この記事では、統計データを用いて台湾の教育業界の最新情報をお届けしていきます!
読了時間の目安:5分
台湾の学校事情〜統計データ〜
台湾の就学率
台湾は日本と同様に、小学校6年間及び中学校3年間が義務教育とされている。公立学校の場合は、戶籍地と生年月日に基づき、各地の小学校・中学校に入学が強制される。学費は免除であり、入学試験もない。但し教育部(日本の文部省に相当)は、義務教育期間と高校の3年間を「十二年国⺠基本教育」と位置付け、高校3年間の教育もできるだけ普及させること、一定条件で学費を免除すること等を定めている。
その為、高校での就学率は94.76%と義務教育課程と遜色ないほど高い。未就学児に対する幼稚園教育も高校教育同様、できるだけ普及させることを目指し、5歳児は学費を免除する政策も採っていて、幼稚園での就学率は5年前の59.2%から74.6%へ上昇している。
出典:教育部統計処
教員1人あたりの生徒数
台湾の出生率は1.08と低く、少子化が進んでいることもあり、台湾における教員1人あたりの生徒数はこの5年間で小学校で12.35人から12.14人、中学校で11.01人から9.57人、高校で16.42人から13.83人、大学・専門学校で23.28人から21.88人と各教育段階共に減少している。
また公立学校において、小学校の1クラスあたり生徒数は29人、中学校は30人が原則とされているが、こちらもこの5年間で、小学校は23.0人程度を維持、中学校は27.9人から26.8人、高校は36.5人から31.5人と年々下がっている。教育の品質向上及び現状の人数を鑑み、小学校29人、中学校30人の原則を引き下げることも検討されている。
出典:教育部統計処
台湾の幼児教育・学習塾事情〜統計データ〜
塾や学童、習い事への支出金額
台湾では共働き家庭が一般的であり、また公立小学校では午前中で授業が終わる日も多いため、安親班や課後指導と呼ばれる学童に通わせる家庭が多い。こういった学童は、学校に併設されたものや、学校とは別に私立の塾のような位置付けのもの等、様々な形態がある。
また学校での授業の補習以外にも、英語に力を入れる等、各塾で特色を打ち出している。台湾では日本に比べて学校の宿題が多く、家庭でフォローする負担も大きいため、共働き家庭でなくても、学童に通わせる家庭は多い。学習以外の芸術文化・スポーツ関連の習い事への支出は比較的低くなっている。
出典:教育部(日本の文部省に相当)統計処
学習塾数(教育段階別)
台湾では日本と同様、小学校・中学校が義務教育であり、高校に進学する際には入学試験が必要となる。台湾の高校就学率は94.76%と大多数が進学することから、台湾の中学生の通塾率は約70%と高くなっている。
学習塾数だけを見ると、小学生向けが10745校と最も多く、中学生向けが2641校、高校生向けが371校と減少していくが、これは高校受験、大学受験に向けた塾はチェーン展開していることが多いことが理由だと考えられる。小学生、中学生、高校生の平均1人あたり年間学習塾・習い事代は5万元を超える。
出典:教育部、高雄市政府教育局
台湾の保育事情〜統計データ〜
幼稚園数変遷
台湾の幼稚園は私立・公立・非営利の3種類に分かれる。非営利幼稚園は2014年から出てきた新しい形態であり、政府が土地、建物、設備を無償で提供し、非営利法人が園の運営を行う。公立幼稚園と非営利幼稚園は、保育費用が低いことから人気であり、収入や兄弟有無等の家庭状況に応じた段階的な抽選が行われるため、必ずしも入園できるとは限らない。
但し、私立幼稚園は費用が高いものの、保育時間が⻑かったり、英語等の特色ある教育に力を入れていたりすることから、私立幼稚園を選ぶ家庭も多い。台湾では少子化が進んでいるものの、幼稚園数が増えていることから、より細やかな保育が行われるようになっていると推測される。
出典:教育部(教育省)
幼稚園児数変遷(年齢別)
台湾での就学前保育は、新生児から2歳までを受け入れる保育園と、2歳から小学校入学までを受け入れる幼稚園に分かれる。幼稚園は4学年に分かれているが、園によっては年齢混合クラスの運営がなされている。保育園から幼稚園に転園する場合には2歳で、幼稚園から入園する場合には一般的に2歳や3歳で入園するケースが多い。
台湾において幼稚園は義務教育ではないものの、政府は幼稚園入園を推進しており、5歳児は保育料を無料にする政策を採っている。そのため、年齢別で見ると5歳児の人数が最も多く、また少子化が進んでいるにも関わらず、幼稚園児数の全体は上昇を続けている。
出典:教育部(教育省)
台湾の語学学校事情〜統計データ〜
台湾の世帯ごとの平均教育支出
世帯当たりの平均教育支出は、2017年に少し盛り返しを見せるも、2004年から続く下落傾向は2020年も続いている。一方で一人当たりの平均GDPは毎年増加を続けている事から、平均教育支出下落傾向の要因として、学習方法の多様化やコストの低下などが想定される。行政院のバイリンガル国家政策の推進により、多くの小学校や幼稚園で英語学習が開始され、語学学習への関心も高まっている。
出典:行政院主計總處
台湾企業での語学力の重要性
TOEIC台湾と求人広告代理店の株式会社104が台湾企業の英語に対するニーズを把握する為、従業員100人以上の中大企業240社に社内での英語使用に関してのアンケートを行なった。1番多い回答は「英語の使用は海外関連部署のみ」の45%であったが、「英語を使用しない」は0%で、アンケートに参加した全ての企業で英語が使用又は重要視されている結果となった。
加えて、外国語能力のある人材の初任給や平均給与はこの3年で大幅に上昇している。幼少期からの語学学習は勿論のことながら、就職時の語学能力の必要性に加え、大人の語学学習のニーズも高まりを見せている。
出典:TOEIC台湾
台湾の資格・社会人教育事情〜統計データ〜
職業訓練者数の変化
台湾政府や地方自治体では、業界の発展動向と人材供給の需要に応じて様々な職業訓練コースとオンライン学習プラットフォームを提供している。加えて、新型コロナウィルスの感染拡大による雇用市場への影響により、若者の失業者の数が増える中、労働部労働開発庁が定める就労前研修に参加している15歳から29歳までの無職の若者を対象に報酬を受け取ることができる「学習インセンティブポリシー」を開始した。これにより、2020年まで安定した数値を見せていた青年の職業訓練修了者数は、2021年は33,596人で前年のほぼ2倍に増えた。
出典:台湾労働部
台湾で人気の資格
台湾労働協会では、職場における労働者のスキル向上を図る為、1972年9月から技能検定を定期的に実施すると共に、免許制度を創設した。現在労働部が管轄するスキル認証及びライセンスは224有り、それぞれ甲級・乙級・丙級の3段階でレベルが設定されている。
2021年の全ての項目の技能認定試験合格者数は9,169,604人で、その内、近年のITスキルの需要の増加が追い風となり「応用情報技術者」の合格者数が1,058,107人で1番多かった。また、224項目の内、2021年に最も人気のあった資格試験学習は、「中華料理調理師」であった。
出典:台湾労働部統計調査
台北在住の台湾人。日本の東北大学で修士号取得後、7年以上IT企業でマーケティングを担当。デジタルマーケティングと市場分析の専門家として、製品の市場導入とブランド戦略を得意とする。