今回は、アメリカの家電量販店業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて10社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要家電量販店7選〜ローカル編〜
Best Buy Co. Inc.(ベストバイ)
1966年創業。ミネソタ州リッチフィールド市に本社がある。かつてはカナダ・メキシコ・中国などでも店舗を展開していた多国籍家電小売業社である。現在、アメリカ家電小売業界で最大の小売業社。2023年現在で北米内に1400店舗以上を持つ。2023年の収益は463億米ドル。従業員数は90000人を超すという。
自社ブランドとして電子機器のDynex、AVホームシアター関係機器のMagnolia、家電のPacificなど8つの自社ブランドを製造販売している。もとは音響器具を扱う電気店ではあったが、買収や合併などを繰り返し家電を扱うようになった。特に同業者のCircuit Cityとの価格競争は激しかった。
2000年代にはネット販売も充実させ、特に不評だった郵送でのリベートをオンライン形式に変えたことが高く評価されている。またアメリカ第2位の楽器販売業者になったり、iPhoneの最初のサードパーティー販売業者にもなった。
出典︓https://www.bestbuy.com/
The Home Depot, Inc.(ホームデポ)
1978年創業。家電量販店ではなく、ホームセンター。ただし、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電の取扱量はデパートのレベルを超す。カナダやメキシコにも進出しており、世界で6番目に大きい、アメリカを拠点とする企業とされている。2021年現在で、2300以上の店舗に490000人を超す従業員を抱え、15000億米ドルの収益を得た。
オレンジ色のエプロンが制服になっている。巨大な倉庫状態の店内での家電コーナーは、冷蔵庫・洗濯機・照明・掃除機・食洗器などのコーナーに分かれ、それぞれに専門アシスタントがいる相談コーナーが設けられている。基本的に在庫は無く、注文後、3日以内に配達される。
ほとんどの店舗にレンタカー会社が併設されている。大型家電を持ち帰り購入することは滅多に無いが、普通乗用車には積み込むことが難しい大型照明器具などを持ち帰るときなどに利用されることもある。同社の自社ブランド家電は作られていない。
出典︓https://www.homedepot.com/
Loweʻs Companies, Inc.(ロウズ)
ノースカロライナ州ムーアズビル市に本社を持つ。ホームデポと同様に、家電量販店ではなく、ホームセンター。やはり、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電の取扱量はデパートのレベルを超している。ホームデポには1989年に全米1位の座を受け渡したが、家電取り扱い種類量は、どの店舗を見てもロウズが上回っている。
過去にはオーストラリアやカナダやメキシコにも進出していたが、すべて撤退している。1921年に金物雑貨店(アメリカの町には必ずあるハードウェア店)として創業。2022年現在で全米に1700店舗、従業員は300000人を超すという。収益は721億米ドル。特にコロナ禍でDIYが高まったことが売り上げ増を加速させたとされる。
1980年代のホームデポとの競争激化によりなんでも取り扱うメガストア形式として競争に参加したが、それ以前はあくまでも町の小売店としての存在形式を重視していた。そのため、店内のスタッフ教育に力を入れ、相談すれば解決できる店として評価されていた。
出典︓https://www.lowes.com/
Target Corporation(ターゲット)
1902年創業のグッドフェロードライフーズという、宗教系の雑貨店が源流。酒類販売の禁止や日曜日休業など、キリスト教に基づく店舗だった。宝石店の吸収合併などで拡大し、デパート化した。1962年、デイトンデパートのディスカウント部門として設立。80年代にスピンアウトし、全国展開。90年代にターゲットブランド名で拡大路線に乗った。
本社はミネソタ州ミネアポリス市。2023年現在、全米に1948店舗。従業員数は440000人を超す。2022年の収益は1091億米ドル。家電量販店ではなく、総合デパートである。ホームデポなどとの相違点は、商品が持ち帰れることにある。各店舗で取り扱う商品種類は限られてはいるが、テレビから白物家電まで幅広く扱う。
アメリカでは2022年度小売店ランキング7位に位置する。過去には小規模店ターゲットエクスプレスや超大型店舗のスーパーターゲットなどのブランド展開をしたが、現在はターゲットに統一している。家電について、取り扱い種類も在庫も量販店とは言えないが、一通りのものは揃えている。WEBストアでの販売も好調。
出典︓https://corporate.target.com/
Walmart Inc.(ウォルマート)
アメリカの巨大スーパー。売上はAmazonに次ぐ。スーパーセンターまたはハイパーマーケットと呼ばれることが多い。ディスカウントストアとして1962年に創業。本社はアーカンソー州ベントンビル市。現在でも、主軸は食料品を中心としたスーパーマーケットであり、ホームセンターや家電量販のコーナーが組み込まれている店内レイアウトである。
2022年現在、世界24か国に10586店舗を持ち、従業員数は2300000人を超すという。2023年度の収益は6113億米ドル。アメリカ50州のうち、ハワイ州を除くすべての州に店舗を展開している。ドイツ・日本・韓国・アルゼンチンでの展開は失敗に終わっている。
家電に関しては、ターゲットと同じく、店舗にある在庫をカートに乗せて、そのまま持ち帰ることができる。Costcoのような会員制の倉庫形式ディスカウント店であるサムズクラブは別ブランドとして順調に展開中。このサムズクラブでも家電量販部門がみられる。食料品と家電などの買い物が一度に済ませられる、巨大店である。
出典︓https://www.walmart.com/
Sears, Roebuck and Co.(シアーズ)
イリノイ州シカゴ市で創業した、カタログ通販会社が出発点。その後、1925年から小売店舗をスタートさせ、総合デパートへと進化させていった。1974年、シカゴ市にシアーズタワーを建設したことが有名。カタログ通販事業は2000年ごろまでに衰退し、反対に小売店は総合デパートとして各地に出店した。
Kmartの買収など、2000年代は経営に迷走が見られ、2021年には倒産。全米の115店舗が解体された。現在は再生法に基づき経営され、17店舗だけが残っている。WEB店舗も2023年現在、健在である。
Searsも家電量販店ではなく、いわゆるデパートである。全盛期の頃はKenmoreなど、家電の自社ブランドも販売していた。家電に関しては、限られた地域のみであったが、アウトレット店も出店していたことがある。大幅な値引きは無かったが、性能の良いものだけを取り扱うイメージを戦略として打ち出していた。
配達が原則で、持ち帰れるものは車に積み込められる程度のものと限定される。それでも在庫があれば、即日持ち帰りが可能。
出典: https://www.paragon.com.sg
R. H. Macy & Co.(メイシーズ)
1858年創業のアメリカ老舗高級デパート。2022年現在、510店舗を持ち、130000人の従業員を抱える。2017年の売り上げは248億米ドルだった。1924年以来行っているニューヨークの感謝祭パレードが有名。また1976年以来行っているニューヨークの独立記念日花火大会のスポンサーとしても有名である。本社は現在ニューヨーク。
数多の買収などを繰り返し、現在はブランドとしてメイシーズの他、ブルーミングデールやバックステージ、ストーリーなどの店舗を持つ。衣類やアクセサリー、ジュエリーや贈答品などで有名だが、高級家電は従来より取り扱っている。決して激安店ではなく、DysonやVikingなどの高級家電を扱っている。ただしWEBストアでも、冷蔵庫や洗濯機などの大型白物家電は取り扱っていない。
2016年にはアップルストアをホストするアメリカ初のデパートになった。買収や統廃合、人員削減や不採算店の閉鎖などを繰り返したが、業績は向上していない。
出典︓https://www.sears.com/
アメリカの主要家電量販店〜日系編〜
Fujisan-Us.Com(フジサンドットコム)
1998年10月に立ち上がったWEBストア。アメリカ在住者に日本の書籍・薬品・化粧品などを日本の定価で提供してきた。2011年からは運営元をNipponShosekiHanbai,Inc.(カリフォルニア州)に変更。在米日本人の中では、日本の電化製品が購入できる店のひとつ。
現在はアメリカ版Amazonでも購入できるようになったが、1990年代までは日本の家電は日本から持ってくるか、日系スーパーなどで売られている限られた種類の家電を購入するしかなかった。同社がオープンしてから、炊飯器・変圧器・温水便座・餅つき機・電気ポットなど、アメリカの家電量販店では取り扱われていなかった電化製品を購入できるようになった。
2023年現在では、楽天や日本アマゾンなど日本製家電の海外発送も可能とする店舗が増えたが、アメリカの電圧にあわせた製品を取り扱う家電量販店はほぼ無い。駐在員家庭の場合、変圧器を使って日本から持ってきた家電を使うケースも見られる。
出典︓https://www.fujisan-us.com/
アメリカの主要家電量販店2選〜外資系編〜
Samsung Experience Store(サムスン エクスペリエンス ストア)
2016年2月、米国Samsung社は本社のあるニューヨークに旗艦店をオープンさせた。この店舗はSamsung製品を販売しない。あくまでもSamsungのコンセプトやテクノロジーを一般公開するためだけの場所としてオープンさせている。Samsungが直接運営する米国内小売店は、2019年2月にニューヨークとロサンゼルスにオープンさせた。
現在はテキサス州に2店舗とカリフォルニア州に1店舗を加え、合計5店舗でSamsung直営小売店を運営している。決して量販店ではないが、Samsung製品をいち早く入手でき、修理などの依頼などができる店舗である。ただし、アメリカの各店舗はスマホやタブレット、音響などの製品に限られる。カナダの7店舗はテレビや冷蔵庫などの家電を扱っている点で、量販店の品ぞろえに匹敵する。
BestBuy店内にもコーナーを設置しているが、顧客対応しているのはSamsungでトレーニングされたBestBuyの店員である。
出典︓https://www.samsung.com/us/samsung-experience-store/
Miele & Cie. KG(ミーレ)
ドイツの老舗家電メーカー。創業は1899年と古く、洗濯機などの家電からオートバイ、戦時中は魚雷用の部品まで手掛けていた。世界47か国に拠点を置いている。アメリカには1983年に進出。本部をニュージャージー州サマセット市に置いた。その後、1999年にニュージャージー州プリンストン市に移転している。
製品を顧客に直接体験してもらう目的で、MieleExperience Centerを北米内に10か所運営している。同店舗には在庫はないので、同社の製品を持ち帰りすることはできないが、体験旗艦店で体験後、その場で店員と相談しながらWEB店舗を使って購入することは可能という。
展示だけではなく、同社の新製品を使っての料理教室が開かれたり、新製品のデモンストレーションが開かれたりしている。同社は北米では高級家電メーカーとして扱われているので、TargetやWalmartなどの量販店では取り扱っていない。外資系家電メーカーで直営店を北米に出店するのは珍しい。
出典︓https://www.mieleusa.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。