【タイの医療ツーリズム】世界的な注目を集める理由と今後の動向を解説

東南アジアの医療ツーリズム市場の成長率は世界的に見ても高い中、タイは最も成長が著しい国となっています。タイの医療ツーリズム市場の2019年~2027年の年間平均成長率は13.2%となっており、性転換手術や癌治療など多くの分野で注目を集めています。

今回はそんなタイの医療ツーリズム市場について詳しく解説します。

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タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと

タイの医療ツーリズム市場

タイの医療ツーリズムの市場規模

アジア太平洋地域は、最も成⾧している医療ツーリズム市場であり、2019年~2027年の年間平均成⾧率は13.6%、2027年には1,000億⽶ドルを超えると予想されている。アジア太平洋地域は医療ツーリズムの世界市場シェアの35%を占めており、主な国はタイ(9%)、インドネシア(6%)、マレーシア(5%)、中国 (4%)、インド(2%)、シンガポール(3%)である。

また、タイの医療ツーリズムについて、2019年~2027年の年間平均成長率は13.2%とされ、市場価値は2023年度に99億米ドル、2027年には244億米ドルに達すると見込まれている。

タイの医療ツーリズムで人気の治療

タイの医療ツーリズムで最も人気があるのは歯科治療で、医療ツーリズム顧客全体の38%を占めている。尚、2019年度のタイの医療ツーリズムの治療種類別市場価値は、美容治療22億700万米ドル、整形治療12億6400万米ドル、歯科治療 15億8200万米ドル、癌治療9億8400万米ドル、神経治療9億400万米ドル、心臓血管治療10億500万米ドル、不妊治療6億6200万米ドルであった。また、癌治療の世界市場において、2019年度のタイの市場シェア率は5%であった。

タイの医療ツーリズムの主な治療内容

タイ政府が掲げている「タイを国際的なメディカルハブにする為の戦略(2017年-2026年)」では、推進するメディカルサービスハブの専門性・高度な技術を必要とする医療サービスについて、膝・股関節置換手術、心臓手術、癌治療、不妊治療、レーシック、臓器移植、高齢者介護、アンチエイジング等、幾つかの具体的な手術の種類を含めて構成要素を上げている。

タイは、30年以上前から性転換手術で有名である。過去においては、性転換手術を受けるタイ人は非常に少なく、外国人が殆どであった。現在もタイは、性転換手術の中心地として認識されており、性転換手術の為にタイを訪れる外国人が毎年増えている。性転換手術で有名なKamol Cosmetic Hospitalでは、性転換手術患者が6割を占め、過去来の患者4万人の70%は外国人が占めた。そのうち40%を日本人が占めて最も多く、次いでアメリカ人とヨーロッパ人が多い。

タイの美容整形手術市場は成長している。2017年の国際美容外科学会(ISAPS)の調査では、タイは美容整形手術の患者数が世界8位にランキングし、2018年の市場価値は450億バーツであった。また、美容整形分野において、タイ人医師は優秀で有名であり、カンボジア、オーストラリア、ラオス、ミャンマー等から、医療ツーリズムとして、美容整形手術の為にタイを訪れる外国人も多い。

タイでビジネスをするなら知っておきたい10のこと

タイの医療ツーリズムが注目される理由

タイ政府による医療ツーリズムの促進

タイ政府が掲げている政策「20カ年国家戦略」では、タイを国際的なメディカルハブにする目標を掲げている。「第13次国家経済社会開発計画」においては、同国を高付加価値のメディカル・ヘルスケアハブにする目標のもと、医療産業は、未来の成長産業とされている。

また、タイを国際的なメディカルハブに発展させる事による経済成長政策「タイを国際的なメディカルハブにする為の戦略(2017年-2026年)」では、既存の有望分野の富裕層向けの観光産業とメディカル・ウェルネスツーリズム、未来の有望分野の包括的な医療産業を促進するとしている。同政策は7つの戦略(➀医療サービス管理における競争力の向上➁医療サービスの開発➂健康促進の為のサービスの開発④タイの伝統医療・代替医療サービスの開発➄学術サービスと医学研究の開発(Academic Hub)⑥医薬品・健康製品の開発⑦マーケティング・広報の促進)と4つの主要アウトプット(Wellness Hub・Medical Service Hub・ Academic Hub・Product Hub)から成る。

2021年11月にプラユット首相が、コロナ時代におけるメディカルツーリズム・ウェルネスツーリズムの推進加速を指示した事により、タイ国政府観光庁(TAT)は、該当形態ツーリズムの促進および拡大の為のガイドラインを作成するとともに、タイを国際的なメディカルハブにする為の戦略の関連事項を推進している。尚、以前は重点を観光客数に置いていたが、重点を観光客一人当たりの支出額にシフトし、2022年度の目標として、80,000~120,000バーツ/人としている。

価格と品質の優位性

医療ツーリズム協会の2020-2021年度のランキングでは、タイの総合ランキングは世界17位となっている(国内環境36位・医療ツーリズム産業5位・設備とサービスの質15位)。

世界からタイの医療ツーリズムが受け入れられる重要な要素は次の通り。
➀タイ人医師は国際レベルで認められ、多くの分野において優秀で有名である(特に美容整形や不妊症・アンチエイジング・性転換手術などの専門医療)
➁タイにはJCI(Joint Commission International)認定病院が60ヶ所あり、世界第4位である。また、COVID-19の特定プログラム(GHA COVID-19 Guidelines for Medical Travel Program)におけるヘルスツーリズム管理の国際基準に認定されている世界19施設の内、タイは16の医療施設をもつ。
➂タイの医療費は、競合国やアメリカ等の主要国より安く、リーズナブル。医療ツーリズム協会のデータでは、タイの医療費は、平均してアメリカより50~90%安い。
④物価がそれ程高くない為、長期の治療滞在・リハビリに適している。
➄入院の場合における、入国回数制限無し(1年以内)の医療ビザなど、直接・間接的に政府によるサポートがある。
⑥インフラ・各種施設が整っている。特に全ルートをカバーする航空会社がある。また、自然の観光地・多くの文化があり、観光費用もそれ程高くない。

多言語対応

バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)は、タイ6つの大手病院グループ(バンコク病院・サミティベート病院・BNH病院・パヤタイ病院・パウロ記念病院・ロイヤル病院)を所有・運営しており、パタヤやプーケット、サムイ等のタイの人気のリゾート地や近隣国のカンボジアに30の病院を展開しているタイ最大の医療ネットワークである。

患者の30%が、オーストラリア、中国、ヨーロッパ、香港、日本、米国などからの外国人である。空港やホテルと病院間などの患者の移動には、49言語をカバーする通訳者を提供しており、中国人患者には、中国語を話す医師、または専門の中国人医療アシスタント通訳、オンサイトサポートサービス (ホテル予約、ビザ更新等の支援) を提供している。

また、グループ内の病院の例として、バンコク病院の国際医療サービス部門では、英語・日本語・ドイツ語・中国語、・クメール語の個人通訳者を提供し、その他の言語については、バンコク病院通訳センターが、24時間対応の電話通訳サービス (電話通訳) を提供、14の言語をサポートしており、パヤタイ病院では、英語・スウェーデン語・クメール語・フラマン語など22ヶ国語の通訳がいる。

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タイの医療ツーリズムの課題

医療従事者や医療技術の不足

タイは、複雑でない病気の治療に焦点を当てており、技術や専門性に頼る治療よりもサービスの強みに重点を置ているという問題がある。そのため医療従事者の数も限られており、高齢化社会問題が急速に進む国内の需要に追いついていない。

また、医薬品・医療用品の輸入費用に関して、2020年は1,600億バーツ以上を輸入した事が判明している。輸入により、該当費用分の予算使用による、国内での革新的な医薬品の研究・開発の機会損失を引き起こしている。

他国の参入による投資の必要性

タイの医療ツーリズムはアジアの最前線にあり、JCI(Joint Commission International)の認定においては、タイは60の医療施設があり、世界第4位である。しかし近年、マレーシア等の競合国が、該当市場に参入・競争し始めている。

中東諸国はタイの医療ツーリズムの主要顧客であるが、中東地域のニーズに応えるために、Dubai Health Care City(DHCC)などの包括的な医療センター建設への投資が開始されている。

また、長期的にタイ経済を牽引する事業とする為に、タイの医療ツーリズムについて、量重視ではなく、持続可能で質・専門性・技術を重視する医療ツーリズムに転向するタイミングが来ているとの分析もある。

回収不能な医療費負担

タイの医療ツーリズム市場の顧客グループには、CLMV諸国(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)からのグループもある。タイと国境を接している故の利便性や生活の一部として越境・交易を行っているなどの理由から、周辺諸国の住民もタイの公立・私立病院で治療を受けている。

しかし、治療費を払えない患者に対して、病院側は人道的な理由で治療を拒否できない場合がある。該当グループが引き起こした回収不能な医療費の負担は、該当グループの総医療費の37.8%を占め、国境の県、特に国境にある病院が、負担を負わされている。

このことから、治療の権利の周到な審査、関連機関との連携による周辺諸国からの出稼ぎ労働者の健康保険に加入させる為の登録、国際健康保険基金の管理における国際協力や医療基金の設立などの対応・解決策を講じる必要がある。

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タイの医療ツーリズムの今後の動向

コロナ規制の緩和による外国人患者の需要増

2022年の私立病院の全体的な収益は、コロナ患者の治療とコロナ関連でない患者の治療需要が増加した事により、前年比42.5%の成長が見込まれている。

また、コロナ禍前の医療ツーリズムは私立病院事業の重要な収益源であったが、コロナ禍における海外渡航制限により収益が縮小した。その後、タイ政府は2021年後半から入国規制の緩和を開始し、2022年半ばにほぼ入国規制を撤廃した。これを受け、2022年に医療ツーリズム需要は徐々に回復するとされている。

2023年は、外国間との渡航が正常化し始める事により、特に ASEAN・中国・ロシア・日本・中東からの外国人患者グループによる医療ツーリズムが顕著に復活し、私立病院事業の収益は、前年比19.8%の成長が見込まれている。

タイ政府の2024年までの目標

タイは世界のトップ 5 のヘルスツーリズムの目的地の 1 つとして認識されており、タイのウェルネスツーリズムの市場価値は継続的に上昇する傾向にある。

タイ保健省によると、ヘルスツーリズム産業は、総観光産業の収益の15%を占めているとしている。タイ政府観光局(TAT)は、2024年迄にタイを「世界の医療とウェルネスのリゾート」にするという目標を設定しており、タイの事業家が投資する良いチャンスとなっている。

尚、タイ政府観光局(TAT)は、2023年をタイの観光産業の始まりと転換の年になると見なしており、2023年に観光産業が2019年の80%の割合で回復する事を目指している。

高齢化と政府の投資

タイは、高齢社会が急速に進んでおり、2021年に人口の18.2%が60歳以上となったが、後10年程で超高齢社会に突入するとされている。

2019年度の社会経済調査の結果では、1世帯内の人員数に占める割合において、高齢者が6割を超える世帯は、高齢者が無い世帯・高齢者が6割を下回る世帯より、公立・私立の病院の外来および入院の両治療費の一人当たりの平均月額支出が高くなっていた。

医療費の増加は、公立・私立の医療施設事業者にとって、より質の高いサービス提供の改善・開発をするチャンスである。また、高齢患者の医療サービスの更なる利用を促すために、政府が医療ツーリズムサービスにおける観光セクターと病院の協力をサポートする可能性があり、観光・保険業などの関連事業にとってのチャンスになるとみられる。

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