今回は、タイの主要携帯キャリアに焦点を当て、ローカル4社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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タイの主要携帯キャリア4選〜ローカル企業編〜
Advanced Info Service PCL. (アドバンスト・インフォ・サービス)
1986年に創業したタイ最大の通信会社。1991年よりタイ証券取引所SETに上場している。第31代首相のタクシン氏が創業した持ち株会社Intouch Holdingsが40%、シンガポールのSingtel Strategic Investmentsが23%の株式シェアを所有している。両社ともシンガポールの政府系投資会社Temasek Holdingsの傘下である。モバイル事業を中心に、インターネット固定回線事業、その他デジタルサービスの主に3つの事業分野を持つ。
2021年度の売上高は前年比5.1%増の182,606百万バーツ、純利益は前年比1.9%減の26,922百万バーツであった。
モバイル事業では「AIS」ブランドを展開し、2G、3G、4G回線ではタイ全土、人口の98%以上をカバーする回線範囲を持っている。また、5G回線の導入も進めており人口の76%以上をカバーするなど、回線速度でもタイのモバイルプロバイダーの中で最速の評価を得ている。市場シェアも長らく第一位を維持しており、2021年第4四半期時点で47%のシェアであった。モバイルパッケージは通信速度(4Gまたは5G)、データ通信容量、無料通話時間などの条件に応じて、最安のプランで月349バーツ~となっている。Simカードはプリペイド、ポストペイドのプランを選べるほか、Simカードとスマートフォン端末のセットの取り扱いもある。
インターネット固定回線事業は同社事業では比較的新しく、「AIS Fibre」ブランドで2015年に開始、7年目となる事業である。年々市場シェアを伸ばしてきており、現在の契約数は177万回線、シェアは14%となっている。タイ全国77都県をカバーしている。パッケージはデータ通信容量にもよるが、月599バーツ~となっている。
その他デジタルサービスでは、法人向けにデータネットワークサービス、クラウドコンピューティング・データセンターサービス、IoTサービス、ICTソリューションなどを提供している。また、個人向けにはVDOプラットフォームの「AIS PLAY」を展開し、タイの各社チャンネルのデジタルTV放送、海外の有料チャンネル、スポーツ中継といったストリーミングサービスに加え、映画、カラオケ、ゲーム、eスポーツといったエンターテインメントコンテンツを提供している。その他にもモバイル端末上での金融サービスの提供、サイアム商業銀行(SCB)と提携してのデジタル融資サービス、グルーブ会社を通じてのデジタルマーケティング、保険など様々なサービスを展開している。
各種サービスはタイ全国に206店舗あるAISの直営店、代理店「AIS Telewiz」419店舗、代理店「AIS Buddy」1,141店舗、16,000店舗以上ある小売店、直接販売およびテレセールス、AISのウェブサイトなどのオンラインチャンネルと、様々なチャンネルを通じて提供している。
出典:https://www.ais.co.th/
True Corporation PCL.(トゥルー・コーポレーション)
1990年に設立された通信会社。1993年よりタイ証券取引所SETに上場している。中国の通信会社China Mobile International Holdingsが13%、タイ財閥のCPグループ(Charoen Pokphand Group)が13%の株式シェアを持ち、主な株主となっている。モバイル事業、インターネット回線事業、オンラインTV事業、デジタルサービス事業の4つの分野で事業を展開している。
2021年度の売上高は前年比2.7%増の147,208百万バーツ、純損益は1,428百万バーツの赤字であった。
モバイル事業では「Truemove H」ブランドで2001年からモバイル回線を提供する。現在、4G以下の通常回線ではタイ全国77都県、人口の98%以上をカバーしているばかりか、5G回線の普及も進め、こちらも全77都県で99%以上の人口にサービスを提供できるキャパシティを備えている。業界での市場シェアは2017年にDTACを抜いて以来第二位の位置をキープしており、2021年第4四半期時点で31%のシェアとなった。契約数は2021年末のデータで約3,225万人であった。データ通信パッケージはプリペイドおよびポストペイドの様々なプランを備えており、通信速度(4Gまたは5G)、データ通信容量、無料通話時間などの条件に応じて、最安のプランで月250バーツ~となっている。Simカードとスマートフォン端末のセットの取り扱いもあるほか、国際ローミング対応のSimカードも取り扱っている。「Truemove H」の利用者はモバイル支払いサービスの「TrueMoney Wallet」、「Truemove H」の利用状況確認や料金支払いが可能な「True iService」、ポイントで飲食店などのクーポンを利用できる「True ID」といったモバイルアプリケーションを利用できる。
インターネット回線事業では「True Online」ブランドでタイ全国に回線を提供している。タイのインターネット回線業界ではシェア第一位を維持しており、2021年末時点の契約数は約464万件であった。パッケージ料金は通信速度、通信容量などに応じ、最安のプランで299バーツ~となっている。
オンラインTV事業では「TrueVisions」というブランドで有料テレビチャンネルやHD TV放送をデジタル衛星放送、ケーブルテレビ放送、国内外のコンテンツを提供している。具体的には国内外のドラマ、サッカーなどのスポーツ中継、ドキュメンタリー、映画、バラエティー番組などの人気プログラムを放映している。2021年末時点の契約数は345万件であった。
デジタルサービス事業では消費者、大小の事業者向けに様々なサービスを提供する。アプリケーション「True ID」上でのコミュニティを生み出すデジタルメディアプラットフォーム、人工知能(AI)を用いたデータ解析「True Analytics」、IoT、クラウド、ブロックチェーンなどのデジタル技術を用いて企業の課題を解決するデジタル・ソリューションズ、サイバー攻撃などの脅威に対し能動的および受動的に対策を行うサイバーセキュリティ事業などがある。また、デジタル人材育成のためにTrue Digital Academyを2020年に開始し、デジタル・ファンデーション、データアナリティクス、ブロックチェーンなどのデジタル技術に関する知識を提供してきた。これまでに15,000人の受講者に対し、1,500以上のコースを行った実績がある。これらの取り組みに関しては、タイだけでなくインドネシア、ベトナム、フィリピンでもサービスを強化している。
出典:https://www3.truecorp.co.th/new/
Total Access Communication PCL.(トータル・アクセス・コミュニケーション)
1989年に設立された通信会社。2007年よりタイ証券取引所SET上場。ノルウェーの国営企業、テレノールグループが株式シェア47%を所有している。プリペイド、ポストペイド、事業者向けのモバイル事業を展開している。
モバイル回線のブランド名は「dtac」で、タイ全国に3Gおよび4Gの基地局を10万以上展開している。業界での市場シェアは過去第二位であったが、2017年にTrueに抜かれて以降は第三位の位置をキープしている。契約数は2021年末のデータで約1,960万人であった。データ通信パッケージはプリペイドおよびポストペイドの様々なプランを備えており、通信速度(4Gまたは5G)、データ通信容量、無料通話時間などの条件に応じて、最安のプランで月350バーツ~となっている。Simカードとスマートフォン端末のセットの取り扱いもあるほか、タブレット端末用のプランや、ゲーム用の追加パッケージ、国際ローミング対応の追加パッケージなど幅広い種類のサービスが存在する。
同社のモバイルサービスを安心して利用できるよう、dtac Beyondという追加サービスも提供している。このサービスでは、各社の医療保険や火災保険が割引で利用できる「dtac Insurance」のほか、購入端末の不具合や故障時に修理を受けることができる「dtac Mobile Care」、情報漏洩やサイバー攻撃を防ぐためのサイバーセキュリティーサービス「dtac Safe」などを取り扱っている。
また、サービス利用者にはdtac Rewardという会員プログラムがあり、モバイルサービス利用に応じてポイントを獲得できる。このポイントで小売店やレストラン、ホテルなどの割引クーポンを利用できる。会員はモバイルサービス利用期間および利用額に応じて、シルバー、ゴールド、プラチナムブルーの順に3段階のグレードとなり、グレードが高い程より良い割引サービスを受けることができる。割引クーポンの種類はAISやTrueよりも豊富に取りそろえている。
2021年11月に、Trueとdtacが2022年内の合併に向けた協議を開始することを正式発表した。デジタル領域における両社のもつノウハウを統合し、4Gおよび5G回線の品質向上やデジタルサービス、AI、クラウド、コネクティッドデバイスなどのビジネス開発を加速させる目的である。仮に合併が成立するとAISを抜きシェア第一位となるが、市場寡占となる懸念もあるため、タイ国家放送通信委員会(NBTC)が確認を進めている。
2021年度の売上高は前年比3.3%増の81,458百万バーツ、純利益は前年比35%減の3,356百万バーツであった。
出典:https://www.dtac.co.th/home.html
National Telecom PCL. (ナショナル・テレコム)
2021年1月7日にタイ通信大手のTOT PCL.と CAT Telecom PCL.が統合され設立された通信会社。通信インフラサービス、国際インターネットインフラサービス、固定インターネット回線サービス、モバイル、デジタルインフラサービスの5つの事業領域を持つ。
モバイル事業では各地に基地局を持ち、タイ全国をカバーしている。5G回線の導入も進めており、データ通信速度も向上してきている。市場シェアは2-3%と大手3社と比較すると小さく、4番手の位置となっている。データ通信パッケージはプリペイドおよびポストペイドの様々なプランを備えており、通信速度(4Gまたは5G)、データ通信容量、無料通話時間などの条件に応じて、最安のプランで月199バーツ~となっている。在宅勤務・教育のための通信量追加パッケージなども存在する。また、法人向けのフリーダイアルサービスや、シングルナンバーサービスも提供している。
固定インターネット回線サービスでは「NT Broadband」ブランドでサービスを提供している。市場シェアは17%であり、True、3BBに次いで第三位となっている(2019年時点)。パッケージ料金は通信速度、通信容量などに応じ、最安のプランで490バーツ~となっている。
その他の事業分野について、通信インフラサービス事業では、通信導管や通信電波塔の建設・導入、国際インターネットインフラサービス事業ではインターネットゲートウェイサービス、海底通信ケーブルの設置、VPNネットワークの設置など、デジタルインフラサービス事業ではクラウド、データセンターといった法人向けのサービスなど、通信に関する事業を幅広く展開している。
出典:https://www.ntplc.co.th/#
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。