アメリカ人に最も好まれているホテルブランドは「マリオット」、最高級とされるのは「リッツ・カールトン」です。カジノホテルやスパホテルなどの区別が曖昧になりつつあります。日本のホテルとは異なり、料金は部屋単位であり、食事が含まれないことが多いです。
今回は、アメリカの主要ホテルに焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要ホテル8選〜ローカル編〜
Wyndham Hotels & Resorts, Inc.(ウィンダム・ホテル&リゾーツ)
1981年、テキサス州ダラス市にて不動産会社が創業。その後、様々なホテルなどを買収し成長。のちにウインダムインターナショナルと社名変更。世界進出も果たし、2006年にはウインダムワールドワイドとして分離。さらに世界95か国以上にある20を超えるホテルブランドを分離させ、ホテルグループである同社が誕生した。
最高級やエコノミー、長期型やアミューズメントタイプまで、ブランド種類を6つのカテゴリーに分けている。ホテルブランドは高級ホテルの「ウィンダム」をはじめ、ミッドスケールの「ラマダ」、エコノミータイプの「デイズイン」「スーパー8」など合計24以上のブランドで国内外に9000軒を超すホテルを擁する。
2022年の収益は15億米ドル以上。世界中の従業員を合わせると40000人以上とされている。また、2018年以降、合計24を超す各ホテルブランド名には「by Wyndham」をロゴマークに加えるリブランディングをしている。
出典:https://investors.airbnb.com/home/default.aspx
Marriott International, Inc.(マリオット・インターナショナル)
本社はメリーランド州ベセスダ市。世界最大のホテルチェーン。139か国に30を超すブランドを展開。2022年現在、1423000室・8000軒を超す物件を持つ。20を超す予約センターも運営。
2021年の収益は138億米ドル。世界中に120000人の従業員を抱えているとされる。2012年にドバイのマリオットホテルが世界で最も背の高いホテルとしてギネスブックに載った。
1927年にマリオット夫婦がワシントンDCでルートビア屋台を始めたのが始まりとされている。後、「ホット・ショップス」という名のレストランを創業。7店舗に増やしたところで1957年にホテル業開始。1967年にはMarriott Corporationに社名変更。1993年にはフランチャイズ管理と不動産管理を2社に分割。その後も買収を繰り返し成長。特に1995年のリッツ・カールトンホテルの買収は世間を驚かせた。またその年にはホテル業界で初のオンライン予約を始めた。
出典:https://www.marriott.com/default.mi
Hilton Worldwide Holdings Inc.(ヒルトン・ワールドワイド)
1919年創業の老舗ホテルグループ。テキサス州シスコ市からスタート。1943年にはニューヨークの「ルーズベルトホテル」「プラザホテル」を買収。次々と多くのホテルを買収して成長。
2022年の収益は87.7億米ドル。世界中に7000軒を超すホテルを管理、159000人の従業員を抱えているとされる。現在の本社はバージニア州タイソンズコーナー市にある。
高級ホテルの「ウォルドフ・アストリア」やエコノミーな「スパーク」など、20を超すブランドを展開。そのホテルの98%はフランチャイズ化しているものであり、独立した運営者や企業が管理している。テキサス州メンフィス市にオペレーションセンターがあり、アジア太平洋地域の事業はシンガポール本部で管理している。また、中東とアフリカの事業はドバイ本部で管理し、欧州事業はイギリスのワトフォード市にある欧州本部で管理している。
出典:http://hilton.com/corporate
Choice Hotels International, Inc.(チョイス・ホテルズ)
メリーランド州ロックビル市に本社がある多国籍企業。高級ホテルの「カンブリア・ホテル」や経済的なモーテルである「エコノロッジ」など、14のブランドを展開。2020年現在で世界中に7000軒を超すホテルで、600000室の客室を擁するホテルグループ。
2022年の収益は14億米ドル。1789人の従業員を抱えているとされる。その歴史は1939年フロリダ州で7軒のモーテル管理から始まった。その後、大きな転換期となったのは1957年メリーランド州シルバースプリング市のホテル買収から。
1980年代には、様々な価格帯を持つホテルブランドとして知られた。現在でも主力ブランドになっている「コンフォート」は1981年創立。高級ブランドの「カンブリア・ホテル」は2005年にビジネス旅行者向け高級ホテルとして営業開始。世界40か国以上の国に展開し、欧州・アジア太平洋・中東・スカンジナビア・スペイン・ラテンアメリカに拠点を持つ。
出典:https://www.choicehotels.com/
Best Western International, Inc.(ベスト・ウェスタン)
世界中に4700軒を超すホテルとライセンス契約している、アメリカのホテルグループ。現在はアリゾナ州フェニックス市に本社を持つ。創業は1946年。カナダ・メキシコ・オーストラリア・ニュージーランドへの事業拡大は1960年代後半から。2002年には欧州とアジアに展開。イギリスには260軒を超すホテルがある。2013年にはミャンマー進出。
2011年にブランドに対して「ベスト・ウェスタン」「ベストウェスタン・プラス」「ベスト・ウェスタン・プレミア」の3層システムにリブランド変更された。2019年に買収した豪華なホテルブランドの「ワールドホテルス」、経済的なホテルブランドの「シュアーステイ」など、18ブランドを持つ。
カリフォルニア州で独立したホテル同士が旅行者の情報交換をしたことが、同社創業へ至ったとされている。社名の由来はチェーンに加盟しているホテルが全てミシシッピ川以西にあったためとされている。
出典:https://www.bestwestern.com/en_US.html
G6 Hospitality (G6 ホスピタリティ)
アメリカとカナダに格安ホテルを展開するホテルチェーン。親会社はニューヨークにある投資管理会社のブラックストーン。以前はフランスのホテルグループであるアコーに買収されていた。
1962年カリフォルニア州サンタバーバラ市にて創業。社名の「6」は、当時の宿泊料金の6ドルに由来する。豪華になることが流行であった当時に、真逆のアプローチで人気を博した。同社はフランチャイズ式ではなく、直接所有・管理運営をしている物件が多い。
1980年までに300店舗数になるまでに成長し、1985年には投資会社のKKRに売却された。その後も同業ホテルなどを買収しながら成長し、1990年にはアコー社に買収され、2012年にブラックストーンへ売却。1999年、簡易キッチンなどを備えた長期滞在向けのスタジオ6の運営を開始。現在は1430軒の建物をかかえ、19億ドルの収益を上げている。
出典: https://www.motel6.com/en/home.html
Red Lion Hotels Corporation(レッド ライオン ホテルズ コーポレーション)
1937年、ワシントン州スポケーン市にあった銀行の不動産管理部門から出発。1976年にホテルを新しくオープン。1980年には新しいブランドを立ち上げたりしていた。
1997年、自社ホテルブランドを企業アイデンティティに採用。社名をCavanaughs Hospitality Corporation に変更。その後も買収や合併を繰り返しながら成長。
2001年にはヒルトンからレッドライオンホテルブランドを買収。2005年には社名を現在のものに変更。さらに2016年に高級ホテルVantage Hospitality社を買収。順調に成長していたが、2020年に同業者のソネスタに買収され、子会社になった。2021年の収益は1億3500万米ドル。北米に1400以上の施設がある。
出典:https://www.redlion.com/
Hyatt Hotels Corporation(ハイアットホテルスコーポレーション)
イリノイ州シカゴ市に本社をおく、多国籍企業。カリフォルニア州ロサンゼルス国際空港近郊にあったモーテルを、1957年に起業家が買い取りハイアットホテルとして創業。
その後、空港のそばにホテルを作るコンセプトで、西海岸を中心に展開した。1968年には海外進出用にハイアットインターナショナル社を設立。その後、開発や買収によって成長。特に2004年のアメリスイーツホテル、2005年のサマーフィールドスイーツ、2018年のトゥーロードホテルの買収によって大きく成長した。6大陸の69か国に、1350を超えるホテルを持つ。
2022年の収益は58億米ドル。従業員数は189000人を超す。子会社にアップルレジャーグループがある。現在28を超えるホテルブランドと世界の1250か所以上の観光地などにホテルを持つ。
出典:https://www.hyatt.com/en-US/home/
アメリカの主要ホテル3選〜日系編〜
The Kitano Hotel New York(ザ・キタノ)
長野県大手のゼネコンである北野建設株式会社の元社長であった北野次登氏が手掛けたホテル。日本で初めての欧米式アパートメントホテルである「北野アームス」を東京都千代田区平河町に1964年にオープン。
1964年のニューヨーク世界博覧会にて、初の海外工事として北野次登氏が日本館の建設に携わった。そのときに、英語が不自由でニューヨークでの生活が不便だったことがきっかけとなり、ここに日本人が安心できるホテルがあれば、日米の距離も縮まるのではないかと考えた。
1973年、ロックフェラー系の鉱山会社が所有していたマレーホテルを買収。内装を徹底改修した後、ホテルキタノとしてオープン。東海岸で日本人がホテルを所有する前例が無く、大きな話題になった。1995年、客室やレストランなどを増築。名称も「ザ・キタノ」と改名。現在もなお、ニューヨーク市で唯一の日系ホテルとして君臨。
出典:https://www.kitano.com/art-history
Miyako Hotel Los Angeles(ミヤコ・ホテル・ロサンゼルス)
近畿圏を中心とする大手ホテルチェーンの近鉄・都ホテルズが親会社。実際の運営はカリフォルニア州ロサンゼルス市にある、アメリカ近鉄興業が請け負っている。
1968年、日米の懸け橋となるべく、アメリカ近鉄興業がカリフォルニア州サンフランシスコ市にジャパン貿易センターと都ホテルをオープン。更に1975年に、ホテル「京都イン」とボーリング場などをオープンさせた。都ホテル・ロサンゼルスは1989年に移転し、リニューアルオープン。サンフランシスコ市にあった建物は無くなっている。
アメニティーや温水洗浄便座などの設備は、日本のホテル方式を採用。日本式の「おもてなし」にこだわったホテルであるという。カリフォルニア州でも日本人が多いトーランス市に、姉妹ホテルである「ミヤコ・ハイブリッド・ホテル」がある。
出典:https://www.miyakola.com/
Halekulani Corporation(ハレクラニ・ホテル)
ハワイ州ホノルル市のワイキキビーチにある、歴史ある高級ホテル。現在は三井不動産が所有・運営している。建物自体は1883年、実業家が建てた二階建てのビーチに面した家が出発点。地元の漁師たちが敷地前で家主に歓待されたことから「天国にふさわしい家」の意味を持つ「ハレクラニ」と漁師たちの間で呼ばれていた。1907年、キンボール夫妻が購入し、さらにリゾートホテルに改装。ホテル名を、地元民が呼んでいた「ハレクラニ」と命名した。
キンボール夫妻没後、1962年に資産家に売却。1981年に三井不動産に売却すると同時に、ハレクラコーポレーションとして法人化。1984年に453室を持つ高級ホテルとしてリオープン。1987年には向かいにワイキキパークホテル(現在名はハレプナ・ワイキキ・バイ・ハレクラニ)もオープンしている。
2007年に帝国ホテルが三井不動産傘下に入ったことから、ハレクラニ系列と帝国ホテルグループとは提携をしている。
出典:https://www.halekulani.com/
アメリカの主要ホテル3選〜外資系編〜
InterContinental Hotels Group PLC (IHG ホテルズ & リゾーツ)
イギリスのウインザー市に本部を持つ、多国籍企業。起源は1777年創業のビール会社。ホテル産業への参入は1969年のクレストホテルチェーンから。1998年、セゾングループから高級ホテルであるインターコンチネンタルホテルチェーンを買い取り、さらに拡大。現在の会社組織は2003年にホテル部門とレストラン部門とに分離したことから成立。
その後も買収などを繰り返し成長。現在は18のブランドを持つ巨大ホテルチェーンに成長している。世界約100か国に6000軒を超す建物を持ち、880000の客室がある。2022年のグループ全体の収益は40億米ドル。従業員数は325000人といわれている。
ブランドのうちインターコンチネンタルをはじめとする高級ホテルと、クラウンプラザを代表とするプレミアム、ホリデイインのようなリーズナブルホテルや長期滞在型のアトウェルなどがある。
出典:https://www.ihgplc.com/en/
Four Seasons Hotels Limited(フォーシーズンズ ホテル アンド リゾーツ)
カナダのオンタリオ州トロント市に本社がある。世界47か国に127軒の高級ホテル・高級リゾート物件を持つ国際企業。2007年以来、ビル・ゲイツとサウジアラビアの実業家であるアルワリード・ビン・タラルが所有者である。
1961年にカナダの実業家がはじめた、ビジネス旅行者向けのモーテルが起源。その後、多くのホテルを建設し、1970年にはイギリスのロンドンにも進出した。同社の大きな特徴は、他のホテルグループと違い、ホテル自体を保有していない点である。単に運営を任されているだけということである。また他のホテルと違い、ブランド展開はしていない。
北米とカリブ海地域に52軒、中南米に4軒、欧州に19軒、中東とアフリカに22軒、アジア太平洋に30軒のホテルを展開している。この中には、高級プライベートレジデンスを提供している物件も含まれる。
出典:https://www.fourseasons.com/
Accor S.A. (アコーホテルズ)
フランスの多国籍企業。ホテル・リゾート・休暇用の施設などを所有・管理・フランチャイズする。ホテル業界世界第6位の企業。欧州では最大のホテルグループ。2022年現在、世界110か国以上で5300軒のホテルを展開。客室総数は777000室以上という。アメリカには142軒。
創業は1967年。フランス北部のリール市郊外に建てたホテルから。その後も欧州市場を拡大していく。アジアや北米にも進出したが、北米での売り上げは全体の二割程度。1990年のモーテル6の買収がはじめての北米進出だった。その後、1999年にはレッドルーフを買収。2000年にはフィラデルフィアに高級ホテルをオープンさせている。
ラグジュアリー・プレミアム・ミッドスケール・エコノミーと4種類のレベルに分け、更にその中で様々なブランドを展開している。2022年の収益はグループ全体で45億米ドル。従業員数は280000人という。
出典:https://all.accor.com/usa/index.en.shtml
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。