最近のアメリカのバイク業界では、電動とハイブリットバイク両方がトレンドです。カワサキがZ E-1やNinja E-1などの電動モデルを発表、初の量産型ハイブリッドバイクも展開しています。また、トライアンフやドゥカティがモトクロスバイクに参入し、プロレーシングチームを設立するなど、モトクロス市場にも注目が集まっています。
今回は、アメリカの主要バイクメーカーに焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要バイクメーカー8選〜ローカル編〜
Harley-Davidson (ハーレーダビッドソン)
ハーレーダビッドソンは、1903年にウィリアム S. ハーレーとアーサー、ウォルター、ウィリアム A. ダビッドソンによってウィスコンシン州ミルウォーキーに設立された。同社は、アメリカ国内だけでなくヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど世界のオートバイ市場においても重要なブランドの1つとして地位を確立している。
事業内容は、主に以下の3つのグループで構成されている。製品の設計、製造、マーケティング、販売するHDMC、融資および保険商品とサービスを提供するHDFS、電動バイクの設計、マーケティング、販売を担当するLiveWireがある。
第1四半期の収益は、2023年1789万ドルと、2022年1495万ドルから20%増加した。また、限定商品の販売や、ライダー向けのコミュニティによるイベントなど、特徴的な取り組みが多い。
出典:https://www.harley-davidson.com/us/en/index.html
Polaris (ポラリス)
ポラリスは、1954年に設立され、現在世界120カ国以上にサービスを展開し、16000人の従業員が在籍している。2022年の売上高は86億ドルとなっている。多数展開するブランドの一つにある、インディアンモーターサイクルはバイク事業において代表的なブランドであり、特に北米やヨーロッパ、アジア、オーストラリアなどの市場で規模と影響力を持っていると言える。
1901 年、ジョージ M. ヘンディーとオスカー ヘドストロームが、アメリカ初のオートバイ会社、インディアン モーターサイクルを設立した。本部はミネソタ州メディナにある。ポラリスが1998年にインディアンモーターサイクルを買収し、傘下のブランドとした。
インディアンモーターサイクルは、高級クルーザーバイクの設計、製造、販売を行っている。主要商品として、「Indian Chief」「Indian Scout」「Indian Chieftain」などがあり、アイコニックなデザインとクラシックな魅力で有名である。
出典:https://www.polaris.com/en-us/
ZERO MOTORCYCLES(ゼロ・モーターサイクルズ)
ゼロ・モーターサイクルズは、創設者であるニール・サイキによってアメリカのカリフォルニア州スコッツバレーに本社が設立され、電動オートバイの設計、開発、製造、販売する企業である。世界各国に展開しており、主要な市場としてアメリカをはじめ、ヨーロッパ(特にドイツ、フランス、イギリスなど)、アジア(特に日本、台湾、韓国など)などが挙げられる。
主要製品として、Z-Force® モーターがある。効率、出力、コンパクトなサイズを最適化するために、ゼロから開発された。Z-Force® モーターは内部永久磁石 (IPM) 設計を採用していることにより、パフォーマンスを大幅に向上させ、より高い持続的な最高速度を可能にした。
ゼロ・モーターサイクルズは電動バイクの世界的リーダーであり、同じ業界をリードする電動パワートレインシステムを一部の商用パートナーに提供している。2020年、ポラリスと10年間のパワースポーツ業界独占パートナーシップを締結した。
出典:https://zeromotorcycles.com/
Lightning Motorcycles (ライトニング・モーターサイクルズ)
リチャード・ハットフィールドによって2006年に設立され、電動バイクの設計、開発、製造を行っている。高性能で革新的な電動バイクの製造に特化しており、スポーツバイクやツーリングバイクなどを提供している。
主力製品にある代表的なモデルは「Lightning LS-218」であり、世界で最も速い量産電動バイクとして認知されている。また、電動バイクの課題にあった充電時間についても改良を重ね、10分で80%まで充電できる超高速充電システムを開発した。これは競合他社より5倍以上の速さである。
2008年、最初のリチウム電池駆動の電動 ATV を開発した。また、2010 年には第1回北米ゼロエミッション選手権で優勝し、2011年には時速215.907マイルという陸上速度の世界新記録を樹立し、時速200マイル以上の最高速度を達成した初の電動バイクとなった。2022年の収益は471,977ドルであり、2021年の収益である418,405ドルと比較すると増加している。
出典:https://lightningmotorcycle.com/
CSC Motorcycles (CSCモーターサイクルズ)
CSCモーターサイクルズは2002年カリフォルニア州アズサに設立され、モーターサイクルの設計、開発、販売を行っている。事業内容は、リーズナブルな価格帯のアジアンモーターサイクルの輸入と販売である。2015 年以来、世界的に知名度がある中国の大手モーターサイクルメーカーのZongsheと提携して、輸入した高品質な中国製モーターサイクルを提供している。
主要製品である代表的なモデルには、「CSC RX3」「CSC TT250」「CSC SG250」などがある。特に、「CSC RX3」は、最高速度が時速134マイルで、時速 110 マイル以上で高速道路を快適に走行できる。また、軽量なのでオフロードトレイルでも移動でき、一人でも簡単に持ち上げることができる。
CSCモーターサイクルズはリーズナブルな価格と性能のバランスを重視し、日常の通勤や冒険に適したモデルを提供している。近年は、アジアンモーターサイクルの輸入販売において独自のポジショニングを築き、注目されている。
出典:https://cscmotorcycles.com/
Cobra Motorcycles (コブラモーターサイクルズ)
コブラモーターサイクルズは、アメリカのカリフォルニア州に本社を置いており、創業者のジム・ファークナーによってモーターサイクルメーカーとして1993年に設立された。日本でも高い知名度があり、輸入・販売されている。
主要製品として、カスタムチョッパーバイクやスポーツバイクを製造し、フレーム、エンジン、サスペンションなどのコンポーネントの大部分は自社で設計、製造している。1993 年の設立以来、 300 以上の国内タイトルを獲得し、競技用オフロードモーターサイクルを製造する唯一のメーカーです。
特に、コブラモーターサイクルズのチョッパーバイクは、その個性的で斬新なデザインと力強いエンジンパフォーマンスで注目を集めている。これらのバイクはカスタムバイクショーなどで賞を獲得しており、愛好家の間で非常に人気がある。
出典: https://cobramoto.com/
CHRISTINI (クリスティニ)
クリスティーニテクノロジーは、1997年ペンシルベニア州フィラデルフィアに設立され、3つの部門でオールホイールドライブ(AWD)のモーターサイクルの設計、開発、製造を行っている。現在、カスタム AWDバイクをアメリカおよび他の 20 か国以上で販売している。
Christini EV, Inc. は、低音特性、航続距離の延長、高品質、およびパフォーマンスに重点を置き、環境に配慮した製品を開発している。Christini Technologies, Inc. は、全輪駆動オートバイを製造している。また、国際レースや X ゲームに出場しており、米軍にオートバイ、電動自転車、ハイブリッド ATVを供給している。Christini Accessories Group, LLC は、革新的な機械式トラクションコントロールシステムを使用する世界で唯一AWD自転車のメーカーである。
主要製品として、クリスティーニ AWDミリタリー、ビッグホイール、450Eなどがある。2011年にはアメリカ国境警備隊は CHRISTINI AWD プラットフォームを作戦に採用し、2015年にはカリフォルニア大気資源委員会のAWD450DSオートバイの承認を取得した。
出典:https://www.christini.com/
CURTISS (カーチス)
カーチスは2016年にアメリカのアラバマ州ハンツビルに設立された。創業者のマット・チェンバーズが率いるカーチスは、高性能かつ独創的なデザインを持つ電動モーターサイクルの製造・販売を行い、独自のポジションを築いている。もともとアメリカのオートバイと航空のパイオニアであるグレンハモンドカーチスによって1902 年に設立されたが、2016年にチェンバーズ氏とアメリカのロードバイク専門家の小規模チームによって再結成され、現在に至る。
1907年、グレンはエキゾチックなV8オートバイを時速136.36マイルの速度で操縦し、二輪車で初めてこの速度を達成した「世界最速の男」の称号を獲得した。また、2023年、カーチスはアーキテクチャオペレーティングシステムに対してアメリカ特許第 11,634,191 号を取得した。
カーチスは、2024年から純キャッシュフローを獲得し、2028年には 5,000万ドル以上の売上高で利益を増加させ、EBITDAが1,500万ドルを超えると予測している。
出典:https://www.curtissmotorcycles.com/
アメリカの主要バイクメーカー2選〜日系編〜
Kawasaki Motors Corp(カワサキモータースコーポレーション)
1966年にシカゴに設立され、現在は、アメリカ国内だけでなく、世界中のほとんどの主要都市に 50以上の製造工場、流通センター、マーケティングおよび販売本部などの拠点を構える多国籍企業である。また、従業員数は480人、ディーラー1500人以上が在籍し、年間収益は16億ドル以上になる。
主要商品として、ベストセラーのスポーツバイクNinja®、クラシックなクルーザーバイクVulcan®、頑丈な ATV および Mule™ Side x Side 車など、高速性能やデザインに優れた代表的な製品がある。
また、KAWASAKIの技術者でもあるジム・ディーハンは、カリフォルニア州ウィロースプリングで新しくリリースされた「サムライ250㏄A1」で、アメリカで最初のロードレースに参加し、優勝した。その他にもこれまでリリースされたバイクで優勝した記録が多く残っている。
出典:https://www.kawasaki.com/en-us/
Honda (ホンダ)
1949年、共同創設者である本田宗一郎と藤澤武夫とともに本田技研工業株式会社が設立され、「ドリーム」D型オートバイと名付けた最初のオリジナル設計・開発製品を発表した1959 年に本田技研工業株式会社初の海外子会社として、カリフォルニア州ロサンゼルスにアメリカ初の店舗をオープンした。
1969年、若者を中心にミニバイクが普及したことにより、100万台目のオートバイの販売に成功した。また、気筒ホンダ CB750 の導入により、主流のオートバイに影響を及ぼした。2012 年に業界大手の出版物が CB750 を「世紀のモーターサイクル」と名付けたこともある。
2022年時点で、バイク事業では、生産能力2000万台/年、販売店3万店、生産台数4.4億台となっている。燃費改善とカーボンニュートラル燃料の活用、電動化など、環境に配慮した設計や開発の取り組みも行っている。
出典:https://www.honda.com/
アメリカの主要バイクメーカー2選〜外資系編〜
DUCATI (ドゥカティ)
ドゥカティは、1926年にモーターサイクルの製造・販売する企業として、イタリアのボローニャに設立された。世界中に10 の子会社を持ち、世界90か国に797のディーラー・ネットワークを展開している。そのうちの21か所は、2022年の上半期にオープンした。
主要な市場としては北米(アメリカおよびカナダ)、ヨーロッパ(特にイタリア、ドイツ、イギリスなど)、アジア(特に日本、インド、タイなど)などが挙げられる。また、北米市場担当として、1982年にドゥカティノースアメリカが設立された。主要商品として、「Ducati Panigale」「Ducati Monster」「Ducati Multistrada」などの代表的なモデルがある。独自のイタリアンスタイル、洗練されたデザイン、高品質・高性能なスポーツバイクやスーパーバイクを提供している。
2022年上半期の売上高は、前年同期の5億1,400万ユーロから5.4%増となる5億4,200万ユーロとなっている。これは、上半期としては過去最高の数値となっている。
出典:https://www.ducati.com/ww/en/home
KTM (ケーティーエム)
KTMは、1934年にオーストリアのマティゴーフェンで設立され、オートバイ、モトクロスバイク、エンデューロバイク、スーパーモトバイクなどの製造・販売を行っている。また、電動モーターサイクルの分野でも注目を集めており、環境にやさしいモビリティにも取り組んでいる。
KTMは世界各国に展開しており、アジア、ヨーロッパ、北アメリカなど世界中でオートバイの販売とサポートを提供している。また、アメリカのオハイオ州アマーヘスにある子会社KTM North Americaは1992年に設立された。世界中の40の販売子会社、中国とフィリピンの合弁事業、さらに2,900を超えるディーラーや輸入業者をサポートし、総勢6,000人を超える従業員が在籍している。
売上高25億ユーロを超えるヨーロッパ最大のオートバイメーカーで、ヨーロッパで11.8%、アメリカで9.4%の市場シェアを誇っている。また、KTMは320以上の世界選手権タイトルを獲得してきた。
出典:: https://www.ktm.com/en-int/racing.html
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。