この記事では、統計データを用いてフィリピンの運輸・物流業界の最新情報をお届けしていきます!
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フィリピンの鉄道・バス事情〜統計データ〜
交通インフラの問題点
独立行政法人国際協力機構(JICA)によると、地域別(メトロマニラ及びその他地域)の生成交通量を2019年と2040年(予想)を比べたところ、車51%、ジープ1%、バス47%、トラック46%と軒並み増加すると予想される。フィリピンの人口は、2020年の1億900万人から、2040年には1億3600万人に達すると推計され、GDP成長率は、2013年から2018年にかけて年間6.1%から7.1%の範囲で成長し、着実に経済成長することが予想されている。
一方で、経済拠点のマニラ首都圏と地方都市間の交通ネットワークは貧弱である。よって、人口増加と都市部への人口流入、また経済の発展による物流が地方部の発展を阻害し、格差を拡大させる一因となると見られている。
出典:独立行政法人国際協力機構(JICA)
フィリピン開発計画
フィリピン国内の主要な国道上にある53箇所の年平均日交通量(AADT)は増加傾向にあり、年間4.8%で増加している。「フィリピン開発計画(PDP) 2017-2022」は、2022年までに上位中所得国となり、農村の貧困を20%に削減し、「より包摂的な成長、高信頼社会、グローバル競争力のある経済の基盤」を築くことを目標としている。
その上で、「社会基盤の強化」、「格差解消のための変革」、「成長の拡大」の3つの目標に向けて、国家安全保障、インフラ整備、社会経済的弾力性、生態系の健全性の横断的な戦略が提案されている。特に、インフラ投資についてはGDPの5%以上とすることを目標としている。PDPはNEDAが策定し、大統領が議長を務めるNEDA委員会によって承認された。
出典:独立行政法人国際協力機構(JICA)
フィリピンの空運事情〜統計データ〜
国民総生産から見る貢献度
フィリピンのような群島地において、航空輸送は島々を結び、経済活動を促進する最も効率的な輸送手段である。国内総生産に占める空輸の割合は毎年増加しており、2019年には7%の成長率となった。フィリピン経済に対する航空輸送セクターの貢献は、一見すると小さいように見えるが、国内の経済活動を促進する部門の間接的な役割を考慮すると、その貢献度はより大きくなる。
特に2019年は、フィリピン経済が航空輸送セクターによって提供されるサービスに大きく依存していることが分かった。同国の航空輸送は、建設、民間サービス、製造と貿易、農業、漁業など、多くの重要なセクターを支えている。
出典:RESEARCH INFORMATION DEPARTMENT
航空業界の自由化
貿易と観光の観点で航空輸送部門の役割を維持するには、十分に機能する効率的な航空輸送インフラが必要である。フィリピンには合計90箇所の国営空港がある。そのうち8箇所は国際空港、21箇所は旅客数100名以上の空港、20箇所は旅客数100名以内の空港、38箇所はコミュニティ空港、3箇所はまだ運用されていない空港となっている。
フィリピンの航空業界には最低60%の国内資本要件があり、指定された航空会社は基本的に政府またはフィリピン企業によって所有および管理されている。航空輸送部門の自由化を追求することで、航空会社間の競争が高まることが期待される。今後は政府が外国投資の上限を撤廃し、経済成長を達成するための政策改革を導入するかが注目されている。
出典:RESEARCH INFORMATION DEPARTMENT
フィリピンの陸運事情〜統計データ〜
輸送・貯蔵事業所の割合の分布
運送業団体への支援活動が事業所数は、2018年に運営された輸送および保管サービスに従事する事業所は合計3,377事業所であった。2012年時点の2,327事業所と比較して、45.1%または1,050事業所多い増加率を記録した。運輸業支援事業が1,443事業所で部門全体の42.7%を占め、その大部分が貨物運送事業に従事する事業所で663事業所が最も多かった。
次いで、その他の陸上運送業団体が1,081事業所(32.0%)、バス輸送業団体が290事業所(8.6%)を登録している。地域全体では、輸送および保管サービスに従事する全事業所の約40.0%が首都圏(NCR)に所在。Central VisayasとCALABARZONは、それぞれ11.4%と9.6%のシェアで2位と3位につけた。
出典:フィリピン政府
運輸・倉庫業の従業員数上位5グループ
2018年、輸送および保管サービスの総雇用数は206,024人であった。この数には、下請け契約または人材派遣会社の下で雇用された他の15,843人の労働者は含まれていない。事業所数が最も多い運輸業団体への支援活動も74,426人(シェア36.1%)で最も多い。31,795人の労働者(15.4%)によるその他の陸上輸送が2位にランクされ、31,616人の労働者(15.4%)によるバスによる輸送が僅差で続いた。
地域の中で、NCRは、セクションの総労働力の119,191または57.9%を占める最大の雇用シェアを記録した。中央ビサヤは11.3% (23,353)で2位を大きく引き離し、次にCALABARZONが8.9% (18,237)で続いた。労働者数が最も少ないのはムスリムミンダナオ自治区(ARMM)で、全体の280人または0.1%であった。
出典:フィリピン政府
フィリピンの海運事情〜統計データ〜
フィリピンの商品取引総額
フィリピンの対外貿易総額は増加傾向にある。2022年6月の同国の対外貿易総額は191億3000万米ドルに達し、これは年間成⻑率16.1%を示している。2022年6月の対外貿易総額のうち、65.3%が輸入品で、残りは輸出品であった。
一方、貿易赤字は年々増加している。商品の貿易収支(BoT-G)は、輸出額と輸入額の差である。2022年6月のBoT-Gは-58.4億米ドルに達し、年間75.4%増加する貿易赤字を示している。前月の貿易赤字は年率74.7%の増加を記録したが、2021年6月には133.9%となっている。
出典:GOVPH
フィリピンのコンテナトラフック
PPA(フィリピン港湾局)の暫定データによると、2022年の第1四半期にフィリピンの港で処理された貨物量は、昨年の同四半期の5672万9000トンから2%増加して5782万5000トンを記録。国内貨物は5.5%増加し、外国貨物は0.6%減少した。
コンテナ輸送量は4.7%増の186万2000 TEU、旅客とRo-Roのトラフィックは、それぞれ79%と41.5%増加した。データはPPA管轄下の港のみを対象としている。海外からのコンテナの出入りはマニラエリア、国内のコンテナの出入りはミンダナオが圧倒している。
出典:Philippine Ports Authority (フィリピン港湾局)
フィリピンの倉庫事情〜統計データ〜
年次最終国際商品貿易統計(2021)
フィリピンの対外貿易総額は、2020年の1,550億3,000万米ドルから2021年には1,925億3,000万米ドルに増加した。これは年間24.2%の増加を示している。2020年、総貿易は-15.1%減少し、2019年の総貿易は年率0.2%で成⻑した。対外貿易全体のうち、61.2%は輸入品で、残りは輸出品であった。
2021年の商品貿易収支(BoT-G)は-432.3億米ドルで、年間75.7%増の貿易赤字を記録した。前年の貿易赤字は年率-39.5%で減少し、2019年の貿易赤字は-6.6%減少した。世界的な貿易の流れは、コロナウイルスのパンデミックの中で外需が減少した。
検疫が緩和された2021年6月、フィリピンでは経済活動を再開したが、貨物システムを合理化し、戦略的な倉庫保管とコールドチェーンシステムを確立するロジスティクス改革や、商品の移動性を確保、生産を改善するための改革が急務であることを政府の社会経済計画⻑官はアナウンスしている。
出典:フィリピン統計局
倉庫建設手続き所要日数の比較
過去15年間のアジア諸国及び米国の倉庫を建設する手続き数と日数の調査によると、フィリピンは2019年現在では、平均的な手続き数と所要日数に改善されてきた。しかし、香港・マレーシア・シンガポールは、物流と倉庫業に関して、より早く対応しようとする政府方針がグラフとデータから見て取れる。
2005年時点で世界平均の所要日数は205日であったが、2019年になると154日と倉庫建設にかかる許可や日数が短縮している。フィリピンの場合手続き数を26(2013年)から22(2019年)に減少させ、所要日数を改善するなどの努力をしている。
倉庫建設に要する時間が⻑ければ⻑いほど外国企業から敬遠される傾向にあり、倉庫業として成立しにくい傾向にあるため、フィリピンでの倉庫を含むロジスティック改革は更に必要である。
出典:世界銀行
マニラ在住5年目の日本人。法政大学経済学部卒業後、2010年4月よりWeb業界を目指す社会人向けのスクールのインストラクターとして主にコーディングソフトや画像編集ソフトの授業を担当。2015年より海外での生活とキャリア形成を目的に、青年海外協力隊に参加。