今回は、マレーシアの主要海運会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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マレーシアの主要海運会社8選〜ローカル編〜
Westports Holdings Bhd(ウエストポーツ・ホールディングス)
1993年4月に会社が設立され、1994年にポートクランにてコンテナや貨物を扱う港湾業務を開始する。2013年10月にマレーシア証券取引所のメインマーケットに上場しており、2021年3月2日時点で5,725名を雇用する。
2020年度の収益は19億7,497万リンギットで、税引後利益は6億5,449万リンギット、総資産は52億6,165万リンギットとなっている。また、同年度のコンテナ取扱量は1,050万TEUで、ポートクランにおける市場シェアは79%であった。
2021年3月には、同社と子会社のクランポート・マネジメント社がボースティード・クルーズ・センター(BCC)を2億3,000万リンギットで買収した。BCCはクルーズ船や海軍の船舶に港湾施設やサービスを提供しており、この買収でウエストポーツはクルーズ・ターミナル運営事業に参入することになる。
出典:https://www.westportsholdings.com/
Pelabuhan Tanjung Pelepas Sdn Bhd(ポート・タンジュン・ペラパス)
港湾運営やインフラ建設のMMCコーポレーションと74ヶ国にネットワークを持つAPMターミナルズが出資した子会社で、ジョホール州で港湾管理を行う。同社が管理する港は主要な東西航路の合流地点に位置し、国内で最も先進的なコンテナターミナルであり、世界上位100港の中で15位にランクインしている。
同社のコンテナ取り扱い能力は1,250万TEUあり、14のバースを所有し、24万TEUのコンテナヤード、66基のスーパーポストパナマックスクレーン(24基のULCVクレーン)を所有する。
また、同社はフリーゾーンサービスも提供しており、1997年にフリーゾーン・ステータスを取得している。フリーゾーンは5つのフェーズで構成されており、フェーズ1と2で約648エーカーの広さを持つ。
2020年度の収益は15億リンギットで、2020年末時点でのコンテナ貨物取扱量は985万TEUであった。
出典:https://www.ptp.com.my/
https://www.mmc.com.my/
Malaysian Bulk Carriers Bhd(マレーシアン・バルク・キャリアズ)
1988年11月に会社設立し、2003年よりマレーシア証券取引所のメインボードに上場。鉄鉱石、石炭、砂糖、肥料、穀物などのばら積み貨物、石油製品、化学薬品、植物油などのタンカー、船舶管理を主要事業としており、マレーシア最大のドライバルク船主となっている。
同社が所有している貨物船は、カムサマックス・バルク・キャリア(3隻)、スーパーマックス・バルク・キャリア(3隻)、ハンディサイズ・バルク・キャリア(2隻)などで、2020年末時点で10隻を保有しており、総積載量は55万5,059トン、平均船齢は5.6年となっている。
2020年度の収益は1億7,577万リンギットで、2,068万リンギットの税引前損失を計上している。また、2020年末時点でのグループ総資産は6億5,215万リンギットであった。
2020年、同社はゼロアクシデントタスクフォースを結成し、船舶運営における安全レベルの向上に大きく貢献している。
出典:https://www.maybulk.com.my/
Shin Yang Shipping Corporation Bhd(シン・ヤン・シッピング・コーポレーション)
シン・ヤン・シッピングとしては1970年に会社設立され、海運と造船を事業としている。同社子会社にて295隻(総登録トン数約43万5,000トン)の船舶を所有し、国内外で船舶サービスの提供を行う。また、同社はマレーシアにおける主要な造船会社のひとつでもあり、付随サービスとして船舶修理なども手掛けている。
海運事業においては東南アジア、東アジア、極東から中近東湾岸までを範囲としている。造船については、サラワク州のクアラバラムとミリ、ビンツルに造船所を所有している。
2020年のグループ収益は5億9,650万リンギットで、5,287万リンギットの総損失を計上した。また、2020年6月末時点での総資産は14億1,265万リンギットとなっている。
同社は2020年11月に1,200TEUのコンテナ船『Danum 175』を取得し、輸送能力の強化を図っている。
出典:https://www.syshippingcorp.com.my/
MMC Corporation Bhd(MMCコーポレーション)
1911年にロンドンで会社設立され、1976年にスズ鉱業会社としてマレーシアへ会社を移転する。現在、同社はマレーシアにおける主要ユーティリティ・インフラストラクチャ・グループで、事業部はエネルギーとユーティリティ、港湾と物流、エンジニアリングと建設事業の3部門に分かれており、2020年6月4日時点で15,327名を雇用する。
港湾事業においては、傘下にポート・タンジュン・ペラパス、ジョホールポート、ノースポート、ペナンポート、タンジュンブルアスポート、レッド・シー・ゲートウェイ・ターミナル(サウジアラビア)、コンテナ・ナショナルがある。同社は世界上位10位に入る港湾運営会社であり、マレーシア国内全港でのコンテナ取扱量は2,150万TEUに達する。
また、2020年度の収益は44億9,000万リンギットで、3億7,500万リンギットの税引後利益を計上している。
2021年4月には、同社はソフトウェア・ソリューション大手のラムコ・システムズ社と共同で、5つの港で大規模なデジタル・トランスフォーメーション(DX)に着手したことを発表した。DXでは、港のプロセスを統合及び標準化する。システムには、人工知能や機械学習などのスマート機能も含まれており、人為的ミスを減らして時間を節約できる予測アラートやチャットボットも利用できる。
出典:https://www.mmc.com.my/
Harbour-Link Group Bhd(ハーバー・リンク・グループ)
1975年、サラワク州で貨物運送業と船舶輸送業として設立。現在は関税コンサルティング、通関、倉庫保管、海上輸送及び船積みなどの物流事業を行う。また、土木・機械エンジニアリング、建築・建設、オフショア海洋支援サービス、交通安全教育、コンサルタントサービスなどの分野にも事業を拡大している。
同社はサラワク州ビントゥルを拠点として、東マレーシアに10ヶ所、西マレーシアに8ヶ所の支店を持ち、またブルネイ、中国、シンガポール、韓国に支店を展開しており、1,461名を雇用する。
2020年度の収益は6億1,725万リンギットで、2,364万リンギットの税引後利益を計上している。事業別収益は、輸送及び海洋サービスが3億1,761万リンギット、統合ロジスティクス1億5,784万リンギットなどとなった。
出典:https://www.harbour.com.my/
Northport (M) Bhd(ノースポート)
1901年創業で、2016年に港湾運営やインフラ建設のMMCコーポレーション傘下に入る。コンテナサービス、貨物サービス、ロジスティックサービス、マリンサービスといった事業ユニットで構成されており、 コンテナから自動車、ブレークバルク貨物まで様々な種類の貨物を取り扱う専用施設とサービスを提供している。
2019年4月、同社は国内港湾施設としては初めて労働安全衛生の管理システムのISO 45001:2018を、そして2020年12月には贈収賄防止マネジメントシステムISO 37001:2016を取得している。
2019年10月、同社はPOICサバと姉妹港関係構築に向けた戦略的協力協定を締結し、西マレーシアと東マレーシア、さらには東アセアン成長地域を中心とした近隣地域との貿易を促進することで合意した。
また、2021年1月~5月の同港における在来型貨物取扱量は410万FWTとなり、同年5月は過去最高となる1,017,332FWTを達成している。
出典:https://www.northport.com.my/
https://www.mmc.com.my/
MISC Bhd(エムアイエスシー)
1968年に会社設立され、国際エネルギー関連の海事ソリューション及びサービスを提供する。主な事業は、エネルギー輸送及び関連事業、オフショアフローティングソリューション保有・運用、船舶修理、エンジニアリング・建設、総合海洋サービス、港湾管理・海洋サービス、海洋教育・トレーニングとなっており、8,600名を雇用する。
同社は液化天然ガス船、石油・製品船、大型エタン船、浮体式生産システムなど100隻以上の所有船と傭船で構成されており、合計載貨重量は1,100万トン以上となっている。
2020年度の収益は94億リンギットで、1億6,980万リンギットの税引後損失を計上している。また、総資産は518億2,000万リンギットとなっている。
2021年2月、同社グループは「乗組員の健康と乗組員交代に関するネプチューン宣言」に署名したことを発表、船員へのCOVID-19ワクチン接種優先などを主要アクションと定義した。
出典:https://www.misc.com.my/
マレーシアの主要海運会社3選〜日系編〜
“K” LINE Maritime (M) Sdn Bhd(K-ラインマリタイムマレーシア)
1990年8月に、川崎汽船の自動車輸送におけるグローバル海運事業のマレーシアの総代理店として設立され、セランゴール州シャーラムを拠点としている。
同社では、自動車運搬船とドライバルクキャリア船を所有しており、自動車輸送及び石炭、鉄鉱石、穀物(小麦、大豆、とうもろこしなど)、木材チップ、パルプなどの原材料の輸送を手掛ける。同社は日本向けだけでなく、中国やインドなどの新興国向けの輸送、及び大西洋地域での三国間輸送も提供している。
K-ラインは世界最先端の技術を駆使し、環境保護と省エネを追求する「ドライブ・グリーン・プロジェクト」に着手している。また、同社は日本で建造された1隻あたりで7,500台の自動車を輸送できる4隻の新造船を導入し、CBUユニットに加えて高重量車、農業機械、建設機械などの輸送を可能としている。
出典:https://www.kline.com.my/
Nistrans (M) Sdn Bhd(マレーシア日新)
大手国際輸送・物流企業である日新のマレーシア法人で、会社設立は1994年6月18日、資本金は50万リンギットとなっている。セランゴール州シャーラムを拠点としており、品質管理システムのISO 9001:2015認証を取得している。
マレーシア国内では、陸・海・空国際複合輸送、倉庫、通関、引越など総合物流を提供している。セランゴール州に本社を置き、クアラルンプール国際空港、ポートクラン、シャーラム、マラッカ、ジョホールバル、ペナンに支店を持つ。
海上輸送では、コンテナ単位での海上貨物輸送を始め、小口貨物を対象とした海上混載貨物輸送、及び大型機械等の在来船輸送など、様々なタイプの貨物に柔軟に対応し、日新グローバルネットワークと連携して、発地から着地までを一貫して輸送している。
出典:http://www.nistrans.com.my/
ECL (Malaysia) Sdn Bhd(ECLマレーシア)
1986年に、イースタン・カーライナーの駐在員事務所として1986年に設立。同社は、ECLシンガポールとハーバー・リンク・グループとの合弁会社となっている。マレーシア法人は、品質管理システムのISO 9001:2015認証を取得している。
セランゴール州スバンを拠点として海上輸送事業を手掛けており、自動車、トラック、重機、特殊貨物などを輸送している。
同社が所有している多目的船はあらゆる種類の貨物に対応できるように設計されており、アジアの海を航行する貨物船としては最大級の大きさとなっている。また、自動車·トラック運搬船(PCTC)及び自動車運搬船(PCC)は大型のRORO船で、自動車を世界各地に輸送している。
2019年7月時点で、同社は19隻の多目的船、10隻のPCTCを運用している。
出典: https://www.eclmalaysia.com/
マレーシアの主要海運会社3選〜外資系企業編〜
DSV Air & Sea Sdn Bhd(DSVエア・アンド・シー)
デンマークに本社を置き、世界80ヶ国以上で陸海空のロジスティクスサービスを提供するDSVのマレーシア法人で、1990年よりマレーシア国内で事業を行っている。
クラン港、クアラルンプール国際空港、ペナン、ジョホールバル、パハンの5ヶ所に拠点を構えており、クラン港とクアラルンプール国際空港、ペナン、ジョホールバルでは通関ライセンスを所有している。
同社は空運、海運、陸運、ロジスティクスソリューション、プロジェクト輸送、貨物保険、通関サービスを提供しており、マレーシアで約104人の従業員を擁する。海上輸送では、ブレークバルク貨物及びコンテナ輸送を行っている。
また、DSVはマレーシア国内においてDSVロジスティクス、DSVソリューションズなどの企業も運営している。
出典: https://www.dsv.com/
Hapag-Lloyd Sea Sdn Bhd(ハパックロイド・シー)
ハンブルクに本社を置くドイツの海運会社・海上コンテナ運送会社「ハパックロイド」のマレーシア法人で、1970年代初旬に現地代理店のアングロ・フレンチ・フォアーディング社を通じてマレーシアへ進出している。
1997年にはハパックロイド・マレーシアが設立され、マレーシアとブルネイで13拠点を展開、マレーシアの産業・経済回廊や内陸部の海運・物流ニーズに対応している。
海運事業においては、アジア及び北ヨーロッパ、北アメリカ、地中海、ラテンアメリカへの輸送を手掛けている。
2020年8月、同社はクアラルンプールにビジネスサービスセンターを設立し、マレーシア・シンガポール地域のカスタマーサービス、オペレーション、ビジネスアドミニストレーションのすべての業務を、クオリティサービスセンター(QSC)マレーシアに集約することを発表した。QSCは、2020年9月1日より業務を開始する。
出典: https://www.hapag-lloyd.com/
CMA CGM Malaysia Sdn Bhd(CMA CGMマレーシア)
フランスのマルセイユを本拠地とする世界有数の海運会社・コンテナ輸送会社のマレーシア法人で、現地において25年以上の実績を持つ。クアラルンプールとジョホール、タンジュン・ペラパス、ポートクラン、ペナン、スバンジャヤに事業所を持つ。
同社は危険物や規制品、大型貨物などの海上輸送に加えて、包括的なドア・ツー・ドアのサービス、オーダーメイド倉庫、保険、通関などのソリューション、さらには鉄道や航空貨物をオプションとして提供している。また、ポートクランには自社のコンテナデポ、そしてジョホールとペナンには専用デポを設置し、コンテナ在庫管理サービスを提供している。
2021年6月1日より、マレーシア法人は賠償保証書(LOI)をオンラインのみの対応としたことを発表した。この対応は、CMA CGMグループのデジタル化ロードマップの一環となっており、LOI処理時間短縮とリソースを節約することができ、顧客の輸送ニーズに素早く対応できるとしている。
出典:https://www.cma-cgm.com/
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。