アメリカでは、大手会計事務所は過去5年間で減少し、現在はBig4が主流です。2023年9月時点で、アメリカ国内には約88,652社の会計事務所があります。大手会計事務所は国際企業であり、本社がアメリカ以外にあることもあります。また、個人申告には無料のオンラインソフトが普及しています。
今回は、アメリカの主要会計事務所に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要会計事務所8選〜ローカル編〜
Deloitte (デロイト)
正式名はDeloitte Touche Tohmatsu Limited。1845年にイギリスのロンドン市で創業された。多国籍会計事務所。監査や経営コンサルティングなど、業務内容は多岐にわたる。非公開会社。
2023年現在、従業員数は411951人。収益は593億米ドル。1890年にはアメリカに進出し、現在でもニューヨークに本社がある。世界各国に本社を持つことから、外資系企業ではなくローカルとして扱う。
顧客はフォーチュン500企業の90%を超える企業と言われ、世界で最も称賛されている会計事務所である。最大手だからこそできるビッグデータを使ったクラウドコンピューティングなどのテクノロジー分野で、他社を圧倒しているといえる。
社名の中にあるTohmatsuは、旧大日本帝国海軍提督で、のちに会計士になった等松 農夫蔵が設立した監査法人。1975年にトウシュ・ロスと合併、1995年に現在の社名になった。2022年、ロシアやベラルーシでの事業を中止した。
出典:https://www.deloitte.com/
PwC (プライスウォーターハウスクーパース)
2010年に商号がPwCに変わった。1849年、イギリスのロンドン市でプライス氏が会計事務所を設立。1865年に会計士のウォーターハウスと提携。一方、1854年にイギリスのロンドン市でクーパー兄弟による会計事務所が開設。1998年にこれらが合併して現在のPwCがスタート。
2023年現在、従業員数は328000人。収益は503億米ドル。世界157か国に800近くの事務所を構える。1890年にはアメリカに進出し、現在でもニューヨークに本社がある。同社も世界各国に本社を持つことから、外資系企業ではなくローカルとして扱う。英米ともにLLP。提供しているサービスは最大手らしく単に会計業務だけにとどまらない。保証・データ分析・法医学会計など、多岐にわたる。
2017年、GE社と提携しGE社内のグローバル税務チーム600人をPwCに移籍させた。同年、支払い方法にビットコインを受け入れている。会計事務所Big4 の中では初めて仮想通貨に対応した会計事務所であった。ロシアやベラルーシでの活動は停止している。
出典:https://www.pwc.com/
Ernst & Young (アーンスト&ヤング)
正式名はErnst & Young Global Limitedであるが、商号としては単にEYとしている。歴史的には1849年にイギリスのロンドン市で設立された会計事務所である。社名になっているエルンスト(英語読みはアーンスト)は、1903年にアメリカのオハイオ州クリーブランド市で設立。また、ヤング会計士による会計事務所は1906年にイリノイ州シカゴ市で設立されている。
1989年にこれらが合併し、当時世界で5位の規模である同社が誕生した。2023年現在では、従業員数は365399人。収益は399億米ドル。世界150か国に700近くの事務所を構える。2023年時点で、同社は過去25年間にわたってフォーチュン誌の「働き甲斐のある企業100社」にランキングされ続けている。
同社では財務監査・などの保証に関するサービス、税務関係のサービス、コンサルティングサービス、戦略と取引に関するサービスを柱としている。2019年、USAラグビーと提携を発表した。
出典:
KPMG (ケーピーエムジー)
アメリカ会計事務所Big4 のひとつ。アメリカ本社はニューヨーク市にある。法人本社はロンドン市にあるが、本社機能はオランダのアムステルフェーン市においている。また、税制上はスイス法人にも加盟しているという、国際企業である。
名前にあるPeatが、歴史的には一番古い。1891年にイギリスロンドン市にてウィリアム・バークレー・ピート & Co. が設立されている。その後、数多の吸収合併を経て、代表者の名前をつなぎ合わせたKlynveldPeat Marwick Goerdeler、すなわちKPMGが1987年に誕生した。
2023年現在では、従業員数は265000人。収益は346億米ドル。世界145か国に事務所を構える。建物の老朽化から、ニューヨーク本社がマンハッタンのミッドタウンから、お洒落で有名になったハドソンヤードに移転する計画がある。監査業務・アドバイザリー業務・税務及び法律サービスを柱としている。
出典:https://home.kpmg/
RSM US (アールエスエム US)
1926年、アイオワ州シーダーラピッツにて、マクグラドリー会計士によって設立。同氏は州公認会計士協会会長や全米公認会計士協会の委員を務めたという著名人であった。初期創立段階において、イギリスのローズ会計事務所、フランスのサラストロ会計事務所との合併により、その頭文字を取ってRSMとした。当初はインターナショナルもつけていただ、2015年にはRSMだけにしている。
RSMの中でも最大のマクグラドリー会計事務所がRSM USと改名している。本社はイリノイ州シカゴ市。アメリカ本社をニューヨークに置いていない会計事務所では、初めての売り上げランキング入りである。
アメリカとカナダに93か所のオフィスを持つ。監査・税務・法務・管理コンサルティングなどを軸として展開中。アメリカだけでの売り上げは36億米ドル。2023年現在、親会社のRSMでは従業員数は57000人。グループ全体の収益は80億米ドル。世界110か国以上の顧問会社を相手にしている。
出典:https://rsmus.com/
Grant Thornton (グラント・ソーントン)
1924年、EY会計事務所の上級会計士だったグラント氏が26歳で独立して設立した。本社はイリノイ州シカゴ市。1960年代から国際的に活動するようになり、1980年にはGrant Thornton Internationalグループを設立。1985年にはアメリカ国内のBig8に次ぐ、9位の規模だった。
アメリカ国内だけの同社は、従業員数15000人と、Big4よりはるかに少ない。その限られたマンパワーで工事・不動産・工業製品・法律・ヘルスケア・金融業務についての会計サービスを展開している。
アメリカ国内には59か所のオフィスを持つ。特に監査・税務・顧問の3つのサービスには定評があり、日本でも名が通った会計事務所である。2017年にはPGAツアー(ゴルフ)とマーケティング・パートナーシップ契約を結んでいる。また、オハイオ州立大学にある中間市場を調査する研究機関NCMMと契約を結んでいる。
出典: http://grantthornton.global/
CBIZ・Mayer Hoffman McCann(CBIZメイヤー・ホフマン・マッキャン)
Mayer Hoffman McCann 会計事務所は、ミズーリ州カンザスシティ市に1954年にメイヤー会計士が設立。1960年にホフマン会計士、1978年にマッキャン会計士が合併してメイヤー・ホフマン・マッキャン会計事務所とした。
1998年、税務及びコンサルティング業務をCBIZ社に合併させた。このため、税務部門とコンサルティング部門を扱うのはCBIZ MHM会計事務所が担当している。
アメリカ国内50州の会計ライセンスを取得している。カナダ会計検査院のメンバーも務める。年間売上高は1億3000万米ドル。アメリカ国内に30か所以上のオフィスを持つ。建築業界や製造業界、ソフトウェア・非営利などの業界に監査及び証明サービスを展開している。
出典:http://www.mhmcpa.com/
BDO USA (ビーディーオーUSA)
1910年、ニューヨーク市でサイドマン三兄弟によって設立。その当時、アメリカ国内には2200人程度の公認会計士しかいなかった。1913年に憲法改正があり、税制が変更された。所得税が実施されたために、個人向けの税務サービスが注目された。
1917年、ミシガン州グランドラピッズ市に事務所を設立。戦争遂行のために家具および木工会社を航空機製造に転換させたことで、同社は家具工場原価計算システムなどを開発。現在でも家具業界で同社の人気は一番高い。
アメリカ国内に60以上のオフィスと400以上の独立系アライアンス企業拠点を持つ。さらに親会社のBDO Internationalが世界162か国に1500以上もの会計事務所を展開している。年間売上高はグループ全体で128億米ドル。アメリカだけでは18億米ドルの収益、従業員は7000人を超す。現在では家具業界だけではなく、M&Aや事業再構築の専門知識を売りにしている。
出典:https://www.bdo.com/
アメリカの主要法律事務所3選〜日系編〜
KAbe & Takizawa LLP (阿部・滝沢会計事務所)
ニューヨーク州、マンハッタンから車で40分ほどの、日本人が多く住むウエストチェスター郡タリータウン市に事務所がある。2015年設立の比較的新しい会計事務所。代表は阿部直恵公認会計士と滝沢明美公認会計士。その他、8人のスタッフが業務にあたっている。
クライアントのアメリカ進出の手助けをする。監査・財務諸表の作成・給与計算・コンサルティングまで、バイリンガルスタッフが専門的な会計業務だけではなく、小さな不安や疑問にも対応。
インターンとして働く公認会計士の卵たちにも手を差し伸べたり、働く母親にも柔軟な勤務時間対応をしている。顧客第一を企業理念の筆頭に挙げ、丁寧な対応を心掛けているという。代表二人は東京外資系金融会社勤務後、ニューヨーク州で経験を積んでいる。滝沢会計士はカリフォルニア州の公認会計士資格も持つ。
出典:https://www.at-cpa.com/about-us
EOS Accountants LLP (EOS会計事務所)
もとは会計事務所Big4のひとつであるアーンスト・アンド・ヤング会計事務所(Ernst & Young LLP)の日本人部門。その一部が独立する形でニュージャージー州ハッケンサック市に設立。マンハッタンとはハドソン川をジョージワシントン橋でわたってすぐの好立地から、多くの日系企業に利用されている。
その他、デトロイト・シカゴ・ヒューストン・サンノゼ・ロサンゼルス・ホノルルといった日本人が多く住む地域で企業および個人へのサービスを展開している。また、東京都丸の内にも事務所を設立。日本の親会社とアメリカの子会社の間の間に立ったり、アメリカ進出を目指す企業の手伝いをしている。
各事務所には会計・監査サービス部門と税務部門がある。現在約170名の専門職員たちがサービスを提供している。総括代表は監査・会計サービスを専門とする土屋 雅庸会計士と、税務サービスを専門とする小山 真司会計士。
出典:https://www.eosllp.com/
Saito LLP (saitouEOS会計事務所)
KPMGに勤務していた齊藤幸喜会計士が2000年に独立してできた会計事務所。齊藤幸喜会計士はニューヨーク州・カリフォルニア州・ハワイ州そして日本の公認会計士資格を保持している。また、シニア・タックス・アドバイザーの齊藤美智子会計士は、個人税を得意分野とし、駐在員や留学者などに個人税務コンサルティングや社会保険・年金についてのサービスを展開している。
ニューヨーク本社はタイムズスクエアそば。ロサンゼルス・ハワイと東京都渋谷区にも事務所を持つ。会計業務としては法人税・個人税・財務会計・監査・帳票作成など、税務としては法人税・確定申告・IRSなど。また給与計算や経理代行、決算用財務表作成やペイロール、アメリカ進出のお手伝いや会社設立のお手伝いなど、手広く対応している。
変わったところでは、月額150ドルからバーチャルオフィスのサービスがある。本格的なアメリカ進出前であるために、アメリカ住所がない場合は住所を貸出し、電話対応や荷物の受け取りなどにも対応するサービス。さらに銀行口座開設などの代行手伝いも可能という。
出典:https://www.saitollp.com/
アメリカの主要法律事務所2選〜外資系編〜
CBTA (クロス・ボーダー・タックス・アンド・アカウンティング)
アメリカに居住しているカナダ人やカナダに居住しているアメリカ人は、両国で税金を申告することが起こりえる。いわゆる二重課税問題と言われるもので、国家間で納税に関する締結がされていないと、複雑な問題になることがある。
同社は、カナダ資本の会計事務所。カナダのトロント市にあるG & G Partnership会計事務と、資産管理会社であるキーツ・コネリー・アンド・アソシエイツが提携して設立された。現在の代表であるデイビッド・レビン会計士は、G&Gで20年間勤務し、その後フロリダ州パームビーチ市で国際税務を専門として働いた経験がある。同会計士は、フロリダ州の公認会計士資格とカナダの公認会計士資格を保持している。
個人の納税申告書の作成・法人税申告書の作成・パートナーシップ税の準備・信託税の準備・相続税・贈与税・国外の銀行口座についてのレポート作成など、国際間での複雑な煩雑な手続きを専門に扱っている。
出典:https://cbta.cpa/
Wolters Kluwer(ウォルターズ・クルーワー)
もとは1836年にオランダのフローニンゲン市で創業した出版社。様々な吸収合併を繰り返し国際展開をし、現在の会社のもとになった合併は1968年であったとされている。そして1990年にはアメリカに進出した。さらに1994年にはアメリカでの法律業務を拡大する。現在では法律・ビジネス・財務・税務・会計・企業サービス・監査・リスクマネージメント・コンプライアンス・ヘルスケア市場に事業を展開している。
グローバル本社はオランダのアルフェンアーンデンライン市にあるが、法人としてはアメリカのペンシルバニア州フィラデルフィア市においている。事務所は世界180か国に展開し、世界の総従業員数は2020年現在で20000人であったという。2020年の収益は55億ユーロ。
アメリカ全土55か所に事務所を展開。取扱業務が多岐にわたるために、特に会計部門に関してはXpitax税務アウトソーシングサービスとして独立させている。WEB上からコンタクトするのが簡単である。
出典:http://cliffordchance.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。