【統計データで解説!】アメリカの建設・インフラ・環境業界の最新トレンド・業界事情

アメリカのインフラは老朽化が進んでおり、橋や道路、水道管などの修繕が急務です。連邦政府はこれに対応するため、2021年にインフラ投資法を成立させ、約1.2兆ドルを公共交通機関、電力網、ブロードバンド拡充などに充てています。特に電気自動車の普及促進やクリーンエネルギーへの移行が注目されており、インフラの近代化が経済成長と環境保護に寄与することが期待されています。

この記事では、業界を中心に、統計データを用いてアメリカの建設・インフラ・環境業界の最新情報をお届けしていきます!

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目次

アメリカの建設事情〜統計データ〜

業種別現場監督雇用数

コロナ禍により中断していた建設業界の動きが再活性化し、全米の、特に都市圏での建設ラッシュが目立つようになってきた。特に開発が進んでいるのは商業用ビルディングであり、都市近郊であれば住宅地が続いている。建築現場も多くの専門チームによって成立しており、それぞれにマネージャー(現場監督)が存在する。

マネージャーは絶対的な存在であり、仕事の割り振りなども権利が与えられている。商業用ビルとなると、細かく専門分野が分かれているため、マネージャーの数も当然多くなっている。単純作業が多い道路建設や土地分譲地開発の場合と比較すれば、その雇用人数は桁が違う。

また、アメリカの場合、肩書がつくことは給与額が上がることと直結しているため、マネージャークラスになると、どの業種であっても年間平均賃金は10万ドル程度になる。まだ10年は建築ラッシュが続くだろうと予想されていることから、技術・知識を持ったマネージャーレベルの雇用は安泰すると考えられている。

出典: U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米国労働統計局)

業種別労働者雇用数

現場監督(マネージャー)の雇用状況に対して、一般建設労働者の場合は少し様子が異なる。まず、国内の風潮において「コロナ以降、働き方が変わった」という点にある。IT系などの事務職はオフィスに人が戻らず、商業ビルの空室が目立つようになった。

これによりオフィスビルの建設計画が中止となり、多くの建設労働者は巷にあぶれた。ところがコロナが世界規模のパンデミックだったため、政府は失業手当を十分に与え、その結果「職に就かないほうが生活しやすい」という風潮まで感じられるようになった。この人手不足の危機を支えているのが、メキシコなどからの移民(不法移民を含む)である。資格や試験などが不要な建設現場での労働は、もとよりなり手が少なく、英語が話せなくてもできることがあるために不法移民の間では過去より人気の業界でもある。

ここのところの建築ラッシュで、特定の業界が突出して雇用数を増やしているわけではない。全体的に、雇用数が大目に安定している。あと10年は続く建設ラッシュといわれる。この状態が続くだろうと予測されている。年間平均給与額はマネージャーの半分以下(どの業種でも4万ドル程度)であるが、高インフレのために徐々にではあるが、上昇傾向にある。

出典: U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米国労働統計局)

アメリカの不動産デベロッパー事情〜統計データ〜

カリフォルニア州の住宅事情

カリフォルニア州、なかでもサンフランシスコ市は全米でも住宅価格の異常な高騰で有名である。コロナ以前でも、若者が独り暮らしするには住宅費があまりにも高く、駐車場で車中泊で暮らしている様子も見られた。インフレが続くアメリカであり、全米都市部ではいまでも家賃高騰が問題になっている。

カリフォルニア州では、ようやく落ち着きがみられるようになったといわれるが、それでもまだ全米の他の大都市圏と比較すると高いと言わざるを得ない。価格から想像すると、大豪邸なのかと思うほどではあるが、LAダウンタウンのマンションなどは日本の4LDK程度の物件であることも多い。

それでも中央値が70万米ドルを超えているのは、異常と言わざるを得ない。大手不動産デベロッパーが、大都市近郊に手ごろな家族向け物件を開発しているのは、こうした流れを変えるための唯一の対策であり、今後の需要と供給のバランスが取れた状態に、期待が寄せられている。

出典: CALIFORNIA ASSOCIATION OF REALTORS(カリフォルニア州不動産協会)

不動産仲介業者の雇用者数が最も多い大都市圏

全米の大都市圏といっても、カリフォルニア州は他の大都市圏と比較しても、異常と言わざるを得ない状況である。カリフォルニア州の大都市圏は南北中央と3か所も大都市圏がある。他の地域は、例えばニューヨーク州だと、マンハッタン中心の大都市圏から離れると、のどかな田舎町であるにすぎない。

ましてや学生街のボストンなど、歴史的建造物も多いことから、都市開発は認められないものも多く、不動産デベロッパーが手を出せる地域が少ない。これに対して、ゴールドラッシュの時代からカリフォルニア州は不動産デベロップメントに関しては比較的規制が緩く、開拓者精神が今でも根付いているともいわれるほどである。移民の受け入れも歴史的に長く、安い住宅物件不足は長らく問題になっている。

州や連邦でも、低所得者用の物件開発を続けてはいるが、低所得者物件がある地域はどうしても治安が悪くなることが多く、近隣住民からの反対運動で実現できないことも多い。まだまだ出口が見えない、アメリカ都市部の住宅供給不足ということである。

出典 : U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米国労働統計局)

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アメリカの不動産仲介事情〜統計データ〜

6月の米国の住宅価格下落額

6月のテキサス州オースティン の住宅価格は前年比9.6%減の3,881億ドルとなり、他のどの都市圏よりも大きな減少となった。次にカリフォルニア州オークランド(-8.7%)、シアトル(-8.1%)、サンフランシスコ(-7.8%)、ロサンゼルス(-6.6%)となった。ドルベースで見ると、ロサンゼルスは住宅総額の下落が最も大きく、6月には前年同月比で1,526億ドルの下落を記録した。続いてオークランド(-858億ドル)、シアトル(-827億ドル)、フェニックス(-584億ドル)、サンフランシスコ(-575億ドル)となった。サンフランシスコやシアトルなどの価格の高い西海岸の市場は、全米で最も高価な市場の一つであるため、大幅な下落を経験しており、住宅価格の下落余地がより大きかった。多くのリモートワーカーがパンデミック中に、より多くのスペースとより良い費用対効果を求めてこれらの地域を離れ、価値の低下に貢献しました。さらに、西海岸は技術者の解雇によって大きな打撃を受けている。物価の高い沿岸市場の多くの購入者も、住宅ローン金利の上昇の影響を机上で見て、ひどいショックを受けた。

出典:Redfin

不動産仲介業者の米国雇用状況

2022年5月時点での米国での不動産仲介業者の雇用状況は、雇用人数52,310人。平均時給は43.72ドル。年間平均賃金は90,930ドルである。不動産仲介業者の給与が最も高い州は、コロンビア特別区、平均年間賃金140,390ドルとなっている。2番目がニューヨーク州、139,190ドル。3番目がニュージャージー州、111,580ドル。4番目がネブラスカ州、106,520ドル。5番目がマサチューセッツ州、104,170ドルであった。雇用が最も多い州は、1番目がカリフォルニア州、11,410人。2番目がコロラド州、4,270人。3番目がフロリダ州、3,090人。4番目がノースカロライナ州、2,980人。5番目がニューヨーク州、2,530人であった。

出典:米国労働統計局

アメリカの水道事情〜統計データ〜

米国1日1人当たりの水の使用平均

米国では、1日あたり1人平均で、101.5ガロン(約385ℓ)水を使用している。ちなみに日本では厚生労働省のデータによると、日本での1人が1日使用する水の量の平均は230ℓである。

米国民が1日で使用する水道水で最も多いものはお風呂で1日36ガロン(約147ℓ)である。続いて2番目がトイレ。1日18~24ガロン(約68ℓ~約90ℓ)。続いて3番目がシャワー。1日20ガロン(約75ℓ)。続いて4番目が食洗機。1日15ガロン(約56ℓ)。続いて5番目が炊事。1日4~10ガロン(約15ℓ~37ℓ)。続いて6番目が洗面。1日2.5ガロン(約9ℓ)。最後が飲料水。1日1ガロン(約3.7ℓ)。となっている。日本のデータでは、1番目お風呂(80ℓ)、2番目がトイレ(50ℓ)、3番目が炊事(40ℓ)、4番目が洗濯(35ℓ)、5番目が洗面(25ℓ)であった。

出典: フィラデルフィア水道局

米国水道業界の雇用状況

2022年5月時点での米国での水道業界の雇用状況は、雇用人数119,350人。平均時給は26.78ドル。年間平均賃金は55,690ドルであった。

不動産仲介業者の給与が最も高い州は、カリフォルニア州、平均年間賃金77,890ドルである。続いて2番目がワシントン州、76,390ドル。3番目がコネチカット州、75,240ドル。4番目がニュージャージー州、72,480ドル。5番目がアラスカ州、68,430ドルであった。雇用が最も多い州は、1番目がカリフォルニア州、10,740人。2番目がテキサス州、9,530人。3番目がフロリダ州、7,030人。4番目がペンシルベニア州、5,850人。5番目がオハイオ州、4,870人であった。

出典 : 米国労働統計局

アメリカの電力・ガス事情〜統計データ〜

全米都市平均価格

1990年後半までは、アメリカは産油国であり、エネルギー価格は日本と比較すると格段に安価であった。1ガロンあたり1.5ドル程度で、当時の日本は1リットル100円以上であったので、日本の三分の一程度の価格であった。

その後、世界中で「石油は残り30年で枯渇する」などと騒がれ、エネルギー価格は高騰していった。最近でも夏のエネルギー利用頻度が高い時期に、1ガロン当たり6ドルを超す地域もあった。コロナ禍とウクライナ問題はエネルギー価格に大きく影響しており、2022年の夏は特に、平均価格で5ドルを超えている。

地域によっては1ガロン当たり8ドルということもあったという。1月は北米では寒い冬にあり、ガソリン・電気・ガスなどのエネルギーは夏ほどでないにせよ、比較的需要度が高い。それでもまだ価格が落ち着いていることから、アメリカのエネルギーに対しての自給率・輸入力の強さが感じ取れる。

出典:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米国労働統計局)

公共事業部門 労働者の給与事情

エネルギー関係の現場労働者は、いわゆる3K に分類される場合が多く、高給取りであるが不人気な業界とされることが多い。フルタイム労働者の月給は6000ドルになり、年俸は72000米ドルになる。

この金額は、例えば小売店の販売員の全米平均値が35000米ドル程度であることから分かるように、高給取りである。エネルギー関連会社の業績は安定しており、アメリカのハイパーインフレに対応して従業員の給与も昇給させていることが多い。エネルギー関連会社は、SDGsのうちのいくつかを達成するために、新たな技術開発を強いられており、その開発費が重くのしかかっているといわれる。

それでも末端のフルタイム従業員に十分な給与を支払うことができていることから、安定した業界であると評価することができる。労働組合も十分に機能しており、企業年金などの将来性も安定しているといわれている。

出典:U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS(米国労働統計局)

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