今回は、アメリカの酒類業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
読了時間の目安:5分
アメリカの主要酒類製造メーカー8選〜ローカル編〜
Constellation Brands, Inc.(コンステレーション・ブランド)
スピリッツ、ビール、ワインを製造および販売する企業。アメリカ最大のビール輸入会社であり、世界のビール供給会社の中では3位(7.4%)に位置する。1945年にニューヨーク州フィンガーレイクス市にて創業。はじめはCanandaigua社としていた。2000年に現在の社名に変更している。
現在の本社はニューヨーク州ビクター市にある。アメリカ以外にもメキシコ・ニュージーランド・イタリア・カナダを含め約40の施設を持ち、従業員は9300人を超す。2021年の収益は93億米ドル。
取り扱いブランドは100を超す。ワインブランドにはロバート・モンダヴィなどのカリフォルニアワインを中心としたブランドがある。ビールはコロナなどの主にメキシコからの輸入ビールとフロリダ州のクラフトビールであるファンキー・ブッダなどを扱う。スピリッツでは、中価格帯のスヴェッカ・ウォッカやカーサ・ノーブルのテキーラを扱う。
出典︓https://www.cbrands.com/
Brown Forman (ブラウン・フォーマン)
1870年、ケンタッキー州ルイビル市にて創業。当時としては斬新なアイディアであった、最高級ウイスキーを「密閉ガラス瓶」で販売する方法をとっていた。オールドフォレスターは、この密閉ボトルでのみ販売されたバーボンであり、市場で継続的に販売されているアメリカンウイスキー(バーボン)では最古のものである。同社は、禁酒法時代には薬用ウイスキー製造のライセンスを取得し、会社として生き残った。その後、フランスやメキシコなどの大手酒造メーカーを買収しさらに成⻑。創設者の子孫であるフォーマン一家により、現在も経営が続いている。
取り扱いブランドで最も有名なものはジャックダニエルやウッドフォードリザーブなどのバーボンウイスキー。その他にもカナディアンウイスキーのコリングウッド、スコッチウイスキーのベンリアッハ、カリフォルニアスパークリングワインのコーベル、ウォッカのフィンランディアなどがある。
2022年現在の従業員は5200人。収益は50億米ドルを超す。
出典︓https://www.brown-forman.com/
Molson Coors (モルソン・クアーズ)
2005年、カナダの老舗ビールメーカーのモルソン社(1786年創業)とアメリカのビールメーカーのクアーズ社(1873年創業)が合弁してできた企業。現在はイリノイ州シカゴ市に本社を置き、コロラド州ゴールデン市とカナダのケベック州モントリオール市にメインオフィスを置いている。2016年にウィスコンシン州の老舗ビール会社ミラー・ブルーイングを買収。世界3位の巨大ビール会社となった。
現在は欧州や南米でも現地法人化されており、ビールの他にも⻨芽飲料やエナジードリンク、スピリッツやワインを手掛けている。北米部門で取り扱っているビールブランドは60種類を超す。主なブランドにはブルームーン、カーリング、キーストーン、ジョージキリアンズ、グランビル、ハムズ、ホップバレー、テラピンなど。
2019年現在の従業員数は17700人。収益は106億米ドル。
出典︓https://www.molsoncoors.com/
Boston Beer Company (ボストンビール)
1984年にマサチューセッツ州ケンブリッジ市にて創業。いまやアメリカ国内のレストランやパブなどでは当たり前のように置かれているアメリカビールの代表例といえる「サムエル・アダムス」を主力商品として製造販売している企業である。
規模が大きくなるにつれて、他の醸造所でライセンス生産してもらう契約数を増やしていった。それも限界となり、1997年以降は小さな醸造所を買収するようになっていく。2019年にはデラウェア州のクラフトビール会社であるドッグフィッシュ・ヘッド社を買収している。
1997年にはアルコール5%のサイダーである「アングリーオーチャード」をリリース。その後、2000年にはアルコール5%のアイスティーである「ツイステッドティー」をリリースしている。2019年現在従業員は2100名、収益は13億米ドルを超す。
出典︓https://www.bostonbeer.com/
MGP Ingredients (エムジーピー)
以前はLDI(Lawrenceburg Distillers Indiana)という社名で、1847年に設立された蒸留所であった。旧社名の通り、現在もインディアナ州ローレンスバーグ市に本社がある。大きな蒸留所の下請けとして発展している酒類企業である。下請けであるがゆえに、産地偽装のような誤解を招く事件もあり、特に株式公開名においては社名にIngredients(原材料)を加えるようにしている。なお、最大の顧客はロンドンに本社があり、ジョニーウォーカーやJ&Bで有名なディアジオ社である。
現在は50以上の蒸留所と提携しているが、ジョージ・リーマス・バーボンなどを代表とする7つの自社ブランドも持つ。多くのブランドはMGPで蒸留し、各ブランド社の工場で濾過やブレンド・瓶詰などの仕上げをする。MGPが下請けであるブランドの例としてブレット・ライ、ジョージ・ディッケル、クーガー、シーグラムセブンなどがある。
現在の本部はカンザス州アチソン市。従業員は690名。
出典︓https://www.mgpingredients.com/
Vintage Wine Estates(ビンテージワインエステイツ)
イリノイ州シカゴ市にある有名なレストランでソムリエをしていたパット・ロニー氏が創業者。氏は故郷のカリフォルニア州に戻り、2000年に数々の賞を受賞したワイナリーのGirardを買い取った。その後、多くのワイナリーを買収し、2007年に現在の社名Vintage Wine Estatesとして設立。現在では30社以上のワイナリーを所有する25億米ドル規模の企業に成⻑している。
本社はカリフォルニア州サンタロサ市。従業員は現在563名。カリフォルニア州内にとどまらず、オレゴン州やワシントン州のワイナリーも所有する。現在の社⻑はテリー・ウィートリー。彼女は2016年の「フード&ワイン」という有名雑誌の中で「業界内の最も影響力のある人物の一人」に選出されている。
所有しているブランドの例として、ClosPegase・Kunde・WindsorVineyards・Laetitiaなどがある。
出典︓https://www.vintagewineestates.com/
Fresh Vine Wine(フレッシュ・ヴァイン・ワイン)
ブルガリア出身の女優であるニーナ・ドブレフとユタ州出身の女優・カントリーシンガーのジュリアン・ハフが所有するワイン会社。小売りと卸売の二本柱で経営している。企業コンセプトとして低炭水化物、低カロリー、グルテンフリーなどを謳っている。高品質の原料のみを使用したプレミアムワインは、市場で高く評価されている。
2019年創業。本社はミネソタ州プリマス市。従業員数は季節によって増減するが、本社勤務は25名程度とされている。ワイナリーはカリフォルニア州のワイン産地であるナパ市にあり、カベルネソービニオン・シャルドネ・ピノノワール・ロゼなどが瓶詰めされている。ファッションリーダーでもある二人がブランディングするだけに、ケトやヴィーガンをも意識している。
スーパーなどにも卸している。オンライン販売も好調で、会員になると割引がある。また、広報では創業者の二人が活躍している。
出典︓https://freshvinewine.com/
Eastside Distilling (イーストサイド蒸留所)
2008年、オレゴン州ポートランド市にて創業。創業当初は小規模で閑古鳥が鳴いていた、ラム酒の輸入業者であった。第二次大戦前まで、アメリカでのスピリッツ代表例はジンであったが、戦時中にイギリスかっらの輸入がままならなくなり、ラム酒に人気が出たという。その後、カクテルベースとしての人気が高まり、現在まで需要が続く。特に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のヒットでダークラムの消費量が前年比30%増以上という結果になった。
他の蒸留所同様、ブランドファミリー内の新商品開発に加え、近隣の蒸留所を買収することで事業拡大。レディ・トゥ・ゴーの代表である、缶入りアルコールの受注生産にも着手。またオレゴン州・ワシントン州・コロラド州を中心に、⻄海岸の大手酒蔵の下請けもしている。
取扱商品は自社ブランドのラム酒の他、テキーラやウイスキーなど。
出典︓https://www.eastsidedistilling.com/
アメリカの主要酒類製造メーカー3選〜日系編〜
ASAHI BREWERIES, LTD.(アサヒビール)
1987年3月発売のスーパードライが日本で大ヒット。1989年には旧社名の「朝日⻨酒株式会社」から「アサヒビール株式会社」に社名変更。1994年には海外事業第一弾として中国に進出。アメリカには1998年4月に、日本人が多く住むカリフォルニア州トーランス市にアサヒビールUSAを設立。レストランなどを営業し、日本からの輸入数を増やしていった。
既に1988年には日本からの輸入は始めていた。ついに1994年にはカナダにあるモルソン・クアーズ社の蒸留所にてライセンス生産を開始。マーケットでは欧州にかなわず、アメリカ支社は2022年にAsahiEurope&Internationalに統合された。
アメリカ国内での取り扱い品目はスーパードライとブラック程度。瓶詰と缶詰、大きさなどはある程度揃えるが、欧州やアジアなどと比較すると、日本で販売されている種類は取り揃えられていない。
出典︓https://www.asahisuperdry.com/en-us/home/
Asahi Shuzo Co., Ltd.(旭酒造)
1975年をピークに消費量が落ちていた日本酒人気を変えようと、山口県の酒蔵が挑戦した。それが「獺祭」を作った旭酒造である。1990年に東京に進出し、1992年には「獺祭・磨き二割三分」が大ヒット商品となり快進撃が始まった。
2002年には海外進出第一歩として台湾へ。2003年にはアメリカに販売ルートを確保。日本食レストランはもとより、ワインショップなどにも営業をかけた。現在もドバイや香港、イギリス、フランスなど18か国で取引がある。売り上げの約10%は海外での売り上げによる。
2017年12月、アメリカの料理学校と提携してニューヨーク州ハイドパーク市に酒蔵を建築する計画を発表。ニューヨークの水とウィスコンシン州で作られた日本米を使って、新たな「DASSAI BLUE」というブランドを発表する予定。2023年5月23日に州から醸造許可が下りた。9月の正式オープンに向けて、作業は急ピッチで進んでいる。
出典︓https://www.asahishuzo.ne.jp/en/
Suntory Holdings Ltd.(サントリー)
サントリーの海外事業開始は、1922年の台湾への「赤玉ポートワイン」の販売開始が起源とされる。サントリーウイスキーの海外輸出は、1931年。アメリカへは1934年、禁酒法廃止後に輸出を開始。大戦により、海外戦略は白紙に。そして終戦後、1955年には赤玉ポートワインを、1962年にはサントリーウイスキーを輸出再開した。
さらに1980年代から買収による企業拡大。1990年代に入ると欧州やロシアなどで日本のウイスキーが高く評価され、瞬く間に成果を上げた。
中国を中心としたアジア圏や欧州でのサントリーの評価と比較すると、アメリカでのサントリー評価は低い。唯一、「響」や「山崎」などの高級ウイスキーのみが評価されている。米国本社はニューヨーク市。
出典︓https://us.suntory.com/
アメリカの主要酒類製造メーカー3選〜外資系編〜
Anheuser-Busch Inbev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)
ベルギーのルーヴェン市に本社がある多国籍醸造会社である。2016年に南アフリカのSABミラー社を買収すると、世界最大のビール会社となった。ニューヨークにグローバル機能管理オフィスをおき、サンパウロ・ロンドン・セントルイス・メキシコシティー・ブレーメン・ヨハネスブルグなどに地域本社を設置している。
世界150か国の約630銘柄のビールブランドを持つ。創業は2008年の、インベブ社がアメリカのアンハイザー・ブッシュ社を買収したこととされている。2019年現在で従業員数は170000人を超すとされ、収益は523億米ドル以上であったという。
世界規模で取り扱うブランドはバドワイザー、ブッシュ、コロナ、ステラなど。アメリカに限れば他にもミケロブ、ローリングロック、ナチュラルなどがある。
出典︓https://www.ab-inbev.com/
Diageo (ディアジオ)
ロンドンに本社があるイギリスの多国籍アルコール飲料会社である。世界132か国に拠点を持ち、27000人の従業員を持つ。2022年の収益は224億ポンドであった。1997年、アイルランドのギネス社とロンドンのグランドメトロポリタン社の合併が創業とされる。l創業直後から、様々な企業に対して売却と買収を繰り返している。その結果、例えば現在では世界中のウイスキーの売り上げのうち、約40%を同社が占めているとされている。l取り扱いブランドはジョニーウォーカーやオールドパーなどのスコッチウイスキー、ウォッカのスミノフ、ゴードンズやタンカレーなどのジン、ビールのギネスやタスカーなど。これらを欧州・北アメリカ・ラテンアメリカ・カリブ海・アジア太平洋・アフリカの5つの地域に分け、あわせて180以上の拠点で事業展開している。
出典︓https://www.diageo.com/en/our-business/where-we-operate/north-america
Heineken N.V. (ハイネケン)
オランダのアムステルダム市に本社を置く世界有数のビール製造メーカー。総売り上げはアンハイザーブッシュ社に次ぐ、世界第2位である。アメリカには1946年進出。アメリカ本社はニューヨーク州ホワイトプレーンズ市にある。⻄海岸担当のサンフランシスコ支社もある。製造は世界39か国40以上の醸造所で製造されている。
1933年にアメリカの禁酒法が解除された後、海外から輸入された初ビールがハイネケンであった。アメリカへの輸出はその後の4年間で約6倍にもなったという。
取り扱いビールブランドはハイネケンの他にメキシコのテカテが最大。その他にオランダビールのアムステル、オーストラリアビールのフォスターズ、ジャマイカのレッドストライプなど、300以上のビールブランド・サイダーブランドを扱う。
出典︓https://www.heinekenusa.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。