この記事では、統計データを用いてタイのエンタメ・IT ・個人サービス業界の最新情報をお届けしていきます!
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タイの旅行事情〜統計データ〜
回復の兆しを見せるタイの観光業
タイ国家統計局(NationalStatisticalOffice)のデータによると、2021年にタイに入国した渡航者は43万人であった。この入国者数は2019年に約4,000万人と過去最高を記録して以降、新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限のため、激減している。
ただし、タイ政府は2021年11月から段階的に入国制限を緩和し始め、2022年10月には新型コロナウイルス関連の制限を完全に撤廃した。これにより、2022年の累計入国者数は1,000万人を超える見込みとなっている。
一方で2023年については、コロナ禍明けの旺盛な旅行需要が一服すること、世界的なインフレ・景気後退の影響や、中国のゼロコロナ政策の行方にも左右され、依然として先行きは不透明である。
出典:NationalStatisticalOffice
訪日タイ人の推移
日本政府観光局(JNTO)によると、2022年1月から10月までに日本に入国したタイ人の累計人数は62,900人であった。新型コロナウイルスの影響により、訪日タイ人も2019年の約132万人をピークに2020年と2021年はごくわずかであったが、日本でも2022年10月より入国制限を大幅に緩和し、個人の観光客の受け入れも開始している。
日本はコロナ禍以前から観光地としての人気が高く、今回の「開国」にあたって外国人観光客が殺到している。航空会社は日本路線の再開、就航を進めている他、観光産業では人員の確保を急いでいる状況である。タイでも日本への旅行人気は依然として高く、足元の円安も相まって訪日タイ人の数は次第に回復を見せることが期待されている。
出典:JNTO
タイのホテル事情〜統計データ〜
タイのホテル稼働率の推移
タイ中央銀行(BankofThailand)のデータによると、2021年のタイのホテルの客室稼働率は14.2%であった。29.5%であった2020年よりもさらに低下し、新型コロナウイルスの感染拡大と行動制限、入国制限の継続が響いた形となった。
よって、過去最高を記録した2019年からは大幅に落ち込んだ。しかし、現在は観光客の受け入れに関する制限は完全に撤廃されており、2022年10月の客室稼働率も54.7%と、通常の水準に戻りつつある。
一方、ホテル稼働率に関しては、宿泊形態の一つとして確立されつつある民泊施設の供給や、外国人観光客だけでなくタイ人の国内旅行需要も重要な指標であり、これらの動向についても注意が必要である。
出典:Ministry of Touism and Sports
拡大を続けるホテル客室数
タイ国家統計局(NationalStatisticalOffice)のデータによると、2020年のタイのホテル客室数は前年比2.0%増の80.0万室であった。地域別に見ると、首都バンコクが16.6万室、中部が20.8万室、北部が11.1万室、東北部が8.8満室、南部が22.8万室であり、各地方とも前年より増加した。
首都であり海外からタイに入国する際の玄関口でもあるバンコク、バンコクから車でアクセス可能なリゾート地のパタヤ、フアヒンなどを含む中部、プーケットやサムイ島といった世界的にも有名なリゾート地がある南部でホテルの供給が多い。近年、タイ政府が地方の観光施設開発を積極的に行っており、大手ホテルチェーンを中心に北部チェンマイ、南部クラビなどで新規ホテル建設が進められている。
出典:National Statistical Office
タイの放送・全国紙・出版事情〜統計データ〜
タイの番組カテゴリ別視聴者数割合
国家放送通信委員会(NBTC)のレポートによると、2020年のタイの番組カテゴリ別視聴者数割合は、高解像度チャンネルが全体の66.9%と、最大の割合を占めた。続いて中解像度チャンネルが27.9%、ニュース・ドキュメンタリーが3.7%、公共チャンネルが1.7%であった。
このうち、高解像度チャンネルは前年比5.06%の増加、中解像度チャンネルは3.63%の減少と、比較的変動幅が大きかった。これは中解像度チャンネルおよび公共チャンネルのうち7チャンネルが、2019年に放送ライセンスの失効に伴い放送を終了したことで、それらの視聴者が高解像度チャンネルへ移ったことが原因と考えられる。一方で、2019年に高解像度チャンネルで放送終了したものはなかった。
出典:MBTC
タイのコロナ禍でのテレビ視聴時間
国家放送通信委員会(NBTC)は2019年と2020年における、タイのテレビ視聴者の月別の一日当たりのテレビ視聴時間を報告した。2020年4月にこの2年で最高の4.43時間を記録したことをはじめ、2020年3-5月は2019年の同期間より高い数値であった。これは2020年3月頃からタイでも新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、政府が国境と県境の厳格なロックダウンを行ったためと考えられる。
人々が外出を控えて家にいる時間が長くなったことに加え、情報収集のためにより長くテレビを見ていたことが示唆される。一方で、7月頃からは2019年を下回る月も出てきており、感染状況の改善および行動制限の緩和により、人々がテレビを見て過ごす時間も比較的短くなった。
出典:MBTC
タイの携帯電話事業者事情〜統計データ〜
再編が進むタイの通信業界
国家放送通信委員会(NBTC)のレポートによると、2020年のタイの携帯電話の契約件数は1億1,629万件で、前年より10.28%減少した。市場シェアを見るとAISが44.54%で第一位、TRUEが32.39%で第二位、DTACが20.27%で第三位であり、これら大手3社で約97%のシェアを占める。タイの通信業界では再編が活発化しており、2021年1月にはCATとTOTが合併しNational Telecom (NT)となった。
また、現在TrueとDTACの合併がNBTCに承認されている状況だが、業界シェア二位と三位の大手同士の合併のため、市場の独占が起こり消費者への不利益となりかねないとして、タイ消費者議会を中心に反対の声も出てきている。
出典:NBTC
成長する携帯ブロードバンドサービス市場
国家放送通信委員会(NBTC)のレポートによると、2020年のタイの携帯ブロードバンドサービス契約者数は6,306万人、普及率は92.56%であった。それぞれ前年より4.5%、4.3%の増加であり、モバイル端末からインターネットにアクセスすることがより一般的になってきている。新型コロナウイルスの感染拡大により、さらにインターネットの重要性が増したとも見ることができる。
一方、主要なプロバイダーは携帯電話キャリアと同様AIS、True、DTACである。市場の独占度を表す指数であるHHI(ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス)は2019年の3,417から2020年には3,461となっており、わずかながら独占状態に近づいている。
出典:NBTC
タイの広告事情〜統計データ〜
タイのメディア別広告費
タイの広告代理店協会(MAAT)によると、2022年上半期(1月から6月)の広告費の合計は前年比5.3%増の567億バーツであった。うち、テレビ広告が最も多く、306億バーツで全体の54%を占めたが、前年比では3.3%の減少であった。
一方、オンライン広告が122億バーツで全体の21%、映画館が37億バーツで7%、屋外広告が37億バーツで7%、交通が28億バーツで5%で、これらは前年より伸びを示した。特に映画館は既存施設での広告を中心に91%の増加、オンライン広告はデジタル化の進行やeコマースの発展により前年比10%増加した。交通については前年に分類不可だったものが計上されたことにより前年比39%の増加となった。
出典:Media Agency Association of Thailand
成長するタイのデジタル広告分野
タイのデジタル広告協会(DAAT)によると、タイの2020年のデジタル広告費は211億バーツと、前年比7.7%の増加であった。デジタル広告費は年々増加してきており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もなく、初めて200億バーツを突破した。産業別では自動車分野が最も多く、27.1億バーツで全体の13%を占め、続いてノンアルコール飲料が19.9億バーツ、通信が19.8億バーツ、スキンケア製品が19.2億バーツであった。
また、プラットフォーム別ではFacebookが65.6億バーツで全体の31%を占め、続いてYoutubeが45.9億バーツで全体の22%を占めた。これらのタイ人の多くが日常的に利用するプラットフォームを中心にデジタル広告がより活発化している。
出典:Digital Advertising Association (Thailand)
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。