、売上高9,608億円(前年同期比31.4%減)、営業利益837億円(同48.2%減)、経常利益848億円(同46.4%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益563億円(同49.3%減)となった。これらの減収減益は、火力発電所の利用率低下や電力販売価格の下落、JEPX販売の粗利減少などが主な要因とされている。
J-Powerは、今後もタイをはじめとする東南アジア地域での発電事業を拡大し、再生可能エネルギーの導入や低炭素化への取り組みを強化することで、持続可能なエネルギー供給体制の構築を目指している。
出典: https://www.jpower.co.jp/
https://www.jpower.co.jp/bs/field/kaigai/
Mitsui & Co. (Thailand) Ltd. (ミツイ・アンド・カンパニー・タイランド)
三井物産株式会社のタイ現地法人であるMitsui & Co. (Thailand) Ltd.は、タイの大手電力会社Gulf Energy Development Public Company Limited(以下、GULF)との合弁事業を通じて、タイ国内で大規模なガス火力発電プロジェクトを展開している。具体的には、GULFが70%、三井物産が30%を出資する形で、以下の2つの主要な発電所を建設・運営している。
2018年11月、チョンブリ県における2,500MWのガス火力発電所の建設が決定された。このプロジェクトは、4基の625MWの発電ユニットで構成され、2021年3月から2022年10月にかけて順次商業運転を開始した。 発電された電力は、タイ国営の電力公社(EGAT)に25年間にわたり供給されている。
2019年11月、ラヨーン県における2,500MWのガス火力発電所の建設が決定された。このプロジェクトも、4基の625MWの発電ユニットで構成され、2024年までに全ユニットが商業運転を開始する予定である。 発電された電力は、同じくEGATに25年間供給される計画である。
これらのプロジェクトにより、三井物産とGULFの合弁事業は、合計5,000MWの発電容量をタイの電力網に供給している。さらに、三井物産は発電に必要な天然ガスの調達にも関与しており、上流から下流までのエネルギーバリューチェーン全体で競争力を有している。
これらの取り組みを通じて、三井物産はタイのエネルギーインフラの強化と安定供給に寄与しており、同国の経済発展と産業成長を支える重要な役割を果たしている。
出典: https://www.mitsui.com/jp/ja/index.html

バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。

