この記事では、統計データを用いてフィリピンの飲食・製造業(食品)業界の最新情報をお届けしていきます!
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フィリピンの外食・中食事情〜統計データ〜
クイックサービスレストラン市場
2019年のフィリピン外食産業のうち業態別にみると独立系の外食産業が全体の67%を占め、残り33%がチェーン店となっている。軽食やファーストフードなど一般に「クイックサービスレストラン」と呼ばれる市場は、チェーン店が90%以上を占めている。事業者数では、独立系の外食産業は、64,134店舗、チェーン店は31,574店舗。
また、全体の事業者数としては、「屋台、キオスク」が独立系・チェーン店合わせて41,209店舗と一番の事業者数となった。これは、忙しい現在社会のフィリピンで、持ち帰り食品やすぐに手に入るファーストフード製品の需要高まっていることを示している。
さらに、インターネットの普及により、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームで軽食やファーストフードを手軽に利用できるようになり、「クイックサービスレストラン」市場のニーズが高まっている。今後は、ソーシャルメディアやソーシャルメディアプラットフォームでの宣伝戦略が外食産業の大きな成長のカギとなると考えられる。
出典:U.S. agricultural
フードデリバリー業界の動向
2020年の東南アジアにおける食品配達のGMV「流通取引総額」は119億ドルに達した。これは、2019年の業界推定値である42億ドル、2018年の22億ドルをはるかに上回っている。フィリピンのフードデリバリービジネスは成長し、2020年末のGMVは合計12億ドルに達した。東南アジアでは、可処分所得のオフラインでの飲食物への支出は減少傾向にあるが、全体的な食品サービスの支出は経済成長と都市化に伴い増加している。
これは、スマートフォンの普及に伴ったオンラインでの食品配達の支出の増加が大きく起因している。顧客はレストランに行く代わりに、レストランのアプリやウェブサイトから注文するようになった。今後さらなるイノベーションと成長が期待される食品業界において、注目すべき興味深い分野であると考えられる。
出典:Manila Bulletin
フィリピンのカフェ・スイーツ事情〜統計データ〜
カフェ・喫茶店業界の概況
フィリピンのカフェ・喫茶店業界は、若年層をはじめとするカフェ利用者・ニーズの拡大、経済成長に伴う国民全体のライフスタイルの変化、外出先での支出の増大などのプラス要因を受け、コーヒーセグメントにおいて2021〜25年の間に年間平均成長率(CAGR)10.4%で成長、2021年度の市場全体の売上は52億米ドルに上ると予想され、安定した推移を続けている。また、2019年に全国で計16,135のカフェが存在している。
その大多数は独立系店舗である。近年はファストフード並びにフルサービスレストラン産業の売上拡大とともに、外食市場では各社の競争が激化しているが、都市部の労働者を中心に居心地の良いスペースを提供するカフェ需要が高まると思われる。
出典:DPO International
インスタントコーヒー市場
2020年の18.8億ドルから2027年には42.7億ドルの市場規模に達すると予想されるため、12.45%の成長平均率と予測される。手軽なインスタントコーヒーを好むフィリピンの若い世代の間でコーヒーの人気が高まっている。人気の高まりは、経済の成長にさらに起因しており、消費者の可処分所得の増加にさらに貢献している。
フィリピンのコーヒー生産と輸出は低いという事実にもかかわらず、同国は依然として重要なコーヒー市場である。そのため、フィリピン政府は「フィリピンコーヒー産業ロードマップ2021-2025」を作成して、フィリピンでのコーヒー豆の自給率の増加を即す政策を推進している。今後、持続可能な農業を通して、国産コーヒー豆によるコーヒー製品のニーズも高まってくると考えられる。
出典:Knowledge Sourcing Intelligence LLP
フィリピンの加工食品事情〜統計データ〜
マクロ経済動向と加工食品市場の概況
フィリピンの食品価格インフレ率は2022年10月に前年比9.4%に上昇し、1か月前の7.4%の上昇から加速し、直近、最高の食品価格のインフレを示している。台風の影響による作物価格の高騰や地形学的なリスクのよる輸入食品の高騰などが主な要因。
食品インフレ率の上昇の主な品目は、砂糖、菓子類、デザート(30.2%)。とうもろこし(26.2%);油脂(20.1%)となっている。豚や家禽の主要な飼料原料であるイエローコーンのような重要な農産物の上昇は、鶏肉や豚肉の価格に直接的な影響を与える。現在の1億1,000万人から2050年までに1億4,500万人に増加すると予想される人口を考えると、フィリピンの食料不安は今後数十年にわたって問題となる。
出典:tradingeconomics
海外輸入に頼る加工食品
フィリピンの農業製品の輸入を国別でみると、アメリカが24%と最大の農産物供給国で続いてヨーロッパ、中国と続く。世界的なインフレはアメリカと主要なヨーロッパ諸国を中心として想定以上に上昇し、世界金融環境の低迷下を招いている。また、中国は新型コロナウイルス感染拡大とロックダウンを受けて経済は予想以上に鈍化している。
こうしたことから、農業製品の輸入に頼るフィリピンは、今後もインフレ率の高騰が続くと予測される。人口増加に伴う国内需給食品を賄うことにマルコス大統領自身が農務省を兼務して農業問題に取り組むことを表明しており、今後の食品産業全体の成⻑をしていくのではないかと思われる。
出典:U.S. Department of Agriculture
フィリピンの食品卸事情〜統計データ〜
農業がフィリピン経済の鍵!!
2017年からの農業の付加価値の成長率を見ると、パンデミックまでは成長傾向にあった。タール火山の噴火、アフリカ豚コレラ(ASF)の継続的な発生、および2021年12月に襲った一連の強力な台風などの影響で、2020年には-1.2%、2021年には-1.7%と減少した。農業はまた、近代化と開発がまだ始まっていないほとんどの農村地域で仕事の主要な提供者としての役割を果たした。
経済の顕著な矛盾の1つは、食料の供給と流通にあるす。農業は総輸出の86%を占めているがフィリピンは自給自足には程遠い状態である。しかしフィリピンは野菜の自給自足については、2019年の実績で3%のコメを自給自足できた。農業は、フィリピンを回復し、より良い方向に変えるための鍵となる可能性がある。
出典:Philippine statistics authority
限りある海洋資源
フィリピンの漁業は、2019年1.5%の成長率を記録した以外は、例年マイナス成長。漁業者数の増加と漁業への開放によってもたらされた過剰漁獲は、漁獲率に反映されるように資源の枯渇を招く原因となっている。1998年の漁業法(RA 8550)を修正する共和国法(RA)10654は、地方自治体の水域を超えた漁業資源の保全と管理を担当する主要な政府機関としてBFARと共に国の漁業部門を管理するための一般的な枠組みを定めている。
しかし、商業漁船は、地方自治体の水域を超えた操業を続けている。破壊的な漁法(ダイナマイトやシアン化物漁、目の細かい網漁具の使用など)の使用は、魚の資源の急速な減少と生息地の劣化に寄与している。海洋資源のガバナンスを強化し、特に地方自治体が資源の持続可能性を意識して行動することが大切である。
出典::Philippine statistics authority
フィリピンの飲料事情〜統計データ〜
ミルクティー産業の展望
フィリピンでは、東南アジアで人気のミルクティーが消費者の1人あたり、1か月に5杯消費される。甘くて独特の風味のミルクティーは、2011年からフィリピンの最大の飲料トレンドになった。ミルクティー産業は成長を続けており、それは既に「流行」の段階を超えて、フィリピンでの飲料水の地位を確実にした。今後のミルクティー産業のトレンドは、フランチャイズ事業である。
海外で働くフィリピン人労働者は、最大の投資家の一人であり、投資資金は約P300,000から開始できる。今後ミルクティー産業界は、起業家に対し、適切なビジネスに投資していることを保証するために、「適切かつ専門的に」管理されたフランチャイズのコンセプトを確立していく必要がある。
出典:F&B
清涼飲料水の業界
全国レベルでの総合インフレ率は、2020年11月の3.3%から2020年12月には3.5%にさらに加速した。これは、2019年3月以降に記録された最高のインフレ率である。国のインフレ率の上昇傾向は、主に、食品とノンアルコール飲料のインフレ率が月に4.8%上昇したことによってもたらされた。
近年の非常に激しい台風の甚大の被害と、農業資材の価格上昇などで、砂糖不足となり、清涼飲料水のインフレ率は特に高くなっている。清涼飲料水業界は、2018年の砂糖税の導入に対応して、砂糖税の影響を最小限に抑えるために製品内容を縮小し、さまざまな成分を使用し、より健康的な飲料を製造して、市場を創出を図っている。
出典:PSA
マニラ在住5年目の日本人。法政大学経済学部卒業後、2010年4月よりWeb業界を目指す社会人向けのスクールのインストラクターとして主にコーディングソフトや画像編集ソフトの授業を担当。2015年より海外での生活とキャリア形成を目的に、青年海外協力隊に参加。