ベトナムの化粧品から自動車産業まで、多岐にわたる産業が躍進しています。化粧品市場は急速な成長を遂げ、日本や韓国製品の人気が高まっています。一方、自動車市場では新型コロナウイルスの影響で一時的な減少が見られましたが、バイクは依然としてベトナムの主要交通手段としての地位を保ちつつあります。
この記事では、統計データを用いてベトナムの製造業(食品以外)業界の最新情報をお届けしていきます!
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ベトナムの化粧品事情〜統計データ〜
ベトナム化粧品産業の売上推移
ベトナムの政府系団体(中央ベトナムマーケティング協会)のデータでは、ベトナムの化粧品産業の年間売上額は2017年~2019年にかけて増加を続けていたが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で減少した。しかしその後、2021年は回復し過去最高を記録した。所得増加等により消費者需要は増加し続けており、ベトナムの化粧品産業は今後も発展が見込まれている。
健康や美容に問題や関心を持つ若い中流階級が爆発的に増加しているため、ヨーロッパや日本を含めたアジアの大手化粧品メーカーがベトナム市場に参入している。ベトナムでは外見を重視する傾向が高まっており、美容製品やスキンケアサービス(スパ、皮膚科クリニック)で多く出費する消費者が増えている。
出典:BUSINESS AND E-MARKETING MAGAZINE
ベトナム女性のフェイシャルスキンケア製品所有率
ベトナムの政府系団体(中央ベトナムマーケティング協会)のデータによると、ベトナム人女性の64%が韓国製のフェイシャルスキンケア製品を所有していた。日本製の化粧品の所有率は37%で第2位、アメリカ製(20%) 、ヨーロッパ製(19%) 、シンガポール製(7%未満)と続いた。
韓国は美容及び化粧品の分野の先進国であり、ベトナム国内の消費者は韓国製の化粧品や美容動向の影響を大きく受けている。加えて、ベトナムでもより自然な成分を使用した安全な製品を選ぶ消費者が増えており、大手以外の日本の化粧品ブランドの人気も高まっている。
様々な研究により、ベトナム人の肌は日本人や韓国人の肌に似ていることが分かっているため、日本及び韓国の製品はその他の国の製品よりもベトナム人に適しているケースが多い。また、アメリカ及びヨーロッパの製品は非常に高価であるため、ベトナム人の消費者の購入割合は低い。
出典:BUSINESS AND E-MARKETING MAGAZINE
ベトナムの美容事情〜統計データ〜
エリア別美容市場規模
ベトナム政府機関(ベトナム統計科学研究所)のレポートでは、ベトナム南部エリアは国内美容市場の67%以上の美容製品を消費しているメイン市場で、次いでベトナム北部エリアは約30%、中部エリアは約3.13%を占めている。
また、ベトナム政府(統計総局)の統計データでは、南部エリア、特にホーチミン市の生活水準はベトナム国内のトップであり、美容を含めたあらゆる産業が最も発展しているエリアである。そのため、世界中の主要な化粧品ブランドの店舗の多くがホーチミン市内に集積しており、流行に敏感な消費者の需要に応えている。
北部エリア、特にハノイ市は南部エリアと比較すると生活水準が低いため、美容や化粧品に対する消費者の需要はホーチミン市よりも低く、大半の大手美容・化粧品ブランドは最初にホーチミン市に店舗を構え、その後徐々にハノイに展開するケースが多い。中部エリアは生活水準が最も低いエリアであり、美容や化粧品に対する需要は非常に小さい。
出典:Institute of Statistical Science
ベトナム人女性の美容・化粧品の月間支出額
ベトナム政府団体(中央ベトナムマーケティング協会)のデータでは、ベトナム人女性が1ヶ月当たりに美容・化粧品に消費する金額は月収の約8.7%~14%と言われている。2020年のデータでは、30万~50万VND/月が一般のベトナム人女性が美容製品に消費する金額であった。
ベトナム政府(統計総局)の統計データでは、ベトナム人女性の平均月収は570万VND程度であった。また、ベトナム人女性の場合、収入が多いほどより多くの金額を美容・化粧品に費やす傾向があると言われている。
ベトナムの美容・化粧品市場は、ベトナムよりも発展しているASEAN諸国等と比較すると市場自体は小さいが、急速に成長しており、世界の主要な美容・化粧品ブランドはベトナム市場に非常に注目している。
出典:BUSINESS AND E-MARKETING MAGAZINE
ベトナムのトイレタリー(日用品)事情〜統計データ〜
トイレタリー製品の生産量推移
ベトナム政府(統計総局)のデータでは、ベトナムのトイレタリー市場のシャンプーやコンディショナー、歯磨き粉等の生産量は2017年~2020年にかけて減少傾向にある。一方、シャワージェルや洗顔料、洗濯洗剤及びその他の洗浄剤の生産量は急速に増加している。
ベトナム市場の中でもトイレタリー業界は最大かつ最も魅力的な分野の1つと言われており、市場価値は約31億USDに達している。今後数年間で洗濯洗剤及びその他の洗浄剤セグメントは大きく成長し、トイレタリー産業の中でも大きな割合を占めるようになると言われている。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ベトナムのトイレタリー業界は一般消費財と比較すると大きな影響を受けた。しかし、経済発展や所得の増加に伴いパーソナルケア全般に関する需要が高まっているため、今後も大きな成長が見込まれている。
出典:Statistical Yearbook of Vietnam
トイレタリー産業の企業別市場シェア(2019年)
政府系団体(ベトナム経済学会)のデータでは、ベトナム国内のトイレタリー産業は外資系企業が非常に高いシェアを獲得しており、2019年時点で特にユニリーバ社が55%、P&G社が16%の市場シェアを獲得している。残りの29%はNET、Lix、Vico、Dai Viet Huongなどのローカル企業がシェアを奪い合っている状況である。
ただし、上記ローカル企業の主な事業は外資系企業の製品の生産委託等となっている。ベトナムのトイレタリー市場はユニリーバ社とP&G社の2大企業に加えて、幾つかのローカル企業が生産している製品が市場に供給され、認知されている状況である。
近年はユニリーバ社とP&G社以外の外資系企業に加えて、ローカル企業も独自商品を開発して市場シェア獲得を目指しているが、市場シェアに大きな変化は起きていない状況である。
出典:DOANH NGHIỆP & KINH DOANH
ベトナムの文房具・事務用品事情〜統計データ〜
教員数及び学生数の推移
ベトナム国内で文房具を購入する顧客の大半は教師及び学生であるため、ベトナム国内での文房具の購入量は学生数の変動の影響を特に受けやすい。ベトナムでは一般的に毎年8月~9月頃が新学期が始まる時期で、文房具の購入量が最も多くなる。
ベトナム政府(統計総局)のデータでは、文房具の購入量に大きく影響する学生数は過去数年間で増減しているが、直近では22,722千人であった。また、教師数も増減を繰り返しており、直近では1,169千人であった。
新型コロナの影響などでベトナムの教育機関でもオンライン化が進んだが、文房具には依然として学校での学習や教育で使用できるアイテムが充実している。文房具メーカーも学生のニーズに応じた多種多様な文房具を市場に投入している。
出典:Statistical Yearbook of Viet Nam
ベトナム国内の企業数推移
文房具や事務用品は、学校の次に企業で購入される量が多い。そのため、ベトナム国内の企業数が増加すると文房具や事務用品の需要も高まると言われている。ベトナム政府(統計総局)のデータでは、ベトナム国内の企業数は2017年時点で654,633社であったが、2021年時点では857,551社まで増加した。
ただし、テクノロジーの発展に伴いパソコンやスマートフォンなどの電子デバイスがオフィスに導入されており、紙やペン、ノートなどの文房具や事務用品を代替している。
近年、ベトナムでは、企業が文房具や事務用品を自社ブランドのプロモーションに利用している。ノートやペン、リュックサック、バッグなどに社名やロゴを印刷し、取引先にプレゼントしたり、社内で利用したりするケースが増えている。
出典:General Statistics Office
ベトナムの自動車事情〜統計データ〜
年間自動車生産台数推移
2020年末時点ベトナム国内で乗用車やトラック、特殊自動車などの自動車を製造又は組み立てる企業は約40社ある。ベトナム政府(統計総局)のデータでは、2017年から2019年までの年間自動車生産台数は240.9千台から287.1千台に増加した。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020年の年間自動車生産台数は257.6千台に減少した。ホンダやフォード、トヨタなどの海外の大手自動車メーカーのベトナム生産拠点では、2020年3月以降に生産を一時停止するケースも発生した。
また、ベトナム国内で製造する自動車用部品の輸入量等も大幅に減少した。2021年は新型コロナウイルスの感染拡大の抑制により、自動車生産台数は増加し、307.4千台であった。
出典:General Statistics Office
完成車輸入金額推移
ベトナム政府(統計総局)のデータでは、2016年時点でベトナムに輸入された完成車金額は2,414億USDであったが、2017年は2,261億USDに減少した。ベトナム政府(税関総局)の2017年のレポートでは、ベトナムに輸入される自動車の50%はタイやインドネシアなどASEAN諸国から輸入されていた。
2018年は、完成車の輸入規制の強化により自動車販売が低迷した影響で、1,834億USDに大きく減少した。2019年は、直近5年間(2015~2019年)で最大の自動車輸入量を記録した年になり、完成車輸入金額は2,335億USDに達した。
2019年は、商用車及び自家用のどちらでも高いニーズがある9人乗り以下の乗用車の輸入量が多くなった。2020年は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大等があり、ベトナムでも大きな影響が出たが、完成車輸入金額は3,650億USDに急増した。
出典:General Statistics Office
ベトナムのバイク事情〜統計データ〜
バイク生産台数の推移
ベトナム政府(統計総局)のデータでは、ベトナム国内で生産されたバイクの台数が2017年は386万5千台、2018年は394万5千台、2019年は475万8千台と急増している。しかし、2020年のバイクの生産台数は328万5千台に急減した。
ベトナムの専門家の分析では、バイクは依然としてベトナム人が日常の移動で使用する主な交通手段ではある。しかし、大都市を中心に交通渋滞の深刻化等によりバイクの購入台数が徐々に減っていて、その影響でバイクの生産台数も減少しているとコメントしている。
また、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で移動するニーズが減少し、バイクの生産台数も減少したと思われる。2021年は引き続き新型コロナウイルスの感染拡大の影響などで、バイク生産台数は326万3千台に減少している。
出典:GENERAL STATISTICS OFFICE
バイク販売台数の推移
政府団体(中央ベトナム民間企業家協会)のレポートのベトナムバイクメーカー協会のデータによると、2017年のバイク販売台数は約330万台、2018は約340万台と増加していたが、2019年は約330万台に減少した。その後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等により、2020年のバイク販売台数は約270万台、2021年は約250万台に大きく減少した。
新型コロナウイルスの感染拡大以外にも、自動車や電動自転車等の普及による影響も大きいと言われている。2020年のバイク販売台数は大きく減少したが、ベトナムは依然としてインドや中国、インドネシアに次ぐ世界第4位のバイク販売量を誇る国である。
出典:DOANH NGHIỆP & KINH DOANH
ハノイ在住のベトナム人。名古屋大学で文部科学省奨学金の日研生として留学経験有り。日越の翻訳、通訳などが得意で、日本語教師の経験有り。ハノイで日系IT企業に入社後、主に総務・人事、日本親会社との取引業務を約3年経験し、その後長野県で日本企業で勤務。