日本ではテレビ時代は終わったと言われていますが、世界的にはまだテレビとビデオでの市場規模は大きいです。世界の2023年の市場規模は6828億米ドルと言われている中、そのうちアメリカの収益は3829億米ドルで大半を占めていると予測されています。
今回は、アメリカの主要テレビ局・新聞メーカー・出版社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて17社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要テレビ局・新聞メーカー・出版社11選〜ローカル編〜
Warner Bros. Discovery, Inc.(ワーナー ブラザーズ ディスカバリー)
アメリカの多国籍マスメディアおよびエンターテイメント複合企業。実際はAT&Tによる、ワーナーメディアのスピンオフ。2022年にディスカバリー社と合併して誕生。本社はニューヨーク市マンハッタン。
2022年の収益は338億米ドル。従業員数は37500人。主力である映画とテレビ部門、コミック出版部門、ケーブルテレビ部門を2つ、CNN部門、スポーツ部門、ストリーミング部門、国際放送部門、その他の合計9つの部門によって組織されている。
テレビ番組だけをとってもビデオオンデマンドチャンネルのMax、フードネットワーク、ディスカバリーチャンネルなど、70チャンネル以上を放映している。その中には日本でも放映されている「旅チャンネル」なども含まれている。
出典:https://wbd.com/
CBS (シービーエス)
テレビ三大局のひとつ。1927年にイリノイ州シカゴ市でラジオ局として創業。創業当時にコロンビアレコードの親会社が出資したことから社名をColumbia Broadcasting Systemとした。1930年代にはアメリカ最大のラジオネットワークとなり、1940年代からテレビへと移行する。1974年に社名をCBSとし、買収・合併・スピンオフなどを経て、創業当時から投資などで縁のあったパラマウント2022年に合併。12700人の従業員を抱え、145億米ドルの収益がある。
現在は、パラマウント・グローバル社が所有するCBSエンターテイメントグループの放送部門として、テレビとラジオの放送を運営している。
テレビ放送番組は90ほどあり、ほぼ毎週末にはスポーツ番組を放映している。特にNFL、PGA、NCAAの放映権を持っている。全米に直接運営局を15か所も所有しており、228のテレビ局と提携契約をしている。このため、アメリカ全世帯の95.96%をカバーしていることになる。パラマウントグローバル国際ネットワークなどを通じて、カナダ・メキシコ・イギリス・オーストラリア・インドなどで視聴できる。
出典:https://www.cbs.com/
Comcast (コムキャスト)
1963年創業。現在の本社はペンシルバニア州フィラデルフィア市。2022年の収益は1214億米ドル。従業員数は186000人。アメリカ最大のマスメディア企業。売上高ではAT&T社に次ぐ世界で2番目に大きい放送局。アメリカ国内家庭用電話サービスプロバイダーでもある。また、2011年以降、三大放送局のひとつであるNBCの親会社でもある。
Xfinityはケーブルテレビ・インターネット・電話のサービスブランド。中小企業向けのサービスも展開している。また、テレビ放映コンテンツも作成しているが、子会社のNBCユニバーサルを通じて番組を放映している。NHL放映は専属契約である。「カンフーパンダ」などで有名なドリームワークスアニメーションも子会社であり、衛星配信システムのスカイグループも子会社である。映画スタジオのユニバーサルピクチャーズやVODストリーミングのPeacockなども同社の子会社である。
顧客対応の悪さが有名で、2014年にThe Consumerist誌によって「最悪の会社」と烙印を押されたことがある。
出典:https://corporate.comcast.com/
The Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)
映画や遊園地のイメージが強い同社ではあるが、テレビ・放送・ストリーミング・出版などの部門を持つ多国籍マスメディアおよびエンターテイメント複合企業である。創業1923年。兄弟によってはじめられたディズニー・ブラザーズ・スタジオによる映画会社が起源。
1995年、当時アメリカ史上2番目に大規模な企業買収を行った。テレビ放送局ABC社の買収であった。これによりスポーツネットワークのESPN社も手中することになり、ABCラジオ局も子会社化して番組を始めている。現在は「ESPN社」、映画やテレビ放送などを「ディズニー・エンターテイメント社」が、遊園地関係と出版・ゲームなどの事業を「ディズニーパーク・エクスペリエンス・アンド・プロダクツ社」の3セグメントで運営している。
2022年の収益はグループ全体で827億米ドル。従業員は220000人。子会社には合弁事業としてナショナル・ジオグラフィック・パートナーズLLCがある。2022年フォーチュン500で、売上高ランキング53位であった。
出典:https://thewaltdisneycompany.com/
News Corp (ニュース・コープ)
オーストラリアのNews社が1973年にアメリカに上陸してスタートさせたNews Corporation社のスピンオフ。2013年創立。デジタル不動産情報・ニュースメディア・書籍出版・ケーブルテレビを手掛ける。本社はニューヨーク市。2022年の収益は104億米ドル。従業員は24000人。
最大の事業となっているのは不動産情報サイトのrealtor.comである。またウォールストリートジャーナルやバロンズなどを発行している出版社のDow Jones & Company社のオーナーである。1976年に買収されたニューヨーク市日刊紙のニューヨークポストも同社の所有である。また、イギリスの新聞社・ラジオ放送局やオーストラリアの新聞社・雑誌出版社も同社の資産リストに入っている。
2013年、元のNews Corporation社は21 世紀フォックス社と改名され、主に映画とテレビ産業などのメディアを扱っていた。2019年にウォルト・ディズニー・カンパニー社に買収され、テレビ放映・スポーツ・ニュースなどの資産はFOXコーポレーション社として分離独立した。それでも実質、創始者のマードック家が両社を管理している。
出典:https://newscorp.com/
Viacom Inc. (バイアコム)
CBSが放送シンジゲートとして1952年に設立。当時の社名はCBS Television Film Salesだった。1970年にスピンアウトし、バイアコムに社名変更。以降、2005年ごろまで買収による拡大を遂げる。2005年に第2CBSコーポレーション社とViacomに分割。ところが2019年にCBSとViacomは再合併契約となり、新社名をViacomCBSとした。さらに2022年にはパラマウント・グローバルに変更している。
主な事業はパラマウントピクチャーズの映画・テレビ番組とCBSグループのテレビ放送、MTVやショウタイムなどのケーブルテレビ番組やストリーミングサービスなどがある。2019年時点で170以上の放送ネットワークを持ち、180か国の7億人の加入者に放映している。
2022年の収益は301億米ドル。従業員数は24500人。子会社にはオンライン著名人が出演するVidConや出版社のサイモン&シュスター、格闘技プロモーターであるベラトールMMAなどがある。
出典: https://www.paramount.com/
The Wall Street Journal(ウォールストリートジャーナル)
ビジネスと経済に焦点を当てた国際日刊紙。親会社はNews Corp社の一部門であるDow Jones & Company社。創刊は1889年。発行部数はUSAトゥデーに次いで全米2位。2022年現在で、印刷部数は65万部、オンライン版の購読者は約300万人。高級ニュースとライフスタイルの月刊雑誌WSJも発行している。1921年には経済週刊誌のバロンズも創刊している。
創刊時の社名はダウ・ジョーンズ・アンド・カンパニー・ニュース・サービスで、ニュース配信は電信によるものだった。1940年代には現在の紙面スタイルの基本形が完成。その後、購読者数を増やしていく。
さらには、1967年以降に世界の金融センターに同社のジャーナリストを常駐配備し、質の高い情報提供を目指した。1997年までに様々な買収・合併事業が行われた。2007年に現在の親会社であるNews Corp社に買収された。現在の本社はニューヨーク市マンハッタン区にある。
出典:https://www.wsj.com/
Penguin Random House (ペンギンランダムハウス)
出版界の革命を起こしたと評価される1935年創業のイギリスの出版社であるペンギンブックス社と、世界最大の一般向けペーパーバック出版社である1927年創業のアメリカのランダムハウス社が、2013年に合併設立された多国籍複合出版社である。さらに2020年にドイツのベルテルスマン社に買収され、子会社化された。現在の本社はそれぞれの本社を生かしてニューヨークとロンドンの二か所にある。
2021年現在で、世界中で約10000人の従業員を抱え、250のグループ内出版社の中で年間約15000タイトルの本を出版している。2021年の収益は約40億ユーロ。出版物は従来通りの紙媒体のものとデジタル版とに分かれる。大人と子供向けのフィクション作品とノンフィクション作品がある。
同社はアメリカとイギリス以外に、カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・ポルトガル・インドに本社を置く。またペンギン社のみの管轄でブラジル・アジア・南アフリカ、ランダムハウスのみの管轄でスペイン・ヒスパニック系アメリカ・ドイツに本社を置く。
出典:https://www.penguinrandomhouse.com/
The New York Times Company (ニューヨーク・タイムズ社)
日刊紙であるニューヨークタイムズ、その関連出版物、およびその他のメディア資産を発行するマスメディア企業。本社はニューヨーク市マンハッタン。1851年に初版発行。2022年の収益は23億米ドル。従業員数は5800人を抱える。
1994年にケーブルテレビチャンネルを買収したことをきっかけに、放送業界へ進出。その後、2005年には消費者情報のオンラインプロバイダーであるAbout.com社を買収。デジタル業界にも進出した。
2007年には現在の本社ビルである「ニューヨークタイムズビルディング」に移転。2011年ごろから主軸の新聞の広告収入減少に直面。対応策のひとつとしてWEB版に有料コンテンツ制度を導入した。またサブスクリプション式の音楽アプリや優良スポーツ情報サイト、ネットパズルゲームなどの企業を買収し、さらなる多角化を図った。2022年、買収した企業のバンドルサブスクリプションが期待できるとして、投資企業のValueAct社からの投資を得た。
出典:https://www.nytco.com/
USA TODAY (USAトゥデイ)
社名はすべて大文字である。日刊紙の中でも、中産市場新聞といわれる、ニュースだけではなくエンターテイメントも含むタブロイド新聞である。本社はバージニア州タイソンズ市。国際版の本社はスイスのジュネーブに置かれている。親会社はバージニア州マクリーン市に本社があるガネット社。
創刊は1982年。全米の37か所の印刷所と、海外の5か所の印刷所で発行されている。特徴的なのはカラーである点など。簡潔な記事であったり、グラフなどのビジュアル面の充実など、世界中の地方紙に大きな影響を与えたといわれる。
2022年の印刷部数は約160000部。デジタル版の購読者は504000人。毎日約2600000人の読者を抱える同紙は、アメリカ国内新聞の中で最大の発行部数を誇る。収益は約9億米ドル。従業員は4000人を超す。アメリカ世間からは同紙は中道左派にあると位置づけられている。全米の他、プエルトリコで配信。国際版はアジア・カナダ・欧州・太平洋諸島で配信されている。
出典:https://www.usatoday.com/
The Washington Post (ワシントンポスト)
アメリカの首都であるワシントンD.C.圏内でもっとも広く発刊されている日刊紙である。1877年創刊。創業当初は編集面でも財政面でも非常に困難であったという。1933年に金融家のユージン・マイヤー氏が破産状態の同社を買い取り、立て直した。
立て直しの期間、いくつかの地方出版社を買収・吸収・合併している。ベトナム戦争についての分析意見をニューヨークタイムズ社が発行していたが、1971年にワシントンポストも発行。この記事は大きく影響し、合計19の新聞社がポスト誌の記事内容を利用している。2013年、同社はジェフ・ベソス氏所有のナッシュ・ホールディングス社に売却される。2020年時点で、ニューヨークタイムズ紙に次いで2番目の、65回のピューリッツァー賞を受賞している。
ワシントンポスト紙のジャーナリストは18回のニーマンフェローシップを受賞している。またホワイトハウスニュース写真家協会賞を368回受賞している。また外国支局を直接運営する、アメリカでは希少な新聞社のひとつでもある。
アメリカの主要テレビ局・新聞メーカー・出版社3選〜日系編〜
Fujisankei Communications International (FCI・フジテレビ)
フジサンケイコミュニケーションズグループのアメリカ部門。1986年にニューヨーク市で設立。親会社フジ・メディア・ホールディングス社が保有している。
日本で放映されたニュースソース・連続ドラマ・バラエティーなどをアメリカ国内などで放映している。ほとんどの場合、放送枠をケーブル会社などから購入しているだけなので、放映時間は数時間のみ。丸一日放映しているわけではない。ニューヨーク市・ハワイ州・カリフォルニア州にある幾つかのテレビ局と番組コーナーを放映する契約を締結しており、互いにニュースソースなどを交換することがある。
1987年からニンテンドーのゲームを英語に翻訳して北米で出版する業務も行っていた。一時期はグループ内のポニーキャニオン社からニンテンドー用のゲームを開発・リリースしていた時期もあったが、1990年半ばには、テレビ事業に専念するためにゲーム関係業務は放棄した。本社マンハッタン。従業員79名。西海岸と欧州・エジプトに第2オフィスを持つ。
出典:https://fujisankei.com/
TV Japan (テレビジャパン)
アメリカで唯一の、独立した24時間放映をしている日系テレビ局。アメリカとカナダにおいて、全国で視聴可能な唯一のチャンネルである。親会社はNHK CosmoMedia America Inc.社である。アメリカとカナダのケーブルテレビ会社や衛星テレビのDirecTVで視聴が可能。
日本で放映されたNHKのニュース・ドラマ・映画・子供向け番組・バラエティーなどが主体。一部のエンターテイメント番組はTBSや日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日の番組を放映することもある。
一部の番組には英語の字幕や吹き替えが付く。NHKの主なニュース番組には二か国語放送に対応している。大相撲中継・プロ野球中継・Jリーグ中継なども見ることができる。放映開始は1991年から。通常はケーブルテレビ会社で用意されたプレミアムチャンネルに視聴権利が含まれる。基本視聴料に加え15米ドルから30米ドルほどの上乗せ金額がかかる。
出典:https://tvjapan.net/
Kodansha USA Publishing, LLC (講談社出版)
日本最大の出版社である講談社のアメリカ子会社である。本社はニューヨーク市。設立は2008年。創設当時の講談社USA社は、日本・日本文化・漫画に関する書籍を出版。漫画は特に講談社コミックスとしてレーベル化していた。
日本の小説や「進撃の巨人」などの漫画を扱っていた、2001年創立のVertical社と講談社社内で独立分離していた講談社USA社と講談社コミックス社とを、2020年に統合。2021年にはウェブサイトでもブランド名の統合を発表した。現在は講談社USAのもと、講談社マンガが独自ブランドとして扱われている。
講談社USA出版社の姉妹会社・子会社として、講談社アドバンスト・メディア社があった。講談社コミックスのデジタル配信や英語版のデジタル配信、映画の公開やイベントなどを主な業務内容として、カリフォルニア州サンフランシスコ市にて2014年に設立。2015年には北米の公立図書館で講談社コミックスのタイトルを利用できるようにした。上述の通り、2020年に講談社USA出版に統合された。
出典:https://kodansha.us/
アメリカの主要テレビ局・新聞メーカー・出版社3選〜外資系編〜
Bertelsmann SE & Co.(ベルテルスマン)
ドイツのノルトラインヴェストファーレン州ギュータースロー市に本社を置く、ドイツの多国籍複合企業。世界最大のマスメディア複合企業のひとつであり、また、サービス分野や教育分野でも活動している。
創業は1835年。まずは出版社として設立。神学文献を専門としていたが、教科書などまで拡大し、ライトフィクションまで扱うようになる。第二次世界大戦後、急成長。書籍だけはなくテレビ・ラジオ・音楽・雑誌などの業界にも進出している。主要部門には欧州で有名なテレビ・ラジオ放送局のRTLグルプやアメリカとイギリスの出版大手であるペンギンランダムハウス社などがある。
非上場企業である。急成長を遂げたときの指導者であったラインハルト・モーン氏の一族によって管理されている。2022年の収益は202億ユーロ以上。世界中に164000人以上の従業員を抱える。
出典:https://www.bertelsmann.com/#st-1
TelevisaUnivision(株式会社テレビサユニビジョン)
1950年代初頭にメキシコで創業したラテンアメリカ最大の大手マスメディア企業のテレビサグループが、2021年にアメリカのスペイン語放送最大局のユニビジョン社に対してコンテンツ資産を売却。新会社としてTelevisaUnivision社の名で新ブランド化した。
同社のポートフォリオはテレビ放送・ケーブルテレビ局・デジタルネットワークで構成されている。253のメキシコ地方テレビ局と59のアメリカ地方テレビ局が6つの地上波ネットワークを利用して放映中。
テレビ小説(アメリカではソープオペラ、日本では昼メロといわれるテレビドラマ番組)が高視聴率であり、看板テレビ局のチャンネル2(メキシコ現地向けにはLas Estrellasチャンネルという)で放映されている。同社の傘下には様々なローカルテレビチャンネルがあり、特にアメリカ南部に住むスペイン語話者たちには長く愛されているものがある。
出典:https://corporate.televisaunivision.com/
CGTN America (CGTN アメリカ)
中国の北京に本部を置く、国営メディア組織である「中国中央テレビChina Central Television」の国際部門。CGTNは、中国国際テレビ網China Global Television Networkの頭文字。英語だけではなく、スペイン語・フランス語・アラビア語・ロシア語の5言語の局を持つ。
CGTNアメリカ本社はワシントンD.C.にあり、ニューヨーク市とワシントンD.C.の別の建物に支社を持つ。2012年に放映開始。同社はアメリカ人・中国人、そのほかの国際ジャーナリストを起用して、アジアに焦点を当てた、アメリカを拠点とする番組を制作・放映している。
アメリカと中国との関係があまり芳しくなく、中国政府のプロパガンダ機関ではないかと噂されることもある。2020年、アメリカ政府は同社と親会社のCCTV、中国最大の報道機関である新華社に対して、在外公館と指定。全従業員のリスト提出と不動産購入時には承認を得ることを義務付けている。
出典:https://america.cgtn.com/

ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。

