この記事では、統計データを用いてタイの流通・小売業界の最新情報をお届けしていきます!
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タイのスーパー・コンビニエンスストア事情〜統計データ〜
タイの主要スーパーマーケット店舗数
2021年のタイのスーパーマーケットの店舗数は、タイの財閥企業CP(Charoen Pokphand)グループ傘下のLotus’sが186店舗で1位、小売大手セントラル・グループ傘下のTopsが133店舗で2位、大手商社BJC傘下のBig Cが61店舗で3位であった。これら3社で全体のおよそ8割を占めており、大手スーパーマーケットチェーンが潤沢な資金と高いブランド力を背景に大きなシェアを獲得している。
続いて日系の流通大手イオンが展開するMaxvalu、輸入製品を多く取り扱うVilla Marketなどがあり、独自の商品ラインナップで外国人やタイ人の富裕層をターゲットとした店舗を展開している。
出典:クルンシー・リサーチ
タイの小売業の成長
タイ銀行BOTのデータによると、2002年を基準の100とする2021年のタイの小売売上高指数は257.49で、前年からは9.6%上昇した。非耐久材は前年比6.5%増の324.03、耐久財は前年比8.4%増の168.81であった。
タイでは2018年頃をピークに景気の後退が見られ、さらに2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあったために同指数が低下していた。しかし2021年には回復を見せており景気が上向いていることがわかる。
現在では新型コロナウイルスに関連する行動制限や入国制限はほぼ完全に撤廃され、コロナ前の日常が戻りつつある。今後も外国人観光客の増加や国内の景気回復に伴って小売業も成長していくことが期待される。
出典:BOT
タイの百貨店・ショッピングセンター事情〜統計データ〜
ショッピングモールの店舗規模
2021年のタイの主要ショッピングモールの店舗数は、Robinson(ロビンソン)が49店舗、Centarl group(セントラル)が25店舗、The mall group(ザ・モール)が6店舗であった。一方で店舗当たりの面積はザ・モールが2.5万平方メートルと最も大きく、セントラルが1.75万平方メートル、ロビンソンが1.2万平方メートルと最も小さい。
ザ・モールはサイアム・パラゴンやエムクォーティエなど大型ショッピングモールを展開しているのに対し、ロビンソンはセントラルブランドのショッピングモール内で展開されている店舗も多く、店舗規模の違いが見て取れる。
出典:Krungsri
デパート事業への投資拡大
2002年を基準の100とする2021年のタイデパートメントストア(スーパーマーケット、雑貨店含む)の売上高指数は332.94で、前年よりも3.5%の上昇であった。新型コロナウイルス拡大前の水準には及ばないものの、回復を見せた。
今後も景気回復とともに大手商業デベロッパーは新規ショッピングモールの出店を拡大している。セントラル・グループは2022年5月に東部チャンタブリにCentral Chanthaburiをオープンし、2023年第4四半期にはバンコク北郊ノンタブリにCentral Westvilleをオープン予定。ザ・モール・グループは2023年末に首都バンコクの中心部に大型モールEmsphereをオープンする予定としている。
出典:BOT
aのドラッグストア事情〜統計データ〜
需要とともに伸びる薬剤師数
2021年のタイの薬剤師の人数は16,090人で、前年から5.0%増加した。薬剤師の内訳を見ると、タイ保健省(Ministry of Public Health)の管理下の薬剤師が全体の7割程度を占めている。タイの薬剤師の人数は2017年以降年々増加してきており、タイの所得水準、教育水準の向上とともに、薬剤師の資格を得ることができる国民が増えている。
また、タイでも進行している高齢化により薬の需要も増えていること、さらにタイでは病院に行かずに薬局やドラッグストアの店頭で薬を買う消費者も多く存在することも薬剤師の増加に寄与していると考えられる。
出典:国家統計局
地域別の医薬品取扱ライセンス所持数
2021年のタイの地域別の医薬品取扱ライセンス所持数は計22,791件であった。内訳はバンコクが4,934件、バンコク除く中部が7,854件で、この2地域で全体の半分以上を占めている。特にバンコクだけで北部、南部、東北部の各地域よりも多い事業者が存在し、供給が多いことを示している。
事業者の種類としてはローカル系の薬局に加え、Boots、Watsonsといった外資系ドラッグストアや、マツモトキヨシ、ツルハドラッグなどの日系ドラッグストアも多く進出している。一方で、薬剤師がおらず、医薬品の販売ライセンスも所持していない事業者が摘発されるといった事例も散見される。
出典:国家統計局
タイのアパレル事情〜統計データ〜
縮小傾向のタイ国内の衣類市場
タイの2021年の衣類の生産量は1億4,105万着、国内販売量は4,807万着、輸出量は1億293万着であった。生産量は2018年をピークに3年間連続で減少した。これはタイの人件費、生産コスト上昇により、生産者がベトナムやバングラデシュなどさらにコストの低い国を志向するようになったことが原因と考えられる。
また、国内販売は2017年から次第に減少してきている。足元数年のタイの景気が低迷していることに加え、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大により在宅勤務を行ったり、人との接触を避けるために外出を控えたりするなど、消費者のライフスタイルの変化も背景にあると考えられる。
出典:タイ産業経済局
タイの織物、衣類の主要輸出国
2021年のタイからの織物、衣類の輸出額は65億USDであった。国別では米国が18.4%でトップ、続いて日本(11.2%)、ベトナム(7.6%)、中国(6.1%)、インドネシア(4,5%)のアジア各国が並んだ。地理的にも近いアジア各国との衣類の貿易が盛んである。輸入でも全体の33.7%を占める中国をはじめ、バングラデシュ、ベトナムが上位3か国に入っている。輸出品目としては、編物またはかぎ針編みの衣料品および装飾品が15.5億USDで全体の23.8%、手製の短繊維(綿など)が12.7億USDで19.6%と、伝統工芸品や原料が主要となっていると考えられる。
出典:タイ織物協会
タイの通販・ネット通販事情〜統計データ〜
タイのeコマース市場規模
2020年のタイのeコマースの市場規模は3.78兆バーツであった。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け前年よりも6.7%減少したが、2021年には2020年比6.1%成長し2019年と同程度の市場規模になるとされている。
取引の種類別では企業と一般消費者の間のB2C取引が最も多く、2.2兆バーツと全体の57%を占めた。企業間取引のB2Bは22%、企業対政府取引のB2Gが残り20%であった。
業界別では卸売・小売が1.43兆バーツと最も多く、次いでホテル業界が4,638億バーツ、製造業が4,602億バーツであった。また大企業だけでなく、中小企業でもeコマースへ参入する業者が増えてきている。
出典:ETDA
Eコマースのプラットフォーム
2021年の消費者の76.0%が電子市場(Shopee、Lazada、Kaideeなど)で買い物をしていた。これはプラットフォーム別で最も高い割合であったが、タイではSNSで買い物をするソーシャルコマースも盛んである。例えば、買い物にFacebookを利用する消費者は61.5%でウェブサイトの39.7%よりも高く、LINEが31.0%、Instagramは13.0%であった。
一方、販売業者ではFacebookが66.8%で最も利用率が高く、次いで電子市場の55.2%であった。またLINEも32.1%とウェブサイトの26.7%を上回るなど、SNSでの販売活動を積極的に行っていることがわかる。
出典:ETDA
タイの家電量販店事情〜統計データ〜
成長する家電輸出台数
タイの2021年の家電製品(扇風機、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、エアコン室内外機、圧縮機)の生産台数は6,104万台、国内販売台数は2,346万台、輸出台数は3,838万台であった。各項目とも新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けていた前年に比べて伸びを示した。ただし国内販売は3.6%の増加に留まり、2019年以前の水準にはわずかに届かなかった。
一方で輸出は12.3%、生産台数は8.9%の増加で、これらは2017年から2019年よりもさらに多い台数となった。タイ国内の需要が伸びていないものの、海外の堅調な需要が生産台数も押し上げた形となった。
出典:The Office of Industrial Economics
タイのエアコンの主要輸出先
2021年のタイからのエアコンおよび構成部品の輸出額は2,031億バーツであった。国別では米国が336億バーツ、全体の16%でトップ、続いてオーストラリア(217億バーツ、11%)、ベトナム(153億バーツ、8%)、日本(106億バーツ、5%)、インド(98億バーツ、5%)となった。これら5か国で全体の約半分を占める。
エアコンはタイの主要輸出工業製品の中でもトップ10に入る。エアコン製造の主要プレイヤーとしては日系メーカーのダイキン、三菱電機、パナソニック、中国系のHaier、韓国系のLGなどがある。日中韓の高い技術力を持った外資系メーカーが、アジアの中心部に位置するタイの地理的メリット、整ったインフラ環境を利用し、エアコンの製造、輸出を行っている。
出典:Ministry of Commerce
タイの家具・インテリア・生活雑貨・ホームセンター事情〜統計データ〜
タイの木製家具の生産、輸出状況
2021年のタイの木製家具の生産数は1,089万台、国内販売は124万台、輸出は961万台であった。国内販売は前年よりも6%減少したのに対し、輸出は前年よりも26%と大幅に増加し、それに伴い生産も25%増加した。
国内販売は2017年以降減少を続けており、需要減少が見られる一方で、海外需要は新型コロナウイルスの影響も見られず、堅調に成長していることが示されている。タイの木製家具を含めた木材製品の輸出先は中国がおよそ全体の半分を占め、そのあとに韓国、サウジアラビア、UAE、ベトナムなどアジア各国が続いている。
出典:産業経済局
タイの家具別の生産性指数
タイの2021年の家具全体の生産性指数(付加価値重量、2016年を100とする)は117.6、木製家具が133.1、マットレスが148.9、金属製家具が86.6であった。各指数とも新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた2020年よりは増加し、特に木製家具とマットレスが全体の伸びをけん引した。これら製品は堅調な輸出需要に裏付けられているが、その一方でタイの家具メーカーには小規模事業者も多く、今後は国内外で競争激化が予想される。中でも金属価格にも影響を受ける金属製家具は近年を見ても比較的苦戦している状況が見られる。
出典:産業経済局
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。