この記事では、統計データを用いてマレーシアの建設・インフラ・環境業界の最新情報をお届けしていきます!
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マレーシアの建設事情〜統計データ〜
建設プロジェクト件数
マレーシア建設産業開発局の年次報告書によると、2019年の公共・民間を合わせた建設プロジェクトは1万16件を記録したが、2020年はCOVID-19の影響で前年比23.6%減となる7,655件に落ち込んだ。公共プロジェクトは前年比9.3%減となる2,770件、民間プロジェクトは同29.8%減となる4,885件となった。
金額ベースでも、2019年にはプロジェクト総額が1,081億リンギットであったが、2020年には36.4%減となる687億リンギットに落ち込んだ。2020年のカテゴリー別件数では、非住宅が全体の35.8%(2,741件)を占め、インフラストラクチャー(33.5%、2,567件)、住宅(21.7%、1,659件)が続いた。
出典:マレーシア建設産業開発局
建設セクター成長率
建設セクターのGDP成長率は、COVID-19パンデミックの移動制限によって事業活動が停滞したことから2020年は19.4%減、2021年は5.2%減と、マイナス成長が続いた。
一方で、2021年は一部の商業及び土木プロジェクトの最終製品、小規模プロジェクトの実施に支えられ、サブセクターの特殊貿易はプラス成長を達成している。住宅・非住宅分野では、長期の操業停止期間により建設活動は低調に推移した。
2022年には建設セクターの成長が回復すると予想されており、大型インフラプロジェクトの継続的な建設活動、及び2022年度政府予算による小規模プロジェクトの実施が土木及び特殊貿易のサブセクターの成長を支えると見られている。
出典:マレーシア中央銀行
マレーシアの不動産デベロッパー事情〜統計データ〜
住宅取引量
2021年の住宅取引量は198,812件(769億リンギット)を記録し、2020年と比較して数量ベースで3.9%、金額ベースで16.7%増加した。特に、クアラルンプールとセランゴール州、ペナン州、ペラ州での改善が寄与した。逆に、ジョホール州では市場が縮小した。
また、セランゴール州は、国内住宅市場全体における取引量で24.5%(48,755件)、金額で34.4%(264億9,000万リンギット)を占め、国内最大市場シェアであった。住宅種別では、テラスハウス(約43.0%)に需要が集中し、次いで開発用地、高層住宅がそれぞれ約15%のシェアを占めた。価格帯別では、30万リンギット以下が全体の55.9%を占め、300,001~500,000リンギット(24.6%)が続いた。
出典:National Property Information Centre
不動産取引額
2021年の不動産取引額は1,449億リンギットを記録した。これはCOVID-19パンデミックの影響が大きかった2020年比で21.7%の増加となり、回復の兆しが見えている。サブセクター別では、住宅が全体の53%を占める769億リンギットで最も多く、以降は商業(279億リンギット、19%)、工業(169億リンギット、12%)が続いた。
前年から大きく増加したのが商業で、前年比43.1%増、工業も同32.9%の増加となった。ただ、農業は前年比で5.1%の減少となっている。州別での不動産取引額では、セランゴール州が458億リンギットで最も多く、以降はクアラルンプールが204憶リンギット、ジョホール州が192憶リンギットと続いた。
出典:National Property Information Centre
マレーシアの不動産仲介事情〜統計データ〜
売れ残り住宅件数
2021年における国内売れ残り物件状況はあまり芳しくなく、2021年末時点で約3万7,000件(227億9,000万リンギット)となり、件数では前年比24.7%増、金額では20.5%増であった。特に、セランゴール州の売れ残り物件数は6,095件(52億8,000万リンギット)となり、件数・金額ともに国内最大で、それぞれ全体の16.5%と23.2%を占めた。
物件別では、コンドミニアム/アパートが55.6%(20,505棟)を占め、長屋式住宅のテラスハウス(21.3%、7,839戸)が続いた。また、30万リンギット以下の手頃な価格帯の住宅が31.5%(11,610戸)と最も多かった。一方、建築中の売れ残りは2.1%減の70,231戸と改善しているが、未建設の売れ残りは69.2%増の21,960戸と大幅に増加した。
出典:National Property Information Centre
住宅価格中央値
2021年の住宅価格中央値は31万リンギットを記録し、前年から5.1%の上昇で過去最高額となった。同年における州別住宅価格中央値では、プトラジャヤが62万8,000リンギットで最も高く、クアラルンプールの49万リンギット、セランゴール州の41万リンギットが続いた。逆に、国内最安はケダ州の20万7,000リンギットであった。
また、セランゴール州においては、セミ・デタッチドハウスの中央値が99万5,000リンギットで最も高額となっており、以降はデタッチドハウス(57万リンギット)、長屋式住宅のテラスハウス(51万リンギット)が続いた。対して、クアラルンプールはデタッチドハウスの中央値が238万リンギットとなっており、セランゴール州の4倍近くになっている。
出典:National Property Information Centre
マレーシアの水道事情〜統計データ〜
上水道の無収水推移
マレーシアの水消費量は年々増加を続けており、2021年には前年比で1.2%増となる10,059MLDに達した。消費量が最も多かったのがセランゴール州の3,612MLDとなっており、ジョホール州が1,385MLDで続いた。
無収水率については、近年全国平均は30%台を推移しており、2021年は33.4%(5,041MLD)と前年比で0.4ポイント改善した。特に無収水率が高いのが、プルリス州(63.3%)、ケランタン州(52.6%)、ケダ州(49.9%)であった。
逆に、ペナン州(23.6%)とジョホール州(25.1%)、セランゴール州(27.5%)は無収水率が低い状況となっている。ただ、無収水の量が最も多いのはセランゴール州の1,373MLDとなった。
出典:National Water Service Commission
下水処理場
マレーシアの下水処理場数は年々増加を続けており、2021年は7,440ヵ所と前年比で237ヵ所の増加となった。最も下水処理場が多いのがセランゴール州の1,986ヵ所で、全体の26.7%を占め、以降はペラ州(1,170ヵ所、15.7%)、ジョホール州(1,007ヵ所、13.5%)が続いた。
浄化槽については、2019年は共同浄化槽が4,155ヵ所で、前年から75ヵ所減り、個別浄化槽が1,363,886ヵ所(前年比1,460ヵ所増)となっている。また、2021年の下水管長は、前年から415km伸びて21,283kmであった。最も長いのがセランゴール州(6,507km)で、ジョホール州(3,499km)、ペナン州(2,565km)と続いた。
出典:National Water Service Commission
マレーシアの電力・ガス事情〜統計データ〜
消費電力量
マレーシアの消費電力量は年々増加を続けていたが、2020年は前年比で4.0%減となる13,100ktoeとなった。消費電力内訳は、産業向けが全体の48.9%(6,403ktoe)を占め、商業(26.6%、3,480ktoe)、住宅(23.8%、3,124ktoe)が続いた。2019年比では、住宅向け(+15.1%)と農業向け(+3.5%)は増加したが、輸送向け(-17.1%)と商業向け(-14.8%)、産業向け(-5.1%)は減少した。
また、2020年の発電量は14,971ktoeとなり、前年比で2.6%減少した。発電量の80.7%(12,084ktoe)は火力発電からとなっており、他は水力発電が2,348ktoe、コージェネレーションが539ktoeであった。
出典:Statistics(Energy Commission)
天然ガス消費量
マレーシアの天然ガス消費量は近年減少傾向にあり、COVID-19パンデミックによる移動制限の影響から2020年は16,631ktoeを記録し、前年比で10.8%減となった。天然ガス消費量の内訳としては、非産業向けが全体の59.6%(9,913ktoe)を占めており、産業向けが44.2%(7,358ktoe)で続いた。
2019年比で最も天然ガス消費量が減少したのは商業向けで39.1%減となり、輸送も同33.7%減となった。また、2019年の天然ガス生産量は72,579ktoeと前年比で0.9%減少した。天然ガスの貿易については、2020年の輸入量が5,519ktoe、輸出量が1,179ktoeであった。
出典:Statistics(Energy Commission)
クアラルンプール在住4年目の日本人。大学卒業後、東京で飲料メーカーの営業を担当。その後、マレーシアのクアラルンプールへ移住し食品商社の営業及び購買のサポートを担当。