アメリカの証券業界では、デジタル化とAI技術の導入が急速に進んでいます。特に、AIを活用した投資戦略の自動化が注目されており、HSBCはAIを利用したグローバルタクティカルインデックスを導入しています。また、仮想通貨やデジタル資産への関心も高まっており、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンは、デジタルアセット部門を設立して、従来の資産とデジタル資産の両方を管理するプラットフォームを構築しています。さらに、証券取引委員会(SEC)は、投資家保護を強化するための新たな規制を検討中です。
今回は、アメリカの主要証券会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて15社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要証券会社11選〜ローカル編〜
Vanguard (ヴァンガード)
Vanguardは1975年に設立され、本社はアメリカのペンシルベニアにある。資産運用、退職プラン、金融アドバイスなどのサービスを提供し、約20,000人の従業員を有している。2023年7月末時点では、世界中で提供されているファンド数がアメリカ国内では203、国外では227と、計430となっている。
2023年には、Philadelphia Foundationにより 「シビック50グレーターフィラデルフィア」の受賞者に選出、Seramountによって「多文化女性のためのベスト企業」のひとつに選出、NerdWalletdによって「低コスト投資に最適なロボアドバイザー」として最高評価を獲得するなど、これまでも多数の受賞歴がある。
2011年、楽しく無料の体験学習を通じて子供たちに金融リテラシーを教える教育者をサポートするプログラムMy Classroom Economyが発足した。これまで、全米で100万人以上の幼稚園から高等学校までの生徒に使用されている。現在、世界中で英語とスペイン語で利用できるようになっている。
出典:https://corporate.vanguard.com/
Charles Schwab (チャールズ・シュワブ)
Charles Schwabは1975年に設立され、本社はアメリカのテキサスにある。証券取引プラットフォームを提供し、個人投資家やトレーダーが株式、債券、オプション、先物などの金融商品取引ができるようにしたり、資産運用、退職計画、資産管理などのサポートをしたりしている。
2023年第2四半期の純利益が13億ドルであった。2022年同期の18億ドルと比較し、減少している。また、 2023年6月末までの6ヶ月間の売上高は29億ドルで、前年同期は32億ドルであった。顧客資産総額は8兆2,400億ドル、1日の平均取引数は566万件、従業員数36,600名で稼働している。
Fortuneより「世界で最も賞賛される企業2023」を受賞、Investor’s Business Dailyより「2023 年ベストオンラインブローカー賞」を受賞、J.D. Powerの2023年米国フルサービス投資家満足度調査において、総合的な顧客満足度で最高ランクを獲得など、これまでも多数の受賞歴がある。
出典:https://www.aboutschwab.com/
Fidelity (ファイデリティ)
Fidelityは1946年に設立され、本社はアメリカのマサチューセッツにある。資産運用、退職サービス、銀行業務、教育、テクノロジー、プライベートウェルスマネジメントなど、幅広い金融サービスを提供するアメリカの大手金融機関である。
23,000以上の企業の従業員福利厚生プログラムを管理し、3,600以上の顧問会社をサポートしている。また、70,000人以上の従業員を有し、北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど、世界9か国で展開している。2022年の売上高は25.2億ドルで、前年と比較し、5%増加となった。
Forbesにより「新卒者にとって最も優れた雇用主」のひとつとして選出、Money.comの7つのベストオンライン取引プラットフォームのレビューで、「最高のオンラインブローカープラットフォーム」としてランクイン、J.D. Powerの米国自主投資家満足度調査において、投資専門家からの指導を求める顧客にとって最高の企業としてランクインなど、これまでも多数の受賞歴がある。
出典:https://www.fidelity.com/about-fidelity/our-company
Goldman Sachs (ゴールドマン・サックス)
Goldman Sachsは1869年に設立され、本社はニューヨークにある。投資銀行業務、証券業務、投資管理業務、消費者銀行業務、資産管理にわたる幅広い金融サービスを、企業、金融機関、政府、個人などに提供している。また、クライアントに対して企業の資金調達、証券の発行、資産運用のサポートを行っている。
2022年の純収益は474 億ドル、純利益は113 億であった。また、2023年第2四半期の純収益は109億ドル、純利益は12億2000万ドルであった。世界17か国に40,000人の従業員が在籍している。中小企業を支援するGoldman Sachs 10,000 Small Businessesでは、10年以上にわたり英国の中小企業経営者が 53,000人以上を雇用し、59億ポンドの収益を上げられるよう支援してきた。
Goldman Sachs 10,000 Womenは2008年に開始され、世界中の女性起業家にビジネスとマネジメントの教育と資本へのアクセスを提供している。2023年3月時点では150か国で164,000人以上の女性起業家が参加し、金融機関による女性経営の企業への融資額の45億ドル以上の増加に貢献している。
出典:https://www.goldmansachs.com/index.html
Morgan Stanley (モルガン・スタンリー)
Morgan Stanley は1935年に設立され、本社は、アメリカのニューヨークにある。投資銀行業務、証券取引、資産運用、投資管理など幅広い金融サービスを、法人、政府、機関、個人を含むクライアントに提供している。
世界42か国に拠点があり、アメリカをはじめ、ヨーロッパ、アジア、中東など多くの国々で事業を展開している。2023年の第2四半期の純収益は135億ドル、純利益は22億ドルであった。また、2022年度の純収益は537億ドル、純利益は110億ドルであった。
近年、Morgan Stanley は持続可能な投資に関する取り組みを強化している。2022年末時点では、2030年までに1,400万トン近くのプラスチック廃棄物が環境や埋め立て地に流入するのを防止、除去、または削減できるような取り組みをしている。また、2020年にはアメリカに本社を置く世界的な大手金融サービス企業として初めて、ネットゼロの達成に取り組むことを掲げている。
出典:https://www.morganstanley.com/
JPMorgan Chase & Co.(JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー)
2000年にJP Morgan & Co. IncorporatedがThe Chase Manhattan Corporationと合併し、JPMorgan Chase & Co.が設立された。最も初期の前身機関は1799年まで遡り、現在はアメリカのニューヨークに本社がある。JPMorgan Chase & Co.は、「JPMorgan」と「Chase」の2つのブランドを有している。企業向けおよび個人向けに、銀行業務、投資銀行業務、資産運用、カードサービスなどを提供している。
世界60か国以上で展開し、アメリカを中心に、北米、ヨーロッパ、アジアなどの地域で事業を展開している。また、250,000人以上の従業員を有している。近年では、ジェンダ―や環境の課題、若者への育成支援などの取り組みを強化している。2022年度の純利益は376億ドルで、2021年度の483億ドルより減少している。
フォーチュンマガジンでは、「世界で最も賞賛される企業 」「アメリカの理想的な雇用主」としてビジネス学生が選ぶ世界で最も魅力的な雇用主のひとつとしてトップ5にランクインしている。またタイム誌では、2023年の最も影響力のある企業100社に選出されている。
出典: https://www.jpmorganchase.com/
Citigroup (シティグループ)
Citigroup は1812年、当初はCity Bank of New Yorkとして設立された。現在は、アメリカのニューヨークに本社がある。アメリカをはじめとしてヨーロッパ、アジア、中東、ラテンアメリカなど、約160か国と管轄区域で事業を展開している。銀行業務、投資銀行業務、資産運用、カードサービス、住宅ローン、消費者ローンなどのサービスを、企業、政府、投資家、機関、個人に提供している。
2022年の収益は753億ドル、2022年の純利益は148億ドルであった。また、2023年第2四半期の純利益を29億ドル、収益は194億ドルであった。2021年3 月には、ジェーン フレーザー氏がアメリカの大手銀行を率いる初の女性として、シティの最高経営責任者となった。
世界的な金融市場の出版物であるマイアミ –ユーロマネーは、2023 年の優秀賞において、シティラテンアメリカを3つの地域賞 (トランザクション サービス部門最優秀銀行、ファイナンシング部門最優秀銀行、中米およびカリブ海の最優秀投資銀行) に表彰した。
出典: https://www.citigroup.com/global
The Bank of New York Mellon Corporation(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン・コーポレーション)
BNY MELLONの初期機関は、1784年に設立された。アメリカでは最古の銀行であり、ニューヨーク証券取引所に上場した最初の企業である。合併などを経て、現在アメリカのニューヨークに本社がある。世界30か国以上に拠点を有し、資産運用、証券サービス、投資管理、決済サービスなどを提供している。
BNY MELLONの保管および管理資産は2023年3月末時点で46兆6000億ドル、管理資産は1兆9000億ドルとなっている。また、2022年度の売上高164億ドルで、前年と比較し、11%増加した。さらに、2023年第2四半期の収益は、45億ドルとなった。
BYN MELLONは、2023年に「世界で最も賞賛される企業」、「アメリカで最も革新的な企業」、2022年に「最も持続可能な企業トップ100」など、これまで数多くの受賞歴がある。近年、少数民族や人種、女性への人材育成や役職に就任することのサポートを強化している。特に、従業員をはじめ、女性の取締役員メンバーやリーダーは40%以上となっている。
出典: https://www.bnymellon.com/us/en.html
Bank of Amerika (バンクオブアメリカ)
1784年に設立され、現在はアメリカのノースカロライナに本社がある、世界最大の金融機関のひとつである。アメリカ全土においては、約6,800万の個人、企業、機関投資家に対して、銀行業務、投資業務、資産運用業務、その他の財務管理及びリスク管理のための商品やサービスを提供している。
アメリカのFortune 1000に挙げられるほぼ全ての企業と取引を行っており、世界35か国以上で事業を展開し、2023年第2四半期の純利益は74億ドルであった。2023年のユーロマネープライベートバンキングアワードで、アメリカの資産移転/後継者計画の最優秀賞、アメリカのデジタル部門の最優秀賞を受賞した。また、フォーブス誌は「アメリカで最も優れた大規模雇用主」として表彰した。
18~25歳の若者と退役軍人を対象とした教育および就職斡旋プログラム「Tech Fundamentals」を提供するNPower Michiganに対して、Bank of Amerikaから助成金として、5年間で12億5,000万ドルを提供し、プログラム拡大の支援を継続している。
出典: https://about.bankofamerica.com/en
Trade Station (トレードステーション)
1982年設立され、本社はアメリカのフロリダにある。2001年にオンライン証券仲介会社に移行し、社名が現在のTradeStationに変更された。個人投資家やトレーダー向けに、取引プラットフォームやツールを提供し、株式、オプション、先物、外国為替(FX)などの取引を支援している。
TradeStation CryptoがStockBrokers.com 2023 オンラインブローカーレビューで 3年連続「ナンバーワン暗号技術」を受賞した。また、TradeStation Securitieが、NerdWalletのBest-Of 2022 Awardsで「株式取引プラットフォームとリサーチ部門のベスト・オンライン・ブローカー」の称号を受賞した。さらに、TradingViewにより、2022年の最優秀マルチアセットクラスブローカーが授与された。
2007年に、従業員主導の取り組みとしてTradeStation Caresを設立され、地元の組織や慈善団体と提携することで、社内のコミュニティ内やその周辺で困っている人々を支援している。2022年時点で14の慈善団体を支援している。
出典:https://www.tradestation.com/?_ga=2.208553947.874201963.1693461277-687400601.1693461276
Interactive Brokers (インタラクティブ・ブローカーズ)
Interactive Brokersは1977年に設立され、本社はアメリカのコネチカット州にある、自己資本が127億ドルを超える大手証券会社のひとつである。株式、オプション、先物、通貨、債券、金、仮想通貨、通貨などの電子取引商品の取引執行および清算サービスを、機関、投資家、プロのトレーダーに提供している。さらに、その関連会社とは、1日に約 1,865,000件の取引を実行している。
世界中の150以上の市場でブローカー・ディーラーの事業を展開している。また、世界10か国にオフィスと、2,900人以上の従業員を有している。
Interactive Brokersは、2023年BrokerChooserで「ベスト証券ブローカー」「投資に最適なブローカー」「ベストオンラインブローカー」それぞれに選出されるなど、この他にもこれまで多くの受賞歴がある。2023年の第2四半期の純利益は6億ドルで、前年同期の純利益の3億ドルと比較し2倍となっている。
出典: https://www.interactivebrokers.com/en/home.php
アメリカの主要証券会社2選〜日系編〜
野村グループ(Nomura group)
野村グループの初期は、野村證券が1925年に設立された。本社は日本の東京にあり、日本国内とアジアを中心に、3つの事業部門を通じて、個人、機関、企業、政府にサービスを提供している。
世界30か国以上の拠点と27,000人以上の従業員を有し、グループ役員の国籍は90か国以上を占めている。アメリカでは、1927年にニューヨークに拠点が設立され、現在は15の都市と2400人の従業員で運用されている。2022年度の3セグメントの収益(営業部門、インベストメント・マネジメント部門、ホールセール部門)は、1兆1,790億円となっている。
1990年代から20年以上にわたり、小学生から大人まで幅広い世代に金融・経済教育を提供してきた。2022年にはその機能を集約・強化することを目的として、「ファイナンシャル・ウェルビーイング室」が設立された。そこで使用する学習教材が、消費者教育教材資料表彰2022にて優秀賞を受賞した。また、これまで107万5千冊のオリジナル教材が提供されてきた。
出典:https://www.nomura.com/
大和証券グループ(Daiwa Securities Group)
大和証券グループの初期機関は1902年に設立され、現在本社は日本の東京にある。株式取引、債券取引、外国為替取引、資産運用などの証券業務を中心とするサービスを提供している。1959年には、アメリカのニューヨークに支社が設立された。
国内外それぞれ20以上の関連子会社を有し、国内外合わせて14,000人以上の従業員が在籍している。2023年の第1四半期の経常利益は360億円で、前年同期の180億円と比較し、99.6%増加となった。Institutional Investor All-Japan Research Teamでは、3年連続1位を受賞、日経ヴェリタスアナリストランキング株式編の会社別順位では、4年連続1位を受賞、日経統合報告書アワード2022では、2年連続で優秀賞を受賞など、これまで多くの受賞歴がある。
2025年度までに、女性管理職比率を2020年代に30%とすること、男女の区別なく優秀な人材を採用し、新卒採用における女性採用比率を50%とすること、男性の育児休職取得率100%を継続することなど、女性活躍推進の目標を掲げている。
出典:https://www.daiwa-grp.jp/english/
アメリカの主要証券会社2選〜外資系編〜
Macquarie Group (マッコーリー・グループ)
Macquarie Groupは1969年に設立され、本社はオーストラリアのシドニーにある。銀行業務、資金調達、M&Aアドバイザリー、投資業務、資産運用などの金融サービスを、20,500以上の機関投資家、事業法人、個人、金融機関に提供している。
オーストラリアをはじめとするアジア太平洋地域、ヨーロッパ、北米など、世界34か国に事業を展開し、18,000人以上の従業員を有している。ニューヨークには、1994年に拠点が設立された。2022年度の純利益は、47億豪ドルで、前年比で56%増加した。
慈善財団であるマッコーリー・グループ財団は、多様な社会課題に対する支援を目的に活動している。特に教育、環境、社会的包摂の分野で、慈善団体や非営利団体、地域団体などと連携し、資金提供、ボランティア活動、スキルシェアなどの方法で支援を行っている。また、公平な職場環境を実現するための取り組みを強化している。その中でも、取締役会の女性メンバーは66.7%、育児休暇復帰率は96%となっている。
出典:https://www.macquarie.com/jp/en.html
UBS (ユービーエス)
UBSは1862年に設立され、スイスのチューリッヒに本社がある。世界50か国以上に拠点を有し、投資銀行業務、資産運用、ウェルス・マネジメント、リテール・バンキング、アセット・マネジメントなどのサービスを、個人、法人、機関投資家に向けて提供している。2022年度の純利益は、前年の125億ドルと比較し、16億ドル増加の141億ドルであった。
UBSは、2022年1.75億米ドルの寄付金を募り500万人の受益者のために寄贈したことをはじめ、「2025年までにお客様から10億米ドルを集め、2500万人の受益者に役立ててもらうこと」、「2050年までネットゼロの実現すること」、「ディレクター以上の役職の女性社員の比率を30%にすること」などの目標を掲げている。
UBSは、2009年から2022年の間で「世界で最も魅力的な雇用主」のトップ50に選出、ユーロマネー優秀賞を2023年まで4年連続授賞、人権キャンペーンにおいて2022年に「平等で最も働きやすい職場」に選出など、これまで多くの受賞歴がある。
出典:https://www.ubs.com/global/en.html

ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。

