今回は、アメリカのカフェ・スイーツ業界に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要スイーツ・カフェ運営会社9選〜ローカル編〜
Starbucks Corporation(スターバックス)
1971年、ワシントン州シアトル市にて創業。いわゆるシアトル系コーヒーの元祖といわれる、世界最大のコーヒーチェーンである。2020年現在で、世界の83か国に32660店舗を展開している。そのうち16637店舗は直営店であり、16023店舗がフランチャイズ店舗である。アメリカでの従業員数は111000人、アメリカ以外の全世界では142000人の従業員を抱える、世界規模の大企業である。
2020年度の世界総売り上げは235.18億米ドルで、カフェ業界売り上げで世界一位である。創業当時から家庭でも職場でもない「第3の空間」をコンセプトとし、無料Wi-Fiや電源などを完備。⻑居して注意されないカフェとして有名になった。
コーヒー関係以外、スイーツなども販売。持ち込みカップの使用も可能であり、さらに使用前後に洗浄もしてもらえる。アメリカではVenti(20USfloz)より大きいTrenta(30USfloz)もある。
出典︓https://www.starbucks.com/
Panera Bread(パネラブレッド)
1987年、ミズーリ州カークウッド市にて「セントルイス・ブレッド・カンパニー」が設立。1993年にAu Bon Pain Co.が買収。1997年に社名をPaneraに変更。公式情報では、パネラブレッドでの創業は1998年とされている。アメリカとカナダに2000店舗を超えるスイーツ・ベーカリー・カフェを運営している。
ベーグルなどのパンの他、ブラウニーやクッキーなどのスイーツが好評を得ている。また、コーヒーやエスプレッソなどのカフェ部門も充実している。2020年度アメリカでの売り上げはスターバックスに次ぐ2位で57.95億米ドル。北米の従業員数は140000人を超すという。
2014年からオンラインオーダーを開始。2017年には売り上げの26%以上をデジタル注文が占めた。2022年にはドライブスルーでAIを利用した対応システムをテストしている。2017年以降、食品メニューに人口着色料や人工甘味料、防腐剤などを使用していないと発表している。
出典︓https://www.panerabread.com/en-us/home.html
McCafé (マックカフェ)
1993年、オーストラリアのメルボルン市でテスト開始。通常のマクドナルドよりも15%多くの収益を上げたことで、全世界規模で展開することになった。オーストラリアとニュージーランドでは最大のカフェになった。アメリカには2001年、イリノイ州シカゴ市でスタート。2023年現在、世界に1300店舗を展開している。2009年以降、通常のマクドナルド店内でMcCaféブランドのコーヒーが販売されている。
2022年の収益は24億米ドル。2010年以降、スイーツの一部分として本物のフルーツを使ったスムージーがメニューに追加され、健康路線をアピールした。さらに2014年にはクラフト社と共同開発した豆・Kカップの商品を全米のスーパーマーケットで販売開始。
ダンキンドーナツをライバルとし、出社前にカフェインを少しだけ飲みたい消費者に手ごろな価格でコーヒーを販売している。メイン州やミシガン州などでは、業界1位のスターバックスよりもMcCaféの店舗数の方が多い現象も起きている。
出典︓https://www.mcdonalds.com/us/en-us/full-menu/mccafe-coffees.html
Dunkinʻ Donuts LLC, ( ダンキンドーナツ)
1948年マサチューセッツ州ボストン市郊外にドーナツとコーヒーを販売するレストラン「オープン・ケトル」がオープン。1950年に社名を「ダンキン・ドーナツ」に変更。1955年からフランチャイズを他社に売却している。1960年代には既に北米内に100店舗と発展しているが、朝食を提供する店舗もあれば、ドーナツとコーヒーのみの店舗もあるなど、店舗差が激しかった。
1980年代初頭まで、レストラン形式の店舗が多かったため、対面カウンターがあったりカップが陶器であったりしたが、後にセルフサービスと発泡スチロールカップに変更されている。2022年の収益は13億米ドル。世界42か国に11300店舗を持つ巨大カフェチェーンに成⻑している。北米ではドーナツ以外のスイーツも扱うことを意識して、社名から「ドーナツ」を外している。
業界1位のスターバックスで提供されるコーヒーよりも安価で提供されている。セントラルキッチンスタイルでどの店舗でも同じ味・提供スピードということを競争力としている。
出典︓https://www.dunkindonuts.com/en
Peetʻs Coffee (ピーツコーヒー)
創業者のアルフレッドピートの父親がコーヒーの卸売りと焙煎を商いとしていた。18歳になったアルフレッドはロンドンで紅茶とコーヒーの会社であるトワイニングに入社する。1955年にサンフランシスコ市に移り、1966年にUCLAバークレー校キャンパス近くに独立して店舗を構えた。当初は豆の販売だけであった。
スイーツの販売はほぼしておらず、コーヒーにのみ焦点を絞った商売である。それゆえ「アメリカのグルメコーヒーのゴッドファーザー」とまで称されるほどになった。全米11州に200を超える店舗を展開中。中国の上海に1店舗のみ海外拠点を持つ。スターバックスよりも高価なコーヒーであり、また狭い店舗であり、専門職人による「愛好家のためのコーヒー」を目指している。
従業員数は2023年現在約5000人。収益は10億米ドル。業界8位にランキングされている。空港や大学などにフランチャイズ店舗を持ち、味に定評のあるコーヒー豆は全米14000のスーパーなどで購入が可能。
出典︓https://www.peets.com/
Dutch Bros. Coffee(ダッチブラザーズコーヒー)
1992年にオレゴン州グランツパス市で創業のコーヒーチェーンである。同社の最たる特徴はドライブスルー方式である点。車社会のアメリカを象徴するコーヒーチェーンともいえる。2022年現在、全米14州に671店舗を持つ。2018年の事業計画では、5年間で800店舗展開を目指すとあった。
ホットとアイスの、様々な飲み物を提供するドライブスルーカフェであり、スイーツはアメリカ人が好む「マッフィントップ」と「グラノラバー」のみ。それでいて2022年の収益は7億米ドル以上という。これは同社の本社があるオレゴン州の都市・郊外で独占的に生み出されているという。2022年の業界ランキングでは9位と大健闘している。
1999年からフランチャイズ形式を採用。継続率は97%と、十分なネームバリューがあると証明されていたが、2017年からは直営店のみの展開に切り替えている。2021年では264店舗がフランチャイズで運営され、残りは会社所有の店舗であった。
出典︓https://www.dutchbros.com/
Caribou Coffee Company(カリブーコーヒー)
1992年にミネソタ州エディーナ市で創業。現在は同州のブルックリンセンター市に移転している。創業者のジョンパケットはボストンで経営コンサルタントをしていた。夫婦でアラスカを訪れていた時、コーヒー会社を始めることを決意した。ジョンはミネソタに転居し開店の準備、妻はボストンのゼネラルモータースに勤務して生活を支えた。
全米で273店舗を展開、クェートやトルコなど9つの国際市場に282のフランチャイズアウトレットを持つ。また、全米50州のスーパーや量販店などで製品が購入できる。さらにホテルや遊園地などとも提携しており、オンライン販売も順調に展開している。
シアトル系の濃い味とは対照的に、浅煎りのコーヒーとフルーティーなフレーバードリンクの提供をしている。また朝昼食メニューやスコーンやマフィンなどのスイーツも提供している。2021年の年間収益は2億米ドル以上。小規模な店舗にいる7000人の従業員は顧客との会話を重視するバリスタとして、十分な社内教育を受けているという。
出典︓https://www.cariboucoffee.com/
Sheetz (シーツ)
1952年創業。コンビニとカフェのチェーン店である。1980年代以降、ほぼすべての店舗で24時間営業である。また、ガソリンスタンドを併設している。大きな幹線沿いの店舗では⻑距離トラック運転手のためにシャワーやコインランドリーを備えた店舗もある。本社はペンシルバニア州アルトゥーナ市。2023年度現在で全米に679店舗を展開し、従業員は19700人を超すという。
カフェ部門は一般的なコンビニコーヒーより高級な豆を使った高級なコーヒーを提供している。社員教育もバリスタとしての教育を受けており、エスプレッソバーまで備えている店舗がある。2021年度の収益は72億米ドルであった。フランチャイズではなく直営店のみである。現在も中⻄部へと店舗数を増やしている。
現在のカフェやバーガーショップなどで一般的になっている「MadeToOrder」方式は、同社が初めて取り入れたとされる。スイーツは一般的なドーナツやアイスクリームなどを提供している。
出典︓https://www.sheetz.com/
Shipley Do-Nuts (シプリードーナツ)
テキサス州など、主に南部367店以上のフランチャイズ店舗(2021年現在)を持つドーナツ会社である。本社はテキサス州ヒューストン市。1936年、ローレンス・シブリーによって創業された。いつでも出来立ての熱々のドーナツを提供することを、今現在も店のモットーにしている。アメリカの12州170の都市にしか出店していないにもかかわらず、アメリカ国内カフェ業界では5位にランキングされている。
従業員数は2021年現在で3000人。収益は1.6億米ドルであった。テキサス州では最も有名なドーナツショップであり、カフェである。スイーツメニューとして、定番のドーナツが20種類以上あり、他に揚げジャムパンのようなFillsが10種類以上、10種類以上のアイスケーキなどがある。反面、コーヒーの種類はアイスとホットの2種類しかない。
現在の同社のスローガンは「暮らしを美味しくする」としている。ロゴマークにも、その文面が入っている。
出典︓https://shipleydonuts.com/
アメリカの主要スイーツ・カフェ運営会社2選〜日系編〜
USA.K.MINAMOTO.CO.INC(ミナモトキッチョウアン)
岡山県に本社を置く和菓子専門店の宗家源吉兆庵のアメリカ支店である。1994年に米国法人を設立。前年にはシンガポール、台湾、イギリスにも進出している。1995年に日本人の多く住むニュージャージー州フォートリー市にある大型スーパーマーケットのヤオハン(現ミツワ)の敷地内に初出店。その他、海外には全部で8か国で約30店舗を展開している。現在、アメリカにはニューヨークなどに、全部で10店舗を展開している。
和菓子をアメリカのスイーツに加えようと、各店舗で啓蒙活動をしている。季節ごとの店頭イベントをはじめ、オンライン販売では母の日やひな祭りなどのイベントに合わせた商品を紹介している。特にギフトボックスはアメリカ人の贈答品にあうようにパッケージングされている。また、すべての商品は日本国内自社工場で製造され、空輸されている。
日本国内の旗艦店は銀座にありカフェを併設しているが、海外店舗にはイートインできるカフェブースを設置していない。
出典︓https://www.kitchoan.com/
Beard Papaʻs (ビアードパパ)
アメリカ15州に42店舗(2023年現在)を展開する、日本初のシュークリーム店のチェーン店である。英語で「シュークリーム」は「靴磨き用のクリーム」を指すため、一般には「クリームパフ」という。日本国内には250店舗以上、世界には15か国に400店舗以上を展開している。日本国内では1999年に創業。海外には2001年香港点が初出店。
アメリカ本社は日本人が多く住むカリフォルニア州トーランス市にある。アメリカ第1号店はニューヨークだった。アメリカでも日本と同じように「8種類のシュー」と「3種類のフィリング」を組み合わせて注文ができる。シュークリームの他に「クレームブリュレ」「フォンダン」「チーズケーキ」を販売している。オンラインでの注文も可能。
アメリカでシュークリームが一般的になったのは最近のこと。ここ20年で一般的なスーパーでも見られるようになった。それでも日本人による繊細な味の表現・シューの絶妙なクリスピーさはなかなか他では見られない。唯一の障害は価格であり、スーパーで買えるシュークリームの1.5倍の価格となっている。
出典︓https://www.beardpapas.com/
アメリカの主要スイーツ・カフェ運営会社3選〜外資系編〜
Lavazza Premium Coffees Corp.(ラバッツァプレミアムコーヒー)
1895年にイタリアのトリノで創業した、老舗のコーヒー会社である。イタリアのコーヒー愛飲家2000万世帯のうちの1600万世帯が同社のコーヒーを選んでいるともいわれる。2019年のグループ全体の収益は22億ユーロ。従業員数は3800人とされている。世界90か国以上で事業展開している。異なる種類の豆を合わせる「ブレンド」を始めたのが同社だといわれている。
北米支店はニューヨークにあったが、世界同時テロ事件で喪失。現在はフィラデルフィア州ウエストチェスター市にある。カフェ「IlCaffèdiRoma」および「Espression」の経営はアメリカ国内では数店舗しかない。売り上げのほとんどはスーパーなどで購入できるパッケージ製品から得られている。特に高級ホテルに卸している製品は高いイメージを作り上げ、ニッチな消費者へのアプローチを成功させている。
Kカップなどはサブスクなどにも対応している。スイーツの取り扱いはオンラインでも実店舗でも扱っていない。
出典︓https://www.lavazzausa.com/en
Tim Hortons Inc.(ティムホートンズ)
1964年カナダのオンタリオ州ハミルトン市にて創業。創業者はプロホッケーリーグでも活躍したティム・ホートンである。現在はカナダ最大のカフェ・ファストフードチェーン店になっており、カナダ国内に役3000店舗、アメリカ国内に600店舗以上を運営している。2022年の年間収益は26億米ドル以上。全従業員は70000人以上とされている。
1995年にハンバーガーチェーンのウェンディーズと合併。この合併により、アメリカでの事業展開が急速に発展した。メニューはコーヒーとドーナツを中心にしており、簡単な朝食メニューも用意している。例えばスターバックスは、スイーツも販売するコーヒーチェーンとされているが、ティムホートンは、逆のコンセプトを持つ。ドーナツなどのスイーツをメインにし、コーヒーも買ってもらうというコンセプトである。価格帯も安いダンキンと高級なスターバックスの中間を狙って存在している。
カナダでの同社の存在は大きく、マクドナルドの規模を超え、カフェとしてはスターバックスの9倍以上の店舗を展開している。
出典︓https://www.timhortons.com/
Costa Coffee(コスタコーヒー)
1971年、イギリスのダンスタブル市に創業したカフェカナダのオンタリオ州ハミルトン市にて創業。コーヒー焙煎所を設立し、ケータリング業者にコーヒーを卸していた。1995年までにイギリス国内に41店舗を構えるようになり、その後、イギリス最大のホテルおよびカフェ業者であるウィットブレド社に買収された。ブランドを維持しながら2009年には1000店舗を越した。2019年、コカ・コーラ社が買収した。
2023年現在、31か国に3401店舗を運営する企業に成⻑している。従業員数は18412人を超すという。アメリカでの同社の売り上げは、スーパーなどで購入できる豆や缶入りコーヒーの売り上げがほとんどである。直営店はアメリカ国内に6店舗しかない。その他、自動販売機による売り上げも大きく、病院や大学、空港などに置かれているのを見ることができる。
実店舗でのスイーツの取り扱いは店舗により違うが、クッキーやマフィンなど簡単なものしかない。
出典︓https://us.costacoffee.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。