シンガポールの携帯電話事業者業界は、急速なデジタル化と5G技術の普及により大きな変革を遂げています。この記事では、シンガポールの主要携帯キャリアに焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて11社の最新動向や市場の成長ポイントを解説し、日本企業が参入する際のヒントを提供します。
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シンガポールの主要携帯キャリア5選〜ローカル企業編〜
Singtel (シングテル)
シンガポール・テレコミュニケーションズ・リミテッド(Singtel)は、1879年に設立されたシンガポールを拠点とする通信企業である。同社は固定電話、モバイル通信、ブロードバンド、デジタルテレビ、ITおよびネットワークサービスなど、多岐にわたるサービスを提供している。
2024年12月31日に終了した第3四半期の業績では、Singtelの純利益は前年同期比183.4%増の13億シンガポールドル(約9億8,230万米ドル)となった。この大幅な増加は、タイのIntouchやオーストラリアのIndara(旧称:Australia Tower Network)などの地域関連会社の持分売却による6億3,900万シンガポールドルの特別利益によるものである。
同四半期の営業収益は前年同期比1.0%増の36億3,000万シンガポールドル、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は同0.9%増の9億4,300万シンガポールドルであった。また、オーストラリアの子会社Optusは、モバイルサービスの成長により、営業収益が前年同期比3.0%増の18億5,600万シンガポールドルとなった。
Singtelは、オーストラリアのOptusを完全子会社として所有しており、インドのBharti Airtel(28.7%)、インドネシアのTelkomsel(30.1%)、フィリピンのGlobe Telecom(47%)、タイのAdvanced Info Service(23%)およびIntouch(21%)など、アジア各国の通信事業者にも出資している。
2025年3月現在、Singtelの従業員数は約24,000人である。 同社は、デジタルサービス部門の強化や人工知能(AI)およびデータセンターへの戦略的投資により、ブランド価値を向上させており、世界の通信ブランドの中でトップ10に入るブランド力を持つと評価されている。
Singtelは、アジアにおけるデジタル化とそれを支えるインフラへの強い需要を背景に、今後も成長を続ける見込みである。
出典:https://www.singtel.com
StarHub (スターハブ)
StarHubは、1998年4月23日、シンガポールの電気通信セクターが2002年までに完全に自由化されると政府が発表したときに固定ネットワークおよびモバイルサービスを提供するライセンスを授与された。
シンガポールを拠点とする主要な通信、エンターテインメント、デジタルサービスのプロバイダーである。同社は、モバイル、固定ネットワーク、ブロードバンド、エンターテインメントサービスを提供し、個人および法人顧客に対応している。また、AI、サイバーセキュリティ、データ分析、モノのインターネット(IoT)などの分野でソリューションを開発し、企業や政府のクライアントに提供している。
2024年12月31日に終了した会計年度(FY2024)において、StarHubは総収益24億シンガポールドルを計上し、純利益は1億6,170万シンガポールドルで前年同期比7.7%増加した。特に、エンタープライズ事業はデータ&インターネット、マネージドサービス、サイバーセキュリティサービス、地域ICTサービスの収益増加により、9.2%の成長を遂げた。
モバイル部門の収益は5億7,700万シンガポールドル、ブロードバンド部門の収益は2億5,010万シンガポールドルであった。ブロードバンド部門の成長は、高帯域幅プランとバンドルの増加によるもので、Ultraspeed加入者は前年同期比で21倍に増加した。エンターテインメント部門の収益は2億1,240万シンガポールドルで、スポーツやOTTコンテンツの提供を強化し、Infinity Playの提案を強化した。
2025年3月現在、StarHubの従業員数は約3,192人である。
出典:https://www.starhub.com/personal.html
M1 (エムワン)
M1(エムワン)は、シンガポールを拠点とするKeppel Corporationの子会社であり、同国初のデジタルネットワーク事業者である。モバイル、固定回線、ファイバー製品を含む多様な通信サービスを、200万人以上の顧客に提供している。
2020年、M1はStarHubとの合弁企業として、シンガポール政府から全国的な5Gスタンドアロンネットワークのライセンスを取得し、2021年7月には「True 5G」ネットワークを商用化した。
財務面では、2024年12月期のEBITDAが前年同期の1億9,600万シンガポールドルから2億1,700万シンガポールドルへと10.7%増加した。
また、M1は2024年9月にベトナムのADGを買収し、地域展開を強化している。
さらに、2024年9月には持続可能性への取り組みとして、基地局への太陽光パネル設置やスマートネットワーク管理技術の導入を発表し、環境負荷の低減を図っている
出典:https://www.m1.com.sg
TPG Telecom (TPG テレコム)
TPG Telecomは、オーストラリアのTuas Limitedの完全子会社であり、シンガポールの移動体通信事業者(MNO)である。同社はシンガポールで4番目のMNOとして参入し、当初よりポストペイドプランを中心に携帯通信サービスを提供してきた。
2022年4月、TPG Telecomはブランド名を「SIMBA Telecom」に変更した。これは、TPGブランドの使用権が期限切れとなったことによるものである。
2023年3月、SIMBAはシンガポールのインターネットサービスプロバイダー(ISP)市場に参入し、2.5Gbpsのブロードバンドサービスを提供開始した。その後、政府の最大1億シンガポールドルの補助金を活用し、10Gbpsのサービスへとアップグレードした。
2023年9月には、全ての4Gプランを5G対応に拡充し、最新の通信技術を提供している。2025年3月時点で、SIMBAはシンガポールの移動体通信市場において約11%のシェアを占めている。
出典:https://www.tpgmobile.sg/
Circles.Life (サークルライフ)
Circles.Lifeは、シンガポールに拠点を置くデジタル通信事業者であり、契約不要のデータ重視型モバイルプランや革新的なデジタル製品を通じて、顧客中心のユーザージャーニーを提供している。 そのシンプルでコストパフォーマンスの高い料金体系は、一部のユーザーから高い評価を得ている。
同社の名称には「ドット」が含まれており、ブラウザのアドレスバーに「Circles.Life」と入力することで、直接ウェブサイトにアクセスできる。ただし、発音時には「ドット」を省略し、「サークルズライフ」と呼ばれる。
Circles.Lifeは、M1のネットワークを借用するMVNO(仮想移動体通信事業者)としてサービスを提供している。2025年3月現在、同社は5G対応のデータプランを提供しており、例えば1TBの5Gデータプランを月額30ドルで利用できるプロモーションを実施している。
また、Circles.Lifeはオムニチャネルのサポート戦略を採用しており、Zendeskのソリューションを活用して顧客理解を促進している。
なお、同社は2024年にインドネシアと台湾から撤退し、2025年にはオーストラリア市場からも撤退することが決定している。
出典:https://www.circles.life/sg/
シンガポールの主要携帯キャリア4選〜日系企業編〜
Rakuten Mobile Singapore (楽天モバイルシンガポール)
楽天モバイルは、2019年にシンガポールに新会社「Rakuten Mobile Singapore Pte. Ltd.(RMSG社)」を設立し、同社の完全仮想化ネットワーク技術を活用した「Rakuten Communications Platform(RCP)」の研究開発および販売・マーケティング拠点として位置付けている。
RCPは、楽天モバイルが日本で構築した世界初の完全仮想化、クラウドネイティブなモバイルネットワークの設計と運用ノウハウをパッケージ化したもので、通信事業者や企業が迅速かつ低コストでネットワークサービスを展開できるよう支援する。
2021年8月、楽天グループはRCPの国際展開を加速するため、新組織「Rakuten Symphony」を設立した。 Rakuten Symphonyは、シンガポールを含む世界各地で事業を展開し、クラウドネイティブなオープンRANインフラストラクチャとサービスの提供を推進している。
2025年3月現在、Rakuten Symphonyは世界中で45の顧客を持ち、2025年末までに100以上の顧客獲得を目指している。 また、同年2月にはスペイン・バルセロナで開催されたMWC 2025において、「Intelligent Growth」をテーマに革新的な技術とパートナーシップを紹介し、CiscoやTech Mahindra、Airspanなどの企業と協力してオープンRANの普及を推進している。
さらに、楽天モバイルは2025年3月に富士通と提携し、5Gネットワークの迅速な拡大を図るため、O-RAN仕様に準拠した無線ユニットの導入を開始した。
出典:https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2020/0630_01.html
SB Telecom Singapore (ソフトバンクテレコムシンガポール)
SB Telecom Singapore Pte. Ltd.は、1998年に設立されたソフトバンクグループ株式会社の完全子会社で、シンガポールを拠点にICTソリューションやデジタルマーケティングサービスを提供している。
同社の主な事業内容は以下のとおりである:
- ICTソリューションの提供、運用、保守:ネットワークのアップグレード、サイバーセキュリティの強化、データ管理の最適化など、高品質なITネットワークソリューションを提供している。
- グローバルネットワークの提供、運用、保守:国際的な通信ネットワークの構築と維持を支援し、企業の海外展開をサポートしている。
- ネットワーク・サーバ関連機器の販売、運用、保守:最新のネットワーク機器やサーバの提供と、その運用・保守サービスを行っている。
- デジタルマーケティングのコンサルティング、ソリューション提供:ビッグデータ分析を活用したデジタルマーケティング戦略の立案と実行を支援し、企業の成長を促進している。
さらに、SB Telecom Singaporeは、AI、IoT、ロボティクスなどの先端技術を活用したソリューションも提供しており、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援している。
同社のオフィスは、シンガポールの9 Battery Road #28-01に位置し、Raffles Place MRT駅から徒歩2分のアクセスとなっている。
出典:https://www.softbank.jp/biz/contact/nw/global/support/asia/
KDDI Singapore (KDDI シンガポール)
KDDI Asia Pacific Pte Ltdは、KDDI株式会社の100%子会社として、シンガポールを拠点にアジア太平洋地域での事業を展開している。1961年にシンガポールに連絡事務所を設立したのが始まりであり、その後1989年にTelecomet International Singapore Pte Ltd(TIS)を設立し、1997年にはTISとKDDのリエゾンオフィスを統合する形でKDD Telecomet Singapore Pte Ltd(KTS)が誕生した。2001年には商号をKDDI Singapore Pte Ltdへ変更し、さらに2021年には現在のKDDI Asia Pacific Pte Ltdへと名称を改めている。
同社は、KDDI株式会社が展開する固定通信からモバイル通信までの幅広いサービスを、シンガポールを含む東南アジア、南アジア、オセアニア、中東における事業拠点として統括している。企業向けにはICTソリューション、ネットワークインフラの構築・運用、クラウド、セキュリティ、IoTといったサービスを提供し、地域に根ざした通信支援を行っている。
さらに2020年11月、KDDIはオンラインに特化したMVNO型の通信サービスを提供する子会社「KDDI Digital Life株式会社」を設立。これにより、従来の通信インフラとは一線を画すデジタル通信ブランド「povo2.0」の展開を日本国内で開始した。このサービスは、オンライン完結型のユーザー体験と柔軟な料金体系により高い評価を受けており、ユーザーエンゲージメントは30%増加、平均収益単価(ARPU)は8%の向上を記録している。
なお、このデジタル通信事業を技術面で支えているのが、シンガポールに本拠を置くCircles Asiaである。両社は包括的なパートナーシップを結び、CirclesのSaaSプラットフォームをKDDIのMVNO事業に活用している。これにより、KDDIは国内外の市場において、デジタルネイティブな顧客層に対応した次世代通信サービスを展開し、アジア太平洋地域での存在感をさらに強めている。
出典:https://sg.kddi.com
NTT DOCOMO ASIA (NTTドコモアジア)
NTTドコモアジア(NTT DOCOMO ASIA Pte. Ltd.)は、2013年1月1日にシンガポールで操業を開始した、資本金653万6,000シンガポールドルの企業である。 同社は、シンガポールを中心に東南アジアおよびオセアニア地域で、企業向けにモバイルソリューションサービスを提供している。具体的には、デバイス、センサー、ネットワーク、アプリケーションを組み合わせたカスタマイズソリューションを提案し、業務効率化やコスト削減を支援している。
近年の取り組みとして、2024年8月にシンガポールの通信事業者StarHubと共同で、Open RAN技術を活用した5Gネットワークのフィールドトライアルを成功させた。 また、2025年2月にはGAOGAO Pte. Ltd.との提携を発表し、Web3技術を活用したソリューションの提供を進めている。
さらに、NTTドコモアジアは、NTTコミュニケーションズと共同で、マルチプラットフォーム対応のクラウドレンダリング技術の実証実験を行い、2025年度中の商用サービス開始を目指している。 これらの取り組みを通じて、同社は最新のモバイルネットワーク、IoT、クラウド技術を活用し、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを支援している。
出典: http://www.docomo-asia.com/company/
シンガポールの主要携帯キャリア2選〜外資系企業編〜
AT&T (エーティーアンドティー)
AT&T Inc.(エーティー・アンド・ティー)は、1983年に設立された米国の多国籍コングロマリットであり、情報通信およびメディア関連事業を中心に展開している。シンガポールは、AT&Tの東南アジア地域本部として位置づけられており、現地の企業や地域、国際的な企業に対して高品質なネットワーキングソリューションを提供している。
AT&Tシンガポールでは、販売、プリセールス、マーケティング、人事、財務、グローバルな顧客サービス、サービス提供、サービス保証など、多岐にわたる部門が存在し、経験豊富なエンジニアが幅広いサービスを提供している。
同社は、シンガポール国内に3つのマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)ネットワークノードを設置し、さらにインターネットデータセンターやグローバルカスタマーサポートセンターを運営している。これらの施設を通じて、世界中の顧客に対するサポートを提供している。
提供するサービスには、モビリティ、ネットワーク、ネットワークセキュリティ、クラウド、ホスティング、音声、ユニファイドコミュニケーション、アプリケーションサービスなどが含まれ、これらを通じて顧客の多様なニーズに応えている。
出典: https://www.corp.att.com/worldwide/att-you-singapore/
Verizon Singapore (ベライゾンシンガポール)
Verizon Communicationsは、アメリカ合衆国ニュージャージー州バスキングリッジに本社を置く、世界有数のテクノロジー、通信、情報、エンターテインメント製品のプロバイダーである。 同社は、5G、IoT、AIなどの先進技術を活用し、人々や企業、モノのつながり方を変革している。
シンガポールにおいて、Verizon Communications Singapore Pte. Ltd.は、東南アジア地域の本部として、現地および国際的な企業に高品質なネットワーキングソリューションを提供している。 同社のオフィスは、シンガポールの10 Collyer Quay #16-01、Ocean Financial Centreに位置しており、販売、プリセールス、マーケティング、人事、財務、グローバルな顧客サービス、サービス提供、サービス保証など、多岐にわたる部門が存在し、経験豊富なエンジニアが幅広いサービスを提供している。
Verizon Singaporeは、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)ネットワークノード、インターネットデータセンター、グローバルカスタマーサポートセンターを運営し、世界中の顧客に対するサポートを提供している。 提供するサービスには、モビリティ、ネットワーク、ネットワークセキュリティ、クラウド、ホスティング、音声、ユニファイドコミュニケーション、アプリケーションサービスなどが含まれ、これらを通じて顧客の多様なニーズに応えている。
出典: https://www.verizon.com/about/careers/locations/singapore-sg

2017年よりシンガポール在住の日本人。元客室乗務員。大学ではマーケティングと経済を学び、卒業後は海外での生活と旅行を重ね、さまざまな国の文化や人々、食に関する豊富な知識を身につける。シンガポール人の旦那との結婚を機にシンガポールに移住し、現地で就労。現在はライター業と翻訳業を行っている。

