アメリカでは、在宅勤務の普及により、都市部でオフィスの空室が目立つようになっています。大手不動産デベロッパーは長期的には楽観視しているものの、現在のオフィスビルの10〜20%は、撤去や使用目的の変更、大規模なリノベーションが必要とされています。特に注目されているのはサンベルト地帯で、ナッシュビル、ダラス、アトランタ、フロリダなどが復調しています。一方、北東部や中西部は関心が薄れています。不動産市場は住宅ローン金利上昇と供給増で変化が起きています。
今回は、アメリカの主要不動産デベロッパーに焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要不動産デベロッパー9選〜ローカル編〜
Alliance Residential (アライアンス)
2022年度に手掛けた不動産施設の数は13480件で、ランキング1位。前年度も2位という、アメリカ賃貸住宅用不動産デベロッパー最大手。手掛けた物件は累計115000ユニットとしている。本社はアリゾナ州スコッツデール市。本社以外に、19か所の地方事務所を持つ。現在のところ、東部・西部・南部の16州で39か所の大都市市場にてデベロッパーとしての開発・建設・販売を手掛けている。
郊外の高級住宅ブランド「Broadstone」、労働者向けの手ごろな物件の「prose」、老人ホームブランドの「Holden」などの開発も手掛けている。関連会社で、工業用倉庫と流通開発のアライアンス・インダストリアルがある。
取扱業務として「デベロップメント」「工事」「許可取得」「資産運用管理」などがあげられる。特に不動産開発デベロップメントに関しては、投資家・金融機関などから住宅用不動産デベロッパーとして高く評価されている。
出典:https://allresco.com/
Greystar Real Estate Partners(グレイスター不動産パートナーズ)
2022年度に手掛けた不動産施設の数は11351件で、ランキング2位。前年度は1位という、国際不動産デベロッパー及び不動産管理会社。手掛けた物件は累計803000ユニットとしている。
本社はサウスカロライナ州チャールストン市。本社以外に、66か所の地方事務所を持つ。従業員数は2200名を超す。2023年現在で740億米ドルの総資産を運用している。2023年現在、アメリカ最大のアパート管理会社でもある。アメリカのみならず、南米・ヨーロッパ・アジア太平洋に、あわせて224市場に進出している。創業は1993年。世界進出は2013年にイギリスでの事業が最初としている。
大学と提携して学生向けの住宅開発なども手掛けている。このポートフォリオはアメリカ国内だけではなく、フランスやチリなどでも展開している。他業種同様、吸収合併・買収などを繰り返している。
出典:http://greystar.com/
Mill Creek Residential(ミルクリークレジデンシャル)
2022年度に手掛けた不動産施設の数は10877件で、ランキング3位。前年度も3位という、アメリカ不動産デベロッパー。手掛けた物件は累計275000ユニット以上、250億米ドル以上の取引を実行してきたという。
本社はフロリダ州ボカラトン市。現在の形での創業は2011年。「投資管理」「デベロッピング」「工事」「買収」「資産管理」の5つの部門に分かれる。前身の不動産会社としては1993年には操業していた。ゆっくりと成長してきた同社だが、コロナ後の2022年から2023年にかけて急成長している。吸収合併・買収などが主な理由ではあるが、再開発プロジェクトや複合用途施設の建設、また、2020年には戸建て賃貸市場に参入したことが大きい。
創設者はウィリアム・C・マクドナルド氏。現在は会長兼CEO兼社長の肩書を持つ。同社創設前は、トラメル クロウ レジデンシャル社のアメリカ東部地区常務取締役を務めていた。また現在全国集合住宅評議会のメンバーでもあり、アーバン・ランド・インスティテュートの管理理事でもある。
出典:https://www.fluor.com/
Wood Partners(ウッドパートナーズ)
2022年度に手掛けた不動産施設の数は10650件で、ランキング4位。前年度も4位という、アメリカの総合不動産デベロッパー。手掛けた物件は累計79000ユニット以上、141億米ドル以上の取引を実行してきたという。
本社はジョージア州アトランタ市。アメリカ国内21か所に事務所を持つ。非上場企業。現在の形での創業は1998年。デベロッパー部門は用地の選択・土地の権利関係、資金調達といった開発アプローチを、「角事務所の取締役に全権委任する」としている。
コロナ禍により2021年度の実績が落ち込んだが、2022年にはコロナ前にまで回復。需要の拡大により、2023年度は記録的な受注が続いている。アメリカ東海岸・西海岸・中西部・南部の市場を開拓中。「デベロップメント」「買収」「資産管理」の3つの部門を企業の柱として稼働させている。
出典:https://www.woodpartners.com/
Trammell Crow Residential(トラメル・クロウ・レジデンシャル)
父親も不動産デベロッパーであった、テキサス州ダラス市出身の不動産デベロッパーであるフレッド・トラメル・クロウ氏が1948年、州内にあるトリニティ川のほとりに建てた倉庫街を、工業団地に育て上げたことが創業起源とされている。
2022年度に手掛けた不動産施設の数は9030件で、ランキング5位。前年度も5位。1986年のウォール・ストリート・ジャーナル紙には、同社が当時、アメリカ最大の不動産デベロッパーであると書かれている。本社は現在もテキサス州ダラス市。2006年にCBREグループに買収され、完全子会社化された。現在はクロウ・ホールディングス社の傘下にトラメル・クロウ・レジデンシャル、クロウ・ホールディングス・インダストリアル、クロウ・ホールディングス・オフィスが独立して運営されている。
コロナ禍により2021年度の実績が落ち込んだが、2022年にはコロナ前以上に回復。不動産需要の拡大により、2023年度は記録的な受注が続いている。
出典:https://www.crowholdings.com/
Toll Brothers Apartment Living (トールブラザーズアパート)
ロバートとブルースのトール兄弟により、ペンシルバニア州フォートワシントン市に1967年に創業。住宅および商業用不動産デベロップ会社である。2020年には、住宅建設収益に基づいて、アメリカで5番目に大きな住宅建設会社であった。
2022年度に手掛けた不動産施設の数は5250件で、ランキング6位。前年度は11位だったので、大きな躍進を遂げたといえる。コロナ禍であっても大きな落ち込みはなく成長。シニアアパートの「アクティブアダルト」、住宅部門の「アパートメントリビング」、学生寮の「キャンパスリビング」、都市部の高層マンション「シティリビング」のブランドを展開中。
2022年のグループ全体の収益は103億米ドル。グループ全体の従業員は5200人という。不動産デベロッパーとしての業務のほか、関連業務の住宅ローン・保険・ホームセキュリティ・造園なども手掛けている。
出典: http://tollbrothers.com/
Quarterra Multifamily (クアルテラ・マルチファミリー)
フロリダ州にある老舗住宅建設会社が親会社である、集合住宅の投資・デベロップメント・建設工事・不動産管理を担う、総合デベロッパー。
2022年度に手掛けた不動産施設の数は5224件で、ランキング7位。前年度は24位だったので、非常に大きく躍進を遂げた。前年度は2734件だったので、倍増近い結果であった。これは、同社がアメリカ北東部の4州を除く、全米に展開したことに加え、郊外の住宅地開発の需要がコロナ禍により非常に高まったことが理由といえる。
社内部門には「資産管理部門」「集合住宅管理部門」「集合住宅デベロッパー部門」「工事部門」「小家族用マンション部門」「小売店舗部門」に分かれる。
集合住宅デベロッパー部門の全米事務所は合計17か所。また、将来の可能性のあるプロジェクトの開発コストに80億米ドルの予算を当てている。開発が進行中のユニットはすでに19000件も抱えている。
出典:https://quarterra.com/
JPI (ジェイピーアイ)
テキサス州アービング市に本社を置く、不動産開発デベロッパーである。同社は、集合住宅のデベロッパーであり、また建設・投資管理会社でもある。National Multifamily Housing Council (NMHC・全米集合住宅協議会)から、近年急成長している不動産デベロッパーと認定されている。南カリフォルニアにも2か所の事務所を構える。
2022年度に手掛けた不動産施設の数は5051件で、ランキング8位。前年度はトップ25のラング外だったので、非常に大きく躍進を遂げたといえる。同社は1989年創業。過去33年以上にわたり、27州の141都市に100000戸以上の住宅からなる集合住宅を350棟以上納入し、その総額は143億米ドル以上という。
元NFL選手で、政治家・ホワイトハウス機会活性化評議会の事務局長を務めたスコット・ターナーは、2023年に同社の最高ビジョナリー責任者に就任している。同社の成長と拡大に向けた包括的な戦略的ビジョンの開発と実行に焦点をあてた、指導者的役割を与えられている。
出典:https://www.jpi.com/
The NPR Group (NPRグループ)
1994年オハイオ州クリーブランド市で創業。開発した集合住宅のうちの60%にあたる5500戸は、一般的な住宅価格よりも購入しやすい価格での販売をした。2008年以降、主に中所得者向けの住宅開発を軸に成長してきている。
2022年度に手掛けた不動産施設の数は5024件で、ランキング9位。前年度も同じく9位だった。2019年と2022年はコロナやインフレ問題などで売り上げが落ち込んだが2023年は9月現在ですでに2021年を超える成長を遂げている。
これまではテキサス州以外の中部と東部に対して勢力を伸ばしてきた。このため成長が鈍化していたが、新たに西部へも目を向け始めている。現在の事務所は15州の大都市圏に置かれている。グループ全体で1000人を超す従業員を抱える。一般的な不動産デベロッパーと同じ「資産管理」「資産運用管理」「工事」「開発」などを柱としている。
出典:https://www.nrpgroup.com/
アメリカの主要不動産デベロッパー3選〜日系編〜
Daiwa House USA (ダイワハウスアメリカ)
大阪府大阪市に本社がある、住宅総合メーカーである大和ハウス工業株式会社の海外部門がDaiwa House Groupである。大和ハウスの海外進出第1号は1961年のシンガポール進出。アメリカは1976年であった。
2011年、カリフォルニア州サンノゼ市に北米現地法人本社を構える。アメリカ進出後の9年間で、分譲住宅を約10000戸建設した。日系日系不動産デベロッパーとしては、商業用・民間住宅用の不動産開発を着々と進めてきた。2014年には本社を、トヨタをはじめとする日系企業が集まり始めたテキサス州ダラス市に移転。カリフォルニア州ロサンゼルス市にも事務所を新設。さらに、2019年にはバージニア州やニューヨーク州マンハッタン市にも拠点を拡大。
現地の大手不動産デベロッパーとの提携・合弁会社設立などを通じ、賃貸住宅事業・マンション分譲事業・商業施設事業・戸建住宅事業などを展開している。ブランド「INFINUS」を提供。
出典:https://www.daiwahouse.com/English/global/americas/united_states/
Mitsui Fudosan America(三井不動産アメリカ)
三井グループの中核企業のひとつである三井不動産のアメリカ現地法人。三井不動産のアメリカ進出は、1973年にブラジルマンション開発で米国三井不動産を設立した時から。
その後の不動産デベロッパーポートフォリオとしては、1974年のカリフォルニア州サンディエゴ市の「パロマ空港ビジネスパーク工業団地」の開発など。ニューヨーク市マンハッタン区のハドソンヤード再開発プロジェクト参画に関しては、日本の不動産会社による史上最大の海外プロジェクトとして注目を浴びた。ロサンゼルスに建設中の地上42階建ての複合ビルは2023年秋に完成予定。
三井不動産アメリカ株式会社としては、約700億米ドルの資産を有する上場企業。不動産デベロッパーとしてだけではなく、不動産投資・運用管理も手掛けている。その数、すでにレントされている560万平方フィートのオフィススペースと開発中の600万平方フィートのオフィススペース、また1600戸の住宅アパート、開発中の追加賃貸ユニット5300戸が含まれる。
出典:https://www.daiwahouse.com/English/global/americas/united_states/
Takenaka Corporation USA(竹中工務店アメリカ)
竹中工務店は、日本の大手ゼネコン5社のうちのひとつである。海外事務所はアジア・ヨーロッパ・アメリカに展開している。1609年に宮大工の初代が名古屋で創業。家族経営が続けられ、現在は17代目。海外拠点は18か国となり、多国籍企業である。
イリノイ州シカゴ市周辺に事業展開しているとされる。不動産デベロップメントオフィスとしては、ニューヨーク市マンハッタン区とカリフォルニア州サンフランシスコ市に事務所を構える。アメリカ進出は1960年、サンフランシスコ市に現地法人Takenaka & Associates Inc.を設立。その後、海外各国への進出を図る。
ポートフォリオで有名なのは、1987年のカリフォルニア州サンフランシスコ市にある「ホテル・ニッコー・サンフランシスコ」の竣工と開業。また1991年にはハワイ州の「グランド・ハイアット・カウアイリゾートアンドスパ」なども竣工・開業させている。
出典:https://www.takenaka.co.jp/takenaka_e/about/oversears/
アメリカの主要不動産デベロッパー2選〜外資系編〜
Goodman Group(グッドマングループ)
商業用の不動産を所有・開発・管理するオーストラリアの不動産デベロッパー。設立は1989年、オーストラリアのシドニーにて。創業当初は工業用不動産に焦点を当てたデベロッパーであったが、現在は倉庫や大規模物流施設、オフィスパークなども取り扱う。
1995年には7500万豪ドル相当の8つの不動産を保有するグッドマンハーディー工業財産信託という社名で、オーストラリア証券取引所に上場された。その後、買収・吸収合併などを繰り返し、2007年に現在の社名になった。買収のたびに成長し、世界進出を果たし、現在では工業所有権とビジネススペースの世界最大のプロバイダーになっている。
2020年6月現在で、世界17か国に392の不動産を管理していた。その時点での利益は15億豪ドル以上といわれた。従業員数は約1000人。社内では「不動産ポートフォリオ」「デベロッピング」「資産管理」の3つの部門に分かれている。アメリカでの運用資産71億米ドル。管理物件28ユニット。CA州、NJ州、PA州に事務所がある。
出典:https://us.goodman.com/
Lépine (レピーヌ)
1953年に設立された不動産デベロッパー・投資会社である。創業者のルネ・レピーヌ氏は、当時もっとも影響力のあるフランス系カナダ人の不動産開発者のひとりとされていた。1960年代以降、カナダとアメリカで50億米ドルを超える不動産を開発してきた。
同社は1981年にモントリオールに最初のコンドミニアムを開発した業者である。その他、モントリオールのランドマークとされる多くの建物を開発している。アメリカ進出は1978年。フロリダ州フォートローダーデール市にある143戸からなる高層ビルを購入。その後、1980年代に南フロリダに複数のアパートと商業ビルを開発した。
グループ内のひとつであった集合住宅部門は1980年にカナダでも本格開始。プレミアムなリゾートスタイルの集合住宅コミュニティを構築する不動産開発業者として、高く評価されている。
出典:https://lepineapartments.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。