この記事では、統計データを用いてインドネシアの金融・法人サービス業界の最新情報をお届けしていきます!
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インドネシアの銀行事情〜統計データ〜
預貯金残高推移
インドネシア中央銀行のデータによると、2017年から2021年の5年間の預貯金残高は、2017年の5,143兆ルピアから2021年の7,263兆ルピアへと年平均成長率(CAGR)9.0%で増加している。国有銀行と地方政府所有銀行を合算した政府系銀行と民間銀行の預貯金残高は政府系銀行の預貯金残高の伸びで、2019年以降2021年現在に至るまでほぼ同じような金額で推移している。
出典:インドネシア中央銀行
業界別銀行ローン残高
インドネシア中央銀行のデータによると、2021年のローン貸付残高は5,068兆ルピア(約45.1兆円)。そのうち産業界向けが3,396兆ルピア(67%)、消費者向けが1,672億ルピア(33%)であった。産業界向けの1位は小売・卸売業界(自動車・二輪車修理も含む)で全体の28%を占める。2位は製造業で19%、3位は農林水産業で12%、4位は建設業で11%、5位は金融保険業で5%であった。
これらトップ5で実に全体の3/4を占めている。ちなみに、5年前の2017年のローン貸付残高は、4,136兆ルピア、産業界向けは2,759兆ルピアで、この5年の年平均成長率(CAGR)は約5%であった。今後Covid-19パンデミックにより減速した経済が再び成長に転じると、ローン貸付残高も増加するものと予想される。
出典:インドネシア中央銀行
インドネシアの証券事情〜統計データ〜
年々増加するIPO上場企業
インドネシアは東南アジアで最も多くのユニコーン企業が生まれている国で、政府もスタートアップ企業の育成に力を入れている。スタートアップ企業に投資する投資家たちが利益を生み出す出口の一つにIPOがあり、近年インドネシアの証券市場ではIPOが盛んに行われるようになってきている。2017年37社であったIPO企業が2021年には54社と増えていて、調達金額も9.6兆ルピアから62.6兆ルピアへと大幅に増加している。
ちなみに、2021年の調達金額トップ3は1位:ユニコーン企業の一つe-コマースのBukalapak.comTbkで約21.9兆ルピア、2位:携帯電話の通信塔保有会社であDayamitra Telekomunikasi Tbkで18.8兆ルピア、3位:塗料、印刷インキなどを製造する化学会社Avia Avian Tbkで5.8兆ルピアであった。なお1兆ルピアを超える大型株の上場は全部で7社あった。
出典:インドネシア証券取引所(IDX)
高まりつつある株式投資への関心
インドネシア証券取引所(IDX)で売買される株式の株数と金額の推移を見ると、取引株数は2017年:2.8兆株から2021年:5.1兆株と平均年率約16%で伸びている。また、取引金額は2017年:1,810兆ルピアから2021年:3,303兆ルピアと平均年率約16%で伸びている。
いずれにしても、証券取引所での株式の売買が年々活発になってきていることを示している。上場社数も2017年:589社から2021年:766社になっており、253社が新規上場し、76社が上場廃止している。従って766社の内33%は2017年以降に上場した若い会社である。新規上場により株式市場が活性化されることで、投資家の株式市場に対する関心が高まってきている。
出典:インドネシア証券取引所(IDX)
インドネシアの法律事務所事情〜統計データ〜
知財権登録の増加
2021年の知財権申請件の件数は、意匠権(工業デザイン)が4,366件、特許権が12,473件、著作権が83,078件、商標権が96,360件で、申請件数は商標権が圧倒的に多く、伸び率が最も大きいのは著作権だ。
一方、2021年の申請でローカルが占める割合は、意匠権が67.7%、特許権が36.9%、著作権が99.9%、商標権が88.8%となっており、特許権を除きローカルが主体になっている。知財権に対する認知が進む中、知財権に関する相談や訴訟の依頼が増えることになり、弁護士事務所でも知財権に関するサービスを強化するものと考えられる。
出典:Kementerian Hukum dan HAM R.I.
犯罪発生件数
犯罪発生件数と刑事訴訟件数には相関性がある。2016年以降犯罪発生件数は2016年をピークに、ゆるやかに減少傾向を示しているが、今後も継続して減少するかどうかはわからない。犯罪発生件数そのものは年度によって増減している。
ちなみに、2016年から2020年の平均年伸び率は8.8%増加していて、2020年の犯罪発生件数は24.7万件。このうちトップ3は、1位が北スマトラで3万3千件、2位が首都ジャカルタ(Metro Jaya)で2万7千件、3位が東ジャワで1万8千件となっている。犯罪の多い地域では、刑事裁判が頻繁に行われるため、弁護士の数も必要になる。
出典:BPS
インドネシアの会計事務所事情〜統計データ〜
公認会計士数と監査法人数
インドネシア公認会計士協会(IAPI)が発行する2022年監査法人と公認会計士の名簿によると、監査法人の総数は643社で、稼働中の公認会計士の総数が1,739名であった。インドネシアの首都圏にあたるJabodetabek(ジャボデタベック)に監査法人が350社(54%)、公認会計士が1.242名(71%)と集中している。
Jabodetabek以外では、ジャワ島に監査法人が166社(26%)、公認会計士が323名(19%)いて、監査法人の80%と、公認会計士の90%が集中している。地域経済の規模と密集度によって、監査法人数と公認会計士の大きな地域的偏在が生み出されている。
出典:インドネシア公認会計士協会
共通報告基準(CRS)の発行
経済協力開発機構(OECD)が公表した共通報告基準(CRS)により、インドネシアを含む各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供することが必要となった。
日本の財務省の発表によると、2022年10月時点で、「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」BEPS防止処置実施条約に署名した98ヵ国の中に、日本とインドネシアが含まれている。今後、会計・監査業界における業務プロセスの簡易化や効率化、情報の透明化に繋がると期待されている。
出典:Transparency International
インドネシアの人材サービス事情〜統計データ〜
人口ボーナス期が続くインドネシア
インドネシア中央統計庁(BPS)のデータによると、インドネシアの労働人口は毎年着実に増えている。2012年に1億1,985万人だった労働人口が、約10年後の2021年には1億4,015万人に増えていて、年平均成長率(CAGR)は1.7%であった。インドネシアの人口ボーナス期は2030年ごろまで続くと言われており、継続的な経済成長が期待されている。これに伴い、人材サービス業も拡大していくものと考えられている。
出典:BPS
労働人口の高学歴化
人材サービス業界は人口増加と雇用機会の拡大に伴い、着実に成長を続けるセクターの一つである。インドネシアの労働者人口は、2012-2021年の10年間で量的には年平均成長率(CAGR)1.7%で増加している。
一方、質的には、2012年中卒以下が66%を占めていたが、2021年には54%まで減少していて、今後も高学歴化が進んでいくと考えられる。企業の国際競争力が向上したことや、外資系企業の国内市場への参入が相次いだことなどを受け、優秀な人材確保に向けた取り組みがこれまでにない程重要視されており、人材サービス業界が果たす役割がますます大きくなっている。
さらに、コスト効率の維持を目的とし、採用プロセスの一部または全部を人材サービス会社に委託する動きが活発化したことにより、企業は募集関連にかける費用を削減でき、仲介業者は企業に合った人材を紹介することができるという機能が構築されている。
出典:BPS
インドネシア在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。