アメリカの海運業界は、UPSやFedExなどの大手物流企業と専門の海運業者が共存し、効率的なサービスを提供しています。非船舶運航運送業者(NVOCC)として運営し、FCLやLCLなど多様な輸送オプションを展開。技術革新や環境への配慮が進み、オンライン追跡システムやCO2削減への取り組みが強化されています。
今回は、アメリカの主要海運企業に焦点を当て、ローカル・日系・外資合わせて12社を厳選してお届けしていきます!
それぞれの企業情報や事業内容について、一つ一つ詳しくご紹介します。
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アメリカの主要海運企業8選〜ローカル企業編〜
C.H. Robinson Worldwide
本社はミネソタ州エデンプレーリー市。北米・欧州・アジア・南米に300を超える事務所を持つ。2021年の従業員数は16800人。収益は231億米ドルを超す、北米最大の輸送会社である。
創業は1905年。チャールズ・ヘンリー・ロビンソンによる。ノースダコタ州とミネソタ州に農産物卸売仲介会社が起源。現在はサードパーティーロジスティクスを含む運送会社として成長中。貨物輸送・輸送管理・仲介・倉庫保管が業務内容だが、輸送による収益が全体の94%を占める。
海運の他、トラックによる陸送・トラック未満の小型陸送・航空輸送・一貫輸送などを提供。特に1956年の連邦道路法制定で列車による輸送からトラックなどの陸送に変化したところで輸送業界で台頭。1980年の自動車運送業者法施行でも大きく成長した。
特に海運では、2012年のフェニックス社の買収で海運能力を2倍とし、さらにポーランドのアプレオ社の買収で国際海運も2倍にした。
出典:https://www.chrobinson.com/
Expeditors International of Washington (エクスペディターズ・インターナショナル)
1979年、ワシントン州シアトル市で創業。創業当時は海洋運送業者として登録された。現在、北米において有数の物流および貨物輸送会社として成長中。すでに1984年には上場企業となっている。2002年にはナスダック100に選出されるほどの大企業に成長している。
その後、買収などを繰り返して成長。特に1985年の大手PacBridge社の買収で海運事業が拡大した。1993年には中国政府からAライセンスが付与され、中国との海運業務を強化した。
2020年には世界346か所に事務所を持ち、18000人以上の従業員を抱えている。収益は81億米ドルを超す。
すでに引退したCEOのピーター・ローズは、型破りで有名。米国証券取引委員会に提出する書類も、独特なもので金融業界では一目置かれていたと噂されている。
海運業者としては、一般的な企業。
出典:http://www.expeditors.com/
UPS Supply Chain Solutions
売上高では世界最大の宅配業者。1907年創業。現在の本社はジョージア州サンディスプリング市。創業当初は電信を専門としていた。
2022年のグループ全体の収益は1003億米ドルを超えるが、海運業での売り上げは決して高くない。空運や陸運が主軸である。海運はUPSグループ内のサプライチェーン管理部門が担当している。
主なサービスとしてはコンテナ全積載(FCL)、コンテナ未満の積載(LCL)や、宅配の海運版のようなトレードダイレクトがある。海運の場合、国際的な展開になることが多いため、通関などの複雑な業務が重なる。経験値の高い同社は、依頼主が簡単に管理できるツールを用意している。
同社は船舶を所有していない海運業者である。これを非船舶運航運送業者(NVOCC)という。船舶を所有していることのコストを考えると、大手になればなるほどNVOCCが有利となる。
出典:https://www.ups.com/us/en/supplychain/freight/ocean.page
Matson (マトソン)
収益23億米ドルを超し、従業員を4000人以上抱える、アメリカ大手の海運業者。本社は現在ハワイ州ホノルル市にある。創業者のウィリアム・マトソンはスウェーデン人で幼少期は孤児だったが、カリフォルニア州サンフランシスコ市に停泊していたヨットで働くうちに、ハワイ諸島からプランテーションと砂糖のライン航行で利益を上げた。
創業1882年。サンフランシスコ市に自社ビルを建てるほどの規模になった同社ではあるが、第二次大戦後には航空会社を設立したものの失敗し、2011年には親会社の決断により会社を二つに分断。現在の本社があるホノルルで順調に成長している。
かつては旅客船やホテル経営などにも手を伸ばしたが、いずれも失敗している。現在は海運業とナビゲーションサービス業に専念し、ハワイ近郊のグアム・ミクロネシアなどの南太平洋諸国への便と中国・日本などのアジア諸国への海上輸送サービスを提供している。
アメリカ船籍の貨物船団は20隻。
出典:http://www.matson.com/
Seko Logistics (SEKO・ロジスティクス)
1976年にイリノイ州シカゴ市で創業した物流サービス業者。収益は6億米ドル。従業員は2000人を抱える。世界60か国以上に150のオフィスを構える、アメリカの大手物流会社のひとつ。
輸送・物流・転送・倉庫管理に特化した、完全なサプライチェーンソリューションを提供。2022年には、フランスの国際運輸業者のBansard社と統合。欧州でのインバウンドにはずみがついた。
海運に関しては、他社同様、世界の主だった港を網羅しており、アジア・欧州・北米との間でTEUとも呼ばれる数十万個のコンテナを管理している。LCLとFCLの両方の移動について、柔軟なルートと複数の海上輸送のオプションを提供するノウハウを持っている。
同社は非船舶運航運送業者 (NVOCC) であるため、厳格な運航スケジュールに拘束されることがない。コストも抑えられ、利用船舶の組み合わせにより、海上輸送を可能な限り簡単にできる。
出典:https://www.sekologistics.com/us/freight-forwarding/ocean-freight-forwarding/
Crane Worldwide Logistics (クレーン・ワールドワイド・ロジスティクス)
メジャーリーグ・ベースボールのヒューストン・アストロズのオーナー兼会長のジム・クレーンが会長兼最高経営責任者を務める。同氏が1984年に設立した小規模な国内貨物運送会社であるイーグル・グローバル・ロジスティックス社を起源に持つ。
設立は2008年。元イーグル・グローバル・ロジスティックス社の幹部が団結して、最新技術と顧客サービス、卓越性、イノベーションへの新たな取り組みで新会社を設立した。現在では30か国で130以上の事務所を持ち、全大陸で事業を展開している。
本社はテキサス州ヒューストン市。収益は3億米ドル。従業員は1500人を超す。アメリカ国内での物流貨物輸送業者総合順位では40位程度。
海上貨物運送業の幅広いポートフォリオは、出発日の柔軟性を提供し、あらゆる海上輸送のニーズに合わせて輸送時間を短縮する。グローバルなFCLおよびLCL配送サービスが利用可能となっている。
出典:https://www.craneww.com/solutions/ocean-freight/
AIT Worldwide Logistics (AIT・ワールドワイド・ロジスティクス)
イリノイ州アイタスカ市に本社を置く、1979年創業の物流総合会社。配送サービスとサプライチェーン管理ソリューションにより、企業の成長を支援してきた。アジア・ヨーロッパをはじめ、世界130か国以上の拠点で通関・倉庫管理なども手掛けてきた。
2020年の総収益は12億米ドルと発表したが、その直後、ニューヨーク市に本拠を置く中間市場金融会社のザ・ジョーダン・カンパニーと資本増強することに合意している。
同社は非船舶運航運送業者 (NVOCC)であり、同社の専門海上貨物運送業者が年間を通じて、予測可能な価格の輸送能力を提示する。このため、ニーズに対して低価格でのサービス提供が可能になっている。
同社のエクスプレスサービスは、例えば従来のロサンゼルス発のLCLと比較して最大30%以上も高速処理が可能となっている。
出典:https://www.aitworldwide.com/services/sea-freight/
OIA Global (OIA グローバル)
創業1988年。オレゴン州ポートランド市にて創業。当初は太平っ溶岩北西部から生鮮食料品を輸出するオレゴン国際航空貨物という社名であった。現在は100か国以上に500以上の異なる種類の貨物を扱う創業物流会社のひとつに成長している。
収益は4億米ドル。従業員は1000人を超す。FCLとLCLの扱いはもちろんのこと、買い手と売り手の間に入ってスムースなやり取りを実現させ、規格外の貨物も取り扱い、リアルタイムの出荷状況を可視化させている。同社は実証済みの海洋輸送仲介業者 (OTI)および認可を受けた非船舶運航運送業者 (NVOCC)として、世界中の中核およびニッチ運送業者との強力な関係を維持している。
海運業者にとって最大の課題となっている二酸化炭素量削減に対しても、真摯な態度で取り組んでいる。
出典:https://www.oiaglobal.com/product/ocean-freight/
アメリカの主要海運企業3選〜日系企業編〜
Nippon Express (日本通運)
半官半民の運送会社として1937年に設立。1950年に運送業法と商法に基づき、民間企業として日本通運を創業。1958年にはニューヨークに駐在事務所を開設。1962年には米国日本通運株式会社を設立。
1963年には1500万ドル相当のドル建て転換社積を発行。1978年にはハワイ日本通運株式会社設立。ペリカン便サービスが1982年以降、世界に拡大。1999年には海外従業員が8000人を突破している。
国際物流事業の最も重要な分野として、同社は海上輸送事業をあげている。NVOCCとして最もコスト効率の高い料金を提供。世界49か国の318都市に、718か所の事務所を抱える大規模なネットワークを構築。海上輸送専門家があらゆる種類のリクエストに柔軟に対応している。
サービスブランド名「NEX Ocean-Basic」において、総合コンサルティング・ドアツードアの輸送・海上貨物保険など、日本の企業らしい細かく丁寧なサービスを提供している。
出典:https://www.nipponexpress.com/service/transportation/ocean/
Yusen Logistics (日本郵船)
1870年に土佐藩が設立した海運会社の「九十九商会」が起源。1885年に共同運輸株式会社と合併し、現在の社名である日本郵船株式会社となる。当時は58隻の蒸気船を保有し、1896年にはワシントン州シアトル港への航路が開設されている。
1945年までの日本の商船・タンカー・定期船の大部分は日本郵船のもとで航行していた。アメリカ便はカリフォルニア州サンフランシスコ湾とシアトル湾を中心に栄えた。横浜からシアトルまで約10日かかった。
現在の本社は東京都千代田区。クルーズ船まで含めると、800隻以上の船舶を運行させている。アメリカ現地法人であるYusen Logistics (Americas) Inc.では、FCLとLCLを扱う。冷凍貨物から常温貨物まで、あらゆる貨物を取り扱う。
玄関渡し・通関仲介・貨物保険など、様々な付加価値サービスを用意。オンライン追跡アプリで、貨物の可視化を実現。
出典:https://www.yusen-logistics.com/us_en/services/end-to-end-transportation/ocean-freight-forwarding
Kintetsu World Express (近鉄ワールドエクスプレス)
近鉄グループホールディングスの子会社。航空及び海上貨物運送、通関仲介、倉庫在庫管理サービスを主な業務としている。国際貨物業は1948年に開始。1969年には米国子会社が設立された。1970年に同社が米国子会社から独立。
2015年には世界60か国で展開していたシンガポールに拠点を置くねpチューン・オリエント・ラインズ社の子会社であるAPLロジスティクス社を買収し、物流ポートフォリオは北米とアジアに及んだ。自動車・小売・工業などを中心に、グループネットワークを拡大した。
非船舶運航運送業者 (NVOCC) である。コンテナ未満積載(LCL)およびコンテナ積載全体(FCL)を扱い、専門家が提供する技術的および規制上の専門知識を利用してサプライチェーンに基づいてカスタマイズする。
2023年現在、45か国の298の都市に、662か所の事務所を持つ。また、69800TEUの海運実績を持つ。
出典:https://www.kwe.com/services/solutions/sea-freight/
アメリカの主要海運企業3選〜外資系企業編〜
Kuehne + Nagel (キューネ・アンド・ナーゲル)
スイスのシンンデレギ市に本社がある、世界的な輸送及び物流会社。1890年に創業。社名は創業者二人の名前から。海運、航空貨物のフォワーディング、契約物流、陸上事業などを展開。
2022年現在で、106か国に約1300のオフィスを構える。従業員数は総勢78000人を超えているという。収益は186億スイスフランを超す。
海外進出は1950年代、まずはカナダから始めている。1981年に海運業の拡大に失敗し、買収された経験がある。2000年代に入ってアメリカに積極的に進出。アメリカの拠点は、ニュージャージー州ジャージーシティー市に本部を置いている。
他社同様に、CO2削減や通関などの手続き代行、温度管理可能なコンテナや可視化されたアプリとAIの利用などがある。
出典:https://home.kuehne-nagel.com/en/-/services/sea-freight
Sinotrans Ltd (シノトランス)
中国最大の物流会社のひとつ。2002年設立。2009年には再編され、現在の社名になった。さらに2015年には、国の承認を受けて2017年までに中国招商集団の直接子会社になっている。
親会社の中国招商集団は、国際国有企業である。1872年に上海にて中国商汽船航路会社として設立。世界各国に海運業を広げていった。1980年代には「高速道路から銀行までをカバーする副業企業」に成長し、今日に至る。
同社の海運業は中国主要港と世界中をエンドツーエンドの物流サービスを提供している。コンテナサービスはもちろんのこと、専用アプリを用いた予約システムで、サプライチェーンの効率的な運用のニーズを満たしている。
バラ積み貨物に関しても、液体バルク貨物・ドライバルク貨物など、様々なニーズに対応している。
出典: https://www.sinotrans.com/col/col3885/index.html
DHL Supply Chain & Global Forwarding (DHLグローバルフォワーディング)
ドイツのボン市に本社を置く、国際的な貨物輸送会社。アメリカでは、政府機関の宅配便として利用されているため、他社よりも短い時間で荷物が届くことで有名。さらにアメリカ郵便局との提携もあり、最終配達にアメリカ最大の配送ネットワークとしても機能する郵便局員を使用することも可能になっている。ただし、知名度でいえばUPSやFedExにはかなわず、2009年にはアメリカでの集配事業を縮小している。
DHLは創業者の名前から。ダルシー・ヒルブロム・リンの3人の名前を組み合わせたもの。
アメリカでの最大ハブはケンタッキー州にあるシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港。もともと、会社自体は1969年にカリフォルニア州サンフランシスコ市で設立されている。1998年にドイツポストに買収された。
グループ全体の従業員数は586000人。817億ユーロの収益。
出典:http://www.dhl.com/
ワシントン在住の日本人。大学卒業後、日本で外資系メーカーに勤めており、営業とマーケティングを経験。マーケティングは発売予定の製品周りの広告、パッケージや販促、イベントやデジタルプラットフォームの使用等様々な側面に関わり、年に1−2回ある新商品発売に向けて取り組む。渡米してからはフリーランスでスタートアップにマーケティングやマーケティングリサーチのサービスを提供し、プロジェクトベースで様々な依頼に応えている。