この記事では、統計データを用いてインドネシアの教育業界の最新情報をお届けしていきます!
読了時間の目安:5分
インドネシアの学校事情〜統計データ〜
年々増加する政府の教育予算
インドネシアでは「経済開発促進・拡大マスタープラン2011~2025年」に基づき、教育への財政支出を年々拡大してきている。マスタープランをスタートした2011年の教育予算266兆IDRは、10年経った現在では倍増している。財務省が公表している2021年度予算の中で教育予算は550兆ルピア。2016年からのCAGRは8.3%である。
経済発展を支えるための人材育成への先行投資が続けられている。現在政府が力を入れていることはOECD加盟国で実施されるPISAのスコアアップ、PAUD(幼児教育プログラム)の強化、教師の能力強化、中等教育から高等教育の教育へのアクセスの不平等の解消、職業教育と業界ニーズのミスマッチの解消などである。
出典:kemenkeu(財務省)
インドネシア大学の国際競争力
インドネシア大学は、1849年に設立された国内で最も歴史の⻑い最高学府で、13の学部医学、⻭学、看護学、工学、心理学、社会科学、政治学、法学などを跨ぐ55種の学士号プログラムと、291の学術研究プログラムを提供している。
2022年現在、39,000人を超える学生が在籍しており、2022年アジアの大学ランキングでは201-250位にランクされた。UIは教育の質を保証する国立高等教育アクレディテーション機構(BAN PT)より国家認定を受けた大学のひとつで、東南アジア諸国の高等教育水準の向上に資する質保証メカニズムの構築に向けた取り組みを行うASEAN大学連合からも国際的な評価が高い。
出典:Times Higher Education(THE)
インドネシアの幼児教育・学習塾事情〜統計データ〜
家計における食費以外の支出が増加
2017年〜2021年の5年間のインドネシアの家庭での平均的一人当たりの家計支出月額は、年平均4.1%伸びている。食費への支出の年平均伸び率は3.6%。食費以外は4.7%で伸びている。支出額の増加は、食費よりも食費以外での伸びが上回っている。
経済が拡大する中で、人々の教育に対する関心が上がっており、進学校や学習塾に子弟を通わせる保護者が増加し、家計支出に占める教育費の割合も多くなってきている。また、国内の5-24歳の若年層は今後も拡大していくとの見込みで、予備校・学習塾業界の大手プレーヤーはターゲット層の取り込みに向け力を注いでいる。
出典:中央統計局
進まない幼児教育普及
中央統計庁(BPS)のデータによると、小学校就学前の幼児教育への参加率がここ5年間ほとんど変わっていない。3-4歳児は20%前後。5-6歳児は50%前後という状況である。インドネシア政府は、小学校就学前に幼児教育を受けている生徒と受けていない生徒を比べた場合、幼児教育を受けている生徒の方が学業成績が高いこと。
また、幼児教育を受けている生徒の方が子供時代と成人期の非行と犯罪を犯すことが少ないことから、幼児教育(PAUD)の参加率を高める取り組みを行っているが、幼児教育は義務教育ではないので、農村地域や経済的に貧しい家庭での普及がなかなか進まないようだ。また、ここ2年間はCovid-19パンデミックの影響が出ている。
出典:中央統計局
インドネシアの保育事情〜統計データ〜
就学前教育の需要が拡大
社会経済構造の変化に伴い、インドネシアの保育サービス・就学前教育の需要は高まっている。特に都市部では育児・家事労働を外注し、外で働く主婦が増加している。一方で、国⺠全体の給与水準と教育浸透率が向上したことからお手伝いさんのような従来の家事の担い手の不足から保育サービスを利用する保護者が増えている。
保育サービス業界が成⻑を続けるもう一つの要因は、専門知識を有した保育者に子どもの教育を委託したいと考える家庭が増加したことが挙げられる。近年Covid-19の影響で停滞しているが、政府による早期幼児教育開発計画(ECDC)の発行や、就学前教育における一定の基準設定により、今後は再びニーズを伸ばすものと考えられる。
出典:中央統計局
幼児教育機関の半分はジャワ島に集中
インドネシアの幼児教育機関には4つのタイプがある。1.TK (Taman Kanak-Kanak)︓4歳から6歳までを対象にした幼稚園プログラム。2.KB (KelompokBermain)︓幼稚園がまだ利用できない場合に、最大6歳までで2〜4歳の子供向けプログラム。3.TPA (TamanPenitipanAnak)︓3か月から6歳の子供向けの教育およびケアプログラム。4.SPS (SatuanPAUDSejenis)︓その他コミュニティーの運営するプログラム。
全国的に見ると、TKが47%、KBが42%、TPAが1%、SPSが10%という割合で総機関数は約207,000である。幼児教育機関数が多く所在する州Top3は、東ジャワ州、⻄ジャワ州、中部ジャワ州の順で、3州の合計は全体の46%を業界トレンド占める。
出典:教育文化省
インドネシアの語学学校事情〜統計データ〜
海外大学への留学者が増加
インドネシアでは、とりわけ経済的余裕のある家庭で、子弟に海外の質の高い教育を受けさせたい、あるいは英語を身につけさせたいという保護者が増加しており、海外への留学者数が増加している。そのため、オーストラリアやマレーシア、日本、中国などの教育機関でもインドネシア人学生の受入れが進んでいる。
法務省の在留外国人統計によると2012年に2,917人であったインドネシア人留学生は、2019年には7,512人となり平均年率14.5%と二桁成長で増加した。2020年と2021年はCovid-19の影響で減少しているが、渡航制限が解除されると再び増加に転じるものと考えられる。
出典:法務省
多文化社会における言語教育
700以上の多様性あふれる言語が話されるインドネシアでは、バハサ・インドネシアという言語が国語として指定されており、一般的に教育の現場でも用いられている。また、公式の場や日常的な意思疎通の手段として英語も頻繁に使用される言語のひとつで、他にも中国語や日本語、アラビア語、フランス語、スペイン語など第2、第3言語として複数の言語を話す人もいる。
近年、インドネシアの語学学校業界が急成長した背景には都市部の中間所得層の間で外国語学習への関心が高まったことや、子供に英語を習わせたいという保護者が増加したこと、海外への留学者が増え需要が増大したことなどが挙げられる。一方、日本が技能実習生制度を導入したことで、多くのインドネシア人が日本語の勉強を始めている。
出典::国際交流基金
インドネシアの資格・社会人教育事情〜統計データ〜
政府による就業支援プログラム
インドネシアの失業率の特徴は若年層の失業率が高いこと。中央統計庁(BPS)のデータによると2021年の15-19歳の失業率は23.9%、20-24歳は17.7%、25-29歳は9.3%であった。この現象は若年層の技能不足が原因で起こっていると言われている。インドネシアの経済開発加速・拡大マスタープランで取り決められた開発目標を達成するためにインドネシア政府と民間企業は技術開発と労働スキルの養成を目指して様々なプログラムを実施している。
また、国家職業技能適性基準の発行により業界標準を明確にするなど、求職者に対するケア政策に積極的に乗り出している。これらの取り組みが効果を表し、若年層の失業率改善につながることが期待されている。
出典:BPS
成長し続ける教育サービス GDP
インドネシアの教育サービス分野の名目GDPはCovid-19影響下の2020年、2021年も成長を続けている。Covid-19の影響のない2016年から2019年のCAGRは7.8%、Covid-19の影響も含めた2016年から2021年のCAGRは5.8%であった。2021年の教育サービス分野の名目GDPはインドネシア全体の名目GDPの約3.3%(1/30)を占める。
民間の営利事業としての教育サービスは、急速に店舗数を拡大している「Kumon」や「サカモト」のようなフランチャイズ形式の学習塾、「Ruangguru」のようなe-learningシステム、旺盛な留学需要を支える語学学校や留学斡旋センター、職業訓練や社内研修を請け負う資格・社会人教育業界らは経済発展を支える人材開発を担う重要な産業として今後も成長を続けることが期待されている。
出典:インドネシア銀行
インドネシア在住のインドネシア人。観光ガイドと通訳者を務め、インドネシアの観光地を日本語で案内している。日本語学科の大学を卒業し、邦人対応観光ガイド・国際イベントでの日本代表団担当連絡係員・通訳者・日本領事事務所長の地元アシスタントを経験。