ベトナムの電力・ガス業界は、EVN(ベトナム電力公社)が発電・送電・配電を一体管理する公益独占モデルのもと、再生可能エネルギーへの転換が急ピッチで進んでいます。太陽光・風力発電の急拡大と電力市場の部分自由化を背景に、主要企業の投資戦略と電力安定供給のバランスが注目されています。
今回は、そんなベトナムの電力・ガス業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて29社の最新情報をお届けしていきます!
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ベトナムの主要電力・ガス企業15選〜ローカル編〜
EVN(ベトナム電力公社)
EVN(Vietnam Electricity)は、1994年にエネルギー省を改組して設立された国営電力会社である。GENCO1〜3の発電子会社、EVNNPT(送電)、EVNNPC・EVNCPC・EVNSPC等の配電子会社を通じて全土の電力インフラを運営する。
2025年末時点の系統全体の総設備容量は約87,600MWに達し、前年比約6,400MW増加した。電源構成は石炭火力32.1%、水力28.1%、再エネ(風力・太陽光等)27.9%である。2025年の連結総収入は約645兆ドン(前年比+10.3%)が見込まれ、2022〜23年に計上した累積損失の圧縮も進んでいる。
EVNはPDP8(第8次電力開発計画)に基づき、2030年までに再エネ比率を大幅に引き上げる方針を掲げる。石炭火力の設備容量シェアを現在の約30%から13〜17%に削減し、再エネを3倍に拡大する目標が示されている。
ベトナムの電力セクターにおいてEVNは唯一の送配電事業者であり、独立系発電事業者(IPP)とのPPA締結交渉において中心的な役割を担う。
出典:https://www.evn.com.vn/
PVパワー(ペトロベトナム・パワー)
PVパワー(Petrovietnam Power Corporation、HOSE:POW)は、国営ペトロベトナム(PVN)傘下の発電専業企業であり、同国最大級の独立系発電事業者(IPP)の一つである。2023年の総発電量は144億kWh(全国比5.4%)、売上高は約2兆9,075億ドン、税引前利益は約1,442億ドンであった。
Ca Mauガス複合サイクル発電所(1,500MW)やVung Ang石炭火力発電所(1,200MW)などが主要アセットである。2025年に商業運転を開始したNhon Trach 4発電所(750MW)はベトナム初のLNG焚きガスタービン発電所として注目される。
2026年第1四半期の税引前利益予想は約923億ドン(前年同期比+81%)であり、LNG発電本格稼働に伴う収益改善が期待される。政府の脱石炭・LNG転換政策に沿ってポートフォリオの転換を進めている。
株式はHOSEにティッカーシンボル「POW」として上場されており、ベトナムのエネルギーセクターへの投資家から広く注目を集めている。
出典:https://pvpower.vn/
PVガス(ペトロベトナム・ガス)
PVガス(PetroVietnam Gas Joint Stock Corporation、HOSE:GAS)は、国営ペトロベトナム(PVN)傘下のガス事業専門会社であり、ベトナム最大の天然ガス・LPG供給事業者である。南部・中部・北部にわたるパイプラインネットワークを通じて発電所や産業ユーザーに天然ガスを供給し、LPG・LNG・コンデンセート販売も手掛ける。
2025年の連結収入は約134兆ドン(約51億米ドル)と前年比27%増を達成し、計画比181%の水準に達した。税引前利益は約14.5兆ドン(計画比218%)。LPG・LNG販売量は500万トン超と過去最高を記録し、前年比64%増となった。
同社はLNG輸入インフラの整備にも積極的で、5年間で約30億米ドルの投資計画を掲げる。LNG受入基地の建設・拡張と下流ガス事業の強化を進める方針である。
PVガスはHOSEに上場する大型株として機関投資家の注目度が高く、ベトナムのガス・LNGバリューチェーン全体において中核的な役割を担う。
出典:https://www.pvgas.com.vn/
チュン・ナム・グループ
チュン・ナム・グループ(Trungnam Group)は、ベトナムを代表する民間コングロマリットであり、再エネ電力投資においては同国最多のプロジェクト数と設備容量を誇る企業である。系統への接続済み発電容量は合計1.61GWに達し、ベトナム民間企業の中で最大規模の電力供給能力を持つ。
中核資産は旧ニントゥアン省(現カインホア省)のThuan Nam太陽光発電所(450MW)であり、東南アジア最大級のメガソーラーの一つとして知られる。面積557ヘクタールに130万枚超のパネルを配置し、2020年10月に運転を開始した。また350MWの風力・太陽光複合発電プロジェクトも保有する。
2024年には子会社Trung Nam Thuan Nam Solar Power Co., Ltd.が税引後利益約138億ドン(約528万米ドル)を計上し、財務回復を示した。今後は陸上風力・BESS・洋上風力への投資拡大を計画している。
ベトナム政府のPDP8では2030年までの再エネ比率大幅引き上げが目標とされており、チュン・ナム・グループはその主要な担い手として存在感を強めている。
出典:https://trungnamgroup.com.vn/
T&Tグループ
T&Tグループ(T&T Group)は、不動産・金融等を幅広く手掛けるベトナム有数の民間コングロマリットであり、近年は再生可能エネルギー分野への大型投資を加速させている。エネルギー事業ではベトナム複数の省に跨る洋上・近岸風力および太陽光発電プロジェクトを推進し、合計開発容量は約1,500MWに達する計画を掲げる。
同社は米国のUPC Renewablesとの覚書(MOU)を締結し、総投資額25億米ドル規模の再エネプロジェクト群の共同開発に合意している。洋上風力については、ベトナム政府が2030年までに6GW以上を目指す方針に沿った複数の大型案件を検討中である。
T&Tグループはベトナムの政財界に強いネットワークを持ち、地方政府・省庁との協議を通じて許認可取得を進めている。再エネ分野では後発参入ながら、開発パイプラインのスケールと資金力で急速に存在感を拡大している。
PDP8に基づく再エネ拡大方針を追い風に、T&Tグループは今後もエネルギーポートフォリオの構築を進める方針を示している。外資系パートナー企業にとっての有力なローカルパートナー候補でもある。
出典:https://tandt.com.vn/
Vinacommin – Vietnam National Coal-Mineral Industries Group (ベトナム石炭鉱産グループ)
ベトナム国家石炭鉱物産業グループ(Vinacommin)は、国内最大の石炭採掘・加工企業として知られるベトナム国営の複合産業グループである。主力事業は石炭・鉱物資源の採掘・加工・輸出であるが、自社炭鉱近隣の石炭火力発電所を複数保有・運営し、電力事業者としての側面も持つ。
同社はクアンニン省を中心に国内主要炭鉱の大半を運営しており、国内の石炭供給における圧倒的なシェアを誇る。2025年時点の生産目標は年間約4,000万トンであり、発電・製鉄・セメント等の需要産業への安定供給を続けている。
電力分野では、石炭火力発電所の直営運営を通じてEVNの電力需給調整に貢献するとともに、再生可能エネルギーへのポートフォリオ転換も模索している。ベトナム政府のPDP8(第8次電力開発計画)に基づく脱石炭の流れの中、事業ポートフォリオの変革が求められている。
資源国営企業として長年にわたりベトナムのエネルギー安全保障を支えてきた基幹企業として、電力・ガス業界の重要プレーヤーとして位置づけられる。
出典:https://www.vinacomin.vn/
Petrolimex (ペトロリメックス)
ペトロリメックス(Vietnam National Petroleum Group / Petrolimex)は、ベトナム最大の国営石油製品販売・ガス供給企業であり、HOSE上場企業(ティッカー:PLX)でもある。全国約3,800か所以上の給油ステーションネットワークを通じてベトナムのガソリン・軽油市場の約50%超のシェアを占める。
石油製品の輸入・精製・販売のほか、LPG・潤滑油・航空燃料の販売も手掛けており、子会社を通じてタンク輸送・海上輸送・倉庫管理等の物流サービスも提供している。2024年の連結売上高は約13兆ドン規模と推計され、国内燃料市場における圧倒的な存在感を維持している。
近年は電動化の潮流を見据え、EV向け充電インフラの整備を全国のガソリンスタンドネットワークで展開し始めており、エネルギー転換への対応を進めている。また再生可能エネルギー事業への参入も検討している。
ベトナムのエネルギー・ガス流通において最大の流通インフラを保有する国営企業として、電力・ガス業界の主要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.petrolimex.com.vn/
Petrolimex Gas Company (ペトロリメックスガス)
ペトロリメックスガス(Petrolimex Gas Company / PGC)は、ベトナム最大の石油製品グループであるペトロリメックス(PLX)傘下のLPG(液化石油ガス)専業子会社であり、HOSE上場企業(ティッカー:PGC)でもある。全国的な販売ネットワークを通じてLPGボンベ・バルク供給を家庭・商業・工業ユーザーに提供している。
LPG販売量はベトナム国内トップクラスを誇り、全国規模の充填工場・ガス輸送インフラを整備している。近年は都市ガスパイプラインの普及に伴いLPG需要が一部シフトする局面があるが、引き続き農村部・非パイプライン地域では主要エネルギー源として需要が安定している。
2024年の業績は売上・利益ともに堅調に推移しており、配当性向の高さが個人投資家から支持されている。母体であるペトロリメックスの強力な流通ネットワークを活用しながら、LPG市場でのシェア維持と新分野(電動化対応含む)への展開を模索している。
ベトナムのLPGガス流通市場を支える主要企業として、エネルギー・ガス業界の重要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.pgas.com.vn/
Petro Center Corporation (中部ペトロ生産投資公社)
ペトロセンター公社(Petro Center Corporation)は、ベトナム中部地域を中心に石油製品・ガスの流通・販売を担う国営系エネルギー企業である。石油製品の卸売・小売および工業用ガスの供給を主要事業としており、中部地域の燃料流通インフラを支える重要な役割を果たしている。
同社はダナン市を拠点とし、中部各省への石油製品の安定供給を確保するためのタンク・物流インフラを保有している。政府系の石油流通体制の一翼を担い、地域エネルギー安全保障に貢献している。
近年はLPGを含むガス製品の販売強化と、再生可能エネルギーへの対応を含む事業多角化を模索している。ベトナム中部の経済発展・工業化の進展とともに、エネルギー需要の拡大に対応するインフラ整備を継続している。
中部ベトナムの燃料・ガス流通を担う地域密着型の国営エネルギー企業として、電力・ガス業界の地域プレーヤーとして位置づけられる。
出典:https://www.petrocenter.com.vn/
Thai Duong Petrol Joint Stock Company (タイズオン石油)
タイズオン石油(Thai Duong Petrol Joint Stock Company)は、ベトナムの民間石油製品・ガス流通企業であり、ガソリン・軽油・LPGの小売・卸売販売を主要事業としている。全国規模の給油ステーションネットワークを展開し、ペトロリメックス等の大手国営企業と競合しつつ市場シェアの拡大を図っている。
同社は民間資本による石油流通企業として、政府のエネルギー流通市場の競争促進政策を背景に成長してきた。地域密着型の運営と機動的な価格設定を強みとして、地方部・二次都市での給油ステーション展開を推進している。
近年は燃料品質の管理強化と環境対応型燃料への対応、およびキャッシュレス決済・デジタルサービスの導入を通じた顧客利便性向上に取り組んでいる。EV普及の進展を見据えた将来の事業モデル転換についても模索している。
ベトナムの民間石油・ガス流通業界において存在感を持つプレーヤーとして、電力・ガス業界の民間企業として位置づけられる。
出典:https://www.thaiduongpetrol.com/
PetroVietnam Low Pressure Gas Distribution Company (ペトロベトナム低圧ガス配給会社)
ペトロベトナム低圧ガス配給会社(PetroVietnam Low Pressure Gas Distribution Company / PV Gas D)は、国営ペトロベトナム(PVN)傘下のPVガス(GAS)グループに属する都市ガス低圧配給専門企業である。家庭・商業施設向けの低圧天然ガスをパイプライン経由で供給する都市ガス事業を主要業務としている。
同社はベトナム南部を中心に都市ガスパイプラインネットワークの整備・運営を行っており、ホーチミン市近郊の住宅・集合住宅・飲食店・商業施設への天然ガス供給を手掛けている。天然ガスの普及拡大に伴い、既存LPG利用者の天然ガスへの切り替え促進も推進している。
都市ガスインフラの整備はベトナム政府のエネルギー政策の重要課題の一つとなっており、同社は政府の都市ガス普及計画と連動したパイプライン延伸投資を継続的に実施している。2025年時点でホーチミン市近郊の一定エリアへの都市ガス供給が安定稼働している。
ベトナムの都市部における天然ガスの低圧配給インフラを整備・運営する専門企業として、電力・ガス業界の重要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.pvgas.com.vn/
CNG Vietnam Joint Stock Company (CNG Viet Nam)
CNG Vietnam(CNG Viet Nam Joint Stock Company)は、ベトナムにおける圧縮天然ガス(CNG)の生産・供給を専門とする上場企業(HOSE:GAS)であり、主に輸送・産業セクター向けにCNGを提供している。ペトロベトナム(PVN)グループとの関係のもと、南部ベトナムにおけるCNG流通の中核的な役割を担っている。
同社はCNGを圧縮・充填する設備を保有し、タンクトラックによる顧客工場・CNG充填ステーションへの配送を行っている。主要顧客は製造業(繊維・食品・化学等)の産業用ガスユーザーおよびCNG仕様の商用車向け充填ステーションである。
天然ガス価格の安定性とCO₂排出削減効果を背景に、LPGや重油を利用していた工場のCNGへの燃料転換需要を取り込んでおり、近年は産業用顧客基盤の拡大が続いている。EVトラック普及など輸送部門の変化も視野に入れながら、長期的な需要動向への対応を図っている。
ベトナムのCNG流通市場において主導的な地位を占める上場企業として、電力・ガス業界の主要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://cngvietnam.com.vn/
PetroVietnam Gas City Investment and Development Company (ペトロベトナム都市ガス投資開発)
ペトロベトナム都市ガス投資開発会社(PetroVietnam Gas City Investment and Development Company / PV Gas City)は、国営ペトロベトナム(PVN)グループのPVガス傘下にある都市ガスインフラの投資・開発専門企業である。都市ガスパイプラインの設計・建設・運営から、ガスステーションの開発・管理まで都市ガス事業の川下全体を手掛けている。
同社はハノイを含む北部地域での都市ガスパイプラインネットワークの整備・拡張に積極的に取り組んでおり、住宅・商業施設への天然ガス供給インフラを開発・運営している。ベトナム政府の都市ガス普及計画に基づく接続世帯数の拡大を目標に掲げている。
都市ガスへの転換は環境負荷の低減(LPGボンベ比CO₂削減)に加えて、家庭・事業者のエネルギーコスト削減にも貢献することから、需要は安定的に拡大している。同社はパイプライン延伸投資を継続しながら顧客基盤の拡大を推進している。
ベトナムの都市ガスインフラ整備・開発において先導的な役割を担う企業として、電力・ガス業界の重要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.pvgas.com.vn/
Southern Gas Trading Company (ペトロベトナム南部ガス商事)
南部ガス商事(Southern Gas Trading Company / PV Gas South)は、国営ペトロベトナム(PVN)傘下のPVガス(GAS)グループに属する南部地域のガス流通・販売専門企業である。天然ガス・LPG・CNG等の多様なガス製品を南部ベトナムの工業・商業・家庭ユーザーに供給している。
同社はホーチミン市を中心とする南部地域において、発電所向けの大口ガス供給から、産業ユーザー向けの工業用天然ガス・LPGの流通まで幅広い顧客セグメントに対応している。PVガスグループの南部流通ネットワークの中核として機能している。
近年はLNG輸入の本格化に伴い、PVガスグループが推進するLNG受入ターミナル整備プロジェクト(Son My等)との連携を通じた天然ガス供給量の拡大を見据えた事業展開が期待されている。
ベトナム南部のガス流通インフラを担うPVガスグループの重要子会社として、電力・ガス業界の主要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.pvgas.com.vn/
PetroVietnam LPG Corporation (ペトロベトナムLPG)
ペトロベトナムLPG(PetroVietnam LPG Corporation / PV LPG)は、国営ペトロベトナム(PVN)グループのPVガス傘下にあるLPG(液化石油ガス)の輸入・充填・販売専門企業である。ベトナム全土を対象にLPGボンベ・バルク供給の販売ネットワークを展開しており、家庭・飲食・工業向けLPG市場の主要供給者の一つである。
同社は国内LPG需要に対応するための輸入インフラ(受入ターミナル・貯蔵設備)を保有しており、海外からのLPG輸入を通じて国内供給を補完する役割を果たしている。PVガスグループのLPG事業における上流(輸入)から下流(販売)まで一貫した事業体制を支えている。
ベトナムのLPG市場では都市ガスパイプラインの整備が進む一方、農村部・非パイプライン地域では引き続きLPGが主要家庭エネルギーとして利用されており、安定した需要基盤が存在する。同社は長期的な市場変化を見据えた事業戦略の見直しも進めている。
ペトロベトナムグループのLPG流通事業の中核企業として、電力・ガス業界のガス部門における主要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.pvgas.com.vn/
ベトナムの主要電力・ガス企業6選〜日系編〜
丸紅(ベトナム電力事業)
丸紅株式会社は、総合商社として電力・エネルギー分野でベトナムにおける長期的な事業展開を続けており、EPC受注および直接投資の双方でプレゼンスを持つ。これまでに11件の大型発電所EPC工事に携わり、BOT方式によるNghi Son 2石炭火力発電所(1,200MW、2022年運転開始)の運営に参画している。
パイプライン案件としては、O Mon 2ガス複合火力(1,050MW)の投資証明書を取得済みでPVN・EVNとの契約交渉を継続。Quang Ninh LNGガス発電所(1,500MW)も投資証明書を取得し、実現可能性調査報告書の提出準備を進める。
2024年6月にはDoosan Enerbility VietnamとMOUを締結し、洋上風力向けモノパイル基礎等のローカル製造・サプライチェーン構築を推進する方針を示した。ベトナム首相も丸紅にガス発電・洋上風力への投資拡大を要請している。
石炭火力からLNG・再エネへのポートフォリオ転換を進めながら、ベトナムの電力セクターにおける主要な日系投資家としての長期的地位を維持している。
出典:https://www.marubeni.com/
JERA(日本の電力大手合弁)
JERA株式会社は、東京電力フュエル&パワーと中部電力の合弁によって設立された日本最大の発電事業者であり、グローバルなLNG・電力事業を展開している。ベトナムではタインホア省Nghi Son地区に1,500MWのLNG複合サイクル発電所を計画しており、総投資額は約22億米ドルに達する大型案件である。
本プロジェクトは2024年3月にベトナム政府の投資方針承認を取得した。設備構成は複合サイクルガスタービン(CCGT)、年間120万トンのLNG再ガス化ターミナル、LNG貯蔵設備、輸入桟橋を含み、約68ヘクタールの敷地に建設される。2030年以前の稼働を目標としている。
JERAはベトナム参入にあたり、現地パートナーとの協業と政府との協議を並行して進める方針を示している。アジア各国でのLNG発電経験を有しており、ベトナムのPDP8に基づく脱炭素電源の開拓において存在感を示す。
日本の電力大手が直接投資主体となるベトナムLNG発電事業として注目度が高く、電源多様化と脱石炭を推進するベトナムのエネルギー政策とも整合した案件である。
出典:https://www.jera.co.jp/
豊田通商(ベトナム水力発電)
豊田通商株式会社は、トヨタグループの総合商社として再生可能エネルギーを含む多様なインフラ事業を世界17カ国以上で展開している。2025年3月末時点の自社保有発電容量は6GW超に達し、日本の風力・太陽光事業者の中で最大規模を誇る。ベトナムでは北部山岳地帯に立地するNgoi Phat水力発電所(設備容量84MW)の運営会社NEDI2に出資参画している。
同発電所はEVN(ベトナム電力公社)との25年間の電力購入契約(PPA)のもとで安定的に運転されており、豊田通商は日本の水力発電技術・ノウハウの導入により運転効率向上と運営改善に貢献している。これはベトナムにおける同社初の海外水力発電投資案件である。
豊田通商は2031年3月期までに10GWの総発電容量達成を目指しており、ベトナムを含むアジア市場での再エネポートフォリオ拡大を継続する方針を示している。現地パートナーやEVNとの長期的な関係構築を重視しつつ事業展開を進めている。
ベトナムのクリーンエネルギーインフラ整備への貢献企業として、同社の実績と技術移転姿勢は現地での信頼性確立に寄与している。
出典:https://www.toyota-tsusho.com/
J-POWER (電源開発株式会社)
電源開発株式会社(J-POWER)は、日本最大級の発電専業企業であり、ベトナムの電力インフラ分野において長年にわたり投資・運営実績を積んでいる。ベトナムでの主要事業はVinh Tan 4石炭火力発電所(1,200MW)の建設・運営参画であり、電源開発はEPC・O&Mを含む形で同プロジェクトに深く関与してきた。
近年はベトナム政府のPDP8(第8次電力開発計画)に基づく脱石炭・再エネ転換の方針を受け、石炭火力からガス・再生可能エネルギーへのポートフォリオ転換を模索している。LNG発電案件への参入検討とともに、日本政府の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」政策の枠組みのもとでクリーンエネルギー協力を推進する役割も担っている。
J-POWERはベトナムを東南アジア事業の重要市場として位置づけており、現地パートナーやEVNとの協議を通じて中長期的な電力事業の継続を検討している。石炭資産の管理・移行期間における安定した運営実績が評価されている。
ベトナムのエネルギー転換期において、日系電力企業として存在感を維持しながら次世代電源への移行を進めている。
出典:https://www.jpower.co.jp/
双日株式会社 (ベトナム電力事業)
双日株式会社は、総合商社としてベトナムにおける電力インフラ分野への投資・事業参画を行っている日系企業である。電力・エネルギー分野では、ベトナムの天然ガス・LNG関連プロジェクトへの参画や、再生可能エネルギー案件の開発を検討・推進している。
双日は東南アジア全域でのエネルギー事業を戦略的成長領域の一つとして位置づけており、ベトナムのLNG発電および再エネ市場における商機の発掘に注力している。現地パートナーとの協力や政府機関との対話を通じて、PDP8(第8次電力開発計画)の方針と整合した投資機会の獲得を進めている。
同社はベトナムで工業団地・不動産・インフラ等幅広い分野に事業展開しており、電力事業はその重要な柱の一つと位置づけられている。日本の商社として現地企業・政府機関との長期的な関係を基盤に、信頼性の高い事業パートナーとしての地位を確立している。
ベトナムの脱炭素化・LNG転換期において、日系商社として電力インフラの整備・転換に貢献する重要プレーヤーとして位置づけられる。
出典:https://www.sojitz.com/
三井物産株式会社 (ベトナム電力事業)
三井物産株式会社は、日本を代表する総合商社であり、エネルギー・電力分野でベトナムにおける大型インフラ投資を行っている。ベトナムでの電力事業における主要案件は、LNGを燃料とするガス複合サイクル発電プロジェクトへの参画であり、日本政府の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」政策とも連動した展開を行っている。
三井物産はベトナムのエネルギー転換(脱石炭・LNG・再エネへの移行)を支援する立場から、現地電力事業体(PVN・EVN)や他の投資家との協力関係構築を進めている。LNGインフラ整備においてはガスの安定調達と受入ターミナル運営の両面で貢献する役割を担う。
同社はベトナム全体で工業団地・化学・物流・金融など幅広いセクターに投資しており、電力事業はその中でもエネルギートランジションという長期テーマに沿った戦略的な投資領域となっている。
日系大手商社として技術・資金・人材の総合力を活かしながら、ベトナムのクリーンエネルギー転換を支援する主要な投資家として位置づけられる。
出典:https://www.mitsui.com/
ベトナムの主要電力・ガス企業8選〜外資編〜
AESベトナム(米系電力)
AES Corporation(米国本社)のベトナム事業は、Quang Ninh省でMong Duong 2石炭火力発電所(1,242MW)をBOT方式で運営しており、2040年に契約満了となる。2024年のベトナム売上高は約3億1,200万米ドル、税引前利益は約3,400万米ドルであった。
2023年11月にMong Duong 2の株式51%をチェコのSe.ven Global Investmentsへ売却することで合意しており、2026年初頭に完了が見込まれる。石炭資産売却と並行して次世代LNG電力への転換を推進している。
次世代案件としては、PV GASとの合弁によるSon My LNG受入ターミナル(年間450TBtu、総投資14億米ドル、2027年商業運転開始予定)と、Son My 2複合サイクルガスタービン発電所(2,250MW)がビンタン省で一体開発される計画で、いずれも政府の投資方針承認を取得済みである。
石炭からLNG・ガスへの電源転換を先導する外資系電力投資家として、ベトナムの脱炭素化政策と整合した事業モデルへの移行を進めている。
出典:https://www.aes-vietnam.com/
B.グリム・パワー(タイ系電力)
B.グリム・パワー(B.Grimm Power Public Company Limited)はタイを本拠とする独立系発電事業者(IPP)であり、東南アジア各国で電力の卸売・産業用電力供給を展開している。ベトナムではDau Tieng 2太陽光(240MW)、Phu Yen TTP太陽光(257MW)を2019年に稼働させ、2021年にHH1風力(48MW)への投資を開始した。合計設備容量は約545MWである。
LNG電力事業への参入も計画しており、Energy Capital Vietnam(ECV)およびSiemens Energyとの三者間共同開発協定を締結している。このLNG-to-Powerプロジェクトへの出資規模は約2億米ドルを想定している。
一方、EVNによる太陽光FIT削減問題には懸念を示しており、規制環境の変化が収益性に影響するリスクも存在する。2024年の産業ユーザー向け電力売上は前年比6.4%増と堅調であった。
タイ系外資として東南アジア全域で再エネポートフォリオを拡張しており、ベトナムを重要市場の一つと位置づけて投資を継続している。
出典:https://www.bgrimmpower.com/
TotalEnergies(仏系エネルギー)
TotalEnergies(フランス本社)は石油・ガス・電力・再エネを手掛けるグローバルエネルギー大手であり、ベトナムでは産業用・商業用の分散型太陽光発電事業を展開している。日本のENEOSとの合弁TotalEnergies ENEOSを通じ、工場・商業施設への屋根置き太陽光とPVソリューションを提供し、運営中の太陽光システムは合計100MW超に達している。
直近の主要案件として、2025年4月にホーチミン市内のSamsung Electronics向けに28MWpの大型ルーフトップ太陽光の設置を開始した。年間約40,000MWhを発電し施設需要の約26%を賄う。2025年8月にはDong Nai省の工場に310kWpの太陽光+220kWhのBESSを竣工している。
同社は2030年に100GWの再エネ設備容量達成を目指しており、ベトナムを含むアジア市場での産業用PPAの拡大を継続する方針を示している。
ベトナム事業は分散型産業向け電力サービスが主軸であり、製造業が集積する南部地域でのグリーン電力需要を着実に取り込んでいる。
出典:https://totalenergies.com/vietnam
POSCO Energy (ポスコエナジー)
ポスコエナジー(POSCO Energy Co., Ltd.)は、韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOグループの電力・エネルギー子会社であり、発電所の建設・運営を主要事業としている。ベトナムでは北中部地域において大型石炭火力発電プロジェクトへの投資・参画実績を持ち、韓国系電力投資企業の代表格として知られる。
同社はベトナムの電力インフラ整備において、POSCOグループの鉄鋼・エンジニアリング技術と金融力を組み合わせた大型BOT事業を手掛けてきた。近年は石炭火力資産の管理と再エネ・LNGへのポートフォリオ転換を並行して進めており、ベトナム政府のPDP8に基づくエネルギー転換政策への対応を進めている。
2025年時点では、保有する石炭火力アセットの引き続きの安定運営と、将来の再エネ・LNG投資機会の評価を並行して実施している。韓国本社のESG方針強化に伴い、ベトナム事業においても脱炭素への移行計画が求められている。
韓国系大手の電力投資企業として、ベトナムの電力セクターにおける主要外資プレーヤーとして引き続き重要な役割を担っている。
出典:https://www.poscoenergy.com/
Formosa Plastics Group Vietnam (フォルモサプラスチックグループベトナム)
フォルモサプラスチックグループ(Formosa Plastics Group)は台湾の大型複合化学・工業企業グループであり、ベトナムにおいてはハティン省で大規模な一貫製鉄所(Formosa Ha Tinh Steel / FHS)を運営している。同製鉄所は年産200万トン規模の粗鋼生産能力を持ち、自家発電設備として大型石炭火力発電所を保有・運営している。
FHSの自家発電能力は約1,700MW規模に達しており、製鉄所内の電力需要を自給するとともに余剰電力をEVNの系統へ売電している。この規模はベトナムの民間大型自家発電設備として国内最大クラスに位置づけられる。
2025年時点ではFHSの第2期拡張計画(年産400万トンへの拡張)の進展状況が注目されており、電力設備の増強も計画に含まれる見通しである。また環境対応面での設備改善投資も継続して実施されている。
台湾系大型工業投資として、ベトナムの電力供給・重工業インフラ双方に大きなプレゼンスを持つ外資企業として電力・ガス業界の重要プレーヤーに位置づけられる。
出典:https://www.fpg.com.tw/
KEPCO (韓国電力公社)
韓国電力公社(KEPCO / Korea Electric Power Corporation)は、韓国の国営電力会社であり、海外電力事業への積極的な投資を展開している。ベトナムにおいては、Binh Phuoc省でのVuong Nguyen水力発電所(140MW)への出資参画など複数の発電プロジェクトに関与してきた実績を持つ。
KEPCOはベトナムの電力インフラ開発における長期的な投資家として、原子力・石炭・LNG・再エネなど多様な電源に関する技術力と資金力を強みとして活用している。近年はベトナム政府との協力のもと、LNG発電プロジェクトへの参入機会を探索している。
韓国政府の対外エネルギー協力政策との連動や、POSCO Energy等他の韓国系電力企業とのコンソーシアム形成を通じて、ベトナム電力市場でのプレゼンス維持・拡大を図っている。EVN・PVNとの長期的な関係構築も重視している。
韓国を代表する国営電力会社として、ベトナムの電力セクターにおける外資系主要投資家の一つとして位置づけられる。
出典:https://home.kepco.co.kr/
EDF (フランス電力)
フランス電力(EDF / Électricité de France)は、欧州最大級の電力企業であり、グローバルな発電・電力事業を展開している。ベトナムにおいてはEDF傘下のEDF Renewablesを通じて再生可能エネルギー分野への投資を行っており、陸上・近海風力発電プロジェクトの開発に関与してきた。
EDFはベトナム政府の洋上風力開発計画(2030年目標6GW超)における主要外資候補として注目されており、現地パートナーとの共同開発やEVNとの協議を通じて案件形成を進めている。フランス政府のベトナムとの二国間エネルギー協力枠組みの中でも重要な役割を担っている。
2024〜2025年にかけては、ベトナムでの洋上風力開発の初期段階として風況調査・海域調査・許認可取得プロセスに取り組んでいる。PDP8に明示された再エネ拡大目標を追い風に、大型洋上風力案件の実現に向けた取り組みを継続している。
フランスを代表する欧州系電力企業として、ベトナムの再エネ転換を主導する外資系主要投資家の一つとして位置づけられる。
出典:https://www.edf.fr/
TotalGaz Vietnam (トータルガズベトナム)
トータルガズベトナム(TotalGaz Vietnam)は、フランスのエネルギー大手TotalEnergiesのLPG流通部門がベトナムで展開するガス販売事業体である。家庭・商業・工業向けにLPGボンベ・バルク供給を行う民間LPG流通ブランドとして、ホーチミン市を中心に南部ベトナムで事業を展開してきた。
同社は「Total Gaz」ブランドのLPGボンベおよびバルクガスを小売・卸売チャンネルを通じて供給し、TotalEnergiesグループのグローバルな品質・安全基準を現地事業に適用している。家庭向け調理用LPGの流通から、商業施設・工場向けの産業用LPG供給まで幅広い顧客セグメントに対応している。
TotalEnergiesはベトナムでLPGのほか、産業用太陽光・ENEOSとの合弁による分散型再エネ事業も展開しており(TotalEnergies ENEOS)、エネルギー転換期における事業多角化を進めている。LPGから再エネへのポートフォリオ転換を見据えた中長期戦略のもとで、ベトナム事業の再構築を進めている。
フランス系大手エネルギーグループのLPG流通事業体として、ベトナムの電力・ガス業界の外資系重要プレーヤーとして位置づけられる。
出典:https://totalenergies.com/
FAQ
ベトナムの主要電力・ガス会社について何が紹介されていますか?
この記事では、ローカル、日系、外資系合わせて24社の主要電力・ガス会社の企業情報や事業内容について詳しく解説しています。
ベトナムの主要電力会社にはどのような企業がありますか?
ベトナムの主要電力会社には、Vietnam Electricity(ベトナム電力総公社)、PetroVietnam Power Corporation、Vinacommin(ベトナム石炭鉱産グループ)などがあります。
日系の電力・ガス会社はどこですか?
日系の主要電力・ガス企業には、J-POWER、丸紅、双日、JERA、三井物産が含まれ、これらはベトナムでさまざまな発電所やガスの事業を展開しています。
外資系の電力・ガス会社にはどのような企業がありますか?
外資系の電力・ガス企業には、米国のAES Corporation、韓国のPOSCO Energy、Kepco、台湾のFormosa Plastic、フランスのEDF、TotalEnergiesなどが含まれます。

