この記事では、統計データを用いてタイの教育業界の最新情報をお届けしていきます!
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タイの学校事情〜統計データ〜
タイの大学の世界ランキング推移
イギリスの調査会社QuacquarelliSymondsが発表した2023年度版世界大学ランキングによると、国立チュラロンコン大学が世界224位でタイ1位であった。続いて国立マヒドン大学が世界256位でタイ2位、国立チェンマイ大学が世界601-650位のグループでタイ3位、国立タマサート大学が世界651-700位のグループでタイ4位、国立カセサート大学が世界801-1000位のグループでタイ5位となった。
しかし世界的にも上位に入っているアジア(中国や日本、シンガポールなど)の大学と比較すると、タイの大学は特に論文の被引用数、外国人教員数、留学生の人数といった項目で未だ遅れを取っている。
出典:QUAQUARELI SIMMONS (QS)
年代・男女別平均就学年数
2021年の15歳以上の平均就学年数は8.9年で、年代別に見ると15-39歳では11.0年、40-59歳では8.8年、60歳以上では5.5年であった。全年代で2012年よりも約1年程度の伸びを示していること、15-39歳の若い世代の平均就学年数がそれ以上の年代よりも⻑いことから、タイの教育水準の向上が見てとれる。
また、60代以上では女性に比べて男性のほうが平均就学年数が⻑いのに対し、40-59歳では男女でほぼ同等、15-39歳では女性のほうが⻑い平均就学年数となっている。女性の間でも教育の重要性が浸透し、良い教育を受けて社会でも活躍する女性が増えてきている。
出典:国家統計局(National Statistical Office)
タイの幼児教育・学習塾事情〜統計データ〜
初等および中等教育就学率
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の発表によると、タイの2020年の初等教育(6-11歳)粗就学率は女子102.3%、男子102.2%で計102.2%、中等教育(12-17歳)粗就学率は女子112.3%、男子115.2%、計113.8%であった。初等教育については近年、男女問わず100%程度を維持しており、ほぼ全ての子どもが教育を受けることができている様子を表している。
中等教育は近年、110%を超える割合を示しており、該当年齢のほぼ全ての子どもが教育を受けていることに加え、大人の学びなおしの機会もあるものと推定される。タイでは基本的な教育を受けられる環境が整っており、実際に2018年時点の15-24歳の識字率は98.1%となっている。
出典:unesco
私立学校を選択する学生数
2歳から18歳の子どものうち、2021年の公立学校の生徒数は820.3万人、私立学校の生徒数は236.2万人であった。私立学校へ通う子どもは全体の約22%で、2017年からの5年間で同程度の割合を占めている。タイでは近年、中間層から富裕層の間で教育の重要性への意識が高まって来ており、公立学校と比べて少々学費が高くても質の高い教育を求めて私立学校を選択する家庭が一定数あることを示している。他方、公立学校と私立学校を合計した生徒数全体を見ると年々減少していることがわかり、少子高齢化社会が進みつつあるタイの現状を如実に表している。
出典:国家統計局(National Statistical Office)
タイの保育事情〜統計データ〜
タイの就学前教育参加率
2020年のタイの就学前教育の参加率は女子75.3%、男子75.1%で計75.2%であった。18年、19年の約80%よりは数字を落としたものの、2016年以降で70~80%をキープしている。また、各年とも男女で大きな違いは見られず、幼少期において男女平等に教育の機会を与えられていることがわかる。
タイでは両親が共働きである世帯が多いため、幼稚園や保育園に子どもを預ける家庭が一定数存在する。子どもにとっても幼いころから教育を受け、周りの子どもとの関わり合いの中で社会性を身につけることができるという利点がある。一方で、祖父母やベビーシッターに子どもの面倒を見てもらう家庭も存在する。
出典:UNESCO
タイの就学前教育児童数
2021年の幼稚園年⻑相当の児童数は67.5万人、年中相当は63.0万人、年少相当は29.4万人、私立学校の幼稚園前教育は1.6万人、合計では161.5万人であった。合計人数が2017年の183.4万人から年々減少してきていることに加え、各学年の人数も同様の傾向を示しており、タイの少子化の進行具合が見て取れる。
日本の幼稚園・保育園は3歳~6歳の小学校入学前の子どもを対象とすることが一般的であるが、タイでは1歳の子どもから受け入れている場合もある。また、外国人が多く居住する首都バンコクにはローカル系に加えて日系、欧米系の幼稚園も多数存在し、日本語や英語での教育も行われている。
出典:国家統計局(National Statistical Office)
タイの語学学校事情〜統計データ〜
年齢別英語能力指数
スイスに拠点を置く英語教育機関のEF(EducatonFirst)は毎年世界各国の成人を対象とした英語能力試験を行っている。2020年の世界200万人を対象とした試験の結果に基づいた英語能力指数(EPI)ランキングによると、タイの順位は対象の112か国中100位と、前回の89位(99か国中)よりも順位を落とした。EPIスコアは419で、能力分類はVerylow proficiency(非常に低い)レベルとされている。過去10年間を遡っても、対象国の拡大とともに次第に順位を落としてきている。
出典:EF
アジア各国のEF英語能力指数比較
EFの2021年の英語能力指数(EPI)ランキングによると、タイは対象となったアジア24か国中22位であり、経済的にはタイより遅れを取っている国よりも英語力が低いという結果となっている。EPIスコアは国の生産性や人材競争力、技術革新との正の相関が見られるため、タイの英語力および国力の低下が危惧される。
出典: EF
タイの資格・社会人教育事情〜統計データ〜
タイ人の学歴と失業率の相関
世界銀行のデータによると、2020年のタイ人の学歴別失業率は小卒または中卒が0.89%、高卒が1.39%、大卒以上が2.18%であった。全体では1.1%であり、全ての学歴で2019年よりも大きく上昇したことに加え、直近の10年間で最も高い数値であった。
また、学歴が高いほど失業率が高い傾向を表しており、教育レベルが仕事の充実に結びついていない現実が伺える。一方で、仕事を見つけることができても、教育レベルよりも下の仕事であったり、スキルや経験と異なる分野の仕事であるケースも存在している。
出典:世界銀行
ASEANの中で低い失業率
世界銀行のデータによると、2020年、ASEAN各国では新型コロナウイルスの影響で失業率が増加しており、マレーシア、インドネシア、シンガポールは4%を超えてた。一方、タイの失業率は1.10%で、前年の0.72%からは上昇したものの他の多くの国よりも低い水準であり、雇用状況は安定しているとも取れる。しかし、タイの失業率統計においては農業従事者や個人事業主など就業状況が把握しづらい層や就業意欲がないために失業率を算出する際の母数に含まれない層が存在する点に注意が必要である。
出典:世界銀行
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。