この記事では、統計データを用いてタイの医療・介護業界の最新情報をお届けしていきます!
読了時間の目安:5分
タイの病院事情〜統計データ〜
タイの国民病「糖尿病」
国際糖尿病連合(IDF)によると、2021年のタイの糖尿病患者は607万人で、成人人口(20-79歳)に占める割合としては9.7%であった。アジア各国と比較すると、マレーシアが19.0%で1位、続いてシンガポール(11.6%)、中国(10.6%)、インドネシア(10.6%)となり、タイは第5位であった。
タイ政府は砂糖を多く含む清涼飲料水に税金を課すなど、対策を行っている。その一方で、糖分の多い料理・飲料を控える、適度な運動を行うなど、消費者の健康へ対する意識向上も課題となっている。
出典:国際糖尿病連合(IDF)
デング熱の感染者数増加
タイ保健省疾病管理局疫学局によると、デング熱感染者数は2019年に8万人以上を記録した後は減少傾向であったが、2022年は既に2021年通年での感染者数を大幅に上回っている。死者は1人と少ないが、特に子どもや高齢者、基礎疾患のある人は重症化する場合もあり、政府や医療機関は注意を呼びかけている。
出典:保健省疾病管理局疫学局
タイの医療機器事情〜統計データ〜
拡大する医療機器市場
タイ産業経済局医療機器インテリジェンスユニット(MEDIU)によると、2021年のタイの医療機器輸入額は前年比8.0%増の295億バーツ、輸出額は前年比5.0%増の111億バーツであった。過去5年間を見ると、輸出額、輸入額ともに年々増加しており、医療機器市場が拡大していることが見て取れる。
また2020年の新型コロナウイルスの悪影響をほとんどの産業が受けた中、医療機器市場は需要拡大を背景に好影響を受けた。高齢化の影響を受けて今後も医療機器市場の拡大が予想される。
出典:MEDIU
タイの医療機器メーカー
2021年の医療機器製造事業者の内訳は医療品消耗品メーカーが205社、全体の62%でトップであった。続いて医療機器メーカーが69社、21%、さらに薬品および診断用機器(21社、6%)、サービスおよびソフトウェア(19社、6%)と続いた。
特に新型コロナウイルス対策用の個人用保護具(PPE)、N95マスク、PCR検査キット、迅速抗原検査用キット(ATK)などの需要が高まり、生産も増加した。その他には高齢化社会を背景とした心血管治療用機器、タイ人およびメディカルツーリズムの観光客を対象とした美容外科用、皮膚科用、歯科用の機器などの生産も多い。
出典:MEDIU
タイの製薬・バイオテクノロジー事情〜統計データ〜
医薬品の国内生産状況
2021年の医薬品6品目(錠剤、カプセル、クリーム、注射用、液体薬、粉末)のタイ国内の生産量は4.22万トン、国内販売量は3.67万トン、生産能力は7.74万トンであった。内訳を見ると液体薬が最も多く、次いで錠剤となり、この2品目で全体の約8割を占めている。前年と比較すると生産量は4.0%、国内販売量は4.3%の減少、生産能力は0.3%の増加であった。
生産能力は2017年以降年々増加しているのに対し、生産量および国内販売量は双方とも2018年をピークに減少を続けている。メーカーとしては生産能力を増強しても、国内需要が追随しておらず、生産量も増えていないことがわかる。
出典:タイ産業経済
医薬品輸出入額の推移
2020年のタイの医薬品輸入額は21.5億USドル、輸出額は6.3億USドルであった。輸入元の国は欧米が多く、全体の15%を占めたドイツを筆頭に、米国(9.2%)、スイス(9.0%)が続いた。輸出先はアジア各国が多く、ベトナムが全体の17%で第一位、次いでミャンマー(15%)、カンボジア(10%)であった。
直近5年間の推移を見ると、輸入額は2019年で一度減少したものの、2020年には再び増加しており、全体としては2016年から15%の成長を見せた。一方で、輸出額は2020年に前年比で減少したものの、2016年比では8.0%の成長となった。
出典:un comtrade
タイの医療卸事情〜統計データ〜
医療機器の貿易額
2020年のタイの医薬品輸入額は21.5億USD、輸出額は6.3億USDであった。輸入元の国は欧米が多く、全体の15%を占めたドイツを筆頭に、米国(9.2%)、スイス(9.0%)が続いた。次いでインド(7.0%)、中国(5.7%)であった。輸入品目としては縫合糸、組織接着剤といった手術用の製品が多い。
輸出先はアジア各国が多く、ベトナムが全体の17%で第一位、次いでミャンマー(15%)、カンボジア(10%)、日本(8.7%)、フィリピン(5.8%)であった。輸出品目としては医療用の潤滑剤、診断試薬、ホルモン剤などが上位を占める。
出典:United Nations Comtrade database
タイの高齢化
2021年のタイの総人口は6,617万人、60歳以上の人口は1,207万人で、60歳以上が総人口に占める割合は18.2%であった。総人口は2012年から200万人程度しか増えておらず、2017年からはほぼ横ばいである。これに対し、2021年の60歳以上の人口は2012年より約400万人、2017年からは200万人増加した。
今後20年以内の間に総人口が減少に転じると考えられる一方、高齢者の数は増加していき、さらに急速に高齢化が進んでいく見込みである。2050年には60歳以上の人口が全体の35%を超えることが予想されている。
出典:タイ国家統計局
タイの介護事情〜統計データ〜
伸び続けるタイ人の平均寿命
国立マヒドン大学の研究機関、人口社会研究所の発表によると、2022年のタイ人の平均寿命は男性が73.6歳、女性が80.7歳と、男女ともに前年から伸びを示した。平均寿命は男女とも年々上昇し続けて来ており、10年前の2012年と比較すると4年程度上昇した。タイでは医療制度が充実してきており、国民のほぼ全体をカバーするようになったことに加え、高い水準の医療技術を有していることが平均寿命が伸びにつながったと考えられる。
しかし、人々が長生きする一方で、2022年の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子供の数の平均)は1.2に留まっている。これは少子高齢化により既に人口が減少に転じている日本の1.33よりも低い数値で、タイでも急速に少子高齢化社会が進行していることがわかる。
出典:国立マヒドン大学
伸びる看護需要
世界銀行のデータによると、2019年の人口千人当たりの看護師の数は3.15人と、前年より約14%増加した。タイの人口は約7千万人であるため、20万人今日の看護師が存在する計算となる。また、看護師数は2017年から2018年で一度減少したものの、2015年から5年間の推移を見ても次第に増加してきている。
タイでも平均寿命の伸びと出生率の減少に伴い、60歳以上の人口が18%を超える高齢化社会となっており、看護師・介護士の重要が高まってきている。一方で十分な経験および能力を持った看護師・介護士は特に地方で不足する場合が多く、政府は教育制度を充実させることで、看護師・介護士の質、量をともに担保しようとしている。
出典:世界銀行
バンコク在住のタイ人。タイにおける日系企業向け翻訳・通訳を6年間以上行う。経済、ビジネス、IT分野に興味があり、マーケティングや流通を含めた企業調査や、企業調査といった情報収集が得意。