アメリカの建設業界は、コロナ禍後の回復とインフラ投資により活況を呈しています。2021年に成立したインフラ投資法により、道路、橋梁、エネルギー施設の修繕・建設が進行中です。また、住宅市場も旺盛で、特にサステナブル建築や再生可能エネルギーの導入が注目されています。ただし、労働力不足や資材価格の上昇が課題です。
今回は、アメリカの主要建設会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要建設会社8選〜ローカル編〜
Bechtel (ベクテル)
Bechtelは、1898年に設立され、本社はアメリカのバージニア州にある。エネルギー、インフラストラクチャー、原子力、鉄道、トランスポーテーションなどの分野での大規模なプロジェクトに関与する、アメリカの大手建設およびエンジニアリング会社である。
これまで世界160か国で25,000件のプログラムに携わり、2021年度の収益は、1,750億ドルとなっている。2023年、Forbesによって、Bechtelはバージニア州のトップ雇用主のひとつに挙げられている。また、地理情報サービスプロバイダーのEsriによって、特別業績賞が授与された。
これまで、ネットゼロへの取り組みとして、再生可能プロジェクトの提供を支援してきた。その中のプロジェクトにはBechtel最大の太陽光発電施設であるIvanpahが、年間400,000トン以上の二酸化炭素排出量の削減に成功している。また、発電システムのKeyaskを利用することで、再生可能エネルギーを400,000世帯に提供できる見込みがあると発表している。
出典:https://www.bechtel.com/
Turner Construction(ターナー・コンストラクション)
Turnerは、1902年に設立され、本社はアメリカのニューヨーク州にある。建設、プロジェクト管理、施工管理、デザイン・ビルド、一般請負、建築技術、および施設管理など、建設関連の幅広いサービスを提供している国際的な建設サービス会社である。
北米を拠点とし、世界20か国に展開しており、ドイツの企業であるHochtiefの子会社である。また、10,000名以上の従業員を有し、学校や病院、スタジアムや美術館、空港、データセンター、オフィスなど、毎年1,500のプロジェクトで150億ドルの建設に携わっている。さらに、2021年の収益は、140億ドルである。
2023年「最も働きやすい職場のひとつ」「アメリカで最も多様性に優れた職場のひとつ」「アメリカで最も優れた職場のひとつ」としてそれぞれ表彰されるなど、これまでも数多くの表彰歴がある。Turnerは、個人のスキル熟練度を高めるために、建設業界に特化した専門能力開発を提供する企業ベースの「Turner University」を運営している。
出典:https://www.turnerconstruction.com/
Fluor Corporation(フルーアー・コーポレーション)
Fluorは、1912年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。石油、ガス、化学、エネルギー、インフラ、鉱業などのプロジェクト向けに、設計、建設、プロジェクト管理、メンテナンスなどのサービスを提供している大手エンジニアリングおよび建設会社である。
2022年の売上高は137 億ドルで、2023年の第2四半期の収益は前年比20%増加の39 億ドルであった。また、世界60か国以上で事業を展開し、40,000名の従業員を有している。2022年Forbesにより、「アメリカの最も優れた大規模雇用主のひとつ」、2021年にForbesにより「世界のトップ女性に優しい企業」のリストにランクイン、2022年ENRによりトップ100設計・施工会社リストで第4位に選出、Fortune 500企業の中では、259位に選出されるなど、これまでも数多くの受賞歴がある。
退役軍人、移行軍人、軍配偶者の雇用機会獲得の支援を強化している。Fluor Military Support Coalitionでは、2007年から軍人とその家族のニーズをサポートする組織に資金を提供している。
出典:https://www.fluor.com/
Kiewit Corporation(キーウィット・コーポレーション)
Kiewit Corporationは、1884年に設立され、本社はアメリカのネブラスカ州にある。輸送、上下水、電力、石油、ガス、化学、建築、鉱業などのプロジェクト向けに、建設、調達、エンジニアリング関連のソリューションを提供する北米最大のエンジニアリングおよび建設会社である。
アメリカをはじめ、カナダ、メキシコの拠点で、建設およびエンジニアリングプロジェクトを実施し、27,000名以上の従業員を有している。また、2022年の収益は135億ドルで、年々増加している。
2011年から2023年の12年連続で、Great Place to Work Institute Canadaによる最高の職場トップ 50のひとつに選出、2023年には、Engineering News-Recordのトップ400請負業者リストで 4 位に選出、2022年には、On-Site Magazineのカナダの請負業者トップ40 リストで5 位に選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
Kiewit Corporationは、エンジニアリングおよび建設業界で変化をもたらしたい従業員の扶養家族に奨学金の機会を提供し、教育支援を強化している。
出典:https://www.kiewit.com/
AECOM (エーコム)
AECOMは、1990年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。大規模な公共部門や民間企業の建設、環境、運輸、エネルギー、水資源管理、国防、都市開発向けに、設計、建設、エンジニアリング、プロジェクト管理などのサービスを提供している会社である。
2007年にはニューヨーク証券取引所の上場企業となり、2022年度の収益は131億ドルとなった。また、2023年度の第3四半期の収益は、前年同期と比較し、13%増の37億ドルとなった。Fortuneによって「世界で最も賞賛される企業」に8年連続で選出、「アメリカ最大の企業のひとつ」としてフォーチュン500の260位に選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
AECOMは、アメリカエネルギーサービス企業協会 (NAESCO) から認定された唯一のグローバルインフラストラクチャー企業のひとつとして、環境および社会への影響に関するコンサルティング、エネルギー効率サービス、再生可能エネルギーソリューションなどに力を入れている。
出典:https://aecom.com/
DPR Construction(ディーピーアール コンストラクション)
DPR Constructionは、1990年に設立され、本社はアメリカのカリフォルニア州にある。施工、設計、および運営の各段階にわたるサービスを提供する建設管理会社である。建設業界のベテランであるDoug Woods、Peter Nosler、Ron Davidowskiの3人のファーストネームの頭文字をとった社名である。
1997年以来、国内のゼネコントップ 50 社にランクされており、約8,000名の従業員と8のブランドを有している。また、北米、南米、ヨーロッパ、アジアでのプロジェクト経験を持つDPRは、アメリカ全土および世界各地に拠点を有している。2023年には、ABCグレーターボルチモア建設優秀賞を受賞、アメリカの複数の州が「最も働きやすい場所」として選出されるなど、これまでも数多くの受賞歴がある。
DPR Constructionは、無制限の助成金約1,300万ドルを提供、10,000人の若者へ建設およびキャリア教育を提供、非営利パートナーの運営サポートとして約50万ドルの無償サービスを提供など、これまで多くのコミュニティやパートナーを支援してきた。
出典: https://www.dpr.com/
Jacobs Engineering(ジェイコブス・エンジニアリング)
Jacobs Engineeringは、1947年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。インフラ、エネルギー、環境、国防、航空宇宙、およびその他の分野でのプロジェクトを支援し、建設、設計、コンサルティング、プロジェクトマネジメントなどのサービスを提供している。世界50か国以上の政府、都市、企業と提携し、約60,000名の従業員を有している。
2023年の第3四半期の収益は、前年比9.4%増の42億ドルであった。また、年間収益は、約150億ドルである。Jacobs Engineeringは、Science Based Targets Initiativeによって承認されたネットゼロ目標を設定した最初のコンサルティング会社であり、世界初の企業のひとつである。2019年以来、二酸化炭素排出量を45%削減、事業運営のために100%低炭素電力を調達している。
2023年、29年連続で英国王立事故防止協会からパトロン賞を受賞、Engineering News-Recordによって、3年連続で世界第1位のプログラム管理会社と表彰されるなど、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.jacobs.com/
Hensel Phelps (ヘンセル・フェルプス)
Hensel Phelpsは、1937年に設立され、本社はアメリカのコロラド州にある。商業施設、住宅、教育機関、医療施設、軍事施設、交通インフラなどのプロジェクトに携わる、アメリカで最大級のゼネコンおよび建設管理会社である。ゼネコン・ビルド・アメリカ賞を15回受賞、8回のNational Design-Build Awardsと30 回のDesign-Build Excellence Awardを受賞、52の国家安全賞や地方安全賞などを受賞している。
Hensel Phelpsは、高校生向けのメンタリングプログラムをサポートするACE Day of Actionを設立した。ここでは、業界のメンターと、建築、建設、エンジニアリングのキャリアにおける10代の若者のトレーニングと教育に力を入れている。また、2021年から2022年にかけて、800人以上の学生がHensel Phelpsから約300万ドルの奨学金を受け取っており、教育機会の拡大にも力を入れている。
Hensel Phelpsの開発グループは、20億ドルを超える資金調達契約を締結しており、その資金源には、地方自治体や州の補助金、非課税地方債融資、永久不動産ローンなどが含まれている。
出典:https://www.henselphelps.com/
アメリカの主要建設会社2選〜日系編〜
KAJIMA CORPORATION (鹿島建設)
鹿島建設は、1930年に設立され、本社は日本の東京都にある。建築、土木工事、不動産開発、エンジニアリング、設計、環境プロジェクト、都市開発のサービスを提供する、大手建設企業のひとつである。カジマ・ユー・エス・エー、カジマ・アジア・パシフィック・ホールディングス、カジマ・ヨーロッパ、カジマ・オーストラリア、中鹿營造、鹿島中国の6拠点で国外にも建築・開発事業を展開している。
1964年に、アメリカ初の拠点となるKAJIMA INTERNATIONALがロサンゼルスに設立された。現在は、アメリカの7都市に現地法人がある。売上高は、2兆円以上であり、毎年増加している。また、8000名以上の従業員を有している。
1956年に公益財団法人鹿島育英会が設立され、経済的に恵まれていない国内の大学生、大学院生および外国人留学生に対して、奨学金の給付援助を行っている。また、外部からの評価として、日本サインデザイン賞で入賞、ものづくり日本大賞で内閣総理大臣賞を受賞している。
出典:https://www.kajima.co.jp/welcome-j.html
TAISEI (大成建設)
大成建設は、1917年に設立され、本社は日本の東京都にある。建築、土木、鉄道、道路、トンネル、港湾、空港、環境施設、エネルギー、不動産、施設管理、国際プロジェクトのサービスを提供する日本の大手建設会社のひとつである。
国内41と国外9の拠点、8000名以上の従業員を有している。また、アメリカのマサチューセッツ州に現地法人であるTaisei USA LLCがある。さらに、2022年度の売上高は、16,427億円である。持続可能な環境配慮型社会の実現を目指し、建設事業活動によるCO2排出量実質ゼロの目標を掲げている。また、2023年度の目標として、女性管理職者数を330名、男性の育児休業取得率を100%を目指している。
2023年、サステナビリティコミュニケーション協会が選定するサステナビリティサイト・アワードにおいて優秀賞を受賞、CDPのサプライヤー・エンゲージメント評価においてサプライヤー・エンゲージメント・リーダーに3年連続で選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.taisei.co.jp/english/
アメリカの主要建設会社2選〜外資系編〜
China State Construction(中国建設)
China State Constructionは、1982年に設立され、本社は中国の北京にある。建物の建設請負、インフラ整備と投資、不動産開発と投資、電気、エネルギー開発、調査と設計、地方自治体の公益事業設計などのサービスを提供している、中国最大の建設請負会社である。
世界100以上の地域で展開しており、主要空港の4分の3、300m以上の高層ビルの90%以上は、CSCECによって建設されている。また、1985年にはアメリカ初となる拠点のチャイナ・コンストラクション・アメリカ社が、デラウェア州に設立された。2021年の新規契約額は3.53兆元で、前年比10.3%の増加である。また、純利益は514.1億元で前年比14.4%の増加である。
2022年、Fortune 500で9位、中国のトップ500企業リストで3位、IPMA国際プロジェクトマネジメントで優秀賞を受賞など、これまでも数多くの受賞歴がある。また、ケニアの子どもたちに教育用品や生活用品を寄付するなど、支援活動にも力を入れている。
出典:https://english.cscec.com/
China railway group (中国中鉄)
CRECは、1950年に設立され、本社は中国の北京にある。エンジニアリング調査、設計と建設、産業機器製造、不動産開発、資源と鉱業開発、金融投資などのサービスを提供する世界最大の建設およびエンジニアリング請負業者のひとつである。
アジア、アフリカ、ヨーロッパ、南米、大西洋など、世界90以上の国と地域でプロジェクトを実施し、約290,000名の従業員を有している。また、2022年度の収益は、560億人民元である。CRECは、中国の電気鉄道の90%、中国のすべての鉄道の3分の2以上、高速道路の8分の1、都市鉄道輸送プロジェクトの5分の3を建設した。
CRECは17年連続でフォーチュングローバル500に選出、フォーチュングローバル500リストで34位、中国のトップ500企業の中で5位にランクイン、科学技術省、SASAC、全中国労働組合連盟によって中国初の「革新的な企業」グループに選出され、127の国家科学技術進歩賞を受賞している。また、現在18,568件の特許を保有している。
出典:https://www.randstad.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。