この記事では、統計データを用いて台湾の流通・小売業界の最新情報をお届けしていきます!
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台湾のスーパー・コンビニエンスストア事情〜統計データ〜
スーパーマーケット業界の売上額
近年、台湾のスーパーマーケット事業者は積極的にマーケティングの強化や店舗の拡大を行なっている。配送プラットフォームと組み合わせて、新規顧客の開拓、消費の利便性、顧客グループの粘着性などの向上にも努めている。スーパーマーケットの2021年の売上高は2482億台湾元で、年間売上高は19年間連続で伸びている。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い自炊の需要が高まっていることなどを受け、2022年の年間売上高は2500億台湾元を超える見込みである。売上をカテゴリー別で見ると、「食品」が47%で半分近くを占め、次に「飲料・たばこ」となっている。
出典:經濟部統計處(台湾経済省統計局)
店舗密度が上がるコンビニ業界
台湾のコンビニエンスストア業界は活気があり、勢いづいていると言える。台湾人のコンビニでの支出も年々増えており、2020年の年間総訪問者数は32億2800万人に達し、一人当たりの消費額は84.16台湾元で、過去10年間で27%近く増加した。都市別で2021年コンビニ店舗数の分布を見ると、新北市が1番多く2,311店舗で19%、2番目が台北市で1,678店舗で14%、続いて台中市で1,490店舗で14%となっている。
業界の5つの主要プレイヤーは、台湾主要6都市に合計8,802店舗を持ち、6都市だけで全国のコンビニ店舗数の73.4%を占める。加えて、台北市は1km²あたりの平均店舗数が6.45店で、コンビニ密度が最も高い事を示している。
出典:公平交易委員会
台湾の百貨店・ショッピングセンター事情〜統計データ〜
業績トップの台中の百貨店
2021年の台湾百貨店業績ランキングを見ると、1位は新光三越台中店で214億台湾元、2位が台中大遠百で168億台湾元、3位が新光三越台南西門店で158億台湾元、4位にようやく首都台北の台北101で157億台湾元となった。台中に隣接する苗栗、彰化、南投には百貨店が無い為、台中の百貨店を利用する事が多い上に、台中に有る百貨店数も多くない事から売上を伸ばしたと考えられる。
加えて、台中には中小企業も多く、富裕層が多く住んでいる事も百貨店の売上に大きく影響を与えているとみられる。台北に関しては、数多くの百貨店が散らばっており顧客も集中し難い為、売上が伸び切らなかったと考えられる。
出典:購物中心情報站
今後完成予定の百貨店
今後2022年から2026年までの5年間で、台湾全土に24の百貨店及びショッピングセンター開発プロジェクトが存在する。新たに完成する百貨店は、台北市南港区に4つ、台中と台南にそれぞれ5つで、台北、台中、台南に集中している。
特に台南は大手テクノロジー企業の参入の恩恵を受け、ダークホースとして勢いを増している。一方で、20年間で42%衰退した日本の百貨店業界を例に上げ、台湾の百貨店業界も日本の二番煎じに転落する恐れがあると懸念する声もある。
出典:購物中心情報站
台湾のドラッグストア事情〜統計データ〜
ドラッグストア店舗の分布
台湾のドラッグストア業界は、新型コロナウィルスの流行後に防疫用品のビジネスチャンスを生み出し、積極的に店舗の拡大とオンラインサービスを展開している。2021年のデータによると、台湾国内には1300以上のドラッグストアがあり、県及び市の分布を見ると、ほとんどが台湾北部に集中している。中でも、台北市に最も多く集中しており、割合は全体の半分を占めている。
ドラッグストア業界大手のワトソンズは台湾全土571店舗のうち、台北市と新北市、桃園市の北部3都市だけで270店舗を構えている。全体の売り上げから見ても、台北市、新北市、桃園市の3都市合わせると約65%におよぶ。この様に台湾のドラッグストア業界は熾烈で、企業もそれぞれの特色を活かした顧客へのアピールを行なっている。
出典:經濟部統計處(台湾経済省統計局)
健康食品と医薬品の収益向上
台湾の3大ドラッグストアである、Watsons、Cosmedと POYAの取扱商品をカテゴリー別で見ると、どのドラッグストアも化粧品とスキンケア用品などの美容商品が半分以上を占めている。加えて、近年のドラッグストアは、食品や日用品など幅広く商品を扱い、スーパーマーケットのような傾向にある。
一方で、統計によると2021年の健康食品市場は1596億台湾元に達し、年間成長率は5.6%で、会社全体の収益に対する健康食品と医薬品の貢献度も上がっている。更に、今後も続くと予想される新型コロナウィルスの流行や加速する高齢化社会を受け、商品よりもサービスが重要であると多くのドラッグストアで薬剤師の配置を行ったりなど、薬局チャネルのレイアウトを加速させている。
出典:經濟部統計處(台湾経済省統計局)
台湾のアパレル事情〜統計データ〜
新型コロナウイルスの影響
2021年台湾の衣料品・服飾品小売業の売上額は2,941億台湾元であった。売上額を四半期別の構成比率で見ると、台湾での新型コロナウィルス感染者数が増えはじめた第二四半期の売上は、在宅勤務や感染を懸念し、買い物や外出を控える消費者の保守的な姿勢により、構成比率が下がった。2020年の同期21%と比べても、2021年は18%と比率を下げた。
アパレル関連業界は、新型コロナウィルスの流行の影響により最も打撃を受けた業界と言える。特に、伝統的な卸売アパレル企業や学生をターゲットにした企業は、実店舗数の減少や撤退するなど、より深刻な影響に直面した。第四四半期に差し掛かった頃から、感染者数が徐々に落ち着きを見せ、業界全体の業績も回復傾向を見せた。
出典:經濟部統計處
成長が続く台湾のアパレル業界
台湾の衣料・アパレル小売業の売上高は9年連続で成長している。ここ数年で、多くの海外アパレル企業が台湾に進出且つ経営基盤を確立し、台湾のアパレル小売業の売上高の成長を牽引してきた。2020年から2021年にかけて新型コロナウィルス流行の影響を受けたが、台湾での感染者数は比較的安定している為、業界の売上高は緩やかではあるが成長を続けている。
2022年に入ってからは国民のワクチン接種率の上昇により、消費者も買い物に出掛ける意欲の高まりを見せ、高品質の品の購入が続いた事もあり、1月から8月の売上高は26.3%増加した。経済部統計局は、2022年の売上高は3,000億台湾元に達すると予想している。
出典:經濟部統計處
台湾の通販・ネット通販事情〜統計データ〜
加速するオンライン販売の成長
電子商取引は世界的なトレンドとなっており、主要国のオンライン販売が飛躍的に伸びている中、台湾においても新型コロナウィルスの流行が追い風となり、オンライン販売の成長が加速している。2021年には小売業オンライン販売の売上高は4,303億台湾元に達した。
2021年の小売業売上高全体に占めるオンライン販売の割合は10.8%となり、2019年と比較して3.3%増加し、引き続き上昇を続ける勢いである。加えて、近年では幅広い年齢層がオンラインショッピング利用にも慣れ、過去5年間のオンライン消費者数百人の購入行動の分析を見ると、消費者の80%近くが月に2回以上オンライン販売を利用し、14%が5回以上オンライン販売を利用しているとの結果が出た。
出典:経済部統計局
産業別で見るオンライン売上高
台湾の全ての企業を合わせた2020年オンライン売上高は4兆5,901億台湾元に達し、年増率5.9%で2016年よりも30%近く増加した。産業別でオンライン売上高の比率を見ると、B2Bが主体の製造業が3兆1,400億台湾元で、全体の68.4%を占めダントツのトップとなった。
続いて2位がB2Cが主体の小売卸・販売業で、大規模なECプラットフォームの継続的な多様化されたマーケティングとサービスの最適化により、オンライン売上高は9,259億台湾元、全体の20.2%を占めた。
また、小売業界のオンライン販売は新型コロナウィルス流行の煽りを受け、成長スピードは勢いを増し続けている。一方で、多くの産業でオンライン売上が増加している中、輸送・倉庫業のオンライン売上は前年比0.1%減となった。
出典:経済部統計局
台湾の家電量販店事情〜統計データ〜
台湾の4大家電量販店
台湾の家電量販店市場は、エアコンなどの季節家電に加え、新型コロナウィルス流行により空気清浄機などの防疫関連家電の売れ行きが引き続き好調である。更に売上を押し上げる為に、それぞれの家電量販店でお得なキャンペーンと組み合わせるなどして、ビジネスチャンスを競い合っている。
4大家電量販店である、燦坤、全國電子(E-life Mall Corporation) 、順發、集雅社の2022年1月から4月の営業収入を見ると、トップは燦坤で78.56億台湾元、最下位が集雅社で11.81億台湾元であった。しかしながら、年間成長率で見ると、トップが集雅社の24.30%、最下位が燦坤の13.19%となり、営業収入額とは真逆の順位という興味深い結果であった。
出典:公開資訊觀測站
マイナス成長に終止符
台湾の家電小売業界は、2012年から2019年までマイナス成長を続けていたが、新型コロナウィルスの流行が始まった2020年に前年比で1.0%増加し、8年連続のマイナス成長に終止符を打った。在宅勤務やオンライン授業の増加に伴う関連機器が売り上げを伸ばした事も、大きく影響を与えた。
商品を直接見て触れて購入を検討する消費者が多く、2022年上半期の実店舗売上高は全体の92.9%を占め、販売方法は依然として実店舗中心である。しかし、新型コロナウィルスの流行により、オンライン売上高の割合は2019年が5.8%、2021年が8.0%と徐々に割合を伸ばしている。全体の売上をカテゴリー別で見ると、1位は家電で全体の約40%を占め、その次に通信製品、パソコン・タブレット周辺機器と続く。
出典:統計處
台湾の家具・インテリア・生活雑貨・ホームセンター事情〜統計データ〜
拡大する家具の生産規模と販売規模
近年、多くの台湾家具製造業者が拠点を中国に移転する流れがある。台湾は以前から家具の輸出大国であり、その品質と価格は国際市場で非常に競争力がある。輸出国の割合を見ると、米国が56.35%で全体の半分以上を占め、次に14.3%の日本、続いて、ドイツ、中国、カナダとなっている。
近年の経済のグローバル化に伴い家具産業の国際化プロセスも加速し、家具の生産規模と市場規模は絶えず拡大しており、世界の国と地域間の家具輸出入取引も非常に活発である。中でも、布張りの家具の生産額は上昇傾向を示し、家具製品の重要な構成要素の一つである。また、家具市場全体の約9%を占め、近年の家具市場で最も急速に成長している部分の一つである。
出典:経済部統計局
木製家具販売統計
台湾の主な家具販売チャネルは、伝統家具店、オンライン店舗販売、IKEAやニトリ等の大型チェーン家具量販店、工場直売、高級家具直輸入等があげられる。新型コロナウィルス流行のピーク時、実店舗への人流は70%減少し、多くの企業や店舗でオンライン販売の拡大に力を入れた。
2022年上半期の家具・装飾品小売業の売上高年間成長率は12.9%であったのに対して、オンライン販売の売上高は年間成長率43.8%であった。これは、小売業主要産業の中で売上構成比率が全体の2.1%と高くないものの、オンライン売上高年間成長率は1番高い数字となった。加えて、2020年と2021年の同成長率は、20.2%、38.9%で、オンライン販売の売上高は増加傾向にある事がわかる。
出典:経済部統計局
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。