この記事では、統計データを用いてベトナムの医療・介護業界の最新情報をお届けしていきます!
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ベトナムの病院事情〜統計データ〜
ベトナム国内の病院数の推移
ベトナムの病院数は年々増加傾向にある。ベトナムの病院制度には公立病院と私立病院の両方が含まれており、公立病院は人々に医療サービスを提供する上で重要な役割を果たしている。また、ベトナムの公立病院は、中央、省、県レベルの3つのレベルに分かれている。
公立病院は政府の支援を受けているため、患者は質の高い低コストの医療サービスを受けることができる。私立病院のサービスも充実しているが、政府からの支援がないため患者が負担する医療費は非常に高額である。
出典:GENERAL STATISTICS OFFICE of VIETNAM
ベトナム国内の医師数の推移
ベトナムの人口1万人あたりの平均医師数は年々増加しているが、医師不足は依然として多く発生している。クリニックの医師は一般的に1日あたり60~100人の患者を診察している。その理由は、給与体制が十分ではなく、医療チームを維持できないからである。
また、公立病院と私立病院の給与には大きな格差があるため、特に公立病院の医師はより高い賃金の私立病院を探すために退職する傾向がある。
出典:GENERAL STATISTICS OFFICE of VIETNAM
ベトナムの医療機器事情〜統計データ〜
ベトナムの医療機器市場
ベトナムの2023年時点の医療機器市場を①消耗品、②画像診断、③歯科用製品、④整形外科および補綴、⑤患者補助具、⑥その他の医療機器を含む6つの分野でみていくと、予測データでは②の画像診断(571百万USD)が特に大きな割合を占めていることがわかる。
ベトナムはアジア太平洋地域の医療機器市場において最も急速に成長している国の1つであるが、ベトナム国内で流通している医療機器の国産化は基本的なものに限られており、輸入品が国内市場の約9割を占めている点が課題である。
現在、多くの外資系医療機器メーカーがベトナム市場の成長性やポテンシャル、生産コストや人件費の安さなどを踏まえてベトナム国内での工場の建設を計画している。
出典:BritCham
医療機器輸出入額の推移
ベトナムの医療機器輸出入額は増加し続けているが、輸入に依存している状況である。課題として、国内に医療機器の生産に特化した工業団地やクラスターがなく、医療機器分野への投資誘致を担当している政府の専門機関等も存在しないことなどが挙げられる。
また、医療機器の製造には高度な技術が必要であるが、ベトナムの医療機器関連の技術力は依然として脆弱である。上記のような状況を踏まえて、政府は国内外の投資資本を誘致するために医療機器に特化した工業団地の開発を検討している。
出典:経済産業省
ベトナムの製薬・バイオテクノロジー事情〜統計データ〜
医薬品企業数の推移
ベトナム国内にある医薬品製造企業数は増加し続けており、同分野の年間平均成長率は5.9%である。具体的には、2016年の166社から2020年には214社まで増加した。また、ベトナム国内では約20社の医薬品製造企業が証券取引所に上場している。
ベトナム国内の医薬品市場は、国営企業と大手外国企業により支配されている。また、ベトナムの製薬業界は規制が厳しい業界で、事業に関連する認証や認可の取得が必要だが、手続きは非常に煩雑である。
2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大により医薬品の需要が急激に高まり、ベトナム政府は医薬品製造分野の拡大を促進したため、医薬品製造会社を新たに設立するプロジェクトが多数進めらている。
出典:ベトナム保健省
登録医薬品数の推移
ベトナム国内で医薬品を流通させるために登録されている医薬品の数は、年平均0.2%程度で増加し続けている。この登録数には、ベトナム国内で製造された医薬品と海外から輸入された医薬品の両方が含まれている。
ベトナム国内での医薬品の需要は増加しているが、ベトナム国内で流通させるために必要な登録が実際に行われる医薬品は非常に少ない状況である。そのような状況になっている原因は、ベトナム政府が行う医薬品に関する審査や承認には、平均で少なくとも2年/1製品の時間がかかるからである。
政府は、国内の製薬業界の健全な市場競争に向けて医薬品の製造や輸出入、流通、販売などの活動を厳格かつオープンにするための法制度の整備を進めている。
出典:ベトナム保健省
ベトナムの医療卸事情〜統計データ〜
健康保険加入者数の推移
保健省が公表している統計データでは、ベトナム国内で健康保険の加入者数は増加し続けており、年率3%以上で増加している。2021年12月末時点で、ベトナム国内の健康保険加入者数は8,883万7千人で、前年比で79.4万人増加(前年比0.9%増加)しており、全人口の約91.01%が健康保険に加入していることになる。
これは、ベトナム政府が掲げた目標値(2021年1月1日付決議第01/NQ-CP)を0.01%超えた状態である。また、現在ベトナム国内では年間1億回を超える健康保険適用ケースがあり、一般的な健康保険適用対象範囲には、健康診断や治療用医薬品(1,000アイテム以上)、9,000以上の技術的サービスなどが含まれる。
出典:ベトナム保健省
60歳以上の高齢者の割合
2016年から2018年にかけてベトナム国内の病院及び診療所での年間利用者数は、2億2,900万件から2億400万件へ大きく減少した。2019年は利用者数が急激に増加したが、2020年は急激に減少した。一般的なベトナム人は、常に混雑していて煩雑な手続きが必要な国立病院の利用を避ける傾向が高まっている。
保健省の統計データでは、保健省付属病院の利用者数は全国の病院及び診療所の年間総利用者数の3.45%にすぎないが、医薬品や医療品の販売先としては非常に大きなシェアを持っており、全体の20.36%を占めている。
出典:ベトナム保健省
ベトナムの介護事情〜統計データ〜
ベトナムの平均寿命推移
ベトナム政府が公表したデータでは、ベトナム人女性の平均寿命はベトナム人男性の平均寿命よりも5.3年長い(2021年の場合)。ベトナム人女性の平均寿命がベトナム人男性の平均寿命よりも長くなっている影響で、①高齢男性の労働人口が減る、②高齢女性の収入が少なくなる、③医療費が増加するなどの問題が起きている。
また、現在ベトナムでは老年医学専門医や経験豊富な介護士、小規模な老人ホームなどが不足しており、ベトナム国内での高齢者の介護は主に家族に依存している状況である。ベトナムの高齢者の人口は2019年には11.86%で、2038年には20%に達し「高齢社会」になると予測されており、高齢化が急速に進む世界10か国の1つとされている。
出典:ベトナム統計局
資格別介護士数の推移
保健省が公表した統計データでは、ベトナム国内の介護士の数は増加傾向にある。高等及び中級の学位を持つ介護士の割合が最も高く全体の約83%を占めている。ベトナムの介護人材に関する課題としては、一般的には介護が職業として考えられておらず、ベトナムではこの分野の専門教育が不足している。
また、介護職は重労働で給料が低いため、ベトナム国内の教育機関で医療を修めた人は民間のクリニックや病院で働いたり、多くの収入が得られる海外での勤務を選択するケースが多い。
保健省は、長年にわたって高齢者介護施設の人材育成を目的とした政策を数多く打ち出しているが、効果がなく、慢性的な人材不足になっている。現在ベトナムの人口1万人当たりの平均介護率は11.4であり、世界平均を大きく下回っている。また、OECDが推奨する値を満たすためには、2~3倍の介護士が必要な状況である。
出典:ベトナム統計局
ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。