この記事では、統計データを用いてインドネシアの飲食・製造業(食品)業界の最新情報をお届けしていきます!
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インドネシアの外食・中食事情〜統計データ〜
安定的に成⻑する飲食業界
インドネシア政府が発表する業種別名目GDPの中に飲食業界がある。2017年295兆ルピアであったが、Covid-19パンデミックが始まる前の2019年には341兆ルピアまで増加、平均年率は8%であった。Covid-19パンデミックが始まった2020年は320兆ルピアへ減少したが、2021年には333兆ルピアまで回復した。
2017年から2021年までの平均年率は3%とプラス成⻑を維持している。業界の成⻑に貢献している事例として、それまでインドネシアになかった業態の牛丼の吉野家(2010年進出︓現在130店舗以上)やうどんの丸⻲製麺(2013年進出︓現在90店舗以上)などは成功している日本勢の代表だと言える。
出典:インドネシア銀行
インドネシア人はフライドチキンがお好き︕
インドネシアで圧倒的に普及しているファーストフードは何といってもフライドチキン。業界のトップ2社はいずれもインドネシア証券取引所に上場している大企業。ファッションやスポーツブランドのショップを展開するPTMitraAdiperkasaTbkがドミノピザを運営しているが、それ以外のファーストフードで上場している会社はない。
現在、トップのKFCと二番目のCFCの店舗数を合わせると1,000店舗以上で、ハンバーガーやピザなど他のファーストフードと一桁違う。2社の売上はCovid-19パンデミックが始まる前の2019年までは平均年率13%で伸びていた。しかし、Covid-19パンデミックの始まった2020年に大きく落ち込み、2021年も横ばい状態が続いている。
出典:KFC,CFCのアニュアルレポート
インドネシアのカフェ・スイーツ事情〜統計データ〜
コーヒーの国内需要の増加
インドネシア統計庁(BPS)が毎年発行している「インドネシアコーヒー統計」によると、2016年~2020年まで、コーヒーの生産量はわずかながら増加の傾向にある。一方で輸出は40万トンを前後する横ばい状態にある。生産+輸入-輸出=国内消費とすると、2016年の国内消費は27万トン、2020年の国内消費は40万トン。平均年率で約10%増加している。
また、この統計によると、コーヒーの作付面積は2016年以降125万Haでほとんど変化がないため、生産高は生産性の向上分に留まり、大きく伸びることは期待できない。そのため、今後は輸出・国内需要とも伸びれば、輸入がバッファーとして増えることになるものと思われる。インドネシア国内で最も沢山コーヒーを生産する州は南スマトラ州で全体の1/4を占める。
出典:Agriculture and Agri-Food Canada
チョコレート需要の拡大
インドネシアに輸入されているチョコレートは2017年:88百万USDから2021年:92百万USDとほぼ横ばい傾向にあり、輸出は2017年:41百万USDから2021年:70百万USDと逆に増加傾向にある。一方、カカオ豆の輸入については、2017年:487百万USDから2021年:617百万USDとCAGR6.2%で増加している。
カカオ豆の輸入が増加し、チョコレートの輸入が横ばい、さらにチョコレートの輸出が増加していることから、インドネシア国内でのチョコレートの生産販売が増加していることがわかる。ちなみにインドネシアで生産されているカカオ豆は約35万ドン、輸入量が約25万トン、輸出量が約2万トンなので、国内消費量は60万トン近いと推定される。
出典:UN-Comtrade
インドネシアの加工食品事情〜統計データ〜
ASEAN最大規模の水産業市場
インドネシアの漁業は2017年をピークにその後減少傾向にあるが、養殖業は順調に拡大しており、2016年から2020年の平均年間伸び率は18%におよぶ。水産物加工産業の原材料の多くは主に養殖場を通じて一次加工処理場へ運ばれる。ここでは乾燥・塩析・冷凍処理などを行っており、加工処理が済んだ食品は、次の二次加工処理場では缶詰やインスタント食品などに加工され、その後小売店や飲食店、その他の食品サービス事業者へ届けられる。
政府は、輸入国の食品基準に沿った競争力のある製品の開発と、市場システムの改善、商品の多様化、加工処理技術の向上を目的として、日本やEUをはじめとする既存のパートナー国との貿易ネットワークの維持と拡大に力を注ぐ。一方、中国や韓国、アフリカ、中東などの新規市場にも焦点を当てている。
出典:BPS
食肉市場の概況
OECDのデータによると、2021年インドネシアの食肉消費量は約374万トン。内訳は鶏肉が252万トン(67%)と最も多く、牛肉が2番目で86万トン(23%)、残る36万トン(10%)が豚肉であった。インドネシアにはいたるところにケンタッキーやその他のフライドチキンの店がある。インドネシア人は比較的安価に手に入ることもあり鶏肉を好んで食べる。
一方、豚肉はインドネシア人の87%を占めるイスラム教徒が口にしないため、消費量が少ない。ASEAN諸国と比較すると、2021年のインドネシアの一人当たりの年間食肉消費量が11.3㎏に対して、マレーシアが60.4㎏、ベトナムが51.2㎏、フィリピンが32.1㎏、タイが19.2㎏となっており、インドネシアが最も少ない。
出典:OECD
インドネシアの食品卸事情〜統計データ〜
加工食品市場は安定成長
アメリカの農務省が発行する調査報告書「Indonesia: Food Processing Ingredients」の2022年4月版によると、インドネシアの加工食品市場規模は、2021年で352億USDである。2017年が311億USDなので、平均年率:3.1%で伸びている。
トップ5は、第1位が米で25.8%を占める。2位は即席麺で9.3%。3位はベビーフードで7.9%。4位は乳飲料で7.3%。5位は焼き菓子で7.0%となっている。トップ5で全体の6割近くを占めており、毎年順位に大きな変動はない。
出典:USD
食品飲料品市場は安定成長
インドネシアの食品飲料品業界の名目GDPは2017年の834兆IDRから2021年は1,121兆IDRと平均年率:7.6%で成長している。インドネシアの2017年から2021年の名目GDPの平均年率が5.7%なので、食品飲料品業界は全体の伸び率よりも高い伸び率を示している。2021年の名目GDPの合計が16,970兆IDRなので、食品飲料品業界は全体の6.6%を占めている。この5年間、Covid-19パンデミックの最中でも食品飲料品業界は安定的に成長を続けており、この傾向は今後も続くと考えられる。
出典:インドネシア銀行
インドネシアの飲料事情〜統計データ〜
ミネラルウォーター需要増加
インドネシアでミネラルウォーターを生産する上場企業3社、SarigunaPrimatirtaTbk、Tri BanyanTirtaTbk、AkashaWiraInternationalTbkの売上高を合算すると、2017年:1兆4,292億IDRから2021年:2兆386億IDRと平均年率:9.3%と伸びている。
2020年はCovid-19パンデミックの影響を受けて3社とも売上高が減少したが、2021年は2019年を上回るところまで回復した。3社の中でもとりわけ高い成長率を示しているSarigunaPrimatirtaTbkでは2019年に自動機の導入や工場の拡張を戦略的に行う一方で、水源の貯水量や水質の維持を図っている。
出典:各社アニュアルレポート
コーヒーの世界的産地
インドネシアは世界で有数のコーヒーの産地である。BPS(インドネシア国中央統計庁)のデータによると、2016年から2020年までのコーヒー生産量の平均年間成長率は3.5%で、2020年には年間762,380トンが生産された。また、2020年の輸出量は、379,354トン、輸入は16,136トンであったことから、国内消費量は、399,162トンになる。
同様に、2016年の国内消費量を算出すると、274,392トンになる。コーヒーの国内消費量はこの5年間、平均年率10%で伸びている。1杯分のコーヒーを1袋に包装したインスタントコーヒーがサリサリストア(小型小売店)で販売されており、コーヒーを飲む文化はインドネシアで定着している。
出典:中央統計庁(BPS)
インドネシア在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。