ベトナムの保険業界では、若年層の拡大やデジタル化の進展により、主要企業の競争が激化。2024年の損害保険料収入は前年比11.7%増の79兆3,480億VNDを記録し、市場は回復基調です。
今回は、ベトナムの主要保険会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて22社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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ベトナムの主要保険会社14選〜ローカル企業編〜
Bao Viet Insurance(バオベト保険)
バオベトグループ(Bao Viet Holdings、BVH)は1965年に設立されたベトナム初の保険会社であり、現在は保険業務を中心に銀行や証券など幅広い金融サービスを展開する総合金融グループとしてベトナム経済の中核を担っている。本社はハノイ市に置かれ、ベトナム国内およびグループ企業67社以上が300カ所以上の拠点を展開し、単体で150名以上、パートナー企業を含めると3,000名を超える従業員を擁する。
バオベトグループはベトナム証券取引所(HOSE)に2009年に上場し、国家資本(ベトナム財務省が筆頭株主)による強固な経営基盤と信頼性を有している。2025年6月時点の資本金は約7兆4,230億ベトナムドン、流通株式数は約7億4,232万株に達する。
近年はデジタル化やAI活用による契約リスク分析、リモート営業の導入など、保険市場の拡大と顧客体験向上に注力している。2025年第1四半期の連結税引後利益は7,070億ベトナムドン、損害保険事業部門の総収益は3兆1,710億ベトナムドンと堅調な成長を維持している。また、Baoviet DirectアプリがSao Khue Award 2025を受賞するなど、デジタル変革への積極的な取り組みが評価されている。
ベトナム保険協会(IAV)によると、2025年の生命保険加入率は15%に達する見込みであり、保険市場全体も回復基調にある。バオベトグループは住友生命保険との提携を通じて技術協力や商品開発を強化し、今後も市場シェア拡大と持続的な成長を目指している。政府保有比率の段階的な引き下げも予定されており、今後は市場経済への適応とグローバル競争力の強化が課題となる。
出典:https://www.baoviet.com.vn/
PVI Holdings(PVIホールディングス)
PVIホールディングス(PVI Holdings、旧名:Petrovietnam Insurance Joint Stock Corporation)は1996年に設立され、ベトナム最大手のエネルギー企業グループであるペトロベトナム(Vietnam National Oil and Gas Group)傘下の総合保険会社だ。本社はハノイ市に位置し、2007年にハノイ証券取引所(HNX)に上場している。
PVIホールディングスはエネルギー保険、海上保険、健康・傷害保険、賠償責任保険、建設・組立保険、損害保険、自動車保険、航空保険、農業保険、信用保険、輸送保険など多様な保険商品を展開し、再保険や資産運用、金融投資、不動産取引にも積極的に事業を拡大している。また、PVIファンドマネジメント(PVI AM)などのグループ企業を通じて、富裕層や機関投資家向けの不動産投資信託(REIT)や証券化商品なども提供している。
従業員数は2,480名以上(2025年6月時点)で、ベトナム国内で非常に高い知名度を誇る。VNR500(ベトナムのトップ500社)、ベトナムで最も価値がある50のブランド、ベトナムのベスト企業50社などにも選出されている。
2024年は世界的なリスクやスーパー台風の影響で保険市場が厳しい局面にあったが、PVIは堅実な経営とリスク管理により業績を維持し、2025年には年間売上高1億ドル超の達成を目指している。2025年第1四半期の実績は前年比18.9%増のVND7.22兆(約277億円)で、税引前利益も目標を大きく上回った。国際格付け機関AMベストからもA-(優良)の評価を維持している。PVIホールディングスはベトナム損害保険市場のリーダーとして、今後も持続的な成長とブランド価値の向上を目指している。
出典:http://www.pvi.com.vn
Bao Minh Insurance(バオミン保険)
バオミン保険(Bao Minh Insurance Corporation、BMI)は1994年に創業し、2004年に法人化されたベトナムの大手民間保険会社だ。本社はホーチミン市1区にあり、全国で62の関係会社と550以上の営業拠点を展開し、幅広い地域でサービスを提供している。また、ホーチミン市内には自社のトレーニングセンターを運営し、人材育成にも注力している。
従業員数は自社で1,640人、パートナー社員を含めると4,249人にのぼる。事業内容は自動車保険、個人保険、財産保険、海上保険、航空保険、農業保険など多岐にわたり、2025年現在もこれらの分野を中心に保険商品を拡充している。再保険や損害鑑定、国債・社債・株式・不動産への投資、融資などの金融活動も行っている。
バオミン保険は2006年にハノイ証券取引所(HNX)に上場した後、2008年4月21日にホーチミン証券取引所(HOSE)に鞍替え上場した。2025年6月時点の資本金は1兆3,264億2,818万ベトナムドン、流通株式数は1億3,264万2,818株である。
2025年第1四半期の純利益は630億5,982万ベトナムドンで、1株当たり利益(EPS)は475ベトナムドンだった。ベトナム評価レポート社による「信頼性の高い保険会社トップ10」では、損害保険部門で3位にランクインしている。
ベトナム国内の保険市場におけるバオミン保険のシェアは近年も安定しており、2020年の時点で7.33%(29社中4位)を維持していたが、2025年現在も主要プレーヤーの一社として存在感を示している。最新の業績やブランド力からも、今後もベトナム損害保険市場の成長とともにさらなる発展が期待される。
出典:http://www.baominh.com.vn/
BIDV Insurance(ベトナム投資開発銀行保険)
BIDV保険(BIDV Insurance Corporation、BIC)は、ベトナムを代表する4大商業銀行の一つであるベトナム投資開発銀行(BIDV)傘下の総合保険会社だ。設立当初は1999年に外資系保険会社QBE Insurance Group(オーストラリア)との合弁企業として発足し、2006年に現在のBIDV保険へと社名変更された。
主な事業内容は、電子設備保険、貨物輸送保険、船体保険、船主責任保険、航空保険、自動車保険、旅行保険、火災保険など多岐にわたる損害保険商品の提供と再保険業務である。BICはベトナム損害保険市場において常にTOP10社に名を連ねており、特に収益性の高い損害保険会社のトップ3にも入る実績を持つ。
従業員数は2025年6月時点で約1,440人に達し、ベトナム国内に27の系列会社、2つの海外合弁事業を展開している。2011年にはホーチミン証券取引所(HOSE)に上場し、本社はハノイ市に置かれている。2024年にはBICの市場シェアは6.4%となり、損害保険会社として全国6位にランクインしたが、今後はトップ5入りを目指す計画だ。
BICはBIDVの強力な販売ネットワークを活用し、バンカシュランス分野で非生命保険部門の首位を維持している。2025年5月時点の資本金は約1兆1,727億ベトナムドン、流通株式数は約1億1,727万株だ。また、外国投資家フェアファックス・アジアが35%の株式を保有し、グローバルな知見も取り入れている。
出典:https://bic.vn/
Post & Telecommunication Insurance(郵便保険)
郵便・電気通信保険株式会社(Post & Telecommunication Joint Stock Insurance Corporation、PTI)は1998年に設立され、ベトナム郵政公社(Vietnam Post)傘下の大手保険会社として発足した。2025年現在、本社はハノイ市に所在し、韓国の大手保険会社DB Insuranceが37.32%、ベトナム郵政公社が22%、VNダイレクト証券が22%の株式を保有している。
PTIはオートバイ保険(任意・強制)、自動車保険、旅行保険、健康保険、住宅保険、災害保険、学生保険、傷害保険など多様な損害保険商品を提供している。特に自動車保険分野では保険料収入で市場シェア首位(2021年)を記録し、全保険料収入ランキングでもベトナム国内第3位(2021年:5兆9,450億ベトナムドン)と高い業績を誇る。
2022年にはハノイ証券取引所(HNX)に上場し、2025年5月時点の時価総額は約2兆4,720億ベトナムドン、発行済株式数は約1億2,059万株に達している。従業員数は500名以下と比較的小規模ながら、効率的な経営体制と強力な販売ネットワークを活かし、業界トップクラスの収益力を維持している。
出典:https://www.pti.com.vn/vi
Petrolimex Insurance(ペトロリメックス保険)
ペトロリメックス保険株式会社(Petrolimex Insurance Corporation、PGI)は1995年6月15日に設立されたベトナム最大手の国有石油製品販売会社グループ、ベトナム国家石油グループ(Petrolimex)傘下の非生命保険会社である。本社はハノイ市に位置し、ベトナム初の株式会社形態の保険会社としても知られている。
主要株主にはベトナム国家石油グループ(Petrolimex)が約41%、韓国のサムスングループのサムスン火災海上保険(Samsung Fire & Marine Insurance)が約20%、ベトナムの4大商業銀行の一つであるベトコムバンク(Vietcombank)が約8%をそれぞれ保有しており、ベトナム大手再保険会社VINAREとの業務提携も行っている。この強固な資本構成により、ベトナム保険市場で高い信頼性と安定性を維持している。
事業内容は自動車保険、健康保険、貨物保険、船舶保険、技術財産保険、再保険、再保険譲渡など多岐にわたり、2025年時点で63の事業拠点と約1,600人の従業員を擁する。2024年末時点の総資産は約8,490億ベトナムドン(約327百万米ドル)、2025年第一四半期の純保険料収入は前年比4.2%増の1,167億ベトナムドン(約44.9百万米ドル)を記録し、収益構造は自動車保険(36.5%)、健康・傷害保険(20.3%)、火災・爆発保険(12.4%)、財産・損害保険(11%)などバランスが取れている。
2011年にはホーチミン証券取引所(HOSE)に上場し、市場価値や流動性も高まっている。2025年5月時点で、ベトナム保険市場のオリジナル保険料収入シェアは5.5%で第6位であり、堅実な経営とリスク管理を通じて安定的な成長を続けている。
出典:https://www.pjico.com.vn/
Military Insurance(軍隊保険)
軍隊保険株式会社(Military Insurance Corporation、MIG)は2007年に設立されたベトナムの大手民間金融機関、軍隊商業銀行(MB Bank)グループ傘下の大手損害保険会社である。本社はハノイ市に所在し、全国で69の関係会社、467の営業拠点、4,500カ所以上の保険代理店を通じてサービスを提供している。従業員数は2,000名以上にのぼる。
MIGは個人向け保険(自動車保険、オートバイ保険、個人保険、民間保険)と法人向け保険(財産保険、貨物保険、技術保険、損害賠償保険、船舶保険、個人保険、混合保険)など多様な損害保険商品を展開している。2021年にはホーチミン証券取引所(HOSE)に上場し、資本市場での存在感も高まっている。
2024年のベトナム評価レポート社による「信頼性の高い保険会社トップ10」では、損害保険部門で6位にランクインした。MIGは2025年までにベトナムのTOP3大手損害保険会社になることを目標としており、グループの強固な販売ネットワークとデジタル化推進によって、今後も市場シェア拡大と収益力向上を目指している。
ベトナム損害保険市場は2025年第1四半期に非生命保険料収入が2兆2,010億ベトナムドンと前年比10.6%増加するなど、堅調な成長を続けており、MIGもこうした市場の拡大とともにさらなる発展が期待される。
出典:https://www.mic.vn/
Vietinbank insurace(ベッティンバンク保険)
ベトナム産業貿易銀行(VietinBank)グループ傘下のVietinBank Insurance Corporation(VBI)は2008年に設立された総合保険会社だ。本社はハノイ市にあり、ベトナム4大商業銀行の一つであるVietinBankの強固な販売ネットワークを活かし、33の系列企業と8,000カ所以上の代理店を通じて全国規模でサービスを提供している。
従業員数は1,000名以上であり、生命保険や自動車保険を中心に、財産保険、技術保険、健康保険、貨物保険、サイバーセキュリティ保険など多様な商品を展開している。保険商品は店舗だけでなくオンラインでも購入可能で、My VBIアプリをはじめとするデジタルチャネルの活用により、顧客体験の向上と業務効率化を実現している。
VBIはベトナムの非生命保険会社トップ10に連年ランクインしており、2023年・2024年には「ベトナムで最も信頼される非生命保険会社トップ4」にも選ばれた。また、韓国の現代海上火災保険(Hyundai Marine & Fire Insurance)が25%出資しており、国際的な知見や技術も導入している。
社会貢献活動にも積極的で、献血や国立小児科病院でのチャリティープログラム、貧困家庭への住宅支援など、幅広い分野で地域社会への貢献を実践している。こうした取り組みが評価され、「ベスト・インシュアランス・カンパニー・フォー・カスタマー・サービス・ベトナム2017」など数多くの賞も受賞している。
出典:http://vbi.vietinbank.vn/
Agriculture Bank Insurance(アグリバンク保険)
アグリバンク保険株式会社(Agriculture Bank Insurance Joint-Stock Corporation、ABIC)は2007年に営業を開始したベトナム最大手の国営銀行であるアグリバンク(Agribank)グループ傘下の損害保険会社である。本社はハノイ市に所在し、主な事業は損害保険、傷害保険、医療保険、運送保険、航空保険、自動車保険、火災保険、船体保険、船主責任保険など多様な保険商品の開発・提供だ。
ABICはアグリバンクの強固な販売ネットワークを活用し、ベトナム国内で171の総合代理店(アグリバンク支店)、2,300以上の取引拠点、3万人以上のエージェントを通じてサービスを展開している。こうしたバンカシュランス(銀行窓販)チャネルはベトナム非生命保険市場で最も成功しているモデルと評価されている。
2024年時点で、ABICは自己資本利益率(ROE)13.3%、現金配当性向20%と財務体質は健全で、年間売上は1兆ベトナムドン以上に達している。また、クレジットプロテクション保険が「ベトナム国家ブランド賞2024」を受賞するなど、商品力や顧客信頼も高い。
2009年にホーチミン証券取引所(HOSE)に上場し、従業員数は150名以上となっている。ABICは今後も農業や農村地域、農民向けの保険サービス拡大、デジタル化推進、社会貢献活動を通じて、ベトナム損害保険市場の主要プレーヤーとしてさらなる成長を目指している。
出典:https://home.abic.com.vn/
Vietnam National Aviation Insurance Corporation(航空保険会社)
ベトナムナショナルアビエーション保険株式会社(Vietnam National Aviation Insurance Corporation、VNI、証券コードAIC)は2008年4月23日に設立されたベトナムの大手ローカル企業(VINACOMIN、LILAMA、GELEXIMCO、NAVICO、VIETNAM AIRLINESなど)が合弁で設立した民間保険会社である。本社はハノイ市ドンダー区ホアンカウ通り36番地のゲレクシムコビル15階に所在する。
VNIは主に損害保険、再保険、航空保険、財産保険、火災保険、自動車保険、バイク保険、旅行保険、海上保険、技術保険など多様な非生命保険商品を提供している。2021年1月8日にUPCOM市場(ベトナムの未上場株式市場)に上場し、株式コードはAICとなっている。
2024年には韓国の大手保険会社DBインシュアランスが75%の株式を取得し、戦略的株主となった。この結果、VNIはベトナム国内の非生命保険市場でトップ10に入る大手保険会社として位置付けられている。2024年の保険料収入は2,895億ベトナムドン(前年比13.7%増)、自動車保険が全体の62.4%を占め市場シェア首位を維持している。また、2025年は保険料収入を前年比56%増の4,619億ベトナムドンとする成長戦略を掲げている。
VNIはベトナム国内で700名以上の従業員を抱え、2025年にはブランド名をDBVに変更する計画も進めている。
出典:https://bhhk.com.vn/
VASS ASSURANCE(ヴィエンドン保険)
2003年設立。同社はベトナム国内の民間保険会社としては最も歴史が長い保険会社である。本社はホーチミン市。
同社では個人向け保険(傷害保険、旅行保険、住宅保険、オートバイ保険、自動車保険、信用生命保険等)、事業用保険(個人保険、財産保険、海上保険)、その他(コロナ保険、安全運転保険、バイク全損保険、アーティスト保険、総合美容保険等)を提供している。
同社はホーチミン市等の大都市から事業を開始し、現在はベトナム全土で100か所以上の営業拠点を展開している。
出典:https://vass.com.vn/
Hanoi Reinsurance Joint Stock Corporation(ハノイ・リインシュアランス株式会社)
PVI Reinsurance(現在はHanoi Reinsurance Joint Stock Corporation、略称:Hanoi Re)は、ベトナムを代表する大手損害保険グループPVI Holdingsの傘下で、2011年に設立されたベトナムの主要な国内再保険会社である。2023年8月に社名をPVI ReinsuranceからHanoi Reinsuranceへ変更し、現在はHanoi Reとして事業を展開している。
Hanoi Reは、エネルギー保険、航空保険、海上保険、財産保険、エンジニアリング保険、賠償責任保険、自動車保険、傷害・健康保険など、多岐にわたる再保険サービスを提供している。また、リスク評価や損失防止、トレーニング・教育ソリューションも手掛ける。ベトナム国内の保険会社向けに再保険を提供するほか、国際的なリスク管理基準に則ったサービスを展開している。
2025年3月時点の株価は1株あたり20,100VNDで、直近の業績も安定している。PVI Holdingsが過半数の株式を保有しており、国際的な信用力や技術支援も得ている。AM Bestによる財務力格付けはB++(良好)を維持し、安定的な経営基盤と高い信頼性が評価されている。
出典:https://www.pvire.com.vn/
Vietnam National Reinsurance(ベトナム国家再保険)
ベトナム・ナショナル・リインシュアランス(Vietnam National Reinsurance Corporation、VNR、通称:Vinare)は、ベトナムにおける国策系再保険会社として1994年に設立され、本社をハノイ市(141 Le Duan, 7階)に置いている。
同社は主にベトナム国内の保険会社に対して再保険引受サービスを提供しており、財産・エンジニアリング・海上・農業・航空・エネルギー・生命保険など多様な分野で再保険事業を展開している。また、金融投資や資産管理、不動産取引・金融サービスを手掛ける子会社「Vinare Investment Joint Stock Company」、損害保険分野を担う合弁会社「Samsung Vina Insurance Company Limited」も保有している。
VNRは2006年にベトナムで初めて株式公開した金融企業の一つであり、現在もハノイ証券取引所(HNX)に上場、シンボルは「VNR」である。2025年6月時点の時価総額は約4.4兆ベトナムドン、従業員数は約103名と、高い効率性と専門性を有している。
主要株主にはベトナム国家資本投資公社(SCIC)が40.4%、スイス・リー(Swiss Re AG)が25%、バオベトホールディングス(Bao Viet Holdings)が17%超をそれぞれ保有し、安定した経営基盤を構築している。国際格付け機関AMベストによる財務力格付けは「B++(良好)」であり、健全な財務体質と高い信頼性が評価されている。
2023年の純利益は約4,214億ベトナムドン、再保険事業による収入は約2兆1,010億ベトナムドンに達し、ベトナム再保険市場の中核を担う存在となっている。
出典:http://vinare.com.vn/en/
MB Ageas Life(MBアジアス保険)
MBアジアス生命保険(MB Ageas Life)は2016年に設立された合弁会社であり、ベトナムの大手民間銀行である軍隊商業銀行(MB Bank)、ベルギーのAgeasグループ、タイのMuang Thai Life Insuranceの3社が出資している。本社はハノイ市に所在し、従業員数は500名程度だ。
同社はMB銀行グループの金融ネットワークを活用し、ベトナム国内で300以上の拠点を通じて生命保険、医療保険、財形貯蓄、学資保険など多様な商品を展開している。MBアジアス生命は設立以来、業績が好調で、2019年にはベトナムで急成長している保険会社として注目を集めた。2020年には年間売上高を基準にベトナム生命保険会社トップ10にも選ばれている。
2024年には、MBアジアス生命がベトナム主要経済分野における価値創造企業トップ10(VALUE10)にも選出されるなど、その企業価値と社会的貢献が高く評価されている。同社はベトナムの家族の多様なニーズに応える独自の保険商品開発にも注力し、今後も市場での存在感を拡大していくと見られている。
出典:https://www.mbageas.life/
ベトナムの主要保険会社3選〜日系企業編〜
Dai-Ichi-Life Insurance company of Vietnam
第一生命ベトナム(Dai-ichi Life Insurance Company of Vietnam)は、日本の第一生命保険株式会社が100%出資するベトナムの大手生命保険会社であり、2007年に営業を開始した。本社はホーチミン市に所在し、ベトナム生命保険市場において収入保険料ベースで業界第4位のシェアを有している。
同社は養老保険、終身保険、疾病保障保険など多様な生命保険商品を提供し、サコムバンク(Sacombank)やLienVietPostBankといった有力銀行と長期独占バンカシュランス契約を締結し、広範な販売ネットワークを活用している。2024年にはサコムバンクとの間で今後20年間の独占銀行窓口販売契約を結び、さらなる販路拡大を目指している。
2023年のベトナム生命保険市場全体の新契約保険料(GWP)は前年比減少傾向にあり、第一生命ベトナムも同様にGWPが減少したが、依然として業界上位の地位を維持している。2023年のGWPは約1兆9,557億ベトナムドンであり、業界4位の規模である。2024年上半期の税引後利益は1,102億6,000万ベトナムドン(約44.4百万米ドル)で、前年同期比13.5%減となったものの、財務体質は堅調である。
第一生命ベトナムは健康、環境、教育、地域社会支援など多角的なCSR活動にも積極的で、2016年には「For A Better Life Fund」を設立し、ベトナム社会への貢献を継続している
出典:https://www.dai-ichi-life.com.vn/
MSIG VIETNAM
MSIGベトナム(MSIG Insurance (Vietnam) Company Limited)は、日本の三井住友海上火災保険(Mitsui Sumitomo Insurance Co., Ltd.)が100%出資するベトナムの損害保険会社であり、MS&ADインシュアランスグループの一員である。本社はハノイ市(Phan Chu Trinh Ward, Hoan Kiem District)、ホーチミン市にも支店を構えている。
設立は2009年で、日系損保会社初の100%出資現地法人として事業を開始した。従業員数はハノイ本社で約100名、ホーチミン支店で約60名となっている。当初は日系企業向けの損害保険が中心だったが、現在はローカル企業や個人向けにも対象を広げている。
主な事業は、火災保険、自動車保険、貨物保険、建設工事保険、労災保険、旅行保険、農業保険など多岐にわたる。特に近年は、オーストラリア系インシュアテック企業と連携し、ベトナム初の干ばつ保険など新商品の開発にも積極的に取り組んでいる。また、デジタル分野の強化やオンライン販売にも注力し、ECサイトやクレジットカード会社、旅行会社など約30社のパートナーと協業してリテール販売を拡大している。
2021年のベトナム損害保険市場のシェアは外資系企業の中でもトップクラスであるが、全体では約1.8%にとどまる。
出典:https://www.msig.com.vn/vi/ve-chung-toi#ve-MSIG
WellBe Vietnam
WellBe Vietnamは、香港に本社を置くWellBe Holdings Limitedを親会社とするグローバル保険・医療サービスグループのベトナム現地法人であり、主に日系企業や在住日本人向けに保険仲介・医療サポートサービスを提供している。
WellBe Vietnamは複数の法人形態を有しており、従来はWellBe Vietnam Company Limitedが保険代理店業務を担っていたが、2021年11月にはベトナム財務省より保険仲介業の正式免許を取得し、WellBe Vietnam Insurance Brokers Company Limitedとして本格的な保険ブローカー事業を開始した。これにより、従来の商品紹介にとどまらず、顧客のニーズに応じた最適な保険プランの提案やリスクマネジメントコンサルティングが可能となった。
主要拠点はハノイ(本社)、ホーチミン(支店)、ハイフォン・ダナン(サービスオフィス)に展開され、ベトナム全土でサポート体制を整備している。主なサービスは、医療保険、傷害保険、海外旅行保険、法人向け福利厚生保険などで、ウェルビーオリジナルの保険商品や東京海上日動など大手保険会社の商品を取り扱う。
日本人スタッフによる24時間365日の日本語コールセンター対応や、企業向けの福利厚生策の提案、現地医療ネットワークの活用など、日系企業や日本人駐在員向けにきめ細やかなサービスを提供している点が特徴である。
出典:https://wellbemedic.com/company/group_top.html
ベトナムの主要保険会社5選〜外資系企業編〜
Prudential Vietnam
プルデンシャル・ベトナム(Prudential Vietnam Assurance Private Ltd.)は、イギリスを拠点とするグローバル金融グループPrudential plcの100%子会社であり、1995年にベトナム進出を果たし、1999年に現地法人として設立された。本社はホーチミン市(District 1, Sai Gon Trade Center)に所在し、ベトナム全土すべての省および市に拠点を展開している。
同社は350以上の拠点および提携金融機関を通じて、生命保険、健康保険、財形貯蓄、医療保険など多様なサービスを提供している。従業員数は1,000名以上、さらに26,000人以上のフィナンシャルコンサルタントが全国で活動し、2022年時点で顧客数は160万人を超える。
プルデンシャル・ベトナムはベトナムの外資系生命保険会社の中で最大手であり、2024年のVNR500ランキング(ベトナム最大手企業トップ500社および優良企業トップ50社)において、全業種中41位、生命保険会社の中でもトップクラスに位置づけられている。また、サステナビリティへの取り組みも高く評価されており、Vietnam Sustainable Business Awardsにおいて2024年で8年連続受賞を果たした。教育・健康・地域社会への社会貢献活動にも積極的で、これまでに1,230億ベトナムドン以上の寄付を実施している。
近年はESG(環境・社会・ガバナンス)や持続可能な投資にも注力し、2024年には「PRUlink-Tương Lai Xanh(グリーン・フューチャー)」ユニットリンク型ファンドを導入し、気候変動・健康・生活向上分野への投資を強化している。また、HSBCベトナムとのバンカシュランス提携を締結し、持続的な成長と顧客への質の高い金融ソリューション提供を目指している。
出典: https://www.prudential.com.vn/vi/
ManuLife
マニュライフ・ベトナム(Manulife Vietnam Insurance Co., Ltd.)は、カナダ系大手保険グループであるマニュライフ・ファイナンシャル(Manulife Financial Corporation)のベトナム法人であり、1999年に設立された。当初は「ベトナム初の外資保険会社」と誤認されることがあるが、実際には外資系保険会社の一つとして進出し、ベトナム保険市場の発展とともに成長を遂げてきた。本社はホーチミン市(Manulife Plaza, 75 Hoàng Văn Thái, Tân Phú, District 7)に所在する。
マニュライフ・ベトナムは全国で87以上のオフィスを展開し、従業員数は500名以上、自社および提携先を含めた保険アドバイザーは60,000人以上を擁している。2025年現在、顧客数は約150万人に達し、ベトナム生命保険市場における外資系大手として高い信頼性と存在感を示している。
主な事業は医療保険、投資保険、貯蓄保険などで、特に生命保険関連商品に強みを持つ。近年は「Live Well Every Day」や「An Tâm Vui Sống 2.0」といった柔軟なカスタマイズが可能な健康保険・終身保険商品を相次いでリリースし、医療インフレや高齢化社会のニーズに応えている。また、デジタル化を強力に推進し、M-ProプロセスやManulife Vietnamアプリ、M-PS(Manulife Promoter System)などの最新技術を導入して顧客体験の向上と業務効率化を実現している。
2024年の税引後利益は約3,334億ベトナムドン(前年比2%増)、総資産は13兆7,049億ベトナムドン(前年比15.5%増)、資本金は2兆2,220億ベトナムドンと、ベトナム生命保険市場で最大規模の資本を有する企業となっている。また、保険金・給付金の支払い総額は7,884億ベトナムドン、平均処理日数は1.2日と迅速なサービスを提供している。
出典: https://www.manulife.com.vn/vi/ve-chung-toi/manulife-viet-nam.html
CHUBB
Chubb(チャブ)は、1792年に米国で設立されたInsurance Company of North America(INA)を起源とし、その後Chubb Corporation(1882年設立)やACE Limited(1985年設立)と合流し、2016年に「Chubb Limited」として統合された世界的な損害保険・生命保険グループである。
ベトナムには2005年に進出し、2013年に現地法人「Chubb Life Insurance Vietnam Company Limited(チャブライフ・ベトナム)」および「Chubb Insurance Vietnam Company Limited(チャブ保険ベトナム)」を設立した。本社はホーチミン市に所在し、ベトナム全土に拠点を展開している。
同社は健康保険、旅行保険、生命保険、損害保険、海上保険など多様な保険商品をベトナムの個人・法人顧客に提供している。Chubb Life Vietnamは、ユニバーサルライフ保険や投資連動型商品など先進的な生命保険商品の導入で知られ、デジタル技術の活用や人材育成にも注力している。
また、Chubbはベトナム国内で社会貢献活動にも積極的で、「チャブライフ – あなたの未来のために」プログラムを通じて、学校建設や教育・学習設備の提供、奨学金や学用品の寄付など、全国の子どもたちの教育支援を長年続けている。
2025年には、Chubbはリバティ・ミューチュアルのベトナム事業買収を発表し、タイの買収は2025年4月に完了、ベトナムの買収も2026年初頭までに完了する予定である。これにより、ベトナム市場におけるChubbの事業基盤とサービス提供力がさらに強化される見込みだ。
出典: https://www.chubb.com/vn-vn/home.html
AIA
AIAベトナム(AIA Vietnam Life Insurance Company Limited)は、香港系大手保険グループAIA Groupのベトナム法人として2000年に設立された。本社はホーチミン市にあり、全国50以上の省・市で200以上のオフィスを展開し、1,000人以上の従業員と22,000人超のエージェントを擁している。
AIAベトナムは生命保険、医療保険、事故保険、学資保険、年金保険、住宅損害保険、旅行保険など幅広い商品ラインナップを提供しており、特に健康・医療分野に強みを持つ。AIA VitalityやBung Gia Lucといった健康増進型商品、家族向けの包括的な医療保険、テレドックヘルスとの提携による遠隔医療サービスなど、顧客の健康・ウェルビーイングを重視したサービスを展開している。
2025年3月末時点で契約者数は160万人を超え、保有契約数は110万件以上に達する。2022年から2024年の3年間で63万件超の保険金請求に対応し、累計支払額は1兆5,000億VND(約600百万米ドル)を超える。2024年上半期の税引後利益は2,838億VND、総資産は6兆7,557億VND(約27億米ドル)と、財務基盤も非常に強固である。
AIAベトナムはデジタル化にも積極的で、AIA+アプリやAIによるオンライン請求システム、400以上の医療機関とのキャッシュレスネットワークなど、顧客体験の向上に注力している。また、Tikiとの10年独占パートナーシップなど、ECチャネルでの保険販売にも注力している。
社会貢献活動にも力を入れており、「Journey of Life」など子ども支援プログラムや環境保護活動、健康教育など多岐にわたるCSR活動を展開し、過去5年間で1億4,000万VND以上を投資している。
2025年にはGolden Dragon Awardsで「健康志向型保険商品」部門の最優秀賞を受賞するなど、顧客中心の革新と社会的責任、持続可能な成長で高い評価を得ている。
出典: https://www.aia.com.vn/vi/index.html
Liberty Insurance Limited
Liberty Insurance Limited(リバティ保険ベトナム)は、アメリカ・ボストン発の大手損害保険会社リバティ・ミューチュアル(Liberty Mutual Insurance)のベトナム法人であり、2003年にベトナム進出、2006年に現地法人として設立された。本社はホーチミン市に所在し、ハノイ市とハイフォン市に支店、さらにタイグエン省、ダナン市、ゲアン省、ドンナイ省、カントー市に駐在員事務所を展開している。
同社は医療保険、自動車保険、バイク保険、火災保険、住宅保険、エンジニアリング保険、貨物保険など多様な損害保険商品を店舗およびオンラインで提供している。特に医療保険分野では、日本語対応のキャッシュレス提携病院やクリニックが多く、日本人駐在員やその家族にも人気が高い。また、ベトナムで初めて24時間365日対応のコールセンターを導入し、現地価格でサービスを提供している点も特徴だ。
Liberty Insurance Limitedは2018年、2019年、2020年にベトナム評価レポート社(VietnamReport)による「ベトナムで最も評判の良い損害保険会社トップ10」に選ばれ、外資系保険会社として初めてランクインした実績を持つ。従業員数は300名以上で、健全な経営基盤と高い顧客満足度を維持している。
2025年にはリバティ・ミューチュアルがベトナム事業をChubb Limitedに売却することを発表しており、2026年初頭までの完了を目指している。
出典: https://www.libertyinsurance.in/

ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。

