この記事では、統計データを用いて台湾の飲食・製造業(食品)業界の最新情報をお届けしていきます!
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台湾の外食・中食事情〜統計データ〜
マイナス成長を見せた飲食業界
外食産業は参入への敷居が低く、同業者間の競争の激化に伴い、市場は徐々に飽和状態になりつつある。他の事業者との差別化を図る為に、サービス品質の向上やブランドイメージの確立、製品の付加価値の強化などに力を入れている。
飲食業界の売上高を見ると、2017年から2020年にかけて5,160億台湾元から5,747億台湾元へと毎年増加を見せていた。その後、売上高の伸びは鈍化し、2021年5月以降は新型コロナウィルス流行で政府による警戒体制がレベル3になった事による飲食店への規制処置が厳しくなった影響で、外食産業の売上高は5,690億台湾元に落ち込み、マイナス成長を経験した。
出典:財政部資料中心
増加を続ける飲食業界の事業者数
台湾の飲食業界は新型コロナウィルス流行の煽りを受け、世界的に感染者数が増え始めた2020年2月の売上高は10%近く減少した。その後、2021年には台湾国内での感染者数が増え、警戒体制レベル3になると、最初の週には70%以上の減少を見せた。
2021年の飲食業界の年間成長率はマイナス1.0%であったのに対して、飲食業界事業者数は過去5年間で年々増加しており、年間平均成長率は4.0%であった。加えて、2022年7月の台湾の消費者物価指数年間成長率は3.36%、その内外食費は6.38%で、過去14年間で最も高い数字となった。これは新型コロナウィルスの流行による規制も緩和された事に加え、物価の上昇も影響したと考えられる。
出典:財政部資料中心
台湾のカフェ・スイーツ事情〜統計データ〜
成長が続くコーヒー消費量
お茶が有名な台湾だが、コーヒーを飲む習慣も日常に深く根付いている。国際コーヒー機構(ICO)の統計によると、台湾の2021年のコーヒー消費量は合計725,000包(1包あたり60kg)で、約28億5000万杯分となり、一人当たりの年間平均消費量は約200杯であった。
2018年以降の台湾のコーヒー消費量は増加し続けており、平均年間成長率は1.6%となっている。台湾では約40%の人が1日少なくとも1杯のコーヒーを飲み、コーヒーを全く飲まない人はわずか14.8%である。
加えて、2022年の世界のコーヒー消費量は、1億7,100万包(1包あたり60kg)になる見込みで、そのうち台湾は0.45%を占める計算になると予想されている。
出典:International Coffee Organization
店舗数とコーヒー市場
台湾では1年間で28億杯のコーヒーが飲まれており、市場規模は約800億台湾元である。街中には至る所にカフェが立ち並び、スターバックスやLouisa等のコーヒーチェーンの全体の店舗数はこの20年間で190店舗から1,738店舗に増え、815%の成長率を見せた。更に、チェーン店以外を含めると3,000店舗以上がカフェとして登録されている。
2011年頃から、特に台湾のローカルコーヒーチェーンのLouisaを中心にスターバックスやCamaが積極的に店舗展開を行い、急速に店舗を増やしていった。2019年にはLouisaが、これまで店舗数トップだったスターバックスを追い越しトップとなり、2021年もLouisaが527店舗、スターバックスが506店舗で僅差ではあるがトップを守り続けている。
出典:財政部
台湾の加工食品事情〜統計データ〜
食品製造業の生産高
2020年の台湾の食品産業の生産高は、年間で2.12%増加し、5年連続で増加している。食品産業は台湾において最も重要な産業の一つであり、最も国民の生活に密接に関連する産業でもある。2020年の食品産業生産高をカテゴリー別で見ると、その他のカテゴリーを除くトップは食肉加工業で生産額は1,323億台湾元、全体の28%を占めた。
年間成長は7.43%の増加を見せ、食品産業の成長に最も貢献したカテゴリーであった。要因の一つとして、新型コロナウィルス流行により外食の減少と自炊率の増加で、冷凍肉や鶏肉の需要が増えた事が挙げられる。
出典:経済部統計局
covid-19の食品産業への影響
2021年上半期の台湾の食品産業生産額は2,458億台湾元で、年間成長率は7.80%であった。ジャンル別で見ると、冷蔵食品や栄養保健食品、インスタントラーメン等が含まれる「その他の食品業」で1,046億台湾元、年間成長率は4.92%であった。
新型コロナウィルス流行により、外食を控える傾向にあった事が大きく影響したと考えられる。同様に、外食を控え自炊をする家庭が増えたことにより「肉類加工」が690億台湾元、年間成長率9.22%であった。中でも、特に鶏肉が年間成長率26.35%となり、同ジャンルに大きく貢献した。続いて「動物油脂業」は255億台湾元、年間成長率28.11%だったが、その主な要因は原材料の高騰となっている。
出典:経済部統計局
台湾の食品卸事情〜統計データ〜
世界経済の回復と卸業のプラス成長
台湾の統計局によると、卸業界は今後、世界経済の着実な回復、エンドマーケットでの需要の増加、及び新興技術アプリケーションの需要の継続的な拡大により、国際的な原材料価格は引き続き高止まりし、売上高の推定年間成長率は引き続きプラス成長を見せると推測される。
しかしながら、新型コロナウィルスの流行の拡大が続いた事で不確実性が高まり、成長のモメンタムが阻害される可能性に注意が必要であるとの見解を見せた。2022年上半期の台湾卸売業全体の売上高は6兆3,981億台湾元、年間成長率は9.9%であった。
その内、食品・飲料及び煙草卸売上高は6,156億台湾元、年間成長率は5.7%であった。2月に7%のマイナス成長を見せたものの、その他の月ではプラス成長へと数字を伸ばしている。
出典:経済部統計処
減少傾向にある台北青果市場取引量
台湾の首都であり、人口が1番多い都市台北市の青果市場の野菜取引量は、2020年に多少の盛り返しを見せた。しかし、過去5年間の変化を見ると、2017年では48.6トンであった取引量は2021年には42.1トンで、減少傾向を見せている。
加えて、台湾の最大の農産物輸入国である米国の2021年農産物総輸入額は39億3,931万米ドル、総農産物輸入の約22%を占めた。続いて、2位は中国で、輸入額は約13億米ドルであった。
2022年、台湾海峡との関係は両国間で緊張状態が続いているが、7月現在の輸入額は約8億米ドルであった。中国は依然として台湾の2番目に大きい農産物の輸入国で、大根や牛蒡、唐辛子等の殆どが中国から輸入されている。
出典:行政院農業委員會
台湾の飲料事情〜統計データ〜
夏休み期間突入と共に伸びる飲料店売上高
財務省の統計によると、台湾全国の飲料店舗数は2020年10月に初めて2万店舗を超え、2022年4月には過去最高の2万2000店に成長した。2022年1月から5月までの外食産業の売上高は3,370億台湾元で、年間成長率は4.3%だった。その中でも飲料店が最も優れた業績を上げ、飲料店の売上高は2021年の同時期と比較して28.6%増加した。
新型コロナウィルスの流行が落ち着き人流が増えた事により、夏休みに入る時期には飲料店の売上高は2桁成長する機会があると予想されていた。実際の数字を見てみると、2022年の夏休みが始まる7月の売上高は約94億台湾元、続く8月は約105億台湾元となり、予想通りの成長を見せた。
出典:財政部
高い増加率を維持し続ける飲料事業者数
台湾は今や飲料王国になり、特にタピオカミルクティーの爆発的な人気により、世界中で台湾の飲料店が見られるようになった。財政部によると、台湾飲料市場の営利事業者数は2017年から2021年にかけて毎年増加する傾向を見せており、2017年は21,346件、2021年には27,414件で、5年間で6,068件増加し、毎年平均6.4%の増加となり高い増加率を維持し続けている。
事業者数をカテゴリー別で見ると、タピオカミルクティー販売店等を含む“飲料店・スムージー店”の数が他のカテゴリーより著しく多く、過去5年間を通して常に飲料業界全体の80%前後を占めている。2020年に初めて2万件を突破し、2021年には21,823件に達するなど、飲料業全体の成長を牽引している。
出典:財政部
台湾の酒類事情〜統計データ〜
減少傾向にある国産酒類と増加傾向にある輸入酒類
2021年の台湾国産及び輸入酒類合計数量は、国産が412,022千リットルで全体の53.07%を占め、輸入は364,318千リットルで全体の46.93%であった。全体の割合は長年国産が半分以上を占めているが、2011年の国産70%、輸入30%と比べると、国産が減少傾向にあり、輸入が増加傾向にある事が見て取れる。
2021年の国産年間成長率はマイナス10.87%で、過去1番の大きなマイナス成長を見せた。一方で、近年台湾には多くの小さなワイナリーが増え、地元で生産される作物は輸送コストや二酸化炭素排出量が削減された。バー業界等では”地元の食材“や”環境保護“を大きく打ち出し、徐々に知名度を上げている。
出典:財政部國庫署
様々な国が狙う台湾のウィスキー市場
台湾は、スコッチウィスキーの3番目に大きい輸出国であり、2番目になる勢いで成長を続けている。輸出規模は26億ポンド、年間成長率は24%で、様々な国が台湾市場を狙っている。台湾の輸入ウィスキー市場は、2020年の新型コロナウィルス流行の影響で輸送が大幅に中断された時期を除き増加を見せており、2019年の台湾でのウィスキーの売上高は546億台湾元に達した。
計算すると、一人当たり毎年平均1.8本のウィスキーを消費している事になる。台湾の輸入酒類数量を国別で見ると、2019年に中国がそれまでトップだったオランダを抜きトップとなった。以降、中国が勢いをつけ、僅差だった中国とオランダが占める全体の割合も差をつけ始めてきている。
出典:財政部國庫署
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。