この記事では、統計データを用いてフィリピンの医療・介護業界の最新情報をお届けしていきます!
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フィリピンの病院事情〜統計データ〜
医療機関別の施設数推移
フィリピンの医療施設には、政府病院、私立病院、一次医療施設がある。フィリピンの病院は、所有権に基づいて公立病院または私立病院に分類される。施設数推移のグラフの通り、2013年時点の公立病院は542箇所あったが、2019年時点では、250箇所と半減している。
これらは、日本と同様に病院の医療に対する政府方針つまり構成医療の削減を反映している。公的医療機関と民間医療機関の推移の通り、民間医療施設においても施設数は、減少している。これらは閉鎖合併などを繰り返し、施設数減少が反映している。
一方で、フィリピンにおいては、2019年のユニバーサルヘルスケア(UHC)法で想定されたサービス提供モデルが構築された。すなわちプライマリーケア志向の統合された医療システムに従っている。また、フィリピン国内の中流階級層の増加とともに中流階級の人々のための医療システムが不足気味となっている。
出典:経済産業省
医療従事者数の推移
フィリピンのプライマリーケア施設では、医療従事者の人的資源不足が大きな課題として残っている。医師、看護師、その他の保健医療関連専門家に限定されるものではないが、医療施設や公衆衛生活動の複雑な運営を支える非医療専門家もそこに含まれている。1000人あたりの医師と看護婦の推移は、看護師は若干の増加が見られるものの、医師の数の増加は見られない。
2019年時点で医師数は約13.5万人、1,000人あたり医師数は2012年から変わらず1.2人である。国が医療制度の目標を達成できるかどうかは、医療従事者の確保とサービスの質に大きく依存している。医師や看護師の数は若干の増加傾向にあるものの、これらの医療人員の不足は州や都市による格差は依然として顕著である。
出典:経済産業省
フィリピンの医療機器事情〜統計データ〜
医療機器の市場規模の推移
フィリピンの医療機器市場は、2024年末までに8.8%の年平均成長率(CAGR)で8億8,430万米ドルに達すると予想されている。フィリピンは医療機器を輸入に大きく依存しており、現地での生産はプロトタイプのユニットと手術用手袋、注射器、針などの使い捨て品に限られている。
フィリピンの医療機器市場は価格に敏感であり、人口増加、高齢者人口の増加、安定した経済成長、病院の拡張とグレードアップなどの需要に影響を与える主な要因を伴う成長段階にある。市場は、電子医療機器、画像機器、放射線機器、透析機器、線形加速器などの高価値で少量の製品の輸入にほぼ完全依存しており、医療機器はほぼ100%、医療用使い捨て用品は約50%が輸入品である。
出典:PAMDRAP
医療機器の輸出入額の推移
フィリピンの医療機器の輸入額は2019年に約5.5億US$となり大幅な輸入超過を示している。輸入元は、アメリカが18%で最も大きな割合を占める。一方で最も大きな輸出先は日本である。いずれの医療機器も順調な市場規模拡大が見込まれており、消耗品、診断機器、患者補助具、歯科製品、施設備品、眼科製品、滅菌器、車いすは、年平均成長率が10%を超える見通しである。
公立病院では、1980~90年代に、ODA(無償資金協力)で日本の医療機器が提供されたため、日本製の医療機器が多数使用されていたが、更新時に欧米製への切り替えが進んだ。民間病院も同様に欧米系の進出が目立っている。医師の留学先として欧米が多くなっており、留学先で使用していた医療機器を使用するという点も、大きく影響している。
出典:経済産業省
フィリピンの製薬・バイオテクノロジー事情〜統計データ〜
医薬品販売許可施設数
2021年、フィリピンには約31,650箇所の認可された医薬品施設があり、そのうち約22,000がドラッグストアであった。フィリピンの医薬品市場では、人口の78%が健康保険に加入しているもののブランド薬品が市場を支配しており、消費者の多くは薬局で購入している。
フィリピンは製薬会社にとって世界で11番目に魅力的な市場であり、ASEAN諸国の中で3番目である。フィリピン人の収入の急速な増加と医療産業の輸入への依存度が高いため、外国企業が進出するための国内需要と土壌が生まれている。
出典:国家経済開発庁FD
医薬品の輸入状況
フィリピンの医薬品輸入額は、2021年12月に23.6億ドルとなり急激な増加を記録した。これは2020年からのCOVID-19のパンデミック対策により、フィリピン政府の国家政策として輸入が実施されためである。
2022年以降は、パンデミックの正常化動向により、2019年度の実績5億ドル前後に推移していくものと考えられる。いずれにしてもフィリピンでは、外国医薬品メーカー製品が医薬品業界の大半を占めている。
出典:UN Comtrade
フィリピンの医療卸事情〜統計データ〜
GDPに占める医療費の割合
フィリピンのGDPに対して医療費予算の占める割合は2021年に6%となり、2020年の5.6%から更に上昇した。2020年は、パンデミック初期の政府対応により他国と同様検査キット及びワクチン対応による医療費の増加を示した。金額では、フィリピンの医療費または現在の医療費(CHE)は、2021年に1兆900億ペソに達した。
2020年に計上した9171億5000万ペソと比較して18.5%増加している。総医療費(THE)は、2021年に1兆1600億ペソを記録し2020年の1.01兆ペソの支出から15.2%増加した。つまり、医療品流通の影響を受け、医療卸の分野も市場拡大に寄与している。
出典:フィリピン統計局
医療費の分野別支出割合
フィリピン医療費全体予算において、各医療分野に支払われた金額をセグメント別に表すと、病院が4,532.3億ペソで41.7%のシェアとなり1位だった。これに続いて、医療業者を含む小売業者およびその他の医療用品の提供者が26.2%、医療制度の管理および融資の提供者14.8%が続いた。
ちなみにフィリピン国内において医療機器及び医療品を販売卸できるのは、医療機器製造業者または販売業者(輸入業者/輸出業者/卸売業者)として有効な運営ライセンス(LTO)を保持しているフィリピン企業のみである。したがって、グラフに表されている医療卸を含む取引業者はFDAライセンスを所有している。製造業者と販売業者の間の契約が非独占的である限り、フィリピンでは複数の販売業者が任命される。
出典:フィリピン統計局
フィリピンの介護事情〜統計データ〜
急速に進む高齢化
フィリピンでは、総人口の増加よりも速い速度で高齢者の数が急速に増加している。2000年の60歳以上の高齢者は460万人で、総人口の約6%であったが、2022年には1,639万人の高齢者が総人口の約15%を占めるようになった。
United Nations ESCAPは、2050年までに高齢者が総人口の約31%を占めると予測している。フィリピン政府は、アクティブで健康的な老後を支援するプログラムとして、高齢者の数が1,000万人に達したときのための施設ケアや在宅ケアプログラムだけでなく、高齢者ケアプログラムの重要性も強調している。
出典:United Nations ESCAP
年金制度が未発達
2018年時点で、60歳以上の高齢者で公的な年金を受給している人の割合は21%にとどまっている。年金額の低さから、年金享受のメリットが全国各地に行きわたっていないという現状がある。政府が支出する公務員を対象とした社会年金受給者は34万人、民間企業で勤務する者を対象とした拠出年金受給者は146万人程度である。
年金以外に、高齢者が享受できるサービスとしては、「高齢者割引特典」というものがある。2010年に制定された高齢者優遇拡大法(共和国法第9994号)に基づいた、高齢者が自分で使用/利用する商品及びサービスの購入について、20%の割引と12%という付加価値税の免除という特典である。共和国法第10645号では、60歳以上のすべての高齢者はPhilHealthの国民健康保険プログラムの対象となることが定められており、SSSなどの公的年金プログラムに関してはまだまだ改革が必要である。
出典:Philippine Statistics Authority
マニラ在住5年目の日本人。法政大学経済学部卒業後、2010年4月よりWeb業界を目指す社会人向けのスクールのインストラクターとして主にコーディングソフトや画像編集ソフトの授業を担当。2015年より海外での生活とキャリア形成を目的に、青年海外協力隊に参加。