アメリカの水道業界は、公共機関や民間企業が運営する約50,000の水道システムで構成されています。多くは地方自治体が運営し、老朽化したインフラや水質問題が課題です。投資不足や水源の枯渇が懸念されており、近年では水の安全性や持続可能性への取り組みが強化されています。
今回は、アメリカの主要水道会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて13社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要水道会社8選〜ローカル編〜
American Water Works
American Water Worksは、1881年に設立され、本社はアメリカのコロラド州にある。水供給、廃水処理、再生可能エネルギー、環境サービスに関連する事業を展開しているアメリカ国内最大の水道事業会社のひとつである。
American Water Worksの会員には、アメリカ全土の廃水のほぼ半分を処理する4,300以上の公益事業団体が含まれており、飲料水の約80%を供給している。また、51,000人の会員を有している。さらに、国内のみならず、国外でも国際的な機関や団体と連携し、イノベーション、ベストプラクティス、情報を共有する機会を設けている。
American Water Worksは、1966年にWater Research Foundation、1991年にWater For People、2015年にWater Equationと、安全な水に特化した3つの組織の設立を支援した。2022年の収益は37億ドルであり、前年の収益の39億ドルと比較し、減少している。また、ダイバーシティ&インクルージョン賞やボランティア・オブ・ザ・イヤー賞など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.awwa.org/
Essential Utilities(エッセンシャル・ユーティリティーズ)
Essential Utilitiesは、1968年に設立され、本社はアメリカのペンシルベニア州にある。住宅や商工業の顧客を対象に、上場水道、廃水、天然ガスの供給サービスの提供、公共事業としての上下水道施設の運営・保守を請け負っている、アメリカ最大の水道会社のひとつである。
主要ブランドには、アメリカ国内8州で300万人以上の人々に廃水と水道サービスを提供しているAqua、アメリカで消費されるエネルギーの4分の1以上を輸送する天然ガスサービスPeoplesがある。また、これらのサービスは、9つの州の約500万人に提供されている。
2023年の第2四半期の収益は、4億3,670万ドルであり、前年同期の収益の4億4,880万ドルと比較し、減少している。また、2022年度の売上高は、22億9,000万ドルであり、前年度の売上高の18億8,000万ドルと比較し、21.8%増加している。Essential Utilitiesは、10州にわたる拠点全体の顧客、家族、企業、コミュニティの生活の質を向上させる非営利団体の活動を支援するために、Essential Foundationを設立した。
出典:https://www.essential.co/
California Water Service Group(カリフォルニア・ウォーター・サービス・グループ)
California Water Service Groupは、1926年に設立され、本社はアメリカのカリフォルニア州にある。住宅用、商業用、工業用、公共機関が使用する水と防火用の水を確保、処理、試験、保管、配送などのサービスを提供する水道会社である。また、アメリカでは、3番目に大きな投資家所有の公開水道会社である。
現在は、カリフォルニア州をはじめ、ワシントン州、ニューメキシコ州、ハワイ州、テキサス州の5拠点に子会社を有し、200万人以上の人々にサービスを提供している。2023年の第3四半期の収益は、2億5,500万ドルであり、前年同期の収益の2億6,630万ドルと比較し、4.3%減少している。
S&Pグローバルレーティングによって、ESG評価スコアで100点中74 点を獲得、北米の水道事業会社の最高ランクのひとつであるISS ESG企業評価Bを取得、Newsweekによって、持続可能性と市民権への取り組みを評価し「世界で最も責任ある企業」のひとつに選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.calwatergroup.com/
American States Water(アメリカン・ステイツ・ウォーター)
American States Waterは、1929年に設立され、本社はアメリカのカリフォルニア州にある。水事業、電気事業、受託事業の3事業を展開し、アメリカ国内の住宅、商業、工業関連の顧客に、水の購入、生産、配水、販売、配電事業のサービスを提供している。
子会社には、水道事業会社であるGolden State Water Company、電力事業会社であるBear Valley Electric Service, Inc.、契約サービス会社であるAmerican States Utility Services, Inc.を有し、9つの州で100万人以上の人々にサービスを提供している。また、水道システムサービスの政府契約者として、アメリカ政府と50年の民営化契約を結んでいる。
2023年度の第2四半期の収益は、1億5,740万ドルであり、前年同期の収益の1億6,142万ドルと比較し、減少している。また、2022年度の収益は、49億1,530万ドルであり、前年度の収益の49億8,850万ドルと比較し、減少している。
ESGレポートによると、取締役会の女性役員は62.5%を占め、8人のうち5人が女性を達成、2035年までに温室効果ガス排出量を60%削減する目標を掲げている。
出典:https://americanstateswatercompany.gcs-web
Select Water Solutions(セレクト・ウォーター・ソリューションズ)
Select Water Solutionsは、2008年に設立され、本社はアメリカのテキサス州にある。エネルギー産業向けに、水の調達、移送、処理、流体処理、封じ込め、井戸の試験と流出、廃棄ソリューションなどの水管理ソリューションを提供する企業である。
主な事業内容として、水道サービス、水インフラ、油田化学品の3つの事業がある。また、約5,000人の従業員を有している。2023年の第2四半期の収益は、3億8,900万ドルで、前年同期と比較し、4%増加した。また、2022年度の収益は、14億ドルであり、前年度の収益の7億6,500万ドルと比較し、増加している。
2022年の持続可能レポートによると、水の総売上高に占める再生水の割合が前年比41%増加を達成、排水処理量が前年比66%増加、2年間で67%の化学物質の流出を削減、50%以上が少数民族で構成され、管理職の従業員の46%が民族や性別の多様なグループで構成されているなど、持続可能なソリューションに対する取り組みを強化している。
出典:https://www.selectwater.com/
Xylem (ザイレム)
Xylemは、2011年に設立され、本社はアメリカのワシントンD.Cにある。公共施設、工業、住宅、商業ビル向けに、水供給、廃水処理、水の浄化、水の運搬、水のモニタリングなどのサービスを世界150か国以上に提供している。22,000名以上の従業員が在籍し、2022年には、水、持続可能性、地域社会の課題に取り組むために157,000時間のボランティア活動を行っている。
2023年の第3四半期の収益は、21億ドルで、前年同期の収益の13億ドルと比較し、増加している。また、2022年度の収益は、55億ドルであり、前年度の収益の51億ドルと比較し、6%増加している。さらに、2023年度の収益は、約73億ドルになると予想されている。
Fast Companyによって、2022年の傑出したイノベーターにとって最も優れた職場として選出、Barron誌によって2021年の最も持続可能な企業100社リストに選出、Newsweekによって2年連続で「アメリカで最も責任ある企業」に選出など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.xylem.com/en-us/
General Electric(ジェネラル・エレクトリック)
General Electricは、1889年に設立され、本社はアメリカのマサチューセッツ州にある。水処理、水質モニタリング、水力発電など、水関連のサービスを提供する企業である。また、それ以外にも、航空宇宙、ヘルスケア、電力、再生可能エネルギー、鉄道、デジタルソリューションの6つの主要事業を展開する企業である。2023年の第3四半期の収益は、173億ドルであり、同年前期の収益の167億ドルと比較し、増加している。
従業員の66%がアメリカ国外に拠点を置き、従業員の国籍は約170か国に及ぶ。また、従業員の22.8%、役員の29.5%は女性で占めている。さらに、1997年には、女性のプロフェッショナルな才能を育成することを目的としたWNが設立された。
General Electricは、2000名の会員を有し、障害のある人々やその家族の繋がりをサポートするDAN、退役軍人の採用や能力開発を目的とし2009年に設立されたVNなど、30年近くにわたり、多様な人材の雇用と育成を支援してきた。
出典: https://www.ge.com/
York Water Company(ヨーク・ウォーター・カンパニー)
York Water Companyは、1816年に設立され、本社はアメリカのニューヨークにある。75,000以上の住宅、事業所、公共機関の顧客などに対し、水供給と廃水処理のサービスを提供している。また、York Water Companyは、アメリカで最も古い投資家所有の公益事業である。
ペンシルベニア州ヨーク郡、アダムズ郡、フランクリン郡、ランカスター郡内の55のコミュニティへ、毎日2,000万ガロン近くの水を供給し、210,000人以上の人々がYork Water Companyの水を利用している。2022年度の収益は、195億ドルであり、前年度の収益の169億ドルと比較し、増加している。
2009年にペンシルベニア州が教育改善税額控除プログラムを開始して以来、地域の非営利団体を支援するために、700万ドル以上を寄付など、公教育、市民団体、医療提供者、支援金による年次地域奉仕プロジェクトなどのさまざまな組織の支援をしてきた。
出典:https://www.yorkwater.com/
アメリカの主要水道業界3選〜日系編〜
Kurita Water (栗田工業株式会社)
Kurita Waterは、1949年に設立され、本社は日本の東京都にある。水処理薬品、水処理装置、メンテナンス・サービスの3つの事業領域に基づき、水処理薬品および水処理装置の関連事業、土壌・地下水浄化、化学洗浄・精密洗浄、水質分析・環境分析などの事業を展開している国内最大手の企業である。
世界中の58社に7,600名以上の従業員と、国内には20,000件の顧客を有している。また、年間約20億ドルの収益がある。さらに、海外売上高は、3,446億円である。1996年には、水処理装置の販売およびメンテナンス・サービスを行うKurita America Inc.が、アメリカのミネソタ州に設立された。また、2021年には、Keytech Water Management社を買収し、カナダでの事業展開を拡大した 。
日本オープンイノベーション大賞にて環境大臣賞を受賞、Kurita Dropwise Technology®を活用した「ファインスチーム™」が、紙パルプ技術協会の佐々木賞を受賞など、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.kurita.co.jp/english/index.html
Ebara Corporation (荏原製作所)
Ebara Corporationは、1912年に設立され、本社は日本の東京都にある。ポンプ、コンプレッサ、タービン、冷却システム、産業用機械、エネルギーシステム、環境技術など、産業向けの機械工学製品と関連サービスを提供している。
グループ全体で収益は、6,808億円である。また、国内外で116社の関連会社と19,095名の従業員を有している。Ebara America Corporationをはじめ、精密・電子事業のEbara Technologies Incorporated、圧縮機、蒸気タービンの販売・アフターサービス事業のElliott Company、ポンプの販売・アフターサービス事業のEBARA PUMPS AMERICAS CORPORATIONと、アメリカには4つの子会社がある。
2020年度時点では、女性比率は27.8%、管理職社員に占める女性比率は6.5%となっており、2030年までに女性取締役比率を30%以上とする目標を掲げている。東南アジア諸国をメインに技術指導を通じた国際協力活動を目的とし、1989年に荏原畠山記念基金が設立された。これまで200件以上のセミナー、ワークショップ、研修コースを20カ国以上で開催し、合計13,513名が参加した。
出典:https://www.ebara.co.jp/en/
アメリカの主要水道会社2選〜外資系編〜
Veolia (ヴェオリア)
Veoliaは、1853年に設立され、本社はフランスのパリにある。廃棄物の収集、処理、リサイクル、エネルギー回収、上下水道システムの運営、汚水処理、飲料水供給などのサービスを提供している、世界最大級の企業である。
2022年には、1億1,100万人へ飲料水を、9,700万人に衛生設備を提供し、44テラワット時の発電量と6,100万トンの廃棄物を回収した。また、世界5大陸に事業を展開し、約220,000人の従業員を擁している。2022年の収益は、9年連続増加し、428億8,500万ユーロとなった。また、純利益は11億6000万ユーロであった。さらに、2023年に上半期の収益は、227億5,500万ユーロとなった。
大手建設業界出版物であるEngineering News Recordの環境企業トップ200で、Veoliaはアメリカで第1 位として選出、Black Opportunity Employer Journalによって、Veolia North Americaは最優秀雇用主として選出、米国労働安全衛生局によって、職場の安全性に関して最高レベルの評価が授与されるなど、これまでも数多くの受賞歴がある。
出典:https://www.veolianorthamerica.com/
Siemens (シーメンス)
Siemensは、1847年に設立され、本社はドイツのミュンヘンにある。電力、エネルギー管理、医療、工業自動化、デジタルテクノロジー、交通、建設、環境技術など、多岐にわたる産業分野で事業を展開している。また、約311,000名の従業員を有している。
水事業では、水の持続可能な管理、浄水処理、排水処理、水質向上など、持続可能な水サービスを提供している。また、世界80か国以上で、Siemens認定の水道業界の専門家窓口やソリューションパートナーが在籍している。2022年度の収益は、720億ユーロあり、前年度の収益の623億ユーロと比較し、8.2%増加した。また、純収益は44億ユーロであった。
ドイツ、ポルトガル、カナダ、シンガポールなどの社会的に恵まれない家庭へのデジタルデバイスの提供や、きれいな水、医療、教育、収入創出を通じて、インドの72のコミュニティ支援など、教育やテクノロジーのアクセスを支援するため、2022年は約4.5億ユーロの投資を行った。
出典:https://www.siemens.com/global/en.html
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。