今回は、アメリカのドラッグストア業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて9社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要ドラッグストア6選〜ローカル編〜
CVS Health Corporation(CVSヘルスコーポレーション)
1963年にマサチューセッツ州ローウェルで創業し、現在はロードアイランド州ウーンソケットに本社を構えている大手ドラッグストア・医療サービス企業。アメリカ最大のドラッグストアチェーンのひとつであるCVSファーマシーの他、健康保険会社や健康管理サービスも展開している。
主要事業であるCVSファーマシーは、米国で9000店舗以上を展開している。CVSファーマシーから半径10マイル以内に住むアメリカ人は、人口の85%をカバーしている。一般的なアメリカのドラッグストアと同様に、店内に調剤薬局を構え、市販薬、日用品、グリーティングカード、食品などを取り扱っている。
2022年度は売上高3220億米ドル、調整後営業利益が175億米ドルと好調。処方薬のシェアは25.6%で全米第一位。
今後は、デジタル化とパーソナライズされたサービスを提供することに重点をおく。特に、メンタルヘルスに対するバーチャルでのサービスを拡大していく。
店内に併設している簡易診療所・ミニットクリニックには、2022年に550万人以上の患者が来場している。コロナ治療薬であるパクスロビドを薬剤師が処方できるようにしたことで、患者の利便性が向上した。
出典︓https://investors.cvshealth.com/investors/default.aspx
Walgreens Boots Alliance(ウォルグリーン ブート アライアンス)
1849年にイギリス・ノッティンガムで創業したブーツ、1901年にアメリカ・シカゴで創業したウォルグリーン、1977年にイタリアで創業したアレンザファルマシューティカ(のちのアライアンスユニケム)が合併してできた健康サービス企業。170年の歴史をもつ。本社をイリノイ州ディアフィールド。
アメリカ、ヨーロッパ、中央・南アメリカの9か国で約13,000店舗を展開しており、全従業員数は325,000名以上。アメリカ国内(プエルトリコ等を含む)の小売ドラッグストアは8,886店舗である。
2022年の売上高は1327億米ドルで、このうちアメリカ国内の小売ドラッグストアにおける売上高は1091億米ドル。処方薬のシェアは15.5%で、CVSファーマシーに続き全米第2位である。
消費者向けブランドとして、ウォルグリーン(全米)、ブーツ(ヨーロッパ)、デュエインリード(ニューヨーク)、No7ビューティーカンパニー(ヨーロッパ)、ベナビデス(メキシコ)、アフマダ(チリ)などを運営している。
アメリカ国内の人口のうち78%がウォルグリーンやデュアンリードの店舗から5マイル以内に住居している。
出典︓https://www.walgreensbootsalliance.com/about-us
Rite Aid(ライト エイド)
1962年にペンシルベニア州スクラントンで薬局として創業。他のドラッグストアチェーンを多数買収し、1981年に全米3位のドラッグストアチェーンに成⻑した。現在の本社はペンシルベニア州フィラデルフィアにある。全米17州に2400店舗を運営。
2022年度は売上高が246億米ドル(対前年比5億2500万米ドルの12%増収)、償却前営業利益が5億590万米ドル(対前年比で6820万米ドルの16%増加)と好調だった。
売上はドラッグストア部門とヘルスサービス部門の2つに分かれている。医療用医薬品(処方薬)の売上が大きく、2022年度はドラッグストア部門全体の売上の70%を占めていた。ライトエイド社は、彼らの事業戦略と相まって、今後も増加していくと予想している。
残りの30%は一般用医薬品、健康食品、化粧品、食品、グリーティングカードなどの日用品などの売上からなっている。
今後は25歳から49歳の女性をターゲット顧客として販促を行い、他のドラッグストアとの差別化を図る予定。伝統・代替療法、クリーンでナチュラル・オーガニックでエコフレンドリーな商品を取り入れていく。
ビタミンやサプリメントの有名小売企業であるGNC社との戦略的パートナーシップを締結し、自社ブランドを展開している。その結果、自社ブランドの売上高が、2022年度は非医療用医薬品における売上の約19%を占めるようになった。
出典︓https://www.riteaid.com/about-us
https://investors.riteaid.com/overview/default.aspx
Walmart(ウォルマート)
1962年に第1号店を開店し、1969年に企業化した世界最大のスーパーマーケットチェーン。売上高世界第一位の企業である。アーカンソー州ベントンビルに本社を構えている。2022年の売上高は6113億米ドル。倉庫型小売事業のサムズクラブも運営している。
創業から早い段階で薬局も開業しており、1978年に1号店をオープンさせた。アメリカ国内のウォルマートとサムズクラブにおいて店内に調剤薬局が設置され、市販薬も食品や日用品と同様に販売されている。調剤薬の販売シェアは4.4%でアメリカ第5位。
売上高の大部分は処方薬の販売で構成されており、そのため薬価調整や医薬品の供給状況などの第三者からの影響を受けるという事業リスクがある。
オムニチャンネル化の一環として、オンラインでの処方薬のリフィル販売も行っている。
出典︓https://stock.walmart.com/home/default.aspx
Kroger(クローガー)
1883年にオハイオ州シンシナティのダウンタウンで創業した総合スーパーマーケットチェーン。現在も同地に本社を構える。28の異なるブランドで、アメリカ国内35州で約2800店舗を運営している。
アメリカのスーパーマーケットチェーンとして初のイノベーションをいくつも生み出しており、そのうちのひとつがワンストップショッピング。消費者は肉、パンなどを別の専門店で購入する必要があったが、1901年に初めてパン屋や精肉部門を併設することで、クローガーに来ることで一度に買物をすますことができるようになった。会計時の電子スキャンもアメリカ初。
1980年代に薬、化粧品、ヘルスケアを加えたコンビネーションストアに変化しており、基本的な食料品に加えてあらゆるものを取り揃えている。店舗内薬局は2255店舗以上運営しており、年間2億3800枚の処方箋を扱っている。
2022年の売上高は1483億米ドル。オムニチャンネル化の一環として、ガソリンスタンドも運営しており、売上に締める割合はドラッグストア部門が124億米ドル、ガソリンスタンド部門が147億米ドルとどちらも9~10%を占めている。
医薬品の提供だけではなく、コロナ検査やワクチン投与も店内で行っており、350万回分のコロナワクチンを投与した(2021年現在)。
出典︓https://www.neimanmarcusgroup.com/
Albertsons Companies, Inc.(アルバートソンズ カンパニーズ)
1939年にアイダホ州で創業した大手食料・医薬品小売企業。アメリカ国内34州とコロンビア特別区で2271店舗を運営し、19の製造工場を保有している。従業員数は29万人。
アルバートソンズをはじめとする20以上の有名ブランドを有している。セーフウェイ、ボンズ、ジュウェルオスコなどが含まれる。
2022年度の売上高は776億米ドル、調整後償却前営業利益は47億米ドルである。店舗内薬局を1722店舗構えており、2020年度は総売上に締める薬局部門の売上高は7.4%であった。食料品店としてのオンラインストアの他に、AlbertsonsPharamcyというオンラインストアもあり、処方箋薬の購入やワクチン接種の予約、ペット向け動物治療薬の処方箋購入などができる。
出典︓https://www.albertsonscompanies.com/investors/overview/default.aspx
アメリカの主要ドラッグストア〜日系編〜
MatsukiyoCocokara & Co.(マツキヨココカラ&カンパニー)
1932年創業の株式会社マツモトキヨシホールディングス(前身の事業会社はマツモトキヨシ)と、1937年創業の株式会社ココカラファインが統合し、2021年に株式会社マツキヨココカラ&カンパニーが誕生した。
2022年度の売上高は7299億6900万円、売上純利益は2402億9500万円となり、どちらも過去最高。統合シナジーにより売上純利益率は、前期の31.4%から32.9%へプラスとなった。売上構成比は、医薬品(調剤含む)が最も多く純利益率も42.5%と高い。ついで化粧品の売上が多いが、純利益率は33.1%。
海外出展も続けており、タイ、台湾、香港、ベトナムについで、2023年にはグアムに出店するため、子会社のMATSUMOTOKIYOSHI GUAMを設立予定。
出典:https://www.matsukiyococokara.com/
アメリカの主要ドラッグストア2選〜外資系編〜
Koninklijke Ahold Delhaize N.V.(コーニンクレッカ アホールド デレーズ)
オランダ・ザーンダムに本社を構え、ヨーロッパ、アメリカ、インドネシアで事業を展開している世界最大級の食品小売グループ。150年以上の歴史があり、現在、約7659店舗を運営し、約41万4000人の従業員を雇用している。
1867年にベルギーで創業したデレーズと、1887年にオランダで創業したアホールドとが2016年7月に合併して誕生した。ユーロネクスト・アムステルダム証券取引所とブリュッセル証券取引所に上場している。
2022年度のグループ全体の売上高は870億ユーロで、うち552億ユーロがアメリカでの売上である。また、870億ユーロのうち113億ユーロをオンラインで販売している。
アメリカ全体での売上のうち、医薬品の売上は5%程度だが、同じ敷地内にあるガソリンスタンドなどと共に、食料品の枠を超えたオムニチェンネルの小売り企業になるため重要視している。
運営している19のブランドのうち、アメリカではフードライオン(1108店舗)やストップ&ショップ(400店舗)を含む8のブランドを展開している(ザジャイアントカンパニー/193店舗、ジャイアント/165店舗、ハナフォード/185店舗など)。
アメリカ10州で営業しているフードライオンは、1957年にノースカロライナ州で創業。主に南東部と中部大⻄洋地域で展開しており、1週間に1000万人の顧客が来店している。1店舗あたり商品を2万8000品目そろえ、そのうち7000品目がプライベートブランドの商品である。
ザジャイアントカンパニーは、1914年にマサチューセッツ州で創業。現在は、ニューヨーク州、ニューイングランド州、ニュージャージー州に店舗を展開し100年以上の歴史を持っている。他の大手アメリカ小売り企業と同様に、食料品や日用品だけでなく、店内薬局とガソリンスタンドを営業している。
出典: https://www.aholddelhaize.com/en/home/
Grup Comercial Chedraui(チェドラウイ コマーシャル グループ)
1920年にメキシコ・ベラクルス州で創業した大手小売りチェーン。メキシコに341店舗、アメリカに377店舗を運営している。2010年にメキシコ証券取引所に上場した。アメリカでは1997年に進出し、現在は5州(カリフォルニア州、テキサス州、ネバダ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州)で運営している。
377店舗のうち254店舗は2021年に買収した倉庫型店舗のスマート&ファイナルである。ヒスパニック系住⺠をターゲットにしたエルスーパー、フェスタマートというブランドでも、それぞれ64店舗と59店舗を展開している。
2022年度のアメリカでの売上高は、ヒスパニックブランドだけで前年対比+8.9%、スマート&ファイナルの統合を含めると+77.4%に上った。
他の米系スーパーマーケットと同様に、店内薬局とオンライン販売を進めている。店内に薬局を構え、処方箋薬や一般市販薬を購入することができる。また、オンラインでも風邪薬や抗アレルギー薬などの一般市販薬を購入することができる。
出典:https://chedrauiusa.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。