アメリカでは、税理士や司法書士などの業務を弁護士が包括的に担当し、弁護士資格は州ごとに発行されています。また、移民法や企業法など、専門分野に特化した法律事務所が存在します。日本の弁護士数は約4万人に対し、アメリカでは130万人を超えます。5000米ドル以下の簡易裁判では弁護士は不要で、判決は2か月ほどで決定します。一方、交通事故の裁判は通常2年以上かかることが多いです。近年では、弁護士間でAIやZoomの利用が増加しています。
今回は、アメリカの主要法律事務所に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要法律事務所8選〜ローカル編〜
Baker McKenzie (ベイカー・マッケンジー)
1949年設立。スペイン語に堪能なベイカー氏がラテンアメリカに投資するアメリカ企業にアドバイスを、ロヨラ大学シカゴ法学部を卒業した訴訟学者のマッケンジー氏が立ち上げた。
2021年の収益は31億米ドル。常勤換算の所属弁護士は4700人を超す。世界47か国の78か所の事務所に13000人の従業員を抱える。従業員数では世界第2位であり、収益でも世界3位にランクされる最大手の法律事務所である。
l同社の取引の数のうち、およそ65%以上は国境を越えたもので、この数は世界1位といわれている。特に新興市場が関与する取引では10年以上トップの座に君臨している。国際法律事務所に発展したきっかけは、1955年のベネズエラの弁護士との合弁事務所開設から。主な専門分野は「会社法」とされている。
出典:http://bakermckenzie.com/
DLA Piper (DLA パイパー)
カリフォルニア州・メリーランド州・イギリスにあった弁護士事務所が2005年に合併して設立。当時は世界最大の法律事務所ともいわれた。現在は世界の40か国以上に80以上の事務所を抱える多国籍法律事務所である。
2021年の収益は34億米ドル。常勤換算の所属弁護士は4000人を超す。専門分野は多岐にわたり、なかでも企業間仲裁や銀行関係、保険や年金などに強いといわれている。
イギリスとアメリカを2拠点とし、二つを取りまとめるグローバル取締役会を共有している。また、欧州での活動のためにスイス協会としても構成されている。2021年の収益ランキングでは世界第3位。世界各国の法律事務所との吸収買収合併を繰り返しながら成長。2023年にはアメリカでAIに関する事業・医療政策事業を拡大している。
出典:http://www.dlapiper.com/home.aspx
Kirkland & Ellis (カークランド&エリス)
1909年、シェパード弁護士とシカゴ・トリビューンを設立したジョセフ・メディル氏の孫にあたるマコーミック弁護士が、イリノイ州シカゴ市で設立。1915年にカークランド弁護士とエリス弁護士が入所。トリビューン紙などの主任弁護活動を行った。
2021年の収益は60億米ドルで全米トップ。常勤換算の所属弁護士は2700人を超し、従業員は5700人以上とされている。現在は世界4か国に15の事務所を抱えている。収益が40億米ドルを達成した世界初の法律事務所と言われている。
月刊The American Lawyerから2018年年間最優秀法律事務所として表彰された。また2019年にもMergers&Acquisitions誌による年間最優秀法律事務所として表彰されている。2019年と2020年に起きた、300人以上の犠牲者を出したボーイング737MAX機墜落事故で、ボーイング社の代理人を務めている。
出典:https://www.kirkland.com/
Latham & Watkins (レイサム&ワトキンス)
1934年、カリフォルニア州ロサンゼルス市で設立。創業者のレイサム弁護士は税法で最終的にはアイゼンハワー政権下でIRS長官まで務めた。もう一人の創設者であるワトキンス弁護士は労働問題を専門とした。1960年での弁護士数はわずか19人で、ゆっくりと成長した。
2021年の収益は54億米ドルで2位。常勤換算の所属弁護士は3000人を超し、従業員は7000人以上とされている。現在は最大の事務所をニューヨーク市におき、そこでは450人の弁護士を抱えている。1992年にモスクワに最初の事務所を開設している。多数のロシア国営企業の代理人を務めていたが、2022年3月、ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアでの活動は終了している。
2007年には年間収益が20億米ドルを超えた初の法律事務所となり、2018年には30億米ドルを超えた最初の法律事務所になっている。2018年までは世界で最も収益の高い法律事務所だった。
出典:https://www.lw.com/
Norton Rose Fulbright (ノートン・ローズ・フルブライト)
1794年、イギリスのロンドン市にて設立。その後あまたの吸収・合併を経て成長。1976年には香港に初の国際事務所を設立。その後も世界各国の法律事務所と提携などを繰り返し、2013年、アメリカの法律事務所のフルブライト&ジャウォースキーと合併し、現在に至る。
2021年の収益は21億米ドル。常勤換算の所属弁護士は3000人を超し、世界50か国以上の事務所に従業員8000人以上を抱えている。アメリカには12か所以上の都市に事務所を持ち、中でもテキサス州ヒューストン市にあるオフィスは52階建ての超高層ビルであるフルブライトタワー内にある。
取り扱う分野は多岐にわたり、エネルギー関係・インフラ・資源・テクノロジー・輸送・ライフサイエンス・ヘルスケア・消費者市場に関する法律サービスを提供している。クライアントは多国籍企業・金融機関・政府・非営利団体・富裕層が多いという。顧問料が高額なので、個人相手はしてくれない。
出典:http://www.nortonrosefulbright.com/
White & Case (ホワイト&ケース)
1901年、ニューヨーク州ニューヨーク市に設立。コーネル大卒業のホワイト弁護士とイェール大卒業のケース弁護士が立ち上げた、いわゆるホワイトーシュー企業(アイビーリーグ卒業生による裕福層相手の優良企業を指す)である。
2021年の収益は28億米ドル。常勤換算の所属弁護士は2600人を超し、世界31か国の46事務所に従業員4800人以上を抱えている。特に1980年から2000年まで会長職にあったハーロック氏は、同社を世界規模の法律事務所へと成長させた。1994年、アメリカの法律事務所としては初めてのベトナムに事務所を構えた。また、国際仲裁業務としての評価も高く、2020年から2022年のポートフォリオ評価額が大きいとの評価も得ている。
2020年、独占禁止法の実務が高く評価された。市場をリードする実務家を最も多く在籍させている法律事務所としての評価も高い。
出典: https://www.whitecase.com/
Hogan Lovells (ホーガン・ロベルズ)
1899年にイギリスのロンドン市で創業したロベルス法律事務所と1904年にアメリカのワシントンDCで創業したホーガン法律事務所が、2010年に合併してできた法律事務所。
2021年の収益は26億米ドル。常勤換算の所属弁護士は2500人。51か所の事務所を持つ。抱える弁護士の数でいうと世界6位とされ、収益でいうと世界で12位とされている。専門は政府規制・訴訟・商事訴訟と商事仲裁・金融・知的財産など。2019年のフォーブス誌で「アメリカで最も信頼できる企業法律事務所」に選出されている。
特に商法案件に強く、「コンピューター大手のデル社への助言」「スナップチャット社との法務顧問」「コダック社への助言」などが有名。また、アメリカ最大のロビー活動会社のひとつでもある。
出典:https://www.hoganlovells.com/
Greenberg Traurig (グリーンバーグ・トラウリグ)
1967年に3人の弁護士によってフロリダ州マイアミ市で設立された、多国籍法律事務所である。2021年の収益は20億米ドル。常勤換算の所属弁護士は2200人。アメリカのほか、ヨーロッパ・中東・ラテンアメリカ・アジアに合計45か所の事務所を抱えている。抱える弁護士の数でいうとアメリカ国内で9番目に大きい法律事務所とされている。
専門は多岐にわたり、事業再編と倒産・訴訟・証券仲裁・国際貿易など、特に企業関係の法務に強いとされている。最大の事務所はニューヨーク市にある。ニューヨーク事務所の顧客にはマスメディア企業のコンデナスト出版・元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏などがいる。
若手育成にも精力的に取り組み、大学キャンパス内での面接試験で採用されなかった生徒へのセカンドチャンス研修なども行っていたことがある。
出典: https://www.whitecase.com/
アメリカの主要法律事務所3選〜日系編〜
Kawasaki Law Office(川崎法律事務所)
2019年設立。創業者の川崎弁護士は、Florida Coastal School of Lawで法務博士号を取得。ニューヨーク市内の大手法律事務所で経験を積んだのち、独立。大手事務所に所属時代は日本企業が関与する反トラスト法訴訟やホスピタリティ関係の法務などを担当した。
専門は契約交渉・企業買収・労働紛争・リカーライセンス・商業不動産取引・一般企業法務など無きにわたる。日本語と英語でのサービスが可能。創業の2019年からSuperLawyers賞を受賞し続けている。
顧客の多くは飲食店やホテル、小売店など。ホスピタリティビジネスの経営者や企業をサポートしている。会社設立や企業顧問などもこなしている。事務所はニューヨーク州マンハッタン区。個人向けのサービス、例えば移民法などは専門としてはいない模様。
出典:https://www.kawasakilaw.com/ja
Taki Law Offices (瀧法律事務所)
移民法や会社設立業務を専門とする法律事務所。永住権や駐在員査証、各種就労査証や家族の申請、延長手続き、アメリカ市民権の申請など、特に移民法に強い法律事務所。
事務所は日本人の多いカリフォルニア州のNewport Beach, Torrance 及びTexas州のFriscoに事務所を持つ。創業者の瀧恵之弁護士は、新潟大学法学部を卒業後、日本の法律事務所に勤務。そののち、インディアナ大学大学院を卒業し、アメリカで25年以上の経験を持つ。
ロサンゼルスで発行されている地方タブロイド紙の「びびなび」に、毎月コラムを寄稿している。駐在員のケースや学生からアメリカでの就職まで、査証に関する様々なケース・対処法などを簡潔に紹介している。電話・メール・オンラインだどで相談し、弁護士が方針を説明。その後、見積もりを提示し、検討時間を経たのち契約という流れ。
出典:https://www.takilawoffice.com/
Atsumi & Sakai New York LLP(渥美坂井法律事務所)
1994年に東京都千代田区にて設立。2005年に、日本国内の法律事務所としては初めて、外国の法律事務所と合弁ではない、あくまでも共同事業としての業務を開始。渥美総合法律事務所・外国法共同事業に改称。2013年に現在の事務証明に改称。
ニューヨーク州法およびカリフォルニア州法に基づき、クロスボーダーM&A・ファイナンス・株式上場・ファンド組成・規制当局への対応・知的財産権関連業務・訴訟や仲裁などの紛争解決手続き・各種契約締結に関する助言・会社設立・労務管理など、企業向けのサービスを展開している。
ニューヨーク提携オフィスは2020年設立。ニューヨーク州マンハッタン区にある。事務所内にはディクソン弁護士と奥原弁護士が常駐。海外提携事務所はロンドンやフランクフルトにもあり、日本国内には東京のほか、福岡にも設立している。提携を含むパートナー弁護士は100名を超し、顧問やアソシエイトも100名を超す。
出典:https://www.aplawjapan.com/offices/new-york
アメリカの主要法律事務所3選〜外資系編〜
Dentons (デントンズ)
ロンドンとワシントンDCを拠点としていたSNRデントンとカナダのフレイザーミルナーキャスグレンとフランスのサランズが2013年に合併。その後、2015年に中国の法律事務所である大成と合併した。この時点で、所属弁護士数が12000人と、世界最大の法律事務所となった。
2023年時点で、80か国以上で160以上の事務所を構える。2021年の収益は29億米ドル。グローバル企業とされるものの、中国系法律事務所とするのが一般的。本社は設置せず、上級幹部はロンドンとワシントンDCに拠点を置くが、そこでは法律サービスを提供していない。
世界各国の法律事務所と合併・提携して成長。最近の合併例では、インドの法律事務所であるリンク・リーガルと提携している。この提携はインドの法律事務所界では初めての世界規模の提携だといわれている。中国は漢字圏内では「大成」、他の言語圏では「Dentons」と呼ばれている。
出典:https://www.dentons.com/
Clifford Chance(クリフォード・チャンス)
1987年、クリフォード・ターナー法律事務所とコワード・チャンス法律事務所が合併してイギリスのロンドンで設立。当時、二つの事務所ともに一流とは言えない小さな事務所であったが、合併により成長。続く10年間でヨーロッパとアジアに事業を拡大。1992年にアメリカに進出した。
2023年時点で、23か国以上で34以上の事務所を構える。所属弁護士数は3300人。2021年の収益は27億米ドル。2020年時点で、ヨーロッパでもっとも多くのM&A案件を獲得。ヨーロッパ裕福層で最も人気のあるアドバイザーとも評価されている。
日本でも、2005年に外国法律事務所に関する規制が緩和さえた後、事務所開設。現在アメリカのオフィスはニューヨークとヒューストンとワシントンDCに置いている。
出典:http://cliffordchance.com/
Ashurst LLP (アシャーストLLP)
1822年、イギリスのロンドン市で3人の弁護士により設立。歴史はあるが、長く経営不振の法律事務所であった。2007年ごろから利益が急増。イギリスでの収益性トップ10社にランキングされるまでに成長。
2012年、オーストラリアの老舗であり最大手である法律事務所のブレイク・ドーソンと合併。オーストラリア内で大きな案件を扱うようになり、収益は急増していく。その後も海外拠点数を増やし、現在は海外に29か所の事務所を持ち、所属弁護士数は1600人以上、従業員は2800人を超す大企業へと成長した。2021年の収益は11億米ドル。
事業対象は合併と九州・コーポレートファイナンス・投資ファンド・独占禁止法・エネルギー・運輸・インフラ・税金・不動産・雇用など、あらゆる分野でのアドバイザーとなっている。北米にはニューヨークとロサンゼルス、テキサス州のオースティン市に事務所を構えている。オーストラリア外資系として扱われる。
出典:http://www.ashurst.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。