アメリカの消費財メーカーは、コロナ後の景気回復や消費者需要の増加に支えられ、売上が堅調に推移しています。特に食品、家庭用品、個人ケア製品などが好調です。ただし、サプライチェーンの問題や原材料コストの上昇が利益圧迫の要因となっています。企業は価格転嫁やコスト削減策を講じて対策を進めています。
今回は、アメリカの主要消費財メーカーに焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要消費財メーカー10選〜ローカル編〜
The Procter & Gamble Company(プロクター&ギャンブル カンパニー)
1837年創業の、洗剤や化粧品などの一般消費財を製造販売する一般消費財メーカー。本社所在地は、創業の地でもあるオハイオ州シンシナティ。ウィリアム・プロクターとジェームス・ギャンブルが石鹸を販売することで、事業をスタートさせた。約170ヵ国で事業を展開している。マーケティングを重要視している企業として知られている。
5つのカテゴリー (ビューティー、グルーミング、ヘルスケア、ファブリック&ホームケア、子供・女性・ファミリーケア) に分かれており、多くの有名ブランドを保有している。2022年度の売上高において占める割合が高い順より、ファブリック&ホームケア (35%)、子供・女性・ファミリーケア (25%)、ビューティー (18%)、ヘルスケア (14%)、グルーミング (8%)である。各部門の主要ブランドは以下の通り。
グルーミング部門は、男性用かみそりのブラウンやジレット、女性用かみそりのヴィーナス。ヘルスケア部門は、オーラルケアのクレストやオーラル-B、のど飴のヴィックス。ファブリック&ホームケアは、衣料用洗剤のアリエル、バウンス、ダウニー、タイド、ホームケアのファブリーズ、食器用洗剤のカスケード。子供・女性・ファミリーケア部門は、紙おむつのパンパース、ペーパータオルのバウンティ、女性用生理用品のオールウェイズ。2022年度の販売高は801億8,700万米ドルで、対前年度比5%増。純利益は、147億1,300万米ドルで、3%増であった。
出典:https://us.pg.com/
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)
1887年にジョンソン3兄妹が創業した世界最大かつ最も多角的なヘルスケア製品を取り扱うグローバル企業。本社所在地はニュージャージー州ニューブランズウィック。従業員数は世界全体で約15万2,700人。バンドエイドなどの衛生製品を発明したことで有名。
Our Credo (我が信条) と呼ばれている企業理念・倫理規定が制定されており、企業の社会的存在意義が世の中で議論され始める前より事業運営の中核となっている。バンドエイド等のコンシューマーヘルス (主なブランドはバンドエイド、リステリン等)、医療用機器を取り扱うメドテック部門、ヤンセンファーマから成る医薬品部門に分かれている。メドテック部門は整形外科、外科、インターベンション治療、眼科から成る。
2022年度の売上高は949億米ドルで、前年度比1.3%増。純利益は179億米ドルで14.1%減であった。減益の主な原因は、為替によるものである。
出典:https://www.jnj.com/
Colgate-Palmolive Company(コルゲート・パーモリーブ・カンパニー)
ニューヨーク市に本社を構える日用品のグローバル企業。1806年にニューヨーク市でウィリアム・コルゲートが創業したデンプンや石鹸を販売するコルゲート&カンパニーと、1864年にB.J.ジョンソンが創業した石鹸を製造するパーモリーブ・カンパニーが合併してできた。
保有するブランドは、歯磨きペーストのコルゲート、食器用洗剤のパルモリーブ、ペットフードのヒルズ・ペット・ニュートリション、ハンドソープのソフトソープ等。歯磨きペーストは、全世界でシェア第1位。
2022年度の売上高は180億米ドルで、前年度対比3.0%増。特に、技術革新により歯のホワイトニング分野を伸長させており、過酸化水素5%配合の歯磨きペーストが急伸している。2022年度の売上高の43%を占めた。ECチャネルも2桁成長を遂げ、2022年度の全世界の売上高のうち14%を占めた。
出典:https://www.colgatepalmolive.com/en-us
Kimberly-Clark Corporation(キンバリークラーク コーポレーション)
1872年にデラウェア州で創業した紙製品を製造販売する多国籍企業。本社所在地はテキサス州ダラス。約4万5,000名の従業員を抱え、175ヵ国で事業を展開している。主な事業は、乳幼児用紙おむつや女性用生理用品などのパーソナルケア事業、家庭用ティッシュ事業、プロフェッショナル向け紙製品の3事業。
主なブランドは、トイレットペーパーのアンドレックス、乳児用紙おむつのハギーズ、ティッシュペーパーのクリネックスやスコット等である。事業展開する175ヵ国のうち80ヵ国でシェア1位あるいは2位を占めている。世界の4分の1の人口が、一日1製品はキンバリークラークの製品を使っている。
2022年度の売上高は202億米ドルで、対前年度比4%増。為替レートの変動により売上高を約4%減少させた。営業利益は26億8,100万米ドルと前年度よりわずかに増加した。
出典:https://www.kimberly-clark.com/en-us/
S.C. Johnson & Son, Inc.(SCジョンソン&サン Inc.)
1886年にサミュエル・カーティス・ジョンソンが創業した、ウィスコンシン州ラシーンに本社を構える日用品のグローバル企業。非上場の同族経営企業である。社名は創業者の名前に由来する。
主なブランドは、芳香剤のグレード、油凝固剤の固めるテンプル、家庭用洗剤のパイプユニッシュ、スクラビングバブル、カビキラー、虫よけスプレーのスキンガード、家庭用調理用品のサランラップ、ジップロック、ライフスタイルブランドのメソッド、メイヤーズなど。
ジョンソン&ジョンソンとは別会社である旨を、会社のFAQに記載している。非上場のため実績は公表されていないが、フォーブスの調査によると2022年度の売上高は111億米ドル。2021年度の110億米ドルよりわずかに成長した。
出典:https://www.scjohnson.com/enとhttps://www.forbes.com/companies/sc-johnson-son/?sh=659c19cb45d6
The Clorox Company(クロロックス カンパニー)
1913年創業の、カリフォルニア州オークランドに本社を構える世界的日用品企業。25の国と地域で事業を展開し、約9,000名の従業員を雇用している。主な保有ブランドは、漂白用洗剤のクロロックス、卓上用浄水器のブリタ、ゴミ袋のグラッドなどである。売上高の80%は、各カテゴリーで第1位あるいは2位の市場シェアを誇るブランドから生み出されている。
2022年度の売上高は71億米ドルで、前年度対比3%減あった。これは販売数量が18%減少したことによるもので、為替レートの好転により13%が相殺された。
売上で最も多い割合を占めるのが、37%のヘルス&ウェルネス部門。次いで28%の家庭用製品部門、18%がライフスタイル部門、17%が海外部門であった。企業責任への取り組みが広く認められており、多くの受賞歴がある。
出典: https://www.thecloroxcompany.com/
Church & Dwight Co., Inc.(チャーチ&ドワイト)
1846年創業のパーソナルケア製品、家庭用品、特殊製品などの日用品を製造販売するグローバル企業。本社所在地は、ニュージャージー州ユーイング。重炭酸ナトリウム (重曹) の製造メーカーで、重炭酸ナトリウムおよび関連技術をベースに開発された幅広い商品が特徴。
主要な14ブランドにより売上の85%を占めている。中核ブランドは、アーム&ハンマーで、衣料用洗剤やホームケア用品を広く展開している。アメリカのスーパーマーケットにおける日用品売場の86%がこのブランドの商品が占めている。また、衣料用漂白剤のオキシクリーンは、全米1位の洗濯補助剤である。
2022年度の売上高は53億7,600万米ドルで、対前年度比3.6%増。一方で、純利益は7億3,100万米ドルと、対前年度比3%減。すでに製品ポートフォリオの80%を値上げしているものの、インフレにより計画外の人件費、輸送費、原料費が発生し、利益が大幅に圧迫された。
出典:https://churchdwight.com/
Seventh Generation Inc.(セブンス ジェネレーション Inc.)
1988年創業の環境負荷の低いクリーニング製品、紙製品などを販売するライフスタイル企業。本社は、ヴィクトリア州バーリントン。2020年よりユニリーバの子会社となった。商品ラベルに全ての原料の詳細を記載し始めた企業の1社である。2025年までにすべての製品から有害物質を配合しないことを目指している。
取扱い製品は、ホームケア製品と乳幼児製品に分かれている。ホームケア製品は衣料用洗剤、住居用洗剤、トイレットペーパー等の紙製品、女性用生理用品など広くラインアップしている。乳児用製品は、紙おむつとおしりふきから成る。
ゼロ・プラスチック、持続可能な原料、公平なバリューチェーンなどをコミットメントとして掲げており、これに基づいた製品開発を行っている。気候インパクトレポートを毎年発行している。調査会社によると、2022年度の販売高は2億米ドル。
出典:https://www.seventhgeneration.com/ と https://www.zippia.com/seventh-generation-careers-125264/revenue/
Edgewell Personal Care Company(エッジウェル パーソナル ケア カンパニー)
2015年に世界最大の電池メーカーであるエナジャイザーホールディングスのパーソナルケア部門がスピンアウトして創業。パーソナルケア商品を販売するグローバル企業である。本社はコネチカット州シェルトン。
20ヵ国以上で事業を展開し、製品は50ヵ国以上で販売されている。従業員数は約7,000名。保有する有名ブランドは、男性用かみそりのシック、女性用カミソリのイントゥイション、日焼け止めのハワイアン・トロピック、生理用品のプレイテックスなどである。
2022年度の売上高は21億7,170万米ドルとなり、対前年度比4.0%増であった。調整後純利益は1億3,760万米ドル、対前年度比17.5%減であった。これは、主にインフレ圧力による原価の上昇と、買収したビリーの償却費の増加によるものである。
出典:https://edgewell.com/
3M Company(スリーエム カンパニー)
ミネソタ州セントポールに本社を構える、1902年創業の世界的化学品・電気素材メーカー。6万を超える商品が、家庭、産業、学校、病院などで利用されている。売上の3分の1は、5年以内に発明された製品となっている。70ヵ国で事業を展開し、200ヵ国で販売している。
事業領域は、エネルギー産業、自動車産業からヘルスケア産業、消費者向け商品まで非常に広い。消費者向け商品ブランドは、糊付きメモのポストイット、糊・テープブランドのスコッチ、清掃用品のスコッチ・ブライト、外用テープのネックスケアなどである。
研究開発に力を入れており、2022年度の研究開発費は19億米ドル。2022年度の売上高は342億米ドルとなり、対前年度比-3.2%であった。これは事業売却による1%減と、米ドル高による為替換算による4%減の影響である。
出典:https://www.3m.com/
アメリカの主要消費財メーカー2選〜日系編〜
Kao Corporation(花王株式会社)
1887年創業の家庭用日用品・化粧品および産業用化学品メーカー。本社所在地は東京都。石鹸の製造販売から事業を始めた。研究開発をベースにした商品開発に注力している。1934年に家事全般について科学的アプローチをする研究施設を設立している。
1960年代より海外市場へ展開しており、海外売上比率は、1990年には15.9%だったが、2022年には45.4%と3倍になった。そのため、グローバルにおける社員数は2000年に1万9,068人だったが、2022年は3万5,411人と約1.9倍になっている。
アメリカでは、ヘアケア、洗顔料、制汗防臭剤、ハンド&ボディローションの成長が継続している。2022年度の売上高は1兆5,551億円で、前年度対比+9.3%。営業利益は1,101億円で、23.3%減であった。これは、原材料の高騰の影響が最も大きく、アメリカにおいては物流混乱による機会損失や、インフレによる消費減速による。
出典:https://www.kao.com/global/en/
Milbon Co., Ltd.(株式会社ミルボン)
1960年に大阪で創業したプロフェッショナル向けヘアケア・ヘアメイクアップ製品の製造販売会社。現在の本社所在地は、東京都中央区。
世界20ヵ国で展開しているメインブランドは社名と同じミルボン。アジア、北米、ヨーロッパで伸長している。2004年にニューヨークにMILBON USA, INC.を設立し、海外展開をスタートさせた。2022年度の売上高は452億3,800万円と、対前年度比10.7%増であった。営業利益は、75億5,100万円で6.6%増であった。カラー剤とヘアケアが伸長したが、原料高により営業利益率は低下した。
米国での2022年度の売上高は13億2,800万円となり、現地通貨ベースでは22.6%も増加している。一方、営業利益は1億6,800万円の赤字である。現地代理店との関係強化の結果、販売先数が拡大している。ヘアケア商品ラインのグローバルミルボンが特に好調である。日本国内の研究所の他に、アメリカ、タイ、中国に研究所を設立し、各地域に合わせた製品開発を行っている。
出典:https://www.milbon.com/en/
アメリカの主要消費財メーカー2選〜外資系編〜
Unilever PLC(ユニリーバ PLC)
イギリス・ロンドンの本社を構える日用品・食品の大手グローバル企業。1930年に食用マーガリンを製造販売していたマーガリン・ユニと、石鹸の製造販売をするリーバ・ブラザーズが合弁して設立された。100ヵ国で12万7,000名の従業員を雇用し、世界中で280ヶ所の工場を運営している。
マーケティングに力を入れており、2022年度は78億ユーロをマーケティング施策に投資した。世界の消費財ブランドのトップ50のうち14ブランドがユニリーバが保有するブランドである。保有するブランド数は400以上。主なブランドは、パーソナルケアのダヴやラックス、ライフスタイルブランドのセブンス・ジェネレーション、洗剤のシフやオモなど。
2022年度の売上高は601億ユーロで対前年度比14.5%増であった。
出典:https://www.unilever.com/
Reckitt Benckiser Group PLC(レキット ベンキーザー グループ PLC)
1999年発足のイギリス・バークシャー州スラウに本社を構える日用品・医薬品・食品メーカー。レキット・コールマン社とベンキーザー社が合併して発足した。68ヵ国以上で事業を展開している。
保有するブランドは、自動食器洗浄機向け洗剤のフィニッシュ、ウェットティッシュ等の清掃洗剤・洋品のレイソル、脱毛剤のヴィート、おしゃれ着用洗剤のウーライト、ニキビ薬のクレアラシル、風邪薬のムシネックスなどである。フィニッシュとレイソルは世界第1位のシェアを持つ。
2022年度の売上高は145億ポンドで、対前年比7.6%増。営業利益は34億ポンドであった。売上のうち最も多いのは、医薬品で42%。次いで洗剤などの衛生用品で41%、栄養関連商品が17%である。経営指標のひとつとして環境負荷の低い商品の売上高の割合を設定しており、2022年度は24.4%であった。
出典: https://www.reckitt.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。