この記事では、統計データを用いてシンガポールの医療・介護業界の最新情報をお届けしていきます!
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シンガポールの病院事情〜統計データ〜
医療施設ベッド数
シンガポールで最も多くの病床数を擁しているのは急性期病院の約11, 545病床で、近年になり病床数は増加傾向にある。2018年から2020年にかけての増加率は1.07%にとどまっているものの、2009年から2018年の10年間では30.6%増加していた。
また、地域病院における病床数は急性期病院と比較すると少ないものの、2020年には2,069病床あり、2018年から2020年にかけての増加率は1.16%と急性期病院の増加率よりも高い増加率を示している。
一方、精神科病棟では、病床数がここ5年にわたり1950床と変動がない。また、老人ホームの病床数は1990年代中頃から増え続けてきたが、2018年からの増加率は緩やかになっている。
出典:SingStat
医療従事者数
下のグラフはシンガポールにおける医療従事者の時間推移を示している。2018年の医師数は13,766人と、2017年と比較すると約2.8%増加している。医師の構成は公立病院での勤務医が約8,800人、それ以外のプライベート病院での医療に従事している医師が約4,200人、そして現在医療活動を行っていない医師は約700人となっている。
約5%の医師が現在は医療活動を行っていない一方、登録されている看護師数は2018年において約33,600人と、医師の伸び率とほぼ同じ2.9%の増加を示している。2009年からの10年間では70.3%の増加を示しており、看護師数は約14,000人増加した。
出典:SingStat
シンガポールの医療機器事情〜統計データ〜
ヘルスケア市場規模
シンガポールは、ASEAN諸国の中で1人当たりの年間医療支出額が最も多い。高齢化と人口動態の変化を考慮すると、これは GDPよりも速く増加すると予想される。保健省によると、シンガポールの国民医療費は2030年には430億ドルに増加する可能性がある。
公的医療費と民間医療費の両方を含む医療費は、GDPの5.9%を占めると予想されており、同じように 9.0%に達する可能性がある。この増加は、主に医療に対する政府支出の増加と地元住民による医療サービスの消費に起因している。
出典:Singapore Government Trade Statistics
医療機器の輸出入状況
シンガポールは医療機器の85%以上を輸入していて、2021年のシンガポールへの医療機器と消耗品の輸入は、前年比で23%増加した。そのうち、米国からの輸入が全体の14%を占めた。平均して、シンガポールに輸入された製品の70%以上がその後再輸出されている。
2022年の見通しでは、輸入と現地生産が大幅に増加する可能性がある。これは、世界経済の回復、サプライチェーンの安定化、国境制限の緩和、および正常への着実な復帰によるものである。
出典:Singapore Government Trade Statistics
シンガポールの製薬・バイオテクノロジー事情〜統計データ〜
登録薬剤師数
2020年12月31日時点で、シンガポールで登録されている薬剤師の数は3,572人だった。そのうち2,720人は地元で研修を受けた卒業生で、852人は外国で研修を受けた卒業生である。
薬剤師数は2019年から164名(4.8%)増加し、新規登録者数は毎年約200名で安定している。シンガポールの登録薬剤師の人口は、約2579人 (72.2%) の女性薬剤師と993人 (27.8%) の男性薬剤師で構成されている。
出典:保健省
登録薬剤師の内訳
シンガポールの登録薬剤師の大部分は中国系 (3,320 人、93%) だが、インド系とマレー系の薬剤師もおり、それぞれ人口の3.3%と1.5%を占めている。3572名の登録薬剤師のうち、2711名 (75.9%) がシンガポール人、656 名 (18.4%) がマレーシア人である。外国人研修医登録薬剤師に関しては、2020年12月31日時点で852人だった。
出典:保健省
シンガポールの医療卸事情〜統計データ〜
シンガポールの人口構成
シンガポールの人口構成は永住者はシンガポール国籍保有者と永住権取得者のそれぞれで公表されている。シンガポール国籍保有者は年約6%のスピードで65歳以上の高齢者が増えており、15−20年後には日本同様高齢化社会が訪れると示唆されている。また、男女共に社会進出が盛んでキャリアを追求する女性も多く、未婚女性の増加、出生率の低下が社会問題となっている。
出典:Singstat
医療・介護施設数の推移
シンガポールには2020年1月時点で、東部に8ヵ所、西部に6ヵ所、中心部に6ヵ所で合計20のポリクリニックがある。ポリクリニックは、急性疾患の治療、慢性疾患の管理、女性と子供の健康サービス、放射線、検査、薬局サービスなど、様々な補助金付きのプライマリケアサービスを提供している。2030年までに32のポリクリニックが建設される予定である。
また、2020年1月時点でシンガポールには16の救急病院と地域病院があり、2030年までに新しい総合病院と地域病院が東部に開設される予定となっている。
出典:Singstat
シンガポールの介護事情〜統計データ〜
高齢者支援比率の変化
過去数十年にわたり、居住者人口(シンガポール市民と永住者を含む)の高齢者支援率は着実に低下している。1990年では10人以上の生産年齢が1人の高齢者を支えていたのに対し、2022年では4人以下の生産年齢が1人の高齢者を支える状態になった。この支援率は今後さらに減少していくことが予想されている。この減少傾向に寄与する要因には、平均余命の伸びと出生率の低下が含まれている。
出典:シンガポール統計局
急速に進む高齢化
他のアジア各国同様、出生率の低下と医療の発達による国民の高齢化が進み、2030年には65歳以上のシンガポール人が90万人以上になると予測されている。これは国民の4人に1人が高齢者になるということで、労働人口ベースで見ると、2030年には高齢者1名を労働者2名で支えることになる。
よって、政府は高齢者のステークホルダーは全国民であると訴え、医療や介護関係者以外の国民も巻き込んで問題意識を持ってもらうべく、アクションプランを策定した。また、介護に伴う支出についても危機意識を持たせるべく、2020年からは30歳以上のシンガポール国籍・永住権保有者は政府が運用する介護保険「CareShield Life」への強制加入も行う予定だ。
出典:シンガポール統計局
2017年よりシンガポール在住の日本人。元客室乗務員。大学ではマーケティングと経済を学び、卒業後は海外での生活と旅行を重ね、さまざまな国の文化や人々、食に関する豊富な知識を身につける。シンガポール人の旦那との結婚を機にシンガポールに移住し、現地で就労。現在はライター業と翻訳業を行っている。