アメリカでは中古物件を好み、新築物件を避ける傾向があります。DIY文化が根付いており、多くの家主が修理を自分で行うため、規格が数十年変わらないこともあります。不動産仲介業者よりも担当エージェントが重視され、エージェントは独立前に業者に所属します。資格や規則は州ごとに異なり、ゾーニングが厳しいため住宅供給不足が続いています。2023年の市場では、現金購入者が26%を占め、パンデミック前より増加しています。
今回は、アメリカの主要不動産仲介会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要不動産仲介会社8選〜ローカル編〜
Redfin (レッドフィン)
現在アメリカで最大手の不動産仲介業者といわれている。2004年、ワシントン州シアトル市にて創業。これまでのアメリカ式不動産仲介業の伝統を打ち破り、どちらかというと日本的な商法で成功している。
同社のエージェントは個人事業主ではなく、会社員として勤務しており、給与を受け取っている。結果、同社を通じて売買する顧客は手数料が安くなる。売り手側のエージェントも含めて節約が可能で、これまで平均7000米ドルの節約が可能といわれる。
2022年の収益は22億8000万米ドル。社員数は5572名。直営店はアメリカ国内とカナダの一部に100事務所以上、販売代理店(人)は全米各地に約2000人以上在籍し、現在でも徐々に増えている。2021年には老舗の賃貸物件情報紙および情報サイトApartment Guideや Rent.comなどを買収している。また、2022年には住宅ローン会社も買収し、現在は不動産仲介業だけでなく、住宅ローン業も並行して提供している。
出典:https://www.redfin.com/
Re/Max (リマックス)
社名はReal Estate Maximumsの略。世界約100か国にも展開しているアメリカの老舗不動産仲介業者。1973年コロラド州デンバー市で創業。同社の特筆すべき点は、フランチャイズ制度にある。創業後、間もなくフランチャイズ形式で展開している。
海外展開は1977年のカナダが初めで、1987年にはカナダでトップの不動産仲介業者に成長している。1994年には欧州に展開している。1996年には豪州、2014年には中国進出も果たしている。
2015年の収益は1億8000万米ドル。社員数は、同社の正社員で500名程度。インターネットへの取り組みは早く、1994年には不動産仲介業者向けの衛星トレーニングシステムを展開。2006年には競合他社が販売している住宅も含め、アメリカ国内で販売している物件をすべてインターネット上に掲載した。住宅ローン仲介フランチャイズ、住宅ローン処理サービスを提供するフィンテック企業もブランドとして持っている。
出典:http://remax.com/
Coldwell Banker (コールドウェル・バンカー)
アメリカ国内の大手不動産仲介業者の中では、非常に古い老舗のひとつである。創業は歴史的な自然災害であったサンフランシスコ大地震があった1906年。地震による建物の倒壊・住宅不足を見て、創業者であるコールドウェル氏が立ち上げたとされる。
現在は世界40か国以上に100000を超える代理店と2200の事務所がフランチャイズ契約をしている。海外展開は1996年のカナダが最初。同社2022年の第3四半期において、フランチャイズしている総売り上げが62億米ドルを超えていると発表している。
1981年にはアメリカ最大手のデパートであるシアーズに買収された。その後、1993年にはカリフォルニア州の投資会社であるフリー門徒に売却され、1996年には主に不動産と旅行業を手掛けるセンダントに売却されている。その後、2022年にAnywhere Real Estateが親会社になった。毎年住宅価格ガイドHome Listing Reportを発行している。現在の本社はニュージャージー州マディソン市。創業者のコールドウェル氏は生涯を通じて同社で働いたという。
出典:http://coldwellbanker.com/
Keller Williams Realty(ケラー・ウィリアムズ・リアルティ)
2022年現在で、アメリカ国内最大の不動産仲介業者フランチャイズであり、売上高はアメリカ国内最大である。本社はテキサス州オースティン市。同社のプレスリリースによると世界中に約1100の事務所と200000人以上の契約エージェントを抱えるという。
Forbesなどの出版物に優良企業のひとつとして扱われている。もとは1983年に、オースティン市地域の不動産仲介業者として創業。創業から2年後には、72人のエージェントを抱える地域最大の不動産仲介業者に成長している。
2012年には初の海外フランチャイズをベトナムで展開。その後、インドネシア・アフリカ南部・ドイツ・オーストリア・スイス・トルコ・イギリスなどに展開。また2017年ごろから不動産向けの人工知能アプリや仮想アシスタントなどの開発を行っている。プレスリリースによると、2022年第3四半期で全エージェント総計で3814億米ドルの取引があったという。
出典:http://www.kw.com/kw/
HomeServices of America(ホームサービス・オブ・アメリカ)
ミネソタ州ミネアポリス市に本部を置く、不動産仲介業者。1998年創業。不動産仲介サービスのみならず、住宅ローン・不動産業フランチャイズ・エスクロー業務・保険・移転サービスなど、住宅に係る様々なサービスを取り扱っている。
親会社はバークシャー・ハサウェイ。1999年に買収された。それ前後も、他の業界と同じように同業他社の買収・吸収合併などを繰り返して成長している。2017年には中国の富裕者個人購入者にアクセスを提供する、中国最大の海外不動産ポータルサイトるJuwai.comと戦略的提携を結んでいる。また同年には、不動産仲介業者の老舗であったLong & Fosterを買収している。
プレスリリースによると、2022年の売上高は1680億米ドル。44500人を超える契約エージェントと、928の事務所を抱えるという。
出典:https://www.homeservices.com/
Sotheby’s International Realty(サザビーズ・インターナショナル・リアルティ)
美術品や高級品のオークションで知られるセザビーズが作った不動産仲介業者。取り扱うのは主に高級住宅不動産といわれているが、実際には必ずしも市場の最高価格物件に限定しているわけではない。現在の本部はニューヨーク市。
2004年に、現在の親会社であるエニウェア・リアル・エステート社と長期戦略的提携を結んだ。この契約で、フランチャイズのシステムが完成したという。さらに、2012年には裕福層を狙った農場と牧場のリストを掲載するウェブサイトを立ち上げた。業界第1号として、当時は注目を浴びた。その後もウォーターフロント・ゴルフ・スキー・歴史的建造物などのマーケティングWEBサイトが立ち上げられている。
同社は世界中にオフィスを構えており、81か国に25000人のエージェントがいるという。実際にはアントワープ、パリ、ダブリンなどの欧州諸国とアメリカ国内が中心となっている。また、同社のウェブサイトには年間売り上げが2040億米ドルを超えているとしている。
出典:https://www.sothebysrealty.com/eng
Compass (コンパス)
アメリカ不動産仲介業者の中では比較的新しい会社。2012年にニューヨーク市で創業。創業者は元ツイッターやグーグル、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズなどで働いていた若者たち。彼らのスタートアップ企業であった。
創業初期はフルタイムで働く、会社から給与を出すブローカーを雇用し、賃貸物件のみを対象としていた。2014年には独立している不動産会社と契約し、仲介手数料の一部を受け取るというビジネスモデルに変更。これが大成功を収める。その後、数多の同業他社との吸収合併・買収を繰り返し成長。
同社が2016年にリリースした、不動産市場のリアルタイムデータを提供するモバイルアプリがヒット。現在ではこれに似たアプリが一般化している。全米67地点に300を超えるオフィスを抱え、従業員数は3200人という。また、2022年第3四半期の利益は14億米ドルだった。
出典: https://compass.com/
eXp Realty (エクスプ・リアルティ)
従来の不動産仲介業者の在り方を覆す方法として、実オフィスをもたない、クラウドベースのオフィスで運営する不動産仲介業者である。この方法は世界初であり、ネットを使った不動産物件探しに拍車をかけるきっかけとなった。
創業は2009年。不動産仲介に発生するプロセスをできる限り合理化し、実オフィスに関連するコストを可能な限り削減することに重点を置いている。2012年から国際展開を開始。カナダから始まり現在では24か国に展開している。同業他社と違って、同業者の買収・吸収合併はもちろんのこと、データ管理会社や検索エンジン技術会社など、ネット関連の企業を買収し成長している。
同社のプレスリリースから、世界で86000人を超えるエージェントを抱えており、2022年第3四半期の不動産仲介業者からの収益総額は12億米ドルであったとされている。
出典:https://exprealty.com/
アメリカの主要不動産仲介3選〜日系編〜
Person Realty, Inc (パーソン不動産)
1987年、カリフォルニア州ロサンゼルス市ダウンタウンにて会社設立。社長は茶谷孝(ちゃたにたかし)氏。カリフォルニア州では老舗の日系不動産仲介業者である。個人と法人の両方を取り扱う。
会社設立時に必要な弁護士・公認会計士と業務提携していたり、日本語によるカリフォルニア州不動産免許取得講座なども開いている。同社のWEBページにはカリフォルニア州内で最大の日系不動産仲介業者とある。カリフォルニア州公認の不動産ブローカーが10名、カリフォルニア州公認セールスエージェントが90名所属しているという。
提携ブローカーや提携エージェントは随時募集している。頻繁ではないにせよ、ブログも更新されており、住宅情報などを発信している。その他、不動産知識に関するページもあり、日本語で正しく理解できるように配慮されている。カリフォルニア州物件情報検索システムをWEBページ内に内蔵し、ネットによる検索を簡単にしている。
出典:https://www.personrealty.com/
Starts New York Realty, LLC(スターツニューヨーク)
東京日本橋に本社を構えるスターツコーポレーション株式会社のアメリカ支店。アメリカにはハワイ・サンノゼ・ビバリーヒルズ・ロサンゼルス・ニューヨーク・グアムに事務所を構える。ニューヨーク店は2005年設立。マンハッタンのタイムズスクエアに事務所がある。賃貸物件のほか、店舗やオフィス、売買や投資物件、いわゆるウィークリーマンションなども運営している。
日系不動産仲介業者が主な顧客とする駐在員家庭だけではなく、留学生にも広く物件斡旋を手掛けている。WEBページ上には、見栄えの問題を優先したのか、高級物件を主に掲載しているが、実際には手ごろな物件も多く取り扱っているという。
提携ブローカーや提携エージェント、不動産管理者、営業アシスタントは随時募集している。最近は更新されていないようだが、NY生活情報なども発信されていた。
出典:https://www.startsnewyork.com/
Yamada Realty (山田不動産)
カリフォルニア州にあった北米トヨタ自動車本社がテキサス州ダラス市に移転した。ダラス市には、日本式の新幹線を走らせる計画もある。ここ数年、テキサス州の法人数は増加傾向にある。現地日本人の間で、丁寧な対応をしてくれると有名な不動産仲介業者が、山田不動産である。
WEBページには連絡先などの必要最低限の情報しか掲載されていない。ダラス市には会社名EXP Realty, LLCで山田由美リアルターが、ヒューストン市には会社名Seeto Realty Incで山田美央リアルターが常勤している。また、不動産管理会社としてYUHA Dream Homes, LLCを経営している。
個人経営の不動産仲介業者は北米の各地に存在する。多くは大手不動産仲介業者に属し、日本人対応チームなどと呼ばれるグループで営業していることが多い。山田リアルターも大手不動産仲介業者で数十年の経験を持っているという。フェイスブックやXなどでも現地の情報を発信している。
出典:https://www.yuhadreamhomes.com/
アメリカの主要不動産仲介2選〜外資系編〜
CANADA TO USA INC(カナダ・トゥー・USA)
同社は、アメリカに在住するカナダ人やアメリアを訪問するカナダ人に向けた、様々なサービスを展開している。メンバーシップは無料。登録するとホテルや航空券などが最大70%オフになる特典もあるという。
アメリカの不動産売買に関して、専門的なアドバイスと専門的なサービスを提供している。専門家チームには、アメリカの不動産仲介業者・アメリカの住宅ローン銀行とブローカー・国境を越えた税務アドバイザー・為替ブローカーなどが含まれている。
全米50州の不動産に対してサービスを展開中。同社はアメリカの不動産を売買する、すべてのカナダ人に無料の相談を受け付けている。またカナダ人向けに特別に設立された特殊な住宅ローン商品を提供する、アメリカの銀行及び金融業者約20社と提携があるという。WEBページからカナダ人対象の無料相談窓口がある。
出典:https://www.canadatousa.com/real-estate/
NAREIG International Realty(ナレイグ国際不動産)
ワシントン州ベルビュー市に本社がある、中華系の不動産仲介業者である。同社のWEBページには、中国人投資家向けの不動産仲介とあり、本社のあるシアトルのほか、ニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルスなどの物件を手掛けている。
同社は、中国の大手不動産WEBポータルサイトのbeimeigoufang.comと提携している。これにより、中国国内のハイエンド投資家にアプローチしているという。創業は2012年。2017年にはボストンやハワイにもオフィスを構えている。同社の目標は、アメリカで中国語を話す顧客の代理を専門とする、不動産仲介業者になることであるとしている。
同社は住宅用不動産・商業用不動産・土地開発・それらに関連するコンシェルジュサービスを提供する、フルサービスの不動産仲介業者であるとされる。更新頻度は低いがXやフェイスブックも運営中。
出典:https://www.nareigus.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。