この記事では、統計データを用いてフィリピンの教育業界の最新情報をお届けしていきます!
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フィリピンの学校事情〜統計データ〜
高等教育制度評価ランキング
フィリピンでは貧困を背景に学校に通えなくなった学生が退学を強いられるケースが多く、2016年のデータによると初等教育期間での中途退学者数は586,284人となっている。教育に対する国家予算も政府の目標とする額には達しておらず、さらに膨張する人口に対する教室の数も間に合っていないことから、世界経済フォーラムの発表した高等教育の質を計る指標でも、低い数値が示されている。そのような背景から、教育改革”Kー12″を政府がスタートし、学校における基礎教育の充実を図っている。
出典:世界経済フォーラム
インターへの規制政策
政府は、フィリピンへの参入を検討している外資系の学校運営者に対し、高等教育委員会(CHED)が定める高等教育機関基準やシラバス基準を満たしている場合にのみ事業展開を認めており、さらに、外国人の保有する学校数を全体の40%に制限するなどの規制措置を採用している。
政府は一方で、教育現場全体の質やレベルを押し上げることや、国際色豊かな学校で教育を受けた人材を増やすことを目的とし、外国人プレーヤーを国内に誘致する国際化戦略を積極的に導入している。使用言語が英語であることに加え授業料が安価であることから、親子留学として母親は現地のELSに、子供はインターナショナルスクールに通うというケースが人気になりつつある。
出典:Commission on Higher Education
フィリピンの幼児教育・学習塾事情〜統計データ〜
産業グループ別教育部門の雇用分布
フィリピンの業種別(学校)の施設数では、中等/高等学校教育が3,332事業所と最も多く、全体の24.5%を記録した。次いで、初等教育が2,945事業所(21.6%)となっている。就学前つまり、幼児・保育・幼稚園レベルでの施設数は、ほぼ初等教育とほぼ同数といってよい。
一方、最も事業所数が少なかったのは、教育支援サービスの31事業所(0.2%)であった。全体では、13,624事業所が存在している。一方で教育に就業している人数は、高等教育へ188,644人、中等教育に108,860人、就学前施設(幼児・保育)への就業人数は28,512人と一人当たりの負担は大きい。2019年に合計409,241人の労働者を雇用した。
合計のうち、403,489人の従業員または98.6%が有給の従業員であり、残りは働くオーナー所有者と無給の労働者であった。また、政府の学校教育だけでは学力レベルが追い付かないために高等教育を目指す学生や両親は、学習塾で補完している。
出典:フィリピン政府統計局
公立学校教育の充足と課題
フィリピンの学校教育制度は、アメリカ占領期の影響により、歴史のある公立学校教育制度が確立されており、英語が教育言語として用いられていることが特徴的である。このため、公立学校進学率が高く、他のASEAN諸国のモデルでもあったが、近年では課題も散見される。
一方、Kto12の実施により、一度中退した生徒が学校に戻ってくる数が着実に増加しているとの調査結果を教育相は発表した。また予算不足を解消するため、今まで重要視されていた教育へのアクセスから品質向上へと転換し、教育管理とガバナンスを近代化することを強調している。
出典:Commissionon Higher Education
フィリピンの保育事情〜統計データ〜
義務教育入学前の人口
この人口ピラミッドは、フィリピンの人口の年齢と性別の構成を示している。男女の人口分布の内0-14歳の分布が増加していることから、国⺠全体の平均年齢を下げていることがわかる。フィリピンでは、今後も義務教育入学前人口は増加するものと思われる。
人口分布では義務教育前の0-4歳5-9歳の内2400万人で、0歳〜6歳の60%、概算1500万人の義務教育入学前の人口が存在している。したがって、フィリピンでは、今後義務教育前の保育・幼稚園の施設及び教育人員の増加が必須である。フィリピンでは、学校への投資予算の増加とともに幼児・保育へ法的な補助及び人員確保の政策改善が必要である。
出典:CIA
教育分野に対する政府予算推移
フィリピン政府の国家予算の推移は、2017年3.5兆ペソ、2018年3.71兆ペソ、2019年3.622兆ペソ、2020年4.1兆ペソであった。年度別の教育予算は、グラフの通り、2017年以降減少したが、2020年以降では再び増加傾向を示している。
2021-2022年では、パンデミックで立ち遅れた教育全般に力を注ぎ、教育省に最大の予算が割り当てられた。若年層の人口は更に増加すると予想され、義務教育前の保育に対しても予算を設けている。フィリピン下院は、2021年の2022年度の国家予算を4.506兆PHPよりも11.5%高い予算を要求した。2022年の予算案は過去最高となり5.024兆PHPとなっている。
出典:フィリピン予算管理省(DBM)
フィリピンの語学学校事情〜統計データ〜
主力産業の源泉となる英語力
フィリピンの英語能力を世界的に観ると常に10~20位に推移しており、アジア諸国の中でもシンガポール・マレーシアと並ぶ英語力を保有している。そのため国民全体が現地語以外に英語を話す人が多い。フィリピンは、世界のコールセンターと呼ばれ、各国の大手企業がサポートセンターを設立、アウトソーシング・IT分野に進出し、フィリピン国内総生産の高い比率を占めている。
特にIT分野では、世界的にはインドからフィリピンに開発会社やサポートセンターの移行が進み、アジア圏内では有数のIT大国に成長しつつある。また、英語力の高さや物価指数の低さ、生活のしやすさから、日本からの欧米諸国への英語留学よりもフィリピンで英語を学ぶ傾向が顕著になりつつあり、日本からも「語学留学といえばフィリピン」と注目されている。
出典:EF
日本語学習者が増加
2019年度のフィリピンの日本語能力試験の受験者総数は9,745人で、2018年度よりも37%増加している。フィリピンではマニラ、ラグナ、セブ、ダバオ、カガヤンデオロの4つの会場で行われている。受験者数は、マニラ・ダバオ・セブの順番で多く、語学学校の多い都市順に受験者も多い。
東南アジア諸国の中で、フィリピン人の興味は、欧米諸国にへの志向が強いが、日本への関心の高まりもある。日本語は観光業関連あるいは就労目的といった範囲の動機によって選択されることが多かったが、近年のITビジネス交流や、若い世代間での日本のアニメなどの文化浸透による日本への興味から、日本語を学び始める学習者が増加し、日本語教育の裾野を広げている。
出典:独立行政法人国際交流基金
フィリピンの資格・社会人教育事情〜統計データ〜
人気職業の訓練時間
フィリピンの資格試験の主流は、学生・社会人ともに公的機関のTesdaである。Tesdaコースは終了までに数日~6か月と幅広い。これは、コースや提供する学校によって異なる。それらの中で、希望のコースを完了するのに最も短い時間を提供するものを比較しながら研修を受ける
。一方、オンラインコースは、学生が自分のペースと時間で受講できる。学習が早い場合は、2週間以内に1つのコースを修了できる可能性がある。その後、TESDAアセスメントセンターにアクセスして、能力試験を受けることができ、合格すると、国家資格(NC)を取得できる。
外国語コースは、学習したい言語に応じて、100時間から150時間の範囲で修了できる。民間で資格試験サポートを行う私的スクールも登場しているが、総じて費用が安いTesdaにおける研修を受けるケースが多い。
出典:TESDA
人気の職業訓練コース
高校や大学を卒業した人や失業者は、これらのコースを利用して海外で就職することができる。コースを終了できた人は、TESDAが実施する評価試験を受けることができ、試験に合格すると教育機関から優秀である旨の証明書が発行される。
TESDAの証明書は公的に海外でも受け止められている。フィリピンでは、国内就職がまだ難しいケースもあるが、マレーシアでは溶接工が求められている。日本では、農作物の生産・下水道・仕立て屋・大工・介護士・工場労働者などの需要が多い。
出典:TESDA
マニラ在住5年目の日本人。法政大学経済学部卒業後、2010年4月よりWeb業界を目指す社会人向けのスクールのインストラクターとして主にコーディングソフトや画像編集ソフトの授業を担当。2015年より海外での生活とキャリア形成を目的に、青年海外協力隊に参加。