アメリカの航空業界は、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空、サウスウエスト航空の「ビッグフォー」が市場を支配し、格安航空会社の台頭で価格競争が激化しています。サービスの多様化と技術革新が成長を支える一方、人材不足や環境への配慮が課題です。これらの要因が複雑に絡み合う中、業界は持続可能な未来を模索しています。
今回は、アメリカの主要空運会社に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて14社を厳選してお届けします!それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要空運会社8選〜ローカル編〜
American Airlines (アメリカン航空)
利用乗客数全米一位の航空会社。テキサス州フォートワース市に本社を持つ。旅客数とマイル数で計算すると、世界最大の大手航空会社とされている。ハブ空港は10か所あるが、その中で最大のハブ空港はダラス/フォートワース国際空港(DFW)である。
設立は1926年、操業開始は1936年とされる。一日当たり約6800便のフライトを運営。一日当たりの平均乗客数は約50万人を超える。大手航空会社13社が加盟しているワンワールドアライアンスの創設メンバーである。子会社はエンボイエアー(旧名アメリカンイーグル)をはじめ6社。グループ全体の従業員数は2022年現在、129700人。2022年の収益は498億米ドルという。
2015年にUSエアウェイズとの合併が大きなニュースになった。当時のアメリカン航空は連邦破産法第11条の保護下にあった。2020年の第1四半期だけで22億米ドルの損失を計上。当時から今現在に至るまで、経営規模の縮小がうわさされている。
2023年現在、世界60か国以上、アメリカ国内350以上の都市を結ぶ。
出典:https://www.aa.com/
Delta Air Lines (デルタ航空)
現在も就航しているアメリカの航空会社の中では、老舗に分類される航空会社。
利用乗客数全米2位の航空会社。ジョージア州アトランタ市に本社を持つ。旅客数とマイル数で計算すると、世界第2位の大手航空会社とされている。ハブ空港は9か所あるが、その中で最大のハブ空港はハーツフィールドジャクソンアトランタ国際空港(IATA)である。
設立は1925年。操業開始は1929年である。一日当たり約4725便のフライトを運営。年間平均乗客数は約1億人を超える。大手航空会社19社が加盟している航空連合スカイチームの創設メンバーである。子会社はヴァージンアトランティック航空をはじめ5社。グループ全体の従業員数は2022年現在、95000人。2022年の収益は505億米ドルという。
2008年にノースウエスト航空の買収が大きなニュースになった。2005年には燃料費高騰を理由に破産宣告をしている。
2023年現在、世界54か国以上、アメリカ国内230以上の都市を結ぶ。
出典:http://delta.com/
Southwest Airlines (サウスウエスト航空)
世界最大の格安航空会社(Low-cost carrier, LCC)である。
利用乗客数で計算すると、全米3位の航空会社。テキサス州ダラス市に本社を持つ。ローリングハブとポイントツーポイントネットワークの利用のため、特定のハブ空港を持たない。また、今現在でも無料の受託手荷物を許可している。(多くの航空会社は有料化している。)
設立は1967年。操業開始は1971年である。旅行シーズンなど繫盛期には一日当たり約4000便のフライトを運営。
全席エコノミークラスのみ。ビジネスクラスやファーストクラスは作らない。フライト10分前までにフライト変更が無料でできる。現在は一般化されている、グループと数字の搭乗手順方法は、同社が2007年から採用したものとされる。
2022年の収益は238億米ドル。従業員数は79000名。2023年現在、全米42州、プエルトリコ、メキシコ、中米、カリブ海地域など、100以上の地域へ就航している。
出典:https://www.southwest.com/
United Airlines (ユナイテッド航空)
1927年航空郵便のボーイング社が起源。すぐに様々な合併を通じて、1931年にユナイテッド航空設立に至る。
利用乗客数で計算すると、全米4位の航空会社。イリノイ州シカゴ市に本社を持つ。8つのハブ空港を持つが、その中で最大のハブ空港はシカゴ・オヘア空港である。また、28社の航空会社が加盟する、世界最大の航空連合スターアライアンス創設メンバー。
子会社はいくつかあるが、地域サービスのユナイテッドエクスプレスや、2010年に合併したコンチネンタル航空が有名。一日当たり約4500便のフライトを運行している。1973年、当時のニクソン大統領がワシントンDCからロサンゼルスまで、同社の定期便に搭乗した。このことは、現役大統領を定期便に乗せた初の民間航空会社と話題になった。
2022年の収益は449億米ドル。従業員数は92800人。2023年現在、世界48か国、国際線で118都市・アメリカ国内戦で238都市へのフライト就航をしている。
出典:https://www.united.com/
Alaska Airlines (アラスカ航空)
1932年、アラスカ州アンカレッジ市にて、乗客・貨物・郵便物が必要な時に離着陸する、プライベートジェットのようなサービス方式で操業している。正式な航空会社としての発足は1944年。
利用乗客数で計算すると、全米5位。社名からアラスカ限定便の航空会社と思われがちだが、他社の買収・合併などを繰り返し、年々路線を拡大している。現在の本社はワシントン州シアトル市郊外。5つのハブ空港を持つが、その中で最大のハブ空港はシアトル・タコマ国際空港である。また、世界で3番目に大きい航空連合ワンワールドのメンバー。
2016年のヴァージンアメリカ航空の買収が有名。2023年に、環境に配慮して、機内ではプラスチックカップの使用を廃止すると発表。
2022年の収益は96億米ドル。従業員数は22918人。2023年現在、300を超える飛行機を所有し、117都市以上へのフライト就航をしている。
JDパワーにより、12年連続で顧客満足度が最も高い航空会社と評価されている。
出典:http://alaskaair.com/
Jetblue Airways (ジェットブルー航空)
1999年、NewAirという社名でスタート。創業当初は格安航空会社のサウスウエスト航空のアプローチをまねたものだったが、革張りシートや機内アメニティの充実で差別化しようとしていた。
利用乗客数で計算すると、全米6位。三大航空連合とコードシェア契約を結んでいる。最大のハブ空港はニューヨーク州のJFK国際空港。2001年の同時多発テロ直後でも利益を上げた数少ない航空会社のひとつでもある。創業当時から決してフライトキャンセルはしないという習慣があったが、2007年の北米猛吹雪のために、初めて約1700便をキャンセルした。またこの年、ルフトハンザ航空へ株式の19%を売却している。
2023年は欧州への国際線を充実させている。アムステルダム、アイルランド、スコットランドなどが加わり、大西洋横断目的地は6か国に。
2022年の収益は60億米ドル。従業員数は22000人。2023年現在、285機を所有し、114都市以上へ毎日約1000便のフライト就航をしている。現在の本社はニューヨーク州クイーンズ区とユタ州・フロリダ州にある。
出典:http://jetblue.com/
Spirit Airways (スピリット航空)
1983年、ミシガン州マコーム郡でデトロイト市からカジノ施設のある都市へチャーター便を飛ばすサービスを開始した。1992年にジェット機を導入。同時に社名を現在のものに変更した。デトロイトからアトランティックシティへの定期便も開始された。
1994年、オーバーブッキングのため、約1400人のキャンセルを出した。当時の評判は最悪で、パイロットは業界最低額・CAの態度は最悪・定時到着率も68%程度で最下位だった。
2010年代に入ると、これまでの悪評をぬぐおうと経営陣の刷新が行われ、顧客満足度も上位にランクされるまでになった。2019年に本社をフロリダ州マイアミ市に移転すると発表。
2022年から新しい衛星Wi-Fiを利用し、最大400Mbpsという航空会社の中で最速のサービスを始めた。
2022年の収益は50億米ドル。従業員数は11107人。2023年現在、197機を所有し、91都市以上へ就航をしている。
出典: https://www.spirit.com/
Frontier Airlines (フロンティア航空)
親会社はインデゴパートナーズ。コロラド州デンバー国際空港が最大のハブ空港となっている。創業は1994年、元パイロットが家族とともに始めた格安航空会社である。
買収や合併など、様々な経営難を乗り越えてきた。2008年にはクレジットカード処理会社の意向に反発した結果、連邦破産法第11章を申請している。2014年には「超格安航空会社」への移行を発表している。
2022年、電話による顧客サービスを完全廃止。オンラインチャットボット・SNSまたはWhatsAppを使ってサービスを受ける必要がある。
現在の保有機は主にエアバス。他の大手が参入していない地域にも路線を作ることもあるが、逆にいつの間にか撤退しているということもある。格安航空会社の中でも、存在が目立たない会社ともいわれる。
本社はコロラド州デンバー市。2022年の収益は33億米ドル。従業員数は6450人。2023年現在、132機を所有し、85都市以上へ就航をしている。
出典:https://www.flyfrontier.com/
アメリカの空運業界3選〜日系編〜
Japan Airlines (日本航空)
大戦後の日本経済成長の支援のため、日本政府によって1951年に設立。1954年にホノルル経由でサンフランシスコまで就航している。1959年にはワシントン州シアトル市と東京間に直行便を出した。
1960年にはジェット機時代になり、北米就航都市もロサンゼルスやニューヨークが加わっている。2005年には航空連合のワンワールドへの加盟を申請。2007年に正式に提携が完了した。2010年にはアメリカでいう破産法第11条にあたる会社更生法を申請。同年、アメリカン航空との協力を強化すると発表。翌年2011年に破産法保護から脱却。
アメリカの就航先はアンカレッジ・アトランタ・ボストン・シカゴ・ダラス・ホノルル・コナ・ラスベガス・ロサンゼルス・ニューオーリンズ・ニューヨーク・サンディエゴ・サンフランシスコ・シアトル・ウェーク島である。
アメリカでの本社はニューヨーク市とロサンゼルス市におく。その他、全米各都市に事務所がある。輸送客数では世界で6番目に大きい。
出典:https://www.jal.co.jp/ar/en/
All Nippon Airways (全日本空輸)
1952年、日本ヘリコプター輸送会社として操業開始。現在のANAの航空会社コードであるNHは、このことに由来する。戦後、東京と大阪を結ぶ初めての日本人パイロットによる定期便を就航させていた。
1955年には旅客機も保有しはじめ、国内線を開拓。1957年に現在の社名へと変更した。1986年まで、運輸省は日本政府所有のJALにのみ国際定期便の独占権を認めていた。1986年以降、グアム便から国際定期便を就航。ロサンゼルス便やワシントンDC便が就航した。
現在のアメリカ就航便は、シカゴ・ホノルル・ヒューストン・ロサンゼルス・ニューヨーク・サンフランシスコ・シアトル・ワシントンDCの各都市に直行便を飛ばしている。
アメリカでの本社はニューヨーク市とロサンゼルス市におく。ANAカーゴとUPSはコードシェアをしている。2020年のコロナによる減益は2023年以降順調に回復中。
出典:https://www.ana.co.jp/en/us/
ZIPAIR Tokyo (ジップエア東京)
成田国際空港の敷地内に本社を置く、日本航空の子会社。格安航空会社である。2020年に貨物専用航空会社として運行を開始し、同年10月から旅客運行を開始した。
日本航空から譲渡された機体を使って、成田国際空港からバンコク便とソウル便を就航させた。ところが2020年にコロナパンデミックとなり、同社の計画は混乱を極めた。2020年12月、ホノルル便を就航。21年11月にはロサンゼルス便を開始。2022年にはサンノゼ便も就航。
2023年には期待を7機に増やした。北米に関しては、サンフランシスコ便を就航。2024年にはカナダのバンクーバー便を就航させる計画。
ロシアのウクライナ侵攻中に、ロシア軍が軍事シンボルとして「Z」を使用した。このため、尾翼に大きく「Z」をペイントしていた同社の機体の垂直尾翼のデザインは、緑色の幾何学模様に書き換えられた。
従業員は2023年現在616人。
出典:http://www.zipair.net/
アメリカの空運会社3選〜外資系編〜
Air Canada (エアカナダ)
カナダ最大の航空会社。本社はケベック州モントリオール市にある。1937年設立。世界中にある222都市に乗客と貨物の定期航空輸送およびチャーター航空輸送を提供している。
航空連合のスターアライアンスの創設メンバー。主要ハブ空港はトロント国際空港、モントリオール国際空港、そしてバンクーバー国際空港。
国営航空会社の歴史は日本航空の歴史とよく似ており、2003年に破産保護を申請している。毎日平均1613便以上の定期便を運航している。
季節限定のアンカレッジ便のほか、オースチン・ボストン・シカゴ・デンバー・フォートローダーデール・ホノルル・ヒューストン・カフルイ・コナ・ラスベガス・ロサンゼルス・マイアミ・ニューアーク・ニューヨーク・サンタアナ・オーランド・フェニックス・ソルトレイクシティ・サクラメント・サンディエゴ・サンフランシスコ・シアトル・タンパ・ワシントンDCへの便がある。
2022年の収益は165億カナダドル。従業員数は35600人という。
出典:https://www.aircanada.com/
Volaris (ボラリス)
アメリカ人が選ぶメキシコのリゾート地へ向かうときに利用されることが多い格安航空会社。本社はメキシコシティのサンタフェなどに置かれている。旅客輸送数ではメキシコ最大の航空会社であり、アメリカ大陸内の国内・国際線を就航させている。メキシコ国内航空市場では42%のシェア率を誇る。
2005年にVuela Airlinesとして設立。アメリカのオンライン決済システムPayPalを得利用して航空券を購入できるようになっている。ドイツのコンドル航空やアメリカのフロンティア航空とのコードシェア契約をしている。
フライト内で無料の飲み物・食事を提供しない。すべて有料になっている。その他、枕や毛布なども販売される。
2020年の収益は11億米ドル。従業員数は7200人。118機の飛行機を保有し、68都市への就航をしている。
出典:http://www.volaris.com/
China Airlines (中華航空)
中華民国(台湾)の国有航空会社。台湾の二大航空会社のひとつ。桃園国際空港に本社を置き、世界102の都市へ、貨物91便を含めて毎週1400便以上のフライトを運行している。
1959年、退役軍人によってチャーター便サービスを就航させた。1960年には定期路線を獲得。日本などの国際線を1970年には就航させている。その後、ハワイ経由でアメリカ大陸ロサンゼルスへ就航。
その後もホノルル経由のロサンゼルス線などを就航。台北・アンカレッジ・ニューヨーク・アムステルダム・ドバイ・台北の世界一周便も就航させている。アメリカ行きは貨物便が多いが、旅客便はホノルル・ロサンゼルス・ニューヨーク・オンタリオ・フェニックス・サンフランシスコに飛ばしている。
保有する機体は83機。2017年の収益は1398億台湾ドルだった。従業員は11000人を超す。
アメリカで空港から乗客専用のバスサービスがある。
出典:http://china-airlines.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。